M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2021年4月22日更新事業承継
自社株の相続に関する基礎知識や相続税対策を解説!
業績の良い会社ほど高額な自社株の評価を受けやすいため、自社株の相続税対策は必要です。自社株の相続税対策には、評価対象となる資産や利益を減額する方法や、生命保険への加入などがあります。相続税対策は時間を要するため、事前準備が不可欠です。
目次
自社株の相続
株式会社にとって、株式は欠かせません。資金調達や組織の再編成を実施するためにも、株式は不可欠です。
同時に、株式は会社にとって重要な資産でもあります。資産を承継する際は、手続きが必要です。それに伴い相続税も発生する可能性があります。今回は、自社株と相続税の関係について解説します。
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自社株と相続税に関する基礎知識
ここでは自社株と相続税についてご説明していきます。
自社株とは
自社株とは、自社の株式です。以前は基本的に、自社株を自社で買い占める行為や保有する行為は禁止でした。
会社を独占したり不正な取引に使用したりする恐れがあったからです。しかし、1994年の商法改正により、以下のケースでは自社株の保有や取得が可能になりました。
- 従業員に対して持ち株を譲渡する
- 利益を得た株式会社が株式の消却を行う
相続税とは
相続税とは、人から資産や財産などを引き継ぐ際に発生する税金です。引き継ぐ財産が高額であればあるほど、相続税も高額になります。以下が相続税の算出方法です。
まずは、財産から基礎控除額を差し引きます。その後の金額に民法が定める税率をかければ、実際の相続税が算出できます。具体的な税率は、控除前の財産額によって変動します。
また、相続税は2015年から増税されています。財産が高額であるほど相続税率は高額になるため、自社株の相続対策は経営者にとって重要です。
自社株相続の対策
会社を経営する際、相続は大きな問題です。タイミングや手順を間違えれば、今後の経営に大きな障害を生み出す可能性があります。自社株の相続を実施するときは、第一に株価対策を実施する必要があります。株式など資産の相続には、高額な相続税が必要となるからです。
予想以上に相続税が高額で、その後の経営が悪化するケースは少なくありません。そのため、まずは相続税の対策が不可欠です。
自社株が高額になる理由
自社株が高額となる理由は、基本的に取引相場がない株式だからです。つまり、資産があり業績の良い会社ほど高額な評価を受けてしまいます。
所持するほとんどの財産が自社株であり、個人名義の財産が少ない経営者もいます。そうなると、個人は財産をあまり所持していないにも関わらず、自社株の評価のみで高額な相続税を課税されることになります。このような事態を回避するためにも、自社株相続の対策が必要です。
各評価方法を用いた際の相続税対策
自社株の節税方法は、自社株価の評価方法によって変わります。具体的には、純資産価額方法と類似業種比準価額方法があります。自社株の評価はどちらの評価方法で活用するのか、あらかじめ考える必要があります。
純資産価額方式
純資産価額法とは、会社が持つ純資産の額に注目して自社株価を評価する方法です。純資産の量に比例して、相続税が高額になります。純資産価額方法を活用する際は、単純に純資産を減らせば相続税対策となります。つまり、評価対象となる純資産自体を減らし評価額を下げるのです。
たとえば、土地や建物に投資を行うのが効果的です。土地への投資や貸家建付地評価の利用で、相続税を減額できます。役員への高額な退職金給付も、純資産の減額につながります。退職金は金銭で支給するため、支給額が高いほど純資産を減らせます。
類似業種比準価額方式
類似業種比準価額方法とは、対象会社と事業内容が類似する会社の株価を基にして配当や利益、純資産などを評価する方法です。この方式を活用する際は配当や利益、純資産価額の減額が有効です。具体的には、純資産価額方法の対策と同様に、役員の退職金を高額にして支給します。
また、収益を得る事業部門を分社化すれば利益が分散します。それにより自社株価が下がり、配当を低くできます。配当や利益が低いとき、つまり評価額が低いときに贈与や譲渡を実行するのも相続税対策となります。経営が悪化する時期は評価額が安価になるため、自社株の相続税対策を行うのに適しています。
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相続税の節税
その他相続税対策
自社株の評価方法は2種類あり、どちらも資産を減らして自社株の評価額を減らす対策法です。しかし、資産には然るべき評価が付くため、資産に対する評価額の単価は減らせません。一方、自社株の評価額を減らす以外の対策もあります。
たとえば、会社で生命保険に加入して資産を減らす方法です。上記の方法とは異なり、先に相続税にかかる資金を想定して準備する方法です。相続の発生を事前に予測し、前もって生命保険に加入すれば、相続税の納税資金を準備できます。
死亡保険金は、死亡者の遺族の今後の生活に必要な資金と考えられます。優遇措置として、遺産の一定額には相続税が課されません。受け取り人数により、非課税遺産の金額は変化します。そのため、あらかじめ受取人を決定する必要があります。
以上のように、相続税はなくせなくても対策は可能です。しかしどの方法も時間を要するため、事前準備が不可欠です。
自社株相続対策のデメリット
相続税の対策方法には、デメリットも存在します。対策を事前に行えば、相続税は下がります。しかし、それに伴い自社株の評価額が下がり、会社の財務状況が悪化するデメリットが生じます。自社株相続の対策は、資金を失うのと同義です。資金が減れば、財務状況が不安定になるのは当然です。
最悪の場合、引き継いだ会社が倒産します。つまり、自社株の評価が低ければ会社の評価も低くなるのです。自社株相続の対策を行うのは正しいのかどうか、しっかり考える必要があります。
自社株の相続で知っておきたい事業承継税制の特別措置
政府は、2018年から10年以内の期間限定で適用する事業承継税制の特例措置を行っています。この特例措置は、今までの一般措置より納税猶予の割合が大きいです。また、要件なども緩和しています。
一般措置では総株式数の最大3分の2まで、そして相続税は80%までの納税猶予しか受けられません。しかし、特例措置は相続した自社株の全株式を対象として、100%の納税猶予が受けられます。
また、承継後5年間、平均8割の雇用維持という雇用確保要件を満たさなくても、認定支援機関による経営悪化について記した書類を出せば納税猶予期間が延長されたり、親族以外の第三者への贈与も納税猶予を認められたりします。
相続にあたり経営者が考えるべきこと
経営者は財産の相続について、下記の点について考えておく必要があります。
- どのように財産分与するか
- どのように経営者財産を引き継ぐか
また、家庭での相続では生活や人間関係についても考えなければなりません。同族会社であれば、後継者に会社の財産が集中し過ぎると、人間関係に影響を与えることがあります。争続にならないように、誰に財産を引き継ぐか決定しなければなりません。
まとめ
自社株にかかる相続税と会社の評価は、密接に関係します。相続の選択は、経営を継続する選択も意味します。自社株にかかる相続税の節税だけに尽力して、会社が倒産するのは意味がありません。会社を引き継ぐ選択をした場合は納税と会社の評価バランスを考え、今後の対策を取る必要があります。
相続税を節税するのは悪くありません。しかし大切なことは、先を見越した準備の実施です。要点をまとめると下記になります。
・自社株とは?
→自社の株式
・自社株が高額になる理由は?
→業績の良い会社ほど高額な評価を受けやすい
・自社株の相続税対策は?
→評価対象となる資産や利益を減額
・その他の自社株対策は?
→生命保険に加入
・自社株相続対策のデメリットは?
→会社の財務状況悪化
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