M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月29日更新事業承継
親族外承継
最近は、社内の役員・従業員や社外の人材に会社を引き継ぐ親族外承継を実施する企業が多いです。親族内承継とは異なる側面でさまざまなメリットがありますが、同時にデメリットが生じるおそれもあるため、親族外承継を検討する場合にはそれぞれ十分に把握しておく必要があります。
親族外承継
最近では親族内承継の実施件数が減少傾向にある一方で、従業員や役員などに会社を引き継ぐ「親族外承継」の実施件数は増加しており、一般的な承継方法として広く浸透しています。親族内承継では得られないメリットも期待できるため、事業承継を検討している場合には親族外承継も選択肢に入れておくと良いです。
この記事では、親族外承継の概要・メリットやデメリット・事業承継税制の活用・親族外承継を円滑に進めるポイントなどを解説します。
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親族外承継とは
まずはじめに親族外承継の基本的情報を把握するために、以下の2項目に分けて紹介します。
- 親族外承継の概要
- 親族外承継の実施割合
①親族外承継の概要
親族外承継とは、社内の従業員・役員もしくは外部から招へいした人物に会社を引き継ぐ行為です。実際に親族外承継を実施する場合、以下に挙げる2つから自社に最適な方法を選択して実施することが基本的です。
- 会社の経営を後継者に任せつつ現経営者が引き続き自社株を保有し続けるケース
- 自社株ごと経営権を後継者に引き継がせるケース
前者は一時的に経営者を代行してもらいながら、将来的には後継者に会社を引き継ぐケースです。この方法では相続発生時に自社株が相続財産として扱われるため、後継者に自社株を確実に引き継ぐために遺言などで対処しなければなりません。
後者は事業承継の実施タイミングにおいて、後継者に会社をまとめて引き継がせるケースです。こちらでは遺言などで対処を講じる必要がありませんが、後継者が自社株を取得するときに多大な資金力が求められる場合があるため、資金調達方法を検討する必要があります。
親族外承継と親族内承継の違い
事業承継では、親族外承継以外にも親族内承継という手法が存在します。親族内承継とは、経営者の子供をはじめとする親族に会社を引き継ぐ行為です。親族外承継と親族内承継にある代表的な相違点は、後継者選択における自由度の大きさにあります。
親族外承継では社内の役員・従業員の中から後継者を選択できるだけでなく、取引先や銀行からの紹介で外部から後継者を招へいするケースも見られます。その一方で親族内承継では、経営者である自身の親族という非常に限られた候補者の中から後継者を選ばなければなりません。
②親族外承継の実施割合
前述のとおり最近では親族内承継の実施割合が減少しており、その一方で親族外承継を実施する企業が増加中です。2019年版「中小企業白書」に掲載された2018年の調査結果によると、内部昇格・外部からの招へいを合わせた親族外承継の割合は35.6%に及ぶことが判明しています。
また、2015年時点の調査では経営者の在任期間が短い会社ほど親族外承継の実施割合が高いことが判明しており、経営者の在任期間が0年以上5年未満の会社の中では65.7%、5年以上10年未満の会社の中では45%の実施率であったと報告されています。
これに対して親族内承継は全体的に減少を続けており、現在では親族外承継が主流な事業承継の方法だといえます。こうした実施割合の変化には親族外承継で期待できるメリットが深く関係していますが、今後の市場環境や人口動態などの変化によって、親族外承継の割合はより一層増加する可能性があります。
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親族外承継のメリット
親族外承継を採用する代表的なメリットは、以下のとおりです。
- 経営者の資質や経験が担保される
- 従業員や会社関係者から理解を得やすい
- 内部昇格によるモチベーション向上が期待できる
①経営者の資質や経験が担保される
親族外承継では、経営者の資質や業務遂行能力などがある程度担保されるメリットがあります。その一方で親族内承継では経営者の経験を積ませるために長期間に渡る後継者教育を済ませる必要があり、ある日突然事業承継するケースも多い昨今では後継者としての質を十分に担保することが難しいです。
しかし、従業員や役員を親族外承継の後継者に選べば、すでに業務に携わっているため教育に長い時間をかける必要がありません。特に長年勤めている役員や従業員であればビジョンやノウハウも理解しており、ゼロの段階から教育する手間が省けます。
数ある従業員や役員の中から経営者として最も優れた人物を選択できる点は、大きなメリットです。
②従業員や会社関係者から理解を得やすい
これまで共に働いてきた役員や従業員が経営者になることで、周囲の従業員や会社関係者から理解を得やすいメリットも存在します。特に業務能力に長けている人材が後継者となれば、金融機関や取引先からも理解を獲得しやすく、融資や取引の継続を期待することも可能です。
その一方で親族外承継の中でもM&Aなどによって第三者に会社を引き継がせる場合には、従業員や会社関係者に不安が広がりやすく、モチベーション低下や取引中止の原因ともなります。第三者への事業承継を実施するときは、あらかじめ周囲に十分説明をして理解を取り付けるよう心がけることが大切です。
③内部昇格によるモチベーション向上が期待できる
役員や従業員を経営者に昇格させることで、その他の役員や従業員のモチベーションを向上させるメリットも期待できます。
なぜなら、役員や一般の会社員から経営者への昇格はひとつの夢として捉えられているためです。役員や従業員のモチベーションを向上させることで、業績アップも望めます。
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親族外承継のデメリット
親族外承継で生じる代表的なデメリットは、以下のとおりです。
- 後継者の資金力不足が問題となりやすい
- 事業承継を拒まれてしまう可能性がある
- 大規模な改革を実施できなくなるおそれがある
①後継者の資金力不足が問題となりやすい
親族外承継では基本的に後継者が自社株を買い取ることになりますが、たとえ小規模な会社であっても自社株のすべてを買い取るには多額の資金が必要です。このとき役員や従業員には非常に膨大な資金力が求められるため、資金力不足により親族外承継できないケースも珍しくありません。
上記のように自社株の買い取りのための資金力不足は親族外承継で大きな問題となりやすいですが、この問題を解決するには金融機関の力を借りた上でMBOを実施する方法が有効策となり得ます。
MBO(正式名称:Management Buy Out)とは会社の役員が経営者一族から自社株を買い取る形で実施する親族外承継の手法ですが、金融機関から資金調達を経て親族外承継を実施することで資金力不足のデメリットを解決できます。
なお従業員が親族外承継する場合はEBO(正式名称:Employee Buy Out)、従業員と役員が親族外承継するケースはMEBO(正式名称:Management Employee Buy out)と呼ばれるため把握しておくと良いです。
このように資金調達をした上でMBOやEBOを実施することで後継者の資金力不足を解決できますが、株式の無償譲渡によって親族外承継を図ることも可能です。
②事業承継を拒まれてしまう可能性がある
特に中小企業では経営者自身が保証人となって金融機関から融資を受けているケースが多いですが、経営者の個人保証は簡単に解除できないため、事業承継時に後継者が連帯保証人になることを要求される可能性があります。
親族外の人物が後継者となる場合では、連帯保証人になることは非常に大きなリスクを伴うため親族外承継を拒まれてしまう可能性があります。さらに経営者に個人保証が存在する場合での事業承継では金融機関からの理解も取り付けにくく、事業承継が円滑に進まないデメリットが生じることもあります。
親族外承継を実施するときには、事前に個人保証を解消するなどしてリスクを軽減させることが大切です。
③大規模な改革を実施できなくなるおそれがある
親族外承継で社内の役員や従業員に会社を引き継げば、自社の文化が浸透した後継者に経営を任せることになるため、これまでの経営方針を刷新するような大規模な改革を実施できなくなるおそれがあります。
最近は経営環境が急激に変化することもあり、経営者には必要に応じて大胆な施策を講じることのできる手腕が求められています。以上のことから信用性の高さと合わせて、思い切った改革を実施できる人材を基準に後継者を選ぶことが大切です。
リスクを感じたらM&Aによる事業承継も検討する
これまでさまざまなデメリットを紹介しましたが、親族外承継にリスクを感じたらM&Aによる事業承継を検討することも有効策です。M&Aを活用すれば第三者に会社を売却した上で事業承継できるため、後継者の資金力不足が自社において問題とならず、むしろ経営者は売却利益を獲得できます。
また、M&Aでは相手先企業探しから交渉に至るプロセスを念入りに実施することで、自社にふさわしい引き継ぎ先を十分に吟味できるため、事業承継後も末永く会社が存続する可能性が高いです。これにより取引先との関係や従業員の雇用を維持できるメリットも期待できます。
しかし、M&Aには「煩雑かつ専門的に高度な知識を要するプロセスを取らなければならない」という重大なデメリットもあり、プロセスの一部を怠ることで失敗に直結するおそれもあります。
M&A総合研究所には専門的な知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが多数在籍しており、これまでに培ってきたノウハウを活かしM&Aによる事業承継をフルサポートいたします。
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親族外承継における事業承継税制の活用
親族外承継では、事業承継税制を活用することで事業承継に生じる税負担を軽減できる場合があります。ここでは親族外承継における事業承継税制の活用について把握するために、以下の項目に分けて紹介します。
- 事業承継税制の概要
- 親族外承継で事業承継税制を活用するための要件
①事業承継税制の概要
事業承継税制とは、非上場株式の引き継ぎによって生じる相続税や贈与税の納税を猶予・免除する制度です。もともと事業承継では自社株の引き継ぎ時に多額の相続税や贈与税が発生するため、親族外承継を引き受ける後継者の税負担が非常に大きく、これを理由に親族外承継を拒むケースが少なくありませんでした。
ところが現在では事業承継税制を活用することで、相続税・贈与税の課税額すべてを納税猶予できます。かつては事業承継税制の対象は親族内承継のみでしたが、平成25年度の改正で親族外承継も対象に含まれることになりました。
さらに平成30年度の改正ではすべての自社株について納税猶予が認められるようになっただけでなく、雇用8割維持の要件が実質的に撤廃されたこともあって、より活用しやすい制度となりました。事業承継税制の納税猶予は、親族外承継の後継者にとって積極的に活用したい制度です。
②親族外承継で事業承継税制を活用するための要件
親族外承継を実施するときに事業承継税制を活用するための要件は、人の要件・会社の要件・事業継続の要件の3つに大別されるため、ここからは各々の要件について順番に解説していきます。
人の要件
人の要件とは、現経営者や後継者に求められる要件です。現経営者に求められる要件は、以下のとおりです。
- 会社の代表者であった
- 代表者であった当時、先代と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有していた
- 同族関係者内で筆頭株主であった
- 株式贈与の時点で退職している(贈与の場合)
次に後継者に求められる要件は、以下のとおりです。
- 会社の代表者である(贈与の場合)
- 20歳以上かつ3年以上会社の役員である(贈与の場合)
- 相続開始前の時点で役員であり、かつ相続開始後5ヶ月以内に会社の代表者となる(相続の場合)
- 同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ同族内で筆頭株主となる
人の要件では発行済議決権株式総数の50%超を保有しているなど、実質的な経営権を握っていることが主な要件となります。
会社の要件
会社の要件とは、親族外承継を実施する会社に求められる要件です。事業承継税制を活用する会社には、以下のいずれにも該当しないことが求められています。
- 上場会社
- 経営承継円滑化法上の中小企業者に該当しない
- 風俗関連事業を手掛ける会社
- 実質的な子会社のうち上記3つの要件のいずれかに該当する会社
- 総収入金額がゼロの会社
- 常時使用する従業員がゼロの会社
平成30年度改正の事業承継税制を活用する場合には、追加で以下の要件が求められています。
- 認定支援機関の指導及び助言を受けた上で、特例承継計画を作成する
- 特例認定承継会社の後継者や事業承継時点までの経営ビジョンなどが記載されている
- 2018年4月1日〜2023年3月31日の間に、特例承継計画を都道府県に提出する
ちなみに経営承継円滑化法では、業種・資本金・従業員数などによって中小企業か否かの判断がなされます。
事業継続の要件
事業継続の要件では親族外承継後も事業を継続することが主な要件として定められており、具体的には5年間経営者として株式を保有し続けることや雇用の8割を維持することなどが求められています。とはいえ前述のとおり平成30年度の事業承継税制改正によって、雇用の8割維持に関しては条件が大幅に緩和されました。
これにより所定の書類に雇用を維持できない理由を記して提出することで、納税猶予を維持できます。そもそも経営状況が厳しい中小企業が雇用を8割維持し続けることは困難であり、かつては雇用維持要件を理由に納税猶予を諦める企業が多く存在していました。
上記の状況を受けて、平成30年度の改正により納税猶予を利用しやすくなっています。親族外承継を検討している場合には、事業承継税制による納税猶予の利用をおすすめします。
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親族外承継を円滑に進めるポイント
最後に、親族外承継を円滑に進めるポイントとして、以下の項目を紹介します。
- 遺留分の特例を活用する
- 専門家からサポートを受ける
①遺留分の特例を活用する
親族外承継を円滑に進めるためには遺留分特例の活用が必要不可欠となるため、ここでは遺留分の特例を利用するメリットを詳しく解説します。そもそも一定範囲内の親族には最低限の相続財産が保障されており、これを遺留分と呼んでいます。
そのため、もしも相続人が複数存在する場合には、遺留分によって自社株が分散して経営に関わる意思決定に支障をきたすおそれがあるのです。事業承継では親族外承継に限らず自社株を後継者に集中させなければなりませんが、ここで遺留分の民法特例を利用することで除外合意や固定合意を実施できます。
まず除外合意とは、親族外承継で引き継ぐ非上場株式を遺留分の計算から除外できる制度です。次に固定合意とは、遺留分の計算に含める自社株の金額を合意時の価額に固定する制度です。両合意を併用することで、株価の上昇を心配することなく、後継者が株式を取得できるようになります。
②専門家からサポートを受ける
親族外承継の実施を検討したら、専門家からサポートを受けることをおすすめします。基本的に事業承継では後継者の選定から株式の引き継ぎに至るまで多くの煩雑な手続きが求められるうえに、前述した事業承継税制における納税猶予や遺留分の特例を活用するには追加で手続きを取らなければなりません。
このように膨大な手続きが求められる事業承継を経営者のみで実施することは非効率的であるうえに、専門的な知識が必要となる場面もあるため非常に困難だといえるでしょう。
M&A総合研究所では事業承継に関する専門的な知識や実績が豊富なアドバイザーが、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。
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まとめ
今回は、親族外承継について解説しました。最近になって実施割合が増えている親族外承継には多くのメリットが存在しますが、同時にデメリットが生じるおそれもあるため注意が必要です。そして事業承継を成功させるには、事業承継税制や遺留分特例などの活用をおすすめします。要点をまとめると、以下のとおりです。
・親族外承継とは
→社内の従業員・役員もしくは外部から招へいした人物に会社を引き継ぐ行為
・親族外承継の実施割合
→内部昇格・外部からの招へいを合わせると35.6%(2018年)
・親族外承継のメリット
→経営者の資質や経験が担保される、従業員や会社関係者から理解を得やすい、内部昇格によるモチベーション向上が期待できる
・親族外承継のデメリット
→後継者の資金力不足が問題となりやすい、事業承継を拒まれてしまう可能性がある、大規模な改革を実施できなくなるおそれがある
・親族外承継で事業承継税制を活用するための要件
→人の要件、会社の要件、事業承継族の要件の3つがある
・親族外承継を円滑に進めるポイント
→遺留分の特例を活用する、専門家からサポートを受けるのがベスト
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