2022年5月11日更新事業承継

事業承継税制による相続税の負担軽減方法を徹底解説

相続の形で事業承継を実施する際は、相続税の負担と生前の遺言書が必要なので事前に準備しなければなりません。事業承継税制を活用すれば、相続税の納税猶予を受けられます。当記事では、事業承継時に利用したい事業承継税制をわかりやすく解説します。

目次
  1. 相続と事業承継に関する基礎知識
  2. 事業承継を相続でする前に確認しておくポイント
  3. 事業承継税制とは
  4. 事業承継税制で相続税・贈与税の負担をなくすための要件
  5. 事業承継税制を利用するメリットとデメリット
  6. 事業承継税制による相続税の負担軽減方法まとめ
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相続と事業承継に関する基礎知識

相続と事業承継に関する基礎知識を以下3つのポイントに分けて見ていきましょう。

  1. 相続とは
  2. 事業承継とは
  3. 相続を利用した事業承継
失敗しないためにもまずは再確認することが大切です。

相続とは

相続とは、亡くなった人の財産を引き継ぐ行為をさします。財産とは、お金はもちろん家などの資産、権利義務などが対象です。事業承継では会社自体や株式会社の株式、経営者としての権利なども相続の対象となります。

基本的には、死亡した人の配偶者や子息や子女などの子供が相続人です。相続において、死亡して財産を後継者へと相続させる人を「被相続人」と呼びます。一方、配偶者や子供など財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。

相続とは、単純に死亡者の持ち物を相続人に渡す行為ではありません。被相続人がこれまでの人生で積み上げてきたものを受け継いで、次の世代へとつなぐ情緒的な意味も含まれています。そのため、相続は家族にとって非常に重要な行為です。

また、お金が絡む問題なので、トラブルが絶えないのも事実です。相続は、「争続」と書かれることもあり、相続をきっかけに親族の関係が一気に悪くなることも珍しくありません。

資産を引き継ぐだけなら相続人は喜んで引き継ぎます。一方、借金などの負債もマイナスの財産として引き継がれます。多額な財産が残されていた場合、相続人をめぐるトラブルも起こりがちです。

そのため、相続の方法を用いて事業承継を行いたい場合は、事前に親族へ遺産の分け方を伝え、遺言書を作るのが良いでしょう。

事業承継とは

事業承継とは、会社を現在における経営者以外の人や会社に承継する行為です。誰にどのように事業承継を実施するかは経営者の自由となります。しかし、後継者の承諾がなければ実行できません。

現在における代表者の子息や子女、親戚に事業承継する親族内承継と、会社の従業員に事業承継する従業員承継、M&Aを利用した事業承継の3種類が主な事業承継の方法です。

相続に限定して事業承継すると、現代表が死亡してからの引き継ぎとなります。したがって、一般的には親族内承継が用いられるのです。

事業承継は、単に経営権や会社の資産を引き継げば完了ではありません。経営者の知識やノウハウもしっかり後継者に引き継ぐ必要があります。したがって、相続で事業承継しようと考えている場合も、早めに後継者を決めて教育を進めるのが良いでしょう。

相続を利用した事業承継

相続を利用して事業承継を実施する際、遺産相続の形で後継者に株式を移転します。事業承継の際、移転する株式に対価を支払う必要があるケースもあるので気をつけなければなりません。相続を用いた事業承継では、株式の移転に対する対価は不要です。

しかし、相続は、原則代表者が死亡した後に実施されます。つまり、どのタイミングで事業承継できるかは明確でありません。

また、相続では遺言書が重要です。代表者が生前書き残した遺言書に沿って、事業承継を実施します。遺言書がなければ、相続人の間で意見が分かれてしまい、トラブル発生の原因となるので準備が必要です。

相続による事業承継で忘れてはならないのが、税金の問題といえます。相続では株式移転の対価は必要ありませんが、その代わりに相続にかかる税金の納税が必須です。

相続の形で事業承継する場合は、相続税の負担と、生前の遺言書が要ります。資金と遺言書がなければ、相続を活用した事業承継はスムーズに実行できません。そのため、事前に後継者を決めて遺言書を残し、相続税の納税資金をどのようにするか考える必要があります。

事業承継を相続でする前に確認しておくポイント

事業承継を相続で実施する際は、以下の点に注意しましょう。

  1. 継ぐもの
  2. 継ぐ人
  3. 相続税
それぞれの事柄を、順番に確認します。

継ぐもの

まず考えるべきなのが、事業承継による相続で何を引き継ぐのかです。前提として、会社や株式などの財産を相続するとします。しかし、財産はこれでだけではなく、預貯金や負債なども引き継ぐ必要があるのです。

遺言書に負債や預貯金など他の資産に関する受け取りについて明記してある場合は、それに従います。

事前に相続人たちに納得してもらったうえで、誰に何をどれだけ引き継ぐのか遺言書に残しましょう。相続を実施する前は、何を継ぐのかを明確にすることから始めてください。

継ぐ人

何を引き継ぐのかを決めたら、次は誰に引き継ぐのかを明確にしなければなりません。事業承継は口約束では効力が低いので、ここでも遺言状などでの指定が不可欠です。

一般的に相続で事業承継する際は、事前に後継者を決定することが必要です。そうしなければ、現代表が亡くなって突然決まった後継者が会社を引き継ぐ事態となります。そうなると、事業承継が成功する確率は一気に低くなるでしょう。

相続を用いて事業承継を実施する場合は、事前に後継者を決定し、周囲へ伝えてください。できるだけ相続が発生するまでの期間で後継者教育を行うのが良いといえます。

相続税

最後に考えるべきなのが、相続税です。相続には相続税が必要で、それを支払えなければ生活が苦しくなります。ましてや会社の経営はもってのほかです。

相続では、被相続人の財産が得られるので一見経営が安定しそうに見えます。しかし、相続税が高額である場合は、せっかく相続した資産がなくなる可能性も高いです。

特に近年、相続税の基礎控除が引き下げられたこともあり、相続税の負担が増加しています。例えば、会社が好立地な中枢都市にあるケースでは、不動産が高評価となり相続税が増額する恐れもあるのです。

特に、中小企業の事業承継を相続で実施すると、相続する財産に対して相続税が大きく超えてしまうケースが珍しくありません。経営者のほとんどが会社以外に財産を持っていないからです。そのため、土地を売らざるを得ないケースも出てきます。

相続税をどのように抑えるのか考える必要があるのです。

早い段階から相談する方がお得

事業承継の際は、相続税の知識はもちろん、いかに相続税を抑えて事業承継できるかがポイントです。上記のとおり、事業承継を相続で実行する際は、相続人間での話し合いや、相続に対する知識が求められます。特に会社を引き継ぐ後継者には、多額の資金が必要です。

事業承継をしてから納税資金が足りなくて慌てないよう、相続税を抑えるポイントを確認しましょう。相続税についてわからない点がある場合は、詳しい専門家に早い段階から相談すると節税対策のアドバイスを受けられます。

【関連】事業承継ガイドラインとは?活用方法や中小企業庁が策定した背景を解説| M&A・事業承継の理解を深める

事業承継税制とは

相続を事業承継で行うなら、事業承継税制が利用できるかどうかを確認しておくようにしましょう。非上場の会社に限定されますが、相続税対策として事業承継税制を利用する方法があります。

事業承継税制とは、特定の条件を満たせば、株式移転にかかる相続税を猶予できる制度です。特に、中小企業は、高額な相続税のために経営が不安定になるケースが珍しくないため、事業承継税制は非常に役立ちます。

相続税の猶予が認められれば経営が安定してから相続税を支払うことができ、さらに特定の条件を満たして経営を続けると猶予期間が継続されて事実上免除になる場合もあるので、事業承継を相続で実施する際は積極的に活用したい制度です。

相続税・贈与税の負担がなくなる仕組み

相続税・贈与税の負担がなくなる仕組みは、相続税と贈与税の場合で条件が異なります。相続税は、前任の経営者が亡くなり後継者が自社株式を相続した場合、特例事業承継税制が適用されれば相続税は納税猶予となりますが、このタイミングでは免除となるわけではありません。

税負担がゼロ、つまり納税が実際に免除されるのは、後継者が亡くなったとき、あるいは次後継者へ特例事業承継税制を使い贈与したケースです。

次は、贈与税の負担がなくなる仕組みをみていきましょう。前任の経営者が後継者へ自社株式を贈与した場合、特例事業承継税制を活用すれば贈与税は納税猶予となりますが、このタイミングでは免除となるわけではありません。

納税が免除となるタイミングは、前任の経営者が亡くなった場合、あるいは次の後継者に特例事業承継税制を活用して株式贈与を行った場合です。

ただし、特例で得た自社株式は相続で得たことになるので、贈与時の評価額でほかの相続財産と合わせて相続税課税の対象となります。

一般事業承継税制と特例事業承継税制の相違点

一般事業承継税制は2009年から継続している制度ですが、特例事業承継税制は2018年4月から取り入れられたものです。ここでは、2つの制度にはどのような違いがあるのかをみていきましょう。

①特例承継計画の提出

特例事業承継税制の適用を受けたい場合は、特例承継計画を出さなければなりません。特例承継計画を提出してすぐに贈与しなければならないわけではないので、贈与の計画が近々ないケースでも特例承継計画を出しておくのもよいでしょう。

②先代経営者からの相続・贈与の期間

先代経営者からの相続・贈与の期間にも違いがあります。特例事業承継税制は、特例承継計画を出して、2027年12月31日までに相続・贈与を行わなければ適用が受けられません。期限を逃すと、一般事業承継税制が適用されます。

③対象株式

一般事業承継税制では、発行済議決権株式総数における3分の2の株式が限度です。しかし、特例事業承継税制は、全株式が対象となる点も相違点となります。

④相続時の猶予対象評価額

特例事業承継制の猶予は、対象株式の100%です。しかし、一般事業税制の猶予は、対象株式における評価額の80%となっています。

⑤承継タイプ

どちらの税制も、株式の贈与が可能なのは複数株主です。しかし、後継者は一般事業承継税制の場合、筆頭株主の代表者一人ですが、特例事業承継税制では3人です。承継タイプにも違いが見られます。

⑥雇用確保要件

一般事業承継税制の雇用確保要件では、従業員数が5年平均で相続時・贈与時の80%を下回ってはいけません。特例事業承継税制では、80%を下回った理由を書いた認定支援機関の意見が記載された書類を出せば問題ありません。

⑦相続・贈与時から5年後以降に株式譲渡・解散した場合

経営環境の変化を示す一定の要件であれば、特例事業承継税制は導入可能です。一般事業承継税制の場合は、民事再生・会社更生の際、その時点における評価額で相続税・贈与税を再び算出して超える部分の納税猶予額が免除となります。

⑧相続時精算課税

最後に、相続時精算課税の相違点を見ていきましょう。特例事業承継税制は、推定相続人以外も適用されますが、一般事業承継税制は、推定相続人一人のみという違いがあるのです。

事業承継税制で相続税・贈与税の負担をなくすための要件

事業承継税制を利用するには、条件を満たす必要があります。どれか1つでも満たさなければ、猶予は受けられません。条件は下記です。

  1. 被相続人に関わる条件
  2. 相続人に関わる条件
  3. 会社の条件
  4. 担保の提供
それぞれの条件を、順番に確認しましょう。

被相続人に関わる条件

被相続人は一定の条件を満たす必要があります。前提として相続を選択した被相続人が、これまで代表を務めていた会社でなければ、事業承継税制を利用できません。また、代表者であるだけでなく、議決権を50%以上保有している必要があります。 

さらに、先代の経営者が同族関係者のなかで筆頭株主であることも条件です。

相続人に関わる条件

相続開始から5ヶ月以内に会社の代表になっていないと、事業承継税制は利用できません。つまり、被相続人が亡くなってから5ヶ月以内に、相続人は対象会社の代表者に就任する必要があります。

また、被相続人と同様に50%以上の保有が必要です。相続人はこの2つの両方を満たせば、事業承継税制を利用できます。

会社の条件

前述のとおり、事業承継税制を利用できるのは非上場の中小企業です。風俗営業を行う会社や資産の管理会社、収入もなく従業員もいない経営の意思がない会社は対象となりません。 従業員は1名以上が条件です。

あくまでも中小企業をサポートする制度なので、大手企業や上場企業も対象外です。

担保の提供

事業承継税制を受ける際は、担保の提供が必須条件です。具体的に挙げると、納税猶予の対象となる非上場株式そのもの、不動産、有価証券などが該当します。担保の内容は各会社によって異なり、相続税の総額に相当する担保を用意します。

担保の提供があると税務署からも信頼が得られ、税務署としても経営の意思を確認できます。これらの条件を満たす会社が、相続税に対して事業承継税制を利用できるのです。

事業承継税制は頻繁に制度内容が改正されています。実際に活用する際は、最新の事業承継税制における内容を中小企業庁のホームページなどで確認しましょう。

【関連】【2021】事業承継税制の特例措置のメリットや適用要件を解説!| M&A・事業承継の理解を深める

事業承継税制を利用するメリットとデメリット

この章では、事業承継税制を利用するメリットとデメリットについて見ていきましょう。

事業承継税制のメリット

事業承継税制を利用するメリットは、相続税を大幅にカットできる点です。対象株式の贈与税・相続税が納税猶予になり、最終的には免除となります。つまり、税金がゼロになるのです。

事業承継の本質は、相続税を支払う点ではなく、先代から受け継いだ会社を安定させ、次世代につなぐことですが、どうしても相続税は重くのしかかってしまいます。事業承継税制を用いれば、こうした不安が払拭できるのです。

高額な相続税や贈与税を支払う必要がなくなり、納税資金を用意する必要もありません。また、特例は期間限定なので、それを口実として後継者が先代の経営者へ事業承継を促しやすい点もメリットです。

事業承継税制のデメリット

事業承継税制を利用するデメリットは、要件を満たせなければ事業承継税制が打ち切られる点です。事業承継税制を使うには特定の条件を満たされなければならず、利用してからも継続しなければなりません。

事業承継税制が打ち切られてしまうと突然残りの相続税を支払う必要が出るため、安定してきた経営も不安定になるでしょう。贈与税の納税猶予が取り消されると、相続税よりも税率が割高になり、猶予された税額の利子税が課税されます。

例えば以下のケースで、猶予が打ち切られます。

  • 事業承継税制を利用してから5年以内の代表者交代
  • 株式譲渡などで後継者が変更、会社の解散、会社が無収入  

また、事業承継税制では、一定期間ごとに継続願を提出する必要があります。これを忘れると、猶予は打ち切りになるので注意が必要です。

事業承継税制は、相続人が後継者として会社を経営しなくなったり、会社が機能を失ったりすると終了します。後継者が継続して経営する意思があり、利益が出ていれば打ち切られる心配はありません。 

事業承継税制を活用した事業承継は専門家に相談

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【関連】事業承継特例のメリットやデメリット、利用の条件を解説【事例あり】| M&A・事業承継の理解を深める

事業承継税制による相続税の負担軽減方法まとめ

今回は、事業承継を相続で行う場合について紹介しました。会社の大きさにかかわらず、会社を相続する行為は簡単ではありません。

相続税の支払いや対策を含めて実行することが多く、経営の意思があっても思ったように安定しないのが現実です。相続人のためにも、被相続人は遺言書の作成や、周囲へ代表者交代の意思などを通達する必要があります。

相続を利用して事業承継する際は、事前の準備が重要です。しっかり準備をして相続による事業承継を成功させましょう。

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