2024年11月12日更新事業承継

事業承継ファンドとは?スキームやメリット・デメリットを解説【事例あり】

事業承継ファンドを活用すれば、事業承継問題の解決が可能です。本記事では、事業承継ファンドの概要・活用方法・メリットとデメリットなどを幅広く紹介します。加えて、事業承継ファンドの種類や、事業承継ファンドとM&Aのどちらを活用すべきかまとめました。

目次
  1. 事業承継ファンドとは
  2. 事業承継ファンドの活用方法
  3. 事業承継ファンドを活用するメリット
  4. 事業承継ファンドのデメリット
  5. 事業承継ファンドの種類
  6. 事業承継ファンドの選び方
  7. 事業承継ファンドとM&Aを検討する際のポイント
  8. 事業承継ファンドによるM&A事例
  9. 事業承継ファンドのまとめ

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事業承継ファンドとは

最近、中小企業を中心に事業承継問題が深刻化しています。事業承継を取り巻く問題は、中小企業の存続に深く関係しているといっても過言ではありません。特に後継者不在にまつわる問題については、経営者を最も悩ませています。

事業承継ファンドは、事業承継にまつわる問題を解決する糸口として注目が集まっているファンドです。もしも、事業承継にまつわる問題に直面しているならば、事業承継ファンドについて把握しておきましょう。

はじめに、事業承継ファンドの基礎知識を押さえるために、以下の4項目に分けました。

  1. 事業承継の一手法
  2. 事業承継ファンドの活用事例が増加した背景
  3. 事業承継ファンドの仕組み・スキーム
  4. 事業承継ファンドとM&Aの違い

これら4項目について押さえておけば、事業承継ファンドにまつわる基礎知識を把握できます。それでは、それぞれの項目について順番に見ていきましょう。

事業承継の一手法

事業承継ファンドとは、もともと公益機関である「独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)」が筆頭となり設立されたファンドです。とはいえ、現在では、民間企業により組成された事業承継ファンドも珍しくありません。

ファンドとは「投資事業有限責任組合」をさします。辞書では基金・資金などと記述されるケースが多いですが、金融業界におけるファンドとは一般に「投資のために集めた資金や運用を目的とする一定規模以上の資金」のことです。

事業承継ファンドの主な収益としては、株式売却時に得られる売却益が挙げられます。ここでは、中小機構の事業承継ファンドを例に挙げて、仕組みを簡単に把握しておきましょう。

例えば、中小機構により運営されている事業承継ファンドでは、民間のファンド(投資会社)にファンド総額の50%を投資して、事業承継問題で悩む中小企業に対してさまざまな経営支援を実施しています。

事業承継ファンドの活用事例が増加した背景

近年になり事業承継ファンドの活用事例が増加している背景には、多くの企業が頭を抱えている後継者不在の問題が深く関係しています。後継者不在とは、企業の後を継ぐ人材がいないことで生じる問題です。最近では、中小企業を中心に経営者の高齢化が進んでいます。

これに伴い、引退を目前に控えているにもかかわらず、後継者が見つからない経営者が増加中です。また、価値観の変化により「子供が親の会社を継ぐべき」という考え方がなじまなくなったという事情も、後継者不在問題の深刻化に拍車をかけています。

上記に加えて、もともと中小企業では、創立者である経営者がワンマン経営を行うケースが多く、結果的に後継者の選定や育成が進まないまま事業承継できない状態に陥るといったトラブルが多く見られます。

事業承継の道が途絶えると、経営者の引退後に会社を存続させることが非常に困難です。仮に経営者の後を継ぐ後継者がいないために適切な教育が済んでいない人材を経営者としたところで、安定した経営は望めません。

以上の理由から、経営が黒字であるにもかかわらず、後継者不在の状態に陥ったがために会社を廃業してしまうケースは珍しくありません。しかし、廃業を選んでしまえば、会社の持つ重要なノウハウや技術だけでなく、拠点とする地域の雇用・サービスまで喪失してしまいます。

国もこうした事情を重く捉えており、事業承継が困難になっている中小企業に向けて、さまざまな手助けを行っています。事業承継ファンドもこの取り組みの一環であり、事業承継が難しい状態の会社を救う手段として近年注目を集めている状況です。

事業承継ファンドの仕組み・スキーム

中小機構の事業承継ファンドが採用するスキームは、資産運用を行っている資金について企業に投資を行った上で、事業承継にまつわる支援を手掛けて企業の存続および企業価値の向上などを図るといった仕組みです。

これに対して、金融機関や民間企業が運営する事業承継ファンドが採用するスキームは、自社と関連性の強い中小企業を買収した上で、企業価値の向上を図るといった仕組みが主流です。

企業の存続および企業価値の向上を図る際は、新規事業の立ち上げ・人材育成・販路開拓など多種多様なサポートが行われます。

事業承継ファンドとM&Aの違い

事業承継ファンドとM&Aの間では、対象企業の株式を取得する主体が掲げる目的において大きな違いが見られます。事業承継ファンドの場合、株式を取得した対象企業の価値向上を目指すことが主な目的です。

これに対して、M&Aにおいて株式を取得する買い手企業は、対象企業の価値向上だけでなく、経営の多角化・人材の確保・技術やノウハウの獲得など多種多様な目的を掲げるケースが多く見られます。そのため、対象企業の文化や経営者の意向などが必ず引き継がれるとは限りません。

仮にM&Aにおいて対象企業と買い手企業の文化・理念・社風などに大きな差異が見られる場合、不満を抱えた従業員が離職するトラブルが生じかねません。M&Aでは、これまで有していた企業の強みを発揮できずに買い手企業に取り込まれるリスクがある点を把握しておく必要があります。

とはいえ、最近ではM&Aを用いて事業承継を行うケースも増えています。なぜなら、M&Aによる事業承継では、後継者候補となる企業を外部から幅広く探せるほか、相手企業との相性および交渉次第でまとまった創業者利益の獲得も狙えるためです。

事業承継ファンドの活用と合わせて、M&Aによる事業承継も視野に入れているなら、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。

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事業承継ファンドの活用方法

ここでは事業承継ファンドの活用方法として、以下の3つのシーンを挙げます。

  1. 後継者不足の解消による会社存続
  2. 事業資金の供給などによる経営支援
  3. 第三者承継における資金不足の解消

①後継者不足の解消による会社存続

1つ目の活用シーンは、会社存続の実現についてです。事業承継ファンドは、対象企業の株式を取得して、新たなオーナーとなります。これに伴い、会社内の人材育成や後継者にふさわしい人材の発見などが可能です。

したがって、事業承継ファンドに会社経営を任せると、会社を存続させていけます。なお、最近では会社の後継者を経営者の親族や内部の従業員ではなく、第三者に広く求めるケースも珍しくありません。

このときに事業承継ファンドの幅広いネットワークを利用できれば、会社にとって最適な人材に会社の経営を任せることが可能です。とはいえ、もちろん会社内に後継者候補がいる場合であっても、事業承継ファンドは有効活用できます。

なぜなら、事業承継ファンドの活用によって、後継者育成に必要な人材を派遣してもらえるためです。後継者の成長が促されて、経営者にふさわしい人材にブラッシュアップさせていけるメリットがあります。

②事業資金の供給などによる経営支援

事業承継ファンドは、会社の経営支援のためにも活用されます。なぜなら、事業承継ファンドは、経営に積極的に関与する中で手厚い支援を行うためです。会社に必要な事業資金の供給などにより、経営を手助けしています。これにより、会社が目標とする販路拡大などの実現につながるのです。

事業承継ファンドは、経営全般のみに留まらず、業務管理・財務経理・組織人事などバックオフィス業務を含めて中長期的視点から課題を抽出しつつ、課題解決に向けたアドバイスを提供しています。

事業承継ファンドに手助けしてもらうと、オーナーに依存するのではなく従業員ひとりひとりが自立して会社の成長に取り組めるような組織作りを実現可能です。

③第三者承継における資金不足の解消

事業承継ファンドは、第三者に事業承継する際の資金不足解消にも活用できます。第三者に事業承継する場合、株式譲渡の手法を採用するケースが一般的ですが、後継者側からすると株式取得のための資金不足の問題に直面するケースが少なくありません。

円滑な事業承継が妨げられますが、ここで事業承継ファンドを活用すれば問題を解決できます。なぜなら、事業承継ファンドは、対象企業の株式取得を請け負ってくれるためです。そのため、後継者となる第三者側からすると、株式を取得する必要がなくなります。

なお、このとき後継者となる経営者に対しては、ストックオプションを付与して保有株式数の調整を図るケースが多いです。ストックオプションとは、株式会社の従業員や取締役が自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利をさします。

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事業承継ファンドを活用するメリット

これまでに紹介した活用方法を踏まえて、事業承継ファンドのメリットを把握しておきましょう。事業承継ファンドの活用により得られるメリットは、事業承継の完遂に留まらず会社の成長にも恩恵をもたらすなど多種多様です。事業承継ファンドのメリットは、下記になります。

  1. 意図に沿った事業承継の実現
  2. 売却資金の獲得
  3. 経営者の負担軽減
  4. 会社の理念・文化・風土の維持

これら4つのメリットを押さえておけば、自社にとって事業承継ファンドがどれほどの利益をもたらすのか確認できます。それぞれのメリットを挙げましょう。

①意図に沿った事業承継の実現

事業承継ファンドがもたらす最大のメリットは、意図に沿った事業承継が実現しやすい点です。事業承継ファンドは、事業承継にまつわるノウハウを活用しつつ、後継者の選定・育成に大きく貢献してくれます。対象企業にふさわしい人材を後継者に据えることが可能です。

もちろん後継者を育成する上で対象企業のコンセプトや特徴を根付かせてくれるため、経営者の意図に沿った事業承継が実現できるでしょう。

事業承継ファンドは、必要に応じて外部からも後継者にふさわしい人材を見つけ出すことが可能です。これは事業承継ファンドが持つ幅広いネットワークのたまものであり、経営者の意図に沿った事業承継を実現するために必要不可欠なプロセスだといえます。

②売却資金の獲得

事業承継ファンドを活用する場合、経営者による株式譲渡が実施されます。これに伴い、経営者は株式の売却利益を得ることが可能です。これは、新規事業の立ち上げ資金の確保や悠々自適な生活の実現を願う経営者にとって大きなメリットだといえます。

なお、事業承継ファンドを活用すれば売却後も事業をサポートしてくれますが、M&Aを用いた株式譲渡と比べて契約までの時間・手間などを省略可能です。

③経営者の負担軽減

事業承継ファンドは、経営者に代わってオーナーとなる形式を採用しており、結果的に経営者の負担軽減にもつながります。もともと経営者は、事業承継問題に留まらず銀行から借り入れた債務など、経営上のさまざまな不安要素を抱えているケースが多く見られます。

経営者からすると、会社の存続をかけた事業承継のみでも大きな負担ですが、万が一事業承継に失敗したときの債務処理の方法も検討しておかなければならず、不安ばかりを感じて多大な精神的負担がかかるケースも珍しくありません。

ところが、事業承継ファンドは、事業承継のみならず対象企業における経営上のパートナーとして力を貸してくれる存在です。経営者の負担を大きく軽減させられます。

特に中小企業では多くの負担が経営者にかかってしまいがちですが、事業承継ファンドは心強いパートナーとして経営の課題に向き合う力を貸してくれます。

④会社の理念・文化・風土の維持

事業承継ファンドは、会社の理念・文化・風土を維持しながら、経営支援や事業承継支援を実施してくれます。ここでは具体例として、事業承継を解決する手段として最近注目されているM&Aと比較しました。

M&Aを用いれば確かにスムーズな事業承継を狙える可能性がありますが、仮に成功してもM&Aでは相手会社の理念・文化・風土が合わずに従業員が流出する可能性が少なくありません。

従業員同士のトラブル発生や相手会社の持ち味を生かせないといったリスクも懸念されます。その一方で事業承継ファンドは、対象企業の理念・文化・風土に留まらず、経営者の意向を十分に踏まえたうえで事業承継支援や経営支援に取り組むよう心がけています。これにより、会社の理念・文化・風土を維持できる可能性が高いです。

これは、事業承継後も愛着のある会社をできるだけ変えずに存続させたい経営者にとって大きなメリットとなります。加えて、オーナーの変更に伴い従業員に与える悪影響を最小限に抑えられる点もメリットです。

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事業承継ファンドのデメリット

事業承継ファンドにあるデメリットは、相性によって結果が大きく左右される点です。基本的に事業承継ファンドは対象企業の特性を十分に把握した上で仕事に取り組みますが、活用するファンドによってはノウハウが異なる場合も見られます。

もしも対象企業と事業承継ファンドの相性が悪いと、ノウハウが十分に発揮されずに歩調を揃えられなくなってしまうケースも少なくありません。ファンドのノウハウについても、どれだけ経験値や実績を積んでいるかによってクオリティは異なります。

経験値や実績が不足しているファンドであれば、前述したメリットが十分に得られない可能性もあるのです。これらの理由から、事業承継ファンドを選ぶ際は、以下の観点を中心に検討しましょう。

  • 投資実績
  • Exit(投資後の経営交代)の実績
  • 事業承継ファンドへの出資者
  • 投資方針/理念
  • 企業価値の向上に重きを置いているか
  • 自社との相性

なお、事業承継ファンドをはじめとするファンドは、対象企業の株式取得にあたり「レバレッジ」という仕組みを活用しています。レバレッジとは投資会社のキャッシュフローを担保に借入を行う手法です。

上記は対象企業の財務・事業に多大な影響を与えない範囲内での借入を実施する一方で、対象企業のキャッシュフローから返済を行う仕組みを取るため、事業承継ファンドを活用する際はこの点も把握しておきましょう。

【関連】M&Aのデメリットとは?買い手・売り手別のデメリットや海外M&Aについても解説

事業承継ファンドの種類

ここでは、公的機関および全国的に大きな規模を持つ大手の事業承継ファンドとして、以下の4つを挙げます。

  1. 中小機構の事業承継ファンド
  2. 日本投資ファンド
  3. SBI地域事業承継ファンド
  4. PE(プライベートエクイティ)ファンド

これら4種類の特徴を押さえておけば、自社にふさわしい事業承継ファンド探しに役立ちます。それでは、それぞれの事業承継ファンドを順番に見ていきましょう。

①中小機構の事業承継ファンド

1つ目は、中小機構の事業承継ファンドです。「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」により運営されており、民間のファンドと比較して公共的視点での経営支援に強みがあります。

中小機構の事業承継ファンドは、中小機構がファンド組成額の50%を出費しており、残りを金融機関が出費するという手法が採用しています。

②日本投資ファンド

日本投資ファンドは、日本M&Aセンターと日本政策投資銀行が折半で出資して設立したファンドです。政府系金融機関が出資に関わっており、中小機構の事業承継ファンドと同様に公的なニュアンスが強いファンドだといえます。

日本投資ファンドに出資する日本M&Aセンターはさまざまな事業承継・投資を手掛けた実績を持っているため、ノウハウやネットワークに信頼が置けます。豊富な実績・ノウハウや広大なネットワークを生かして柔軟に手助けしてくれるため、頼りになるパートナーとなるはずです。

③SBI地域事業承継ファンド

SBI地域事業承継ファンドは、SBIホールディングスの子会社である「SBI地域事業承継投資」によって設立されました。2019年10月に設立された、比較的新しい事業承継ファンドの一つです。

SBIグループではファンド設立前からSBI証券内に地方事業承継室を設けるなど事業承継サービスを展開してきており、事業承継サービスを一層強化する目的で事業承継ファンドを設立しています。

SBI地域事業承継ファンドが対象に据えるのは中堅・中小規模の事業承継案件がメインですが、小規模案件にも注力する方針です。企業の事業承継を実現し企業を存続させることで、地域の活性化を目指しています。

④PE(プライベートエクイティ)ファンド

PE(プライベートエクイティ)ファンドは、機関投資家・個人投資家から集めた資金をもとに、対象企業の未公開株を取得した上で対象企業の経営に関わり企業価値を高めた後に売却して収益獲得を図るファンドのことです。

その中でも事業承継ファンドとしてPEファンドを運営する会社の一例としては、日本プライベートエクイティが挙げられます。日本プライベートエクイティは、資金運用のために国内の金融機関が拠出した資金を用いて投資活動を行うという仕組みを採用する会社です。

日本プライベートエクイティが運営するPEファンドの大きな特徴としては従業員の自立を促す点が挙げられ、オーナー経営から組織経営に移行するサポートを得意としています。経営者からすると、引退後も望ましい形で事業を存続してもらえる点が大きなメリットです。

日本プライベートエクイティのPEファンドは過去にさまざまな企業に投資を行い事業承継を成功させてきた実績を持っていますが、ここでは一例として木村電気工業のケースを紹介します。木村電気工業(1975年設立)は、高周波同軸コネクタの製造・販売を手掛ける会社です。

この木村電気工業に対して、PEファンドは事業承継問題の解決(創業経営者の引退)および成長戦略の実行支援を目的に投資を行っています。その結果、木村電気工業は存続に成功し、現在はEXITされて新たなオーナーにバトンタッチされている状況です。

【関連】プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)とは?種類とメリット・デメリット

事業承継ファンドの選び方

ここでは、事業承継ファンドの選び方の順序を見ていきます。

  1. 事業承継ファンドへの問い合わせる
  2. 過去の事例から類似するケースを抽出し分析する
  3. 長期的視点から事業存続/育成の姿勢をチェックする
  4. 担当スタッフの人柄/相性を吟味する

実際に問い合わせる際は、事前に情報の整理を行っておくと良いです。会社の基本情報や相談内容をまとめておくと、事業承継ファンドにスムーズな対応を取ってもらえます。

合わせて、過去の支援事例から自社と類似するケースを見つけて分析を行うことも大切です。事業承継ファンドのサポートは企業規模・業種などにより大きく異なるため、類似事例で実施された支援内容は参考資料です。

とはいえ、たとえ類似事例を取り扱っていても、短期的視点で利益を求める事業承継ファンドでは、自社の存続および成長の可能性は十分に期待できません。そのため、長期的視点で事業の存続や会社の成長を考える姿勢を持っているかどうかをチェックしましょう。

最後に、事業承継ファンド選びでは、担当スタッフの人間性も大きな判断要素です。相談時に違和感があれば、担当者や事業承継ファンドの変更も検討しましょう。

ここからは、事業承継ファンドを選ぶ際に特に大切な留意点を3つ詳しく解説します。

事業承継ファンドの特徴を理解する

事業承継ファンドは、対象とする企業の規模や支援内容が異なります。

短期的に利益を最大化することを目指すファンドもあれば、長期的に企業価値を向上させるためにサポートするファンドもあります。それぞれのファンドの特徴を理解し、自社に適しているかどうかを検討しましょう。

担当者との相性を見極める

担当者の人柄も重要です。情熱があるか、自社を理解しているか、信頼できるか、経験が豊富かどうかなどの観点から、担当者を選びましょう。

専門家のアドバイス・サポートを受ける

信頼できる専門家の意見も参考にしましょう。事業承継のサポートを行う専門家や、長年の付き合いのある税理士や公認会計士など、さまざまな専門家のアドバイスを考慮して選択することが重要です。

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事業承継ファンドとM&Aを検討する際のポイント

事業承継ファンドとM&Aを比較検討する場合、どちらが会社にとって最適な手段なのか考える必要があります。事業承継を解決する上で、事業承継ファンドとM&Aはいずれも効果的な手段です。しかし、事業承継ファンドとM&Aでは手法が大きく異なっているのです。

事業承継ファンドは「ファンドと2人3脚で会社を存続させて会社の成長を目指す」手法であるのに対して、M&Aは「会社を他社に託して存続を図り、他社のノウハウを借りて会社を成長させる」手法です。このように、2つの手法には大きな相違点があります。

とはいえ、事業承継ファンドもM&Aも、いずれの手法が優れていると一概に判断できません。したがって、最適な手法を検討するには、会社の内情に合っているかどうかという基準で判断する必要があるのです。

例えば、「ある程度は自助努力で存続・成長可能と判断できる余地がある」場合には事業承継ファンドを選び、「単純な経営支援では会社の存続・成長が難しいと判断される」場合にはM&Aを選ぶといった要領です。このような視点で、会社の存続・成長を達成できるか検討すると良いでしょう。

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事業承継ファンドによるM&A事例

近年における事業承継ファンドによるM&A事例をご紹介します。

33事業承継ファンドによる須藤の株式引き受け

2021年6月28日、三十三フィナンシャルグループの傘下である三十三銀行(三重県四日市市)は、名南経営キャピタル(愛知県名古屋市)と連携し、地域の中堅・中小企業の事業承継を支援するために「三十三事業承継1号投資事業有限責任組合(33事業承継ファンド)」を設立しました。

その第1号案件として、三重県四日市市の須藤株式会社の株式を取得し、事業承継にかかる株式買取資金の一部を支援しました。

三十三フィナンシャルグループは、銀行および関連会社の管理運営に関わる業務を行い、三十三銀行は預金、貸出、有価証券の売買・投資、為替などの業務を提供しています。一方、須藤株式会社は、鋼材や配管資材、建設資材などの卸売を行っています。

三十三銀行は、事業承継に課題を抱える顧客に向けて、適切なソリューションと資金面での支援を通じ、取引先企業の成長や雇用の創出、地域経済の活性化に寄与することを目指しています。

「三十三事業承継1号投資事業有限責任組合」の組成及び 第1号案件の投資実行について

日本プライベートエクイティによるクニ・ケミカルの全株式譲渡

2022年9月8日、日本プライベートエクイティ(JPE、東京都千代田区)は、クニ・ケミカル(大阪市)の全株式を、オランダ・ロッテルダムに本社を置くIMCD N.V.の日本法人であるIMCDジャパン(東京都新宿区)に譲渡しました。

JPEは、中小企業の事業承継や再編を支援するファンド運営とコンサルティングを手がけています。クニ・ケミカルは、FRP資材や防水資材などの化成品を扱う専門商社です。

IMCDは、特殊化学品、添加剤、医薬品、食品添加物、パーソナルケア原料などの販売・物流サービスを提供するグローバル企業です。

JPEはクニ・ケミカルの創業オーナーの事業承継を支援するため、事業承継ファンドを通じて全株式を取得し、企業の基盤強化を進めてきました。今回、IMCDグループへの参加により、クニ・ケミカルがグローバル展開の中でさらに成長できると判断し、譲渡に至りました。

株式会社クニ・ケミカル IMCDへのグループインを実現

事業承継ファンドのまとめ

事業承継ファンドとは、後継者不在問題を抱えた会社の事業承継を手助けするファンドです。単純な事業承継のみに留まらず、経営支援という観点からもサポートが期待できます。

かつて投資ファンドは「ハゲタカ」とやゆされるようにネガティブなイメージを持っていましたが、昨今は純粋に中小企業を手助けしてくれるファンドが増加しています。事業承継ファンドは、まさにこの最たる例です。

最近では民間のファンドでも事業承継ファンドとして大いに活用できる会社が増加しており、今後もさまざまな会社の事業承継シーンにおいて事業承継ファンドが活躍すると予想されています。本記事の要点をまとめると、以下のとおりです。

・事業承継ファンドの活用方法
→後継者不足の解消による会社存続、事業資金の供給などによる経営支援、第三者承継における資金不足の解消

・事業承継ファンドを活用するメリット
→意図に沿った事業承継の実現、売却資金の獲得、経営者の負担軽減、会社の理念・文化・風土の維持

・事業承継ファンドのデメリット
→相性によって結果が大きく左右される、経験値や実績が不足しているファンドであればメリットが十分に得られない

・事業承継ファンドの種類
→中小機構の事業承継ファンド、日本投資ファンド、SBI地域事業承継ファンド、PE(プライベートエクイティ)ファンド

・事業承継ファンドの選び方
→事業承継ファンドへの問い合わせる、過去の事例から類似するケースを抽出し分析する、長期的視点から事業存続/育成の姿勢をチェックする、担当スタッフの人柄/相性を吟味する

・事業承継ファンドとM&Aを検討する際のポイント
→どちらが会社にとって最適な手段なのか考える(会社の内情に合っているかどうかという基準で判断する)

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