M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月22日更新会社・事業を売る
営業権の償却
営業権の償却とは、M&Aで買収した会社について、何年も利用できる資産の経費を数年に分けて返済するプロセスのことです。平成29年の税制改正によって営業権の償却額の計算で月数按分が必要となった点なども含めて、営業権を償却するときのポイントについて説明します。
営業権とは
M&Aを実施した際には、自社の財産や株式はもちろん、独自のノウハウや顧客データも統合します。
その際、営業権という考え方が重要となってきます。今回は、営業権の概要や営業権の償却について紹介します。まず、営業権の基本的な事項から説明します。
①営業権の基礎知識
営業権とは、その企業が保持している無形財産の価値を金額として表したものです。 例えば、同一業界のA社とB社がM&Aを実施したときに、B社は老舗ブランド企業だとします。
その場合、B社のブランド力は目に見えません。しかし、ブランド力は収益を生み出す貴重な財産であるため、営業権としてみなされます。 ブランド力のほかにも、信用力・販売力・顧客情報・人的資源なども、営業権の範囲となります。
大手企業ともなれば、世間的な認知度や幅広い顧客とのネットワーク、取引先との関係性なども、無形資産として営業権の範囲となります。ただ、営業権は曖昧な概念でもあるため、実際に算定することは簡単ではありません。
営業権の算定を行うのであれば、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがクロージングまでフルサポートいたします。
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②営業権として計上される額
営業権とは、無形資産を買収した際の金額が、売却会社の純資産を上回る部分のことです。営業権は「のれん」と呼ばれる場合もあります。つまり、将来的に利益が見込める超過収益力を、金額として帳簿に反映したものが営業権です。
例えば、A社が純資産200億円を持つB社を250億円で買収したとします。この差額の50億円は、B社の持つ莫大な無形資産の評価額です。この差額の50億円が営業権(のれん)です。計上する際にはのれん代と表記されます。
逆に、A社がB社を150億円で買収した場合、差額で生じた50億円は、負ののれんとして計上されます。
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営業権の償却とは
①「償却」の意味
償却とは、広義に借金の返済のことを指します。また、減価償却の略でもあります。 長期にわたり何年も利用できる資産の経費を、数年に分けて費用として計上します。つまり、高価な資産の購入後に、毎年少しずつ借金を返済していく手続きです。
なぜ分けて計上するかというと、高価なものを購入した際に、その年にまとめて経費で落とすのは難しいからです。
②営業権の償却とは
営業権の償却とは、買収した会社の価値を少しずつ返済していく手続きのことです。買収する際は、デューデリジェンスの実施が重要です。デューデリジェンスで買収先のブランド力や取引先とのネットワークを評価し、営業権としてカウントします。
この営業権がのれんとなるか、負ののれんとなるかは企業によります。のれんとなった場合には、営業権の償却をする必要があります。 簡単にいうと、買い物した金額を毎年少しずつ経費として計上するイメージです。
基本的に営業権は、無形減価償却資産と考えられ、その耐用年数は5年です。
デューデリジェンスには、財務や法務などの専門知識が必要です。そのため、ほとんどのM&Aケースにおいて、デューデリジェンスは会計事務所や会計系アドバイザリーファームなどに依頼するのが得策です。
デューデリジェンスでは、公認会計士・税理士・弁護士といった専門性や分析能力に長けた資格保有者が担当します。デューデリジェンスを行う専門家には、M&Aの重要部分を担う責任感も必要不可欠です。
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国際会計基準での営業権償却
日本では、基本的に営業権の償却が必須となっています。なぜなら、無形資産であるブランド力や顧客とのネットワークは年月とともに変化していくと考えられているからです。
一方で、国際会計基準(IFRS)では、原則的に営業権の償却は禁止されています。その理由には、以下のものがあります。
- 営業権償却には合理的根拠がない
- 営業権の価値は減るものではない
- 価値が下がってから減損処理を実行すればよい
現に国際会計基準では、基本的に営業権償却は実施されません。例外として、統合後に営業権の価値が著しく低下したときにのみ、減損処理を実施します。国際会計基準のほうが、営業権の償却がないぶん大きな利益が見込めます。
しかし、売却をする側としては、企業価値を明確に数値化できる要因が減ってしまうリスクが出てきます。このように国際会計基準と日本の会計基準では、営業権の償却に大きな差があります。また、どちらが得であるかの判定が難しいです。
なお、日本でも特例のケースにおいては、一括償却が認められています。
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営業権の償却限度額の見直し(税制改正の内容)
平成29年に税制が改正され、これまでの営業権償却に関する決まりが変わりました。
改正前は基本、営業権の計上額を5年で除した金額に、当該事業年度の月数を乗じて計算した金額が償却金額となっていました。また、営業権がある期の途中に発生しても、会計期間が1年の法人は、1年分の営業権償却を実施する決まりでした。
例として、事業年度4月1日から3月31日までの会社があったとします。その会社が4,000万円の営業権(のれん)を11月1日に発生させたら、4,000万円÷5年=800万円を当期の損金として計上すればよいとされていました。
月数按分が不要な分、改正後と比べて営業権の減価償却額が多くなります。つまり、損金計上額が増えるので、経営者にとって有利でした。
しかし、改正後は、「営業権を取得した日から事業年度終了の日までの日数を、営業権の額に掛けて償却額を計算する仕組み」に変わりました。
上記の例と比べると、どのタイミングで営業権(のれん)が発生したとしても、月数按分が必要になりました。つまり、改正前と比べると、経営者にとって不利な営業権償却の仕組みとなりました。
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まとめ
企業価値には、その年数に合わせて生まれる歴史や跳躍的に伸びた事業実績など、さまざまなものが含まれます。その中でも特に営業権の評価は複雑です。M&Aを実施する際には、収益性のみならず営業権の償却についても考慮しましょう。
また、今後も税制改正によって、営業権の償却の仕組みが変わる可能性があります。円滑な会社経営を実現するためにも、営業権償却に関する税制には引き続き注意が必要です。
今回の要点をまとめると、以下になります。
・営業権とは
→その企業が保持している無形財産の価値を金額として表したもの
・営業権の償却とは
→買収した会社の価値を、少しずつ費用として返済する手続き
・国際会計基準での営業権償却
→原則、営業権の償却は禁止(⇔日本では、基本的に営業権の償却が必須)
・平成29年の税制改正のポイント
→営業権の償却額計算に、月数按分が必要となった
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