M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月28日更新会社・事業を売る
会社分割と株主総会
会社分割の実施には専門的な知識が必要であり、特に株主総会は専門知識が要求されます。会社分割の目的、吸収分割、新設分割といった会社分割の方法、会社分割の適格要件、会社分割の手続き、株主総会を省略できる簡易会社分割、略式会社分割について解説します。
会社分割と株主総会
M&Aの現場においては、一般的な傾向として株式譲渡や事業譲渡が多く用いられます。さらに、それら以外の方法として、会社分割を選択する企業もいます。どのM&Aでも専門的な知識は必要ですが、会社分割の実施にはより専門的な知識が求められます。
また、どのようなM&Aを遂行するとしても、株式会社である場合、会社にとっての重要事項を推進するには株主総会での手続きを経なければなりません。つまり、会社分割などのM&Aを実施する以上、一定の知識がないと対外的なコミュニケーションも難しくなります。
本記事では、会社分割を実施する際の重要なプロセスである株主総会を中心に、会社分割によるM&Aについて解説します。
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株主総会とは
株式会社は、株主からの出資による株式資本によって設立され、運営されています。したがって、会社の経営に関する重要な事項について、株式会社の経営陣は株主に意見を諮らなければなりません。そのための場が株主総会です。
株主総会の主たる議題になるものは概ね以下の3項目です。
- 会社の基軸について
- 株主利益に関わる収益の使い道について
- 経営陣の任命について
株主総会の概要
株主総会は議決を行う場です。民主主義の原理と同様に、その議決は全て多数決で決められます。ただし、会社の重要事項を決する場ですから、単なる多数決では決議とはなりません。以下に、株主総会における3種類の決議と、必要な賛成数の概要を掲示します。
- 普通決議:過半数の賛成が必要
- 特別決議:3分の2以上の賛成が必要
- 特殊決議:4分の3以上の賛成が必要
- 定時株主総会:年度末決算の終了後、その報告を主眼に年に1回開催
- 臨時株主総会:重要事項を株主に諮る必要があるときに随時開催
なお、定時株主総会の開催は、会社法にて義務付けられています。
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会社分割とは
会社分割はM&Aの手法の1つですが、それと同時に企業の組織再編行為の1つでもあります。この点も、株式譲渡や事業譲渡と会社分割が異なるポイントです。それでは、会社分割とは一体どのようなM&Aなのか、まずは、会社分割の概要を把握しましょう。
①会社分割の目的
会社分割とは、その企業が行う事業の権利・義務の一部もしくは全部を、第三者に移転(売却)する手法です。つまり、会社から一部の事業を切り離して、ほかの誰かに売却する方法を意味します。会社分割は、主に下記のような目的で実施されます。
- 子会社の設立
- 事業の売買
- 合弁企業の創立
- 経営資源の再配分
一言で表すと、この点こそが組織再編行為に該当する、グループ内再編の手段です。会社分割では、現金以外(主として株式の交付)を対価にできます。そのため、資金がなくてもグループ内再編やM&Aを実行可能なのです。また、一定条件を満たせば、非課税で会社分割を実施できます。
非課税の優遇措置はとても利便性が高いので、大企業がグループ内再編の際に、好んで活用する方法となっています。
②会社分割の方法
会社分割には、大きく分けて以下の2種類の方法があります。
- 吸収分割
- 新設分割
吸収分割とは、切り離した事業を既存の他社に移転する方法です。主に、経営資源の再配分や事業の売買目的で、吸収分割が利用されます。新設分割のほうは、事業の権利・義務を新しく設立した会社に移転する手法です。会社を新しく設立するため、より手間のかかる方法です。
新設分割の場合は、主に子会社の設立や合弁企業の創立目的で活用されます。会社分割を実施する際には、目的に応じてこの2種類の方法を使い分けます。
③会社分割の適格要件
会社分割では、資産や権利など価値のあるものを売買(譲渡)します。したがって、その内容に伴って税金が発生します。しかし、会社分割の対価は、株式で支払われる場合がほとんどです。現金収入があったわけでもないのに、課税を受けるのは重い税負担になります。
そこで、組織再編行為でもある会社分割の場合、条件さえ満たせば非課税措置を受けることができます。非課税で実行できる会社分割のことを「適格会社分割」といいます。グループ内再編が目的の場合、適格会社分割にすることが重要です。
せっかく非課税措置を受けられるのに、手続きミスで税金を支払うことになるのは大きな損失といえるでしょう。適格会社分割と認められる要件の一例は下記のとおりです。
- 対価を株式で支払う
- グループ会社であるという支配関係を今後も継続させる
- 従業員を引き続き雇用する
会社分割での適格要件は、関係するそれぞれの会社間の資本関係がどうなっているかによって、条件は少しずつ異なります。
実際に会社分割を行う際には、会社法で定められている適格要件の規定をよく確認し、手続きに手落ちがないようにしなければならないため、M&Aの専門家にサポートしてもらうと安心です。
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会社分割の手続き
この項では、実際に会社分割を実施するケースを想定して、会社分割の具体的な手続きのプロセスを時系列に掲示します。吸収分割と新設分割の手続きを比べた場合、大部分は共通しているものの、細かく違う点もあります。それについては、文中にて随時、説明していきます。
なお、文中における表現として、事業を分割し譲渡する側の会社を分割会社、分割された事業を譲渡される側の会社を承継会社、新たに設立される承継会社を新設会社と呼称します。
①分割契約の締結または分割計画の策定
会社分割を実施する手始めとして、吸収分割の場合には、当事者である会社間で分割契約を締結します。その際、会社分割の効力発生日や対価などを契約書内に盛り込みます。一方、新設分割においては、分割計画を当事者である会社間で策定します。
分割計画書には、対価などの事項とともに、新設会社における取締役に関しても記載します。
②書類の事前開示
会社法の規定により、会社分割を実施しようとする場合、会社分割に関する書類の開示が義務付けられています。吸収分割であれば、分割会社と承継会社の双方が法令で定められた内容を記載した書類を本店に備え置きます。
なお、この書類は、効力発生日から6ヶ月後まで置いておかなければなりません。一方、新設分割では、分割会社側が法令で定められた内容を記載した書類を本店に備え置きます。こちらも効力発生日から6ヶ月間備え置きます。
③株主総会の招集通知
会社分割実施の可否は、株主の判断により決定されます。したがって、会社側は株主に対して、株主総会を開催する旨を事前通知します。株主総会の招集通知期限は、会社の種類によって異なります。株式譲渡制限会社ならば、株主総会開催の1週間前までが招集通知の期限となります。
中小企業のほとんどは、このケースに該当するでしょう。一方、上場企業の場合は、株主総会開催の2週間前までに株主総会の招集通知を行わなければなりません。つまり、ほとんどの大企業は、2週間前までに招集通知を実行することになります。その理由は以下のとおりです。
上場企業には多くの株主が存在します。加えて、会社分割による株主への影響も多大です。そのため、上場企業のほうが招集通知期限が厳しく設定されています。ただし、株主が1人しか存在しないケースでは、書面による株主総会の招集通知のみで事足ります。
④株主総会の特別決議
会社分割では、会社内の資産や権利・義務が大きく変動します。そのため、株主が株主総会にて実行可否を判断することになります。株主総会で決定される内容によって、株主総会の決議に必要な賛成数が異なるのは上述したとおりです。
取締役の選任などの比較的影響が軽い事項は、株主総会の普通決議で決定されます。一方、会社分割は、会社全体の存続そのものに関与する重大な決議事項です。したがって、通常よりも賛成数が厳しく設定されている特別決議によって、会社分割の是非が判断されます。
なお、株主総会への株主出席条件については、「議決権株式総数のうち過半数の出席」とされており、普通決議も特別決議も同等です。しかし、特別決議では出席株主の議決権のうち3分の2以上の賛成が必要なわけですから、株主総会にて会社分割が否決される可能性は低くありません。
会社分割を実行するためには、事前に株主からの理解を得ておくことが重要です。なお、種類株式を発行している場合には、上記とは別に種類株主総会を開催します。
⑤債権者の保護手続き
事業が譲渡され他社にその権利や義務が移動することになる会社分割において、債務の弁済に支障が出る債権者に対しては保護手続きを行います。具体的には、官報による公告と個別の通知が必要です。公告・通知の中で会社分割の実行に関して伝えます。
また、債権者には、最低1ヶ月間の異議を申し立てられる猶予期間が設けられ、このプロセスのみでも会社分割の手続きには最低1ヶ月の期間を要します。会社分割を実施する際には、スケジュールに余裕を持たせましょう。
早い段階から準備をしないと、目的の期限に達成が間に合わなくなります。
⑥効力発生と登記
吸収分割では、締結した分割契約書で定めた効力発生日に、会社分割の効力が発生します。そして、その効力発生日から2週間以内に登記手続きを実施しなければなりません。一方、新設分割では、新設会社の登記日に効力が生じることになります。
なお、会社分割の登記では、登録免許税を支払わなくてはいけません。また、分割会社と承継会社とで登記を行うタイミングを合わせるなど、細かい間違いが発生しがちです。場合によっては、会社分割の登記を、専門家に依頼することも検討しましょう。その場合は司法書士がおすすめです。
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株主総会を省略できる会社分割
実は、会社分割を実施する場合に、株主総会を省略できる会社分割があります。本項では、株主総会を省略できる2種類の会社分割について内容を掲示します。
①簡易会社分割
簡易会社分割とは、対価として交付する株式などの財産価額が、承継会社の純資産額の5分の1(20%)以下となる会社分割です。この場合には、承継会社側の株主総会を省略できます。また、分割会社側も株主総会を省略できるケースがあります。
それは、移転する資産・権利の帳簿価額が分割会社の総資産額の5分の1以下となる場合です。分割会社と承継会社では、株主総会を省略できる条件が微妙に異なります。特に、「純」資産と「総」資産の違いは多くの場合に見落としがちです。
純資産と総資産では金額が大きく異なります。株主総会の省略可否を検討する際は、条件に十分留意して臨んでください。
②略式会社分割
略式会社分割とは、支配関係にある企業間において被支配会社(子会社)側の株主総会を省略できる会社分割です。ここでいう支配関係とは、親会社が子会社の議決権のうち10分の9(90%)以上を保有している関係になります。
子会社側は、議決権のほとんどを保有されている状態です。分割会社側が子会社の場合には、分割会社の株主総会を省略できます。逆に、承継会社が子会社ならば、承継会社の株主総会を省略できることになります。
まとめ
会社分割では、特殊な場合を除いて株主総会が必要です。しかも、単なる株主総会ではなく、特別決議を経なくてはいけません。条件が厳しいため、会社分割の実行が株主総会で否決される恐れもあります。
会社分割の実行には、株主の協力・理解が欠かせません。したがって、株主の協力や理解を事前に得たうえで、会社分割を実行しましょう。本記事の要点は下記のとおりです。
・会社分割とは
→会社から一部の事業を切り離して、ほかの誰かに売却する方法
・会社分割の方法
→吸収分割と新設分割
・適格会社分割とは
→非課税で行える会社分割
・会社分割のプロセス
①分割契約の約定または分割契約の策定
②書類の事前開示
③株主総会の招集通知
④株主総会の特別決議
⑤債権者の保護手続き
⑥効力発生と登記
・株主総会を省略できる会社分割
→簡易会社分割、略式会社分割
・簡易会社分割とは
→対価として交付する株式などの財産価額が、承継会社の純資産額の5分の1(20%)以下となる会社分割
・略式会社分割とは
→支配関係にある企業間において、被支配会社側の株主総会を省略できる会社分割
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