事業承継における中小企業白書

中小企業白書には、事業承継に関する現状が紹介されています。事業承継のヒントになる情報があるため、中小企業白書に​目を通してみてはいかがでしょうか​。

事業承継

2019年11月28日更新

目次
  1. 事業承継における中小企業白書
  2. 中小企業白書による事業承継方法と後継者の現状
  3. 中小企業白書による事業承継と資産引き継ぎの課題と対策
  4. 中小企業白書よる事業承とM&Aの課題と対策
  5. まとめ

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事業承継における中小企業白書

中小企業白書とは、中小企業に対する施策の動向や現状を紹介する資料です。

中小企業庁が毎年発行している中小企業白書では、事業承継に関する記述もあります。

中小企業が事業承継を実施する際、中小企業白書を参考にすることで、有益な情報を得ることができます。

この記事では、中小企業白書にて述べられている事業承継の現状や概要に関して説明します。

中小企業白書による事業承継方法と後継者の現状

まず初めに、2017年度中小企業白書に記された事業承継の現状のうち、後継者に関する内容を紹介します。

⑴後継者の選定状況

中小企業(中規模法人)の場合、後継者が決定している割合は41.6%、後継者候補がいる割合は27.5%となっています。

一方で後継者候補がいないもしくは未定と回答した中小企業が30.9%存在しており、およそ3割の中小企業で後継者不足問題を抱えています。

小規模法人や個人事業主でもほぼ同様の動向を見せていますが、若干規模の小さい中小企業ほど後継者が決定している傾向が見受けられます。

⑵事業承継方法の割合

「誰に」事業承継するかによって、「親族内承継」「親族外承継」の二種類の方法に大別されます(M&Aを除く)。

中小企業白書のデータによると、「中規模法人」と「小規模法人・個人事業主」の間に違いが見受けられます。

小規模法人や個人事業主の場合、約9割〜9.5割が親族内承継で行われており、親族外承継は非常に少ないです。

一方で中規模法人の場合、親族内承継は66.6%に留まる一方で、親族外承継の割合は33.4%にのぼります。

比較的規模の大きい中小企業では親族外承継がポピュラーになりつつある一方で、規模の小さい事業者にとって親族外承継は依然として浸透していない現状が分かります。

⑶後継者選定を始めてから了承を得るまでにかかる時間

中小企業白書によると、後継者選定を始めてから了承を得るまでに、3年以上を要した企業が14.4%も存在します。

10年以上費やした企業も3.9%存在しており、予想以上に時間を要する現状があります。

後継者から了承を得た後には、ノウハウ等の継承や後継者教育を実施する時間が必要である為、早い時期に後継者を確定することが望ましいです。

⑷事業承継に関する課題と対策・準備状況

中小企業白書によると、事業承継に関して下記課題を抱える中小企業が多く存在します。

  • 後継者を補佐する人材確保
  • 後継者への段階的な権限委譲
  • 事業承継後の事業運営計画の策定
  • 経営者の個人保証に関する
  • 金融機関との折衝

後継者が既に決定している中小企業では「社内の組織体制整備」、決定していない企業では「後継者の選定」が上記に加えて課題となっています。

後継者が決定している中小企業では課題に対して既に対策を講じているケースが多いですが、後継者が決定していない企業では課題への対策が十分に行われていません。

後継者が決定していない企業は、後継者選定が最優先課題となります。

※関連記事

事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説

中小企業白書による事業承継と資産引き継ぎの課題と対策

次に、中小企業白書に記された事業承継の現状のうち、資産の引き継ぎに関する内容を紹介します。

⑴資産引継ぎの課題と対策状況

親族内・親族外承継共に、「自社株式や事業用資産の最適な移転方法の検討」が課題として最も認識されています。

その他には、「自社株式等の適切な評価」や「贈与税・相続税負担」なども課題であると認識されています。

親族内承継では上記の課題に対して比較的対策が進んでいる一方で、親族外承継では課題への対応が遅れています。

資産引き継ぎの対策には時間がかかるので、早めに対策し始めることが大切です。

⑵自社株式評価額の印象

中小企業白書では、売上高経常利益率の規模ごとに見た自社株評価額への印象を取り上げています。

利益率が高いほど、自社株評価額に対して「予想よりも高い」と感じる傾向があります。

利益率が高いほど株価は高くなる事が一般的ですので、当然の結果です。

中小企業白書では、利益率がマイナス(赤字)の企業であっても、株価を予想以上に高いと感じる企業が存在する事が示されています。

その割合は約25%にのぼり、赤字でも予想以上に株式評価額が高い印象を受ける企業は多い事が読み取れます。

⑶経営や資産の引継ぎの準備を勧められた相手

事業承継の準備を勧められた相手に関するデータも、中小企業白書に記述されています。

中小企業白書によると、「顧問の税理士・公認会計士」が最も多く、次に取引金融機関が続きます。

このデータから、日頃から仕事上で接点の多い相手から推奨されるケースが多い現状が分かります。

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中小企業白書よる事業承とM&Aの課題と対策

近年は新たな事業承継の選択肢として、M&Aを利用するケースが増えています。

この項では、2017年度中小企業白書に記された事業承継の現状のうち、M&Aに関する内容を説明します。

2018年度中小企業白書では、近年増えているM&Aによる事業承継が重点的に取り上げられています。

⑴M&Aを用いた事業承継の検討状況

後継者・後継者候補がいる中小企業では、M&Aによる事業承継に対して前向きな回答をした割合は約23%と少ないです。

後継者や後継者候補が既に存在する為、ある意味当然の結果です。

一方で後継者や候補者がいない企業では、M&Aによる事業承継に対して肯定的な割合が高まります。

「具体的に検討している」もしくは「実施しても良い」と考えている企業は4割弱存在しています。

メディアやマスコミでM&Aが取り上げられる機会が増えた事で、M&Aに対するネガティブなイメージが払拭されつつあります。

⑵M&Aによる事業承継で重視すること

中小企業白書では、「M&Aによる事業承継で重視する要素」を従業員規模別に紹介しています。

どの規模の中小企業でも、「従業員の雇用維持・確保」と回答した割合が最も高いです。

数字で表すと80%後半に昇っており、M&Aによる事業承継では従業員の雇用維持が最優先とされています。

中小企業を買収する買い手側には、従業員の雇用維持を優先する事が求められます。

従業員の雇用維持以外では、「会社(事業)の更なる発展」を重視する割合も高いです。

規模が大きいほど重視する傾向が強くなり、従業員20人以下の企業では38%に留まる一方で、50人超の企業では59%も重視しています。

逆に「売却による金銭的収入」を重視する割合は、規模の小さい中小企業ほど大きいです。

つまり小規模な中小企業は金銭収入、大規模な中小企業は会社(事業)の発展を、M&Aによる事業承継で重視しています。

⑶M&Aによる事業承継に関する課題と対策状況

M&Aによる事業承継は通常の事業承継とは様々な面で異なる為、多くの課題が存在します。

中小企業白書(2017年)では、M&Aによる事業承継に関する下記5つの課題が明示されています(右カッコ内は課題と感じている割合)。

  1. 従業員の雇用維持・処遇問題(85.7%)
  2. M&Aに関する情報や知識不足(77.9%)
  3. 法務、税務、財務等の専門知識不足(73.5%)
  4. M&Aを検討する際の情報漏洩リスク(67.0%)
  5. 企業風土の違い(65.2%)

以上の通りM&Aによる事業承継に対して、多くの中小企業が課題を感じています。

課題は明確に認識されているものの、対策や準備は殆ど実施されていません。

6割台後半〜8割台後半もの企業が上記課題を感じている一方で、対策を実施している中小企業は10%〜20%程度に留まっています。

対策や準備が進んでいない背景には、どの様に対策・準備すれば良いか分からないと感じている企業が多い事があります。

M&Aによる事業承継を実施する際は、M&A仲介会社の起用やセミナーへの参加等がオススメです。

※関連記事

事業承継とM&Aの違いとは?メリット・デメリット、件数を解説

まとめ

今回は、事業承継に関する中小企業白書の記載内容をまとめました。

中小企業白書には、事業承継に関する現状が紹介されています。

事業承継のヒントになるため、一度中小企業白書を目を通してみることをオススメします。

要点をまとめると下記になります。

  • 中小企業白書に記載された事業承継の現状(後継者)
  1. 後継者の選定状況→若干規模の小さい中小企業ほど後継者が決定している
  2. 事業承継方法の割合→規模の大きい企業ほど親族外承継の割合が高い
  3. 後継者選定を始めてから了承を得るまでにかかる時間→後継者選定を始めてから了承を得るまでに、3年以上を要した企業が14.4%存在する
  4. 事業承継に関する課題と対策・準備状況→「社内の組織体制整備」や「後継者の選定」が課題
  • 中小企業白書に記載された事業承継の現状(資産の引き継ぎ)
  1. 資産引継ぎの課題と対策状況→「自社株式等の最適な移転方法の検討」といった課題があり、親族外承継では課題への対策が遅れている
  2. 自社株式評価額の印象→赤字でも予想以上に株式評価額が高い印象を受ける企業は多い
  3. 経営や資産の引継ぎの準備を勧められた相手→日頃から仕事上で接点の多い相手から推奨されるケースが多い
  • 中小企業白書に記載された事業承継の現状(M&A)
  1. M&Aを用いた事業承継の検討状況→「具体的に検討している」もしくは「実施しても良い」と考えている企業は4割弱存在する
  2. M&Aによる事業承継で重視すること→どの規模の中小企業でも、「従業員の雇用維持・確保」と回答した割合が最も高い
  3. M&Aによる事業承継に関する課題と対策状況→多くの課題があるものの、対策や準備は殆ど進んでいない

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