2022年6月6日更新会社・事業を売る

株式非公開化とは?メリット・デメリットや非公開化の事例、意味を解説

株式非公開化とは、公開されている自社株式を非公開にする行為です。上場企業が株式非公開化を実施すると、上場が廃止されます。株式非公開化には意思決定の迅速化・会社運営の円滑化などのメリットがありますが、その一方でデメリットも多いため事前に把握しておくと良いです。

目次
  1. 株式非公開化とは
  2. 株式非公開化のメリット・デメリット
  3. 株式非公開化の手法
  4. 株式非公開化の事例
  5. 株式非公開化を成功させるポイント
  6. まとめ

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株式非公開化とは

株式非公開化(別名:ゴーイングプライベート・プライベタイゼーション)とは、公開されている自社株式を非公開にして上場を廃止する行為のことです。そもそも株式を公開する上場企業では、一般の投資家から広く出資を募れるため、安定的な資金調達を実現できます。

上場には社会的な信用性の向上効果も期待されており、「上場している」事実に魅力的なステータスを感じる企業は少なくありません。その一方で、上場は企業の障壁となるケースも多いです。

基本的に上場企業では、投資家である株主の権利・利益の保護を優先しなければなりません。近年は株主の権利・利益を保護する傾向が顕著であり、海外の投資家を中心に経営状態の改善・利益配当などを求める声が目立っています。

企業にとって株主は大切な存在ですが、外部から細かく要求されると企業運営に支障が発生しかねません。最近では投資家の短期志向も強まっており、長期的視点による経営改革の実施が困難となっています。

こうした状況を打開すべく、株式非公開化は実施されるのです。株式非公開化を実施すれば、企業は経営権の完全な掌握を目指せます。少数株主を排除できるため、会社運営・意思決定の迅速化などを実現可能です。

株式非公開化とM&A

株式非公開化を行う企業の中には、経営改革の一環としてM&Aを実施する企業も少なくありません。株式非公開化が実現すれば、株主から反対を受けることなくM&Aを実施できます。

株式非公開化を前提とするM&A実施をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では経験豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

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株式非公開化のメリット・デメリット

ここでは、株式非公開化のメリット・デメリットについて順番に紹介します。

株式非公開化のメリット

株式非公開化のメリットは、以下のとおりです。

  • 会社運営・意思決定の迅速化を図れる
  • 事務作業の効率化を図れる
  • 買収防衛策を講じられる

それぞれの項目を順番に見ていきます。

会社運営・意思決定の迅速化を図れる

会社運営・意思決定の迅速化は、株式非公開化によって期待できる最大のメリットです。株式非公開化により上場を廃止すれば、少数株主を排除できます。つまり、企業の意思決定に関する障壁を排除可能です。

経営改革実施時に株主から阻止されたり、経営状況の悪化で株主から非難を受けたりする事態を回避できるため、会社運営・意思決定をスムーズかつスピーディーに実施できます。それに加えて、株主総会の開催時期を短縮化できるうえに、取締役の任期を10年まで延長可能です。

上場企業に生じる多くの制約から解放されるため、自由な経営の実現を目指せます。

事務作業の効率化を図れる

事務作業の効率化も、株式非公開化で得られる恩恵の1つです。もともと上場企業では、財務状況などを逐一公開したり、金融商品取引法で定められた時期に決算を実施したりするなど、必要な事務作業が増加します。

いずれも株主保護のために必要な手続きではありますが、こうした事務作業にかける時間・費用などは企業にとって大きな負担です。株式非公開化を実施すると上場企業に求められる手続きが不要となるため、自社の事務作業を効率化できます。

買収防衛策を講じられる

株式非公開化は、買収防衛策にもつながります。そもそも上場企業は、敵対的買収を仕掛けられるリスクを常に背負っているのです。上場企業の株式は誰でも取得が可能であり、敵対的買収を検討する企業からターゲットにされる可能性が高まります。

上記を踏まえると、株式非公開化は効果的な買収防衛策の1つであるといえます。株式が公開されている企業は敵対的買収のターゲットにされやすい一方で、非公開会社への敵対的買収を成功させるのは非常に困難です。

株式非公開により株式を100%取得して完全に経営権を掌握すれば、経営権が分裂するリスクを軽減できるうえに、企業の経営権をより一層安定化させられます。敵対的買収の件数自体は少ないですが、経営権の維持を目的とする株式非公開化は有効策です。

株式非公開化のデメリット

株式非公開化のデメリットは、以下のとおりです。

  • 資金調達の手段が制限される
  • 既存株主に対する利益相反が発生する

それぞれの項目を順番に見ていきます。

資金調達の手段が制限される

株式非公開化を実施すると、資金調達の手段が制限されやすいです。上場企業では一般の投資家から出資を募れるため、資金調達しやすい傾向にあります。その一方で、株式非公開化を実施すると、当然ながら一般の投資家から出資を得られなくなってしまうのです。

株式非公開化は、あらかじめ資金調達の手段を十分に確立させたうえで実施することをおすすめします。

既存株主に対する利益相反が発生する

株式非公開化を実施すると、既存株主に対して利益相反が発生するおそれがあります。株式非公開化は株式の流動性を損なわせる行為であり、株式公開の状況から変化させるために既存株主が損失を被る可能性があるためです。

仮に既存株主を維持したまま株式非公開化を実施する場合には、株式非公開化を実施する理由・手法などを株主に説明したうえで、理解を取り付ける必要があります。そして株式非公開化後も、既存株主の利益を損なわないよう配慮しなければなりません。

このように既存株主を残した状態での株式非公開化では既存株主への配慮が必要となることから、想定したメリットが十分に得られない可能性もあるため注意が必要です。

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株式非公開化の手法

株式非公開化の代表的な手法は、以下のとおりです。

  1. LBO
  2. MBO
それぞれの手法について詳しく見ていきます。

①LBO

LBO(Leveraged Buyout)は、日本語に訳すとレバレッジド・バイアウトとなり、買収対象となる企業・事業の資産やキャッシュフローなどを担保にしつつ、金融機関から資金調達したうえで買収する手法です。

株価が割安であるほか、現金など換金性の高い資産を持つ企業を株式非公開化する場合、多くのケースでLBOが採用されます。金融機関からの借入金は買収企業の負債として計上できるため、事業改善などを実施して増加させたキャッシュフローから返済していくのが基本的です。

②MBO

MBO(Management Buy Out)は、日本語に訳すとマネジメント・バイアウトとなり、既存の経営陣が企業・事業を買収する手法です。株式非公開化をはじめ、オーナー企業の事業承継などにも広く活用されています。

MBOでは、事業継続を前提とする経営者が、オーナー・親会社などから株式を買い取って経営権の取得を目指すのが一般的です。オーナー・親会社からの束縛から解放されることで機動的な経営が実現できるほか、経営者自身が株主となるために成長へのインセンティブが強まります。

MBOを実施する場合、利益相反に対してより一層の注意が必要です。経営陣は株主が持つ権利・利益の保護を最優先する必要がある一方で、多くのケースで少しでも安い価格での株式取得を目指します。

本来株主が得るべき利益が経営陣に渡ってしまうおそれがあるため、企業価値を高める目的で株式非公開化を実施する旨を株主に理解してもらうことが大切です。

スクイーズアウトを活用したMBO

株式非公開化の実施時には、スクイーズアウトを活用したMBOが実施されるケースも多いです。具体的なプロセスを説明すると、はじめにTOBで株式非公開化の対象となる企業の株式を3分の2以上取得します。

その後、TOBに応募しなかった少数株主の株式を全部取得条項付種類株式に変更するほか、組織再編を実施することで、株式の全取得を目指すのが一般的です。スクイーズアウトを活用すると買収が2段階に分かれるため、2段階買収とも呼ばれています。

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株式非公開化の事例

ここでは、株式非公開化の有名事例を時系列順に紹介します。

  1. ヤギコーポレーションによる株式非公開化
  2. キューサイによる株式非公開化
  3. 東芝セラミックスによる株式非公開化
  4. レックス・HDによる株式非公開化
  5. テスラによる株式非公開化(未実施)
それぞれの事例を順番に見ていきます。

①ヤギコーポレーションによる株式非公開化

2006年7月、ユニフォーム製造の大手であるヤギコーポレーションは、MBO(公開買付け)による株式非公開化を実施すると発表しました。買収価格の総額は約52億円であり、1株あたりの買付け価格は659円です。

株式非公開化の理由は、短期的な業績・株主の思惑などに左右されることなく会社を抜本的に経営改革するためと発表しています。上場企業では、長期的な経営改革は比較的困難です。本事例は、長期的な経営改革を目指し株式非公開化を実施した典型例であるといえます。

②キューサイによる株式非公開化

2006年10月、青汁などの健康食品を販売するキューサイは、MBO(公開買付け)による株式非公開化を実施すると発表しました。買収価格の総額は422億4,600万円であり、1株あたりの買付け価格は1,920円です。

キューサイは株式非公開化の理由を意志決定の迅速化を図るためと発表しており、株式非公開化の代表的なメリットの獲得を目指した典型例といえます。

③東芝セラミックスによる株式非公開化

2006年10月、半導体ウエハ大手の東芝セラミックスは、MBO(公開買付け)による株式非公開化を実施すると発表しました。買収価格の総額は608億6,700万円であり、1株あたりの買付け価格は600円です。

東芝セラミックスは株式非公開化の理由を、東芝グループから独立して経営の自由度を高めつつ事業拡大を目指すためと発表しています。

④レックス・HDによる株式非公開化

2007年、牛角などの飲食チェーンを抱えるレックス・HDは、MBOによる株式非公開化を実施しました。株式非公開化の理由は経営再建にあり、経営の立て直しに集中するため株式非公開化に踏み切ったのです。

当時のレックス・HDでは決算短信で度重なるミスが起こるなどバックオフィス業務の肥大化によるトラブルも目立っていたことから、事務作業の効率化も兼ねた株式非公開化であったと推測されています。

ところが、レックス・HDが株式非公開化のために実施したスクイーズアウトは、株価が不当に安く設定されていたとして一部の株主から反発されました。問題となったスクイーズアウト時の公開買付け価格は、1株あたり23万円です。

訴訟にまで発展した本事例は、株式非公開化のためのMBOで株主の利益相反を生み出してしまった典型例だといえます。

⑤テスラによる株式非公開化(未実施)

電気自動車やソーラーパネルなどの製造・販売を手掛けるテスラ(アメリカ)の事例は、厳密にいうと株式非公開化が実施されなかった事例です。2018年、テスラ会長のイーロン・マスクは株式非公開化を実施するとSNS上で宣言しましたが、その2週間後に発言を撤回しています。

上記の行動によって株価を乱高下させたとして、アメリカの証券取引委員会から2,000万ドルの罰金を課せられたイーロン・マスクは、テスラの会長職を辞任しました。そもそもイーロン・マスクは、負債が膨れ上がったテスラを立て直すために株式非公開化を進めていたとされています。

ただし、テスラの株式非公開化に向けて実際に行動していたかどうかを裏付ける証拠はなく、現在も株価操作の一環であったという嫌疑を払拭できていません。なお、株主から猛反対されていたため、仮に株式非公開化を進めていたとしても頓挫していたことが推測されます。

株式非公開化に関する軽率な発言は、非難を受けるだけでなく株価に深刻な影響を与えることを示す事例です。

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株式非公開化を成功させるポイント

株式非公開化は、経営再建・長期的な経営改革への集中などさまざまな経営戦略を実現するうえで効果的な施策です。とはいえ、いかなる目的であっても、上場企業特有のデメリットを断ち切る点では共通しています。

ただし、既存株主に対する利益相反が深刻なケースでは、株式非公開化に失敗しやすいです。株式非公開化を成功させるには、既存株主に利益を損なわせず、かつ株式非公開化に対する理解を取り付ける必要があります。

もしも経営陣と既存株主の間でトラブルが発生すれば、企業の心証・ブランドイメージが低下しかねません。株式非公開化の公表は株価に大きな影響を与えるケースもあるため、株主や市場に影響を与える戦略であることを十分に熟知したうえで慎重に検討すると良いです。

株式非公開化では利益相反が発生しやすいため、利益相反の回避方法について慎重な検討が求められます。

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まとめ

株式非公開化には、意思決定の迅速化・会社運営の円滑化などのメリットがあります。ただし、方法を誤ると既存株主に不利益を発生させてしまい、株主との間に対立を招きかねません。株式非公開化では利益相反が発生しやすいため、利益相反の回避方法について慎重な検討が求められます。

要点をまとめると、以下のとおりです。

・株式非公開化とは
→公開されている自社株式を非公開にして上場を廃止する行為

・株式非公開化のメリット
→会社運営や意思決定の迅速化を図れる、事務作業の効率化を図れる、買収防衛策を講じられる

・株式非公開のデメリット
→資金調達の手段が制限される、既存株主に対する利益相反が発生する

・株式非公開化の手法
→LBO、MBO

・株式非公開化を実施した企業
→ヤギコーポレーション、キューサイ、東芝セラミックス、レックス・HD

・株式非公開化を成功させるポイント
→既存株主に利益を損なわせず株式非公開化に対する理解を取り付ける、株主や市場に影響を与える戦略であることを十分に熟知したうえで慎重に検討する

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