2021年5月5日更新事業承継

株主総会とは?意味や時期、決議事項やスケジュールを解説

株主総会は株式会社における最も重要な意思決定機関です。スケジュールや決議の種類などルールに沿って開催しなければならず、株主総会について正しい知識を持っていなければなりません。株主総会の意味や時期、決議事項やスケジュールについて解説します。

目次
  1. 株主総会とは?
  2. 株主総会とは?意味と内容
  3. 株主総会の時期や日程とスケジュール
  4. 株主総会と取締役会の決議の違い
  5. 上場会社と未上場会社の株主総会の違い
  6. 株主総会の参加資格とお土産
  7. 株主総会の服装
  8. まとめ

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株主総会とは?

株主総会は重要な経営戦略や人事を決定するためのものです。

しかし株主総会は決められた手続きがあり、それをしっかり守っていなければ決定が無効になってしまうこともあります。

そのため経営者は株主総会について正しい知識を持っていなければなりません。

今回は株主総会の内容や手続き、招集通知の決まり事や参加資格などについてわかりやすくお伝えしていきます。

株主総会とは?意味と内容

株主総会の意味と種類

まずは株主総会の意味や内容についてお伝えしていきます。

株主総会は簡単に言うと「株式会社における意思決定の最高機関」です。

そもそも株主には「自益権」と「共益権」という2種類の権利があります。

自益権は会社から配当金などの経済的な利益を得る権利のことをいい、共益権は株式会社の経営の重要な意思決定に参加し、その経営を監督して是正する権利のことをいいます。

例えば、自益権は、剰余金の配当請求権や、募集株式・新株予約権の割り当てを受ける権利などです。

他方、共益権は、議決権、役員の責任追及等の訴えなどです。

株主総会における、株主の議決権行使は、共益権行使であり、会社の経営に影響する重要な権利行使です

その他、権利の内容が異なる2種類以上の株式を発行している株式会社の種類株主による「種類株主総会」もあります。

株主総会の内容と役割

このような株主総会では、会社の経営を左右する重大事項に関して意思決定を行います。

株主総会の場で意思決定が行われるものは大きく分けて3つあり、「会社の根本に関わってくるような事項」「会社の役員の人事に関わってくるような事項」「株主の利害に関わってくるような事項」があります。

例えば、「会社の根本に関わってくるような事項として」、会社の定款変更や、事業譲渡、解散などがあげられます。

「会社の役員の人事に関わってくるような事項として」、取締役や監査役の選任や解任があります。株式会社は、所有と経営が分離されているため、所有者である株主が、経営の執行を行う役員を選任するのです。

「株主の利害に関わってくるような事項」として、剰余金の配当があります。また、役員の報酬についても、役員自身が自分の報酬を決定できると、お手盛りの危険性があり、会社に損害を与え、ひいては株主の利益を害するおそれがあるので、役員の報酬も株主総会の決議事項となっています。

これらの事柄を決議する際、株主総会は基本的に「資本多数決」といった形式を取ります。

これは一般的な多数決に近いですが、株主1人に対して1つの議決権が与えられるのではなく、1株に対して1つの議決権が与えられます。

つまり株式の所有数が多ければ多いほど議決権が大きくなるわけです。

ただ、株式会社によっては単元株制度が導入されており、1単元をいくつの株式で設定されるかによって議決権は変わります。

たとえば10株で1単元なら、10株持っていなければ1つの議決権になりません。

また、議決権の制限がある種類株式を発行する会社もあります。
例えば、一定の決議内容についてのみ議決権を制限したり、すべての決議内容について議決権を制限することもできます。

なお、こうした議決権に制限のある株式には、発行数などに法律上の制約がかかる場合があり、注意しなければなりません。

こうした点からも、株主総会の実施については、専門家に相談することをおすすめします。

 

株主総会の時期や日程とスケジュール

ここでは株主総会の時期や日程、スケジュールについてお伝えします。

株主総会を開催する時期

そもそも株主総会には2種類あり、「定時株主総会」と「臨時株主総会」があります。

定時株主総会は決められた時期に開催されますが、臨時株主総会は、定時株主総会以外で、株主総会の決議事項が発生した場合に、開催するものです。

以下、詳細を見てきます。

①定時株主総会

定時株主総会はその名の通り決まった時期に開催される株主総会であり、会社法で年1回の開催が義務付けられています。

定時株主総会の開催時期には決まりはありませんが、法人税の税務の都合から基本的に事業年度末の3ヶ月以内に定時株主総会を開催することが一般的です。

日本の会社は3月決算がポピュラーであるため、定時株主総会は大体5~6月ごろに開催することが多くなっています。

②臨時株主総会

臨時株主総会はその名の通り臨時で開催される株主総会であり、開催時期は完全にその会社の任意となっています。

また開催する回数にも制限はないため、1年に何度も開催することが可能です(実際にやる会社はほとんどありません)。

臨時株主総会は会社が自由に時期や回数を設定できる株主総会ですが、緊急の事案が発生しない限りあまり開催されることはありません。

株主総会のスケジュール

株主総会のスケジュールは細かい決まりがいくつかあるため、厳密に行う必要があります。

株主総会のスケジュールは以下の通りです。

①計算書類・事業報告の作成

まずは株主招集の際に必要な計算書類、事業報告を作成します。これらの書類は一度監査役の監査を受けて監査報告を作成し、取締役会の承認を得る必要があります。

この際に必要があれば株主総会で提案する予定の議案や定款の変更に関する書類を追加します。取締役会で承認を得た計算書類や事業報告は本店に据置する必要があります。

据置は株主総会が開催される2週間前から5年間行わなければなりません。

②株主招集通知

続いては株主招集通知を行います。株主招集通知には株主総会の日時、場所、報告事項、決議事項などを記載します。

インターネット上にひな型が出回っているので、もしどう書いたらいいのかわからなければそちらを参照してもいいでしょう。株主招集通知は作成した計算書類や事業報告といった書類を同封したうえで送ります。

ただし、株主の同意を得たうえでメール等の電磁的方法で招集通知を行うことが可能な場合や、取締役会非設置会社で、非公開会社であれば、口頭でもOKの場合があります。

発送期限に関しては、公開会社と非公開会社によって異なっていますし、非公開会社では、さらに取締役会設置会社か、取締役会非設置会社かなどによって異なってきます。

例えば、公開会社の場合は株主総会が開催される2週間前までに送らなければなりません。

対して、非公開会社は、上記の通り取締役会設置会社かどうか、書面投票・電子投票を採用する会社かどうかによって異なってきます。

このように招集通知に関しては、法律が複雑なため、注意が必要です。万一、通知が遅れたり、通知方法を間違えた場合には、招集手続きの瑕疵を追及されかねないため、慎重に判断する必要があります。

③株主総会実施後

株主総会を終えた後は議事録を作成します。

作成した議事録には議長や出席取締役が署名・捺印をした後、据え置きを行います。

議事録は本店に10年、謄本を支点に5年、議決権行使の代理委任状を3ヶ月据置していきます。

また、据置している間、もし株主や会社債権者の要求があった場合は議事録の閲覧・謄写をしなければなりません。

ちなみに、株主総会の決議事項に、登記事項が含まれている場合は、注意が必要です。
この場合、無事に株主総会が終了し、議事録も作成、保管しフィックスではなく、登記が必要になります。

登記事項に変更が生じたら、変更が生じた時点から2週間以内に変更の登記を行う必要があります。
万一、遅滞してしまうと、100万円以下の過料を受ける可能性があります。

この点、M&A総合研究所には知識と経験が豊富なアドバイザーが在籍しています。これまでにさまざまな業界や業種のM&Aに携わってきたノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。

M&Aを行う際、株主総会の開催が必要なこともあり、総会開催の手続きに関するサポートも充実しています。株主総会の手続きに関して、気軽にご相談ください。

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株主総会と取締役会の決議の違い

株主総会と取締役会は同じ会議体であるものの、決議内容など大きく異なります。

また、万一、その違いに気づかず、本来は株主総会の決議事項であるものを、取締役会の決議事項としてしまった場合、どのような問題が発生するのでしょうか。

ここでは株主総会と取締役会の決議の違い、さらに株主総会の決議の種類についてお伝えします。

株主総会と取締役会の決議はどう違う?

取締役会は取締役が3人以上いる際に設置されるものであり、株式会社における重要な意思決定機関といえますが、株主総会とは大きく異なっています。

株主総会は会社の根本に関わる事項など、会社の今後を左右する重要な事柄について決議を取るものです。

対して取締役会は基本的に会社の日常的な業務に関する事項を決定する機関であり、株主総会で扱われる事項と比べると重要度が低いものを決定することが多くなっています。

株主総会の決議事項と取締役会の決議事項は、法律で定められており、多岐にわたります。
注意が必要なのは、取締役会非設置会社においては、株主総会は、株式会社に関する一切の事項を決議することができます。

他方、取締役会設置会社においては、株主総会は、株式会社に関する一切の事項を決議することはできませんが、重要事項の決定権限を依然として持っています。

このように、株式会社の機関設計に応じて、株主総会の権限は異なり、ひいては取締役会の権限も異なるという点です。

また、こうした違いに気づかず、本来は株主総会の決議事項である事柄を、誤って取締役会で決議してしまった場合はどうでしょうか。

株主総会における議決権の行使は、株主の重要な権利である共益権の行使であるため、その権利行使がみとめられなかったことになります。

そうすると、法律違反となり、さらには取締役会での決議は無効となります。

こうした点から、自分の会社において、何が株主総会の決議事項なのか、取締役会の決議事項なのかを正確に把握することは必要不可欠です。
たしかに、株主総会の開催は会場の確保や書類の作成などで時間や手間、そして費用がかかってしまうものです。

しかし、株主総会の実施は法律に基づいたものですので、決議事項や招集手続きなどに瑕疵がないようにしっかりと準備が必要です。

※関連記事
株主総会と取締役会の違い

株主総会の決議の種類

株主総会の決議は全部で4種類あり、議案ごとにそれぞれに応じた決議を取らなければなりません。

もちろん重要度が増すごとに定足数や決議要件は、厳しいものになっていきます。

こちらも議案に応じて、適切な種類の決議を取らなければならないことになっており、違反すれば決議が無効になってしまう恐れがあります。

また、手続きの瑕疵に関して、株主から訴訟を提起されるリスクもあります。
こうした点を踏まえて、議案に対応する定足数、決議要件を満たしていることを注視する必要があります。

株主総会の決議の種類は以下の通りです。

決議の種類

定足数

決議要件

決議内容

普通決議

定款に定めがなければ、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主の出席

出席している株主の議決権の過半数

・全て株主が対象となっている自己株式の取得

・剰余金の配当

・剰余金の額が減少したことによる資本金や準備金の増加

・取締役や監査役の報酬

特別決議

議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主の出席。ただし決議権に関して半分の以上割合を定款で定めていのなら、その割合以上が必要となる。

出席している株主の議決権の3分の2以上。

・特定の株主からの自己株式の取得

・相続人などへの売渡請求

・全部取得条項付種類株式の取得

・株式の併合

・自己株式の処分や新株発行に関わる募集事項の決定

・一定の取締役または監査役の解任

・欠損の額を超えないものを除く資本金の額の減少

・金銭分配請求権を与えない現物配当

・定款の変更

・解散

・合併、会社分割、株式交換、株式移転

特殊決議

なし

株主総会で議決権を行使できる株主の半数以上、および議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上。ただしそれぞれに定款でそれ以上の割合が定められているならその割合。

・発行する株式全てに譲渡制限を付加するための定款の変更

・一定の合併を行う場合、その契約などの承認

特別特殊決議

なし

株主総会で議決権を行使できる株主の半数以上、および議決権を行使できる株主の議決権4分の3以上。ただしそれぞれに定款でそれ以上の割合が定められているならその割合。

譲渡制限会社が株主ごとに異なる取扱いをする旨の定款の変更

※関連記事
株主総会における決議事項の種類と決議方法

上場会社と未上場会社の株主総会の違い

上場会社と未上場会社の株主総会の違い

上場会社と非上場会社の株主総会にはどのような違いがあるのでしょうか?

上場会社と未上場会社を比較しても株主総会の手続きに差異はありません。

基本的には会社の規模や株主の数、そして上場の有無に関わらず、株主総会のプロセスやその重要性に違いは生まれることはありません。

上場会社の株式は自由に売買ができるようになっており、会社の評判や信頼性が下がれば株式を手放す株主が大きく減ってしまいます。

そのため上場会社にとって株主総会は株主に自分の会社の努力や成果をアピールする重要な行事になります。

なお、会社法上の公開会社と非公開会社の違いは、株主総会において招集通知の期間などに影響するため重要です。

未上場会社の株主総会の注意点

未上場会社の場合、上場を目指しているのであればもちろん株主総会は重視していますが、少数の株主が親族のような身内で構成されており、株主を増やす気がない未上場会社だと株主総会を軽視する傾向があります。

実際、身内同士だとすでにコンセンサスが取れていることが多く、わざわざ株主総会を開催する意味がないと考える経営者は少なくありません。

そのため株主総会の手続きが不十分になっていたり、開催すらせず議事録だけを作成して開催したことにするということがあります。

確かに株主総会は手間がかかってしまうため、株主が身内なら手を抜きたくなることもあります。

しかし株式会社の意思決定の最高機関である以上、株主総会は決しておろそかにしていいものではありません。

万が一株主との間でトラブルが発生した場合、株主総会で決議を取っていないことは致命的な弱みになります。

株主総会で決議を取るべき事柄を決議なしで進めていた場合、それを理由に会社の経営戦略や役員報酬の変更が無効化されてしまう恐れがあります。

未上場会社でも株主総会は必ず開催しなければなりません。

株主総会の参加資格とお土産

株主総会の参加資格

ここでは株主総会の参加資格とお土産についてお話しします。

株主総会には参加資格があり、参加資格を満たしていなければ参加できません。

株主総会の参加資格はそれこそ「株式を決算時期まで持っている」ことになります。

正確には単元株を権利確定日までに所有しており、3月末の株主名簿に名前が記載されていることが条件です。

さらに株主となっている会社から株主総会の出席通知が届いていれば、確実に参加できるようになるでしょう。

もし株主総会に出席できない場合は代理人を立てることができます。

そのまま代理人に議決権を行使してもらうこともできますが、その際には委任状を提出しなければならないので注意してください。

株主総会のお土産

そして株主総会に参加した株主に対しては会社からお土産がもらえることがあります。

最近は減ってきているようですが、会社は株主総会の際に出席した株主にお土産を用意しているケースがあります。

たいていは相場が1000円前後の自社製品か日用品、株主優待券などが渡されますが、当然無料なのでもらっておいて損はないでしょう。

お土産は会社ごとに異なっており、中にはお土産目当てで株主になっている人もいます。

雑誌やインターネットでも会社ごとの株主総会のお土産ランキングが作成されているので、そちらを参考にしてもいいでしょう。

ちなみに会社によっては株主総会の質疑応答でその事業に関する裏話が聴けることがあります。

とりわけテレビや映画などといったエンターテイメント系の事業だと撮影の裏話などが聴けることもあるので、興味がある時は質問してみてもいいでしょう。

ただし、当然、営業機密事項については、公開できないため、もし仮に質問に対して、担当役員が非公開の営業機密をポロっと言ってしまうようでは、会社の危機管理がなっていないと言わざるを得ません。

こういった点も含めて、株主総会における質疑応答を注視してみると良いかもしれません。

株主総会の服装

株主総会における服装について見ていきましょう。

株主総会は、役員の選解任や、重要な経営判断にかかわる事項を決議する場所であるため、ラフな格好で出席したらいけないのでは、と思うかもしれません。

ところが、実際には服装に指定があるわけではなく、多くの株主は普段着で参加しています。ただし、会社の意思決定の機関であり、重要な会議であることは間違いないので、自由な服装とはいうものの、常識の範囲内で判断しましょう。

株主総会は一般的なイメージと比べると気楽に参加できるものであり、株主は会社からすれば重要な出資者であるため、もてなしてくれます。

もちろん会社にとっても株主にとっても株主総会は重大な行事であるため、マナーは守らなければなりませんが、あまり気張らずに出席しても問題ないでしょう。

ちなみに、メディアで報道される株主総会は、株主からシビアな質問事項が飛び交い、紛糾しているイメージがあるかもしれませんが、多くの株主総会ではそのようなことはありません。

余程の不祥事や物言う株主がいない限りは、1時間程度で閉会となります。なので、せっかく株主の地位があるのですから、会社の所有者という立場から、企業の意思決定に参加してみてはいかがでしょうか。

まとめ

株主総会は株式会社における最も重要な意思決定機関だけあって、スケジュールや決議の種類など、決められていることが多く、経営者はルールに沿って開催しなければなりません。

一方、株主の立場でみた株主総会はそこまで堅苦しい行事でもないので、そこまで気張る必要はないでしょう。

会社が準備している想定問答がどの程度しっかりしているのか等、質疑応答を利用してその辺りを確認してみると良いかもしれません。

また、会社ごとに違う株主総会のお土産を集めてみるなど、ちょっとした楽しみを見つけてみてもいいかもしれません。

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