2022年6月6日更新資金調達

デットエクイティスワップとは?メリット・デメリットや手続きを解説

デットエクイティスワップとは、債務と株式を交換することです。債務とは返済義務のある有利子負債、株式とは返済義務のない自己資本をさします。企業再生ファンドや銀行はもちろん、事業承継や相続対策として中小企業が自ら実施するケースもあります。

目次
  1. はじめに
  2. デットエクイティスワップとは
  3. デットエクイティスワップのメリット・デメリット
  4. デットエクイティスワップの手続き
  5. デットエクイティスワップの会計処理と仕訳
  6. デットエクイティスワップにおける債権の時価と株価
  7. 中小企業における役員借入金のデットエクイティスワップ
  8. デットエクイティスワップの事例
  9. まとめ

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はじめに

経営改善において、財務体質の改善は必要不可欠な事項です。財務体質の改善には数々の方法があります。

その中でも財務体質改善の手法であるデットエクイティスワップは、さまざまな企業で活用されています。今回の記事では、デットエクイティスワップについて詳しく解説します。

デットエクイティスワップとは

デットエクイティスワップとは、債務(Debt)と株式(Equity)を交換(Swap)することをさします。債務とは返済義務のある有利子負債をさし、株式とは返済義務のない自己資本をさします。

つまり、デットエクイティスワップでは、返済義務のある有利子負債が消滅する代わりに、債権者側は株式を持つことになります。

DESや債務の株式化とも呼ばれるこの手法は、財務体質の改善を目的に行われます。企業再生ファンドや銀行はもちろん、事業承継や相続対策として中小企業が自ら実施するケースもあります。

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デットエクイティスワップのメリット・デメリット

この項では、デットエクイティスワップのメリットとデメリットについて解説します。

デットエクイティスワップのメリット

デットエクイティスワップでは、経営陣・株主側と債権者側のそれぞれにメリットがもたらされます。

経営陣・株主に関しては、有利子負債が削減されるメリットがあります。借りていた借金がなくなるうえに、利息の支払いが不要です。負債の削減により財務体質が大幅に改善されることで、企業の倒産リスクを低下させるメリットも期待できます。

一方、債権者は負債の代わりに株式を保有することになるため、キャピタルゲインやインカムゲインを獲得できるメリットがあります。DESの後に業績が改善されることで、負債金額の数倍以上のキャッシュを得られる可能性もあります。また、株式を保有しているだけで、インカムゲイン(配当金)も受け取れます。

このように、デットエクイティスワップは両者(経営陣と債権者)にとってメリットのある手法です。

デットエクイティスワップのデメリット

デットエクイティスワップには、メリットだけでなくデメリットもあります。

経営陣・株主側のデメリットの一つは、債権者から経営に干渉される点です。DESにより債権者が株主になるため、従来よりも経営改善に干渉できます。負債を減らせる代わりに経営の自由度が低下する恐れがあるため注意が必要です。

また、債権者側には、債権よりも回収順位が後回しになるというデメリットが生じます。債権と株式を比較した場合、債権の方が回収できる順位が早く、株式は後回しとなります。さらに、本来回収できるはずのキャッシュを、株式に交換したことで回収できなくなるリスクがあります。

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デットエクイティスワップの手続き

次に、デットエクイティスワップの手続きについて解説します。デットエクイテゥスワップの方法には、以下の2種類があり、それぞれ手続きが異なります。

  1. 現物出資型(通常のDES)
  2. 金銭出資型(擬似のDES)

①現物出資型(通常のDES)

現物出資型とは、債権者が債権を現物出資するデットエクイティスワップであり、一般的なDESの方法です。この方法では、現物出資された債権に応じて株式が発行されます。

また、現物出資型のデットエクイティスワップでは、債権者と会社側でDESの実行を合意したうえで、第三者割当増資の手続きを実施します。このとき、債権者側は合意するだけであり、煩雑な手続きは必要ありません。

②金銭出資型(擬似のDES)

金銭出資型とは、債権者が現金を払い込むデットエクイティスワップであり、擬似DESとも呼ばれます。

債務者である会社は、払い込まれた現金を借入金の返済に充てるため、現物出資型と同様の効果を得られます。また、金銭出資型のデットエクイティスワップでは、現物出資型の手続きに加えて、現金による債務の弁済手続きも実施します。

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デットエクイティスワップの会計処理と仕訳

この項では、デットエクイティスワップの仕訳について、債権者と債務者にわけて説明します。DESの仕訳方法は以下の2種類です。

債権者の仕訳

債務者に関しては、評価額説により仕訳を実施します。借方には有価証券や債権譲渡損、貸倒引当金を計上し、貸方には貸付金を計上します。

債務者の仕訳

債務者側では、券面額説と評価額説のどちらを用いて仕訳しても良いとされています。券面額説を採用する場合は借方に借入金、貸方に資本金を計上します。評価額説を採用する場合は借方に借入金、貸方に資本金や債務消滅益を計上します。

デットエクイティスワップにおける債権の時価と株価

この項では、デットエクイティスワップにおける債権の時価について解説します。DESにおける債権時価の評価方法は、企業再生とそれ以外の場合で異なるため注意が必要です。

企業再生

債務者側では、合意した再建計画で期待される回収可能額に基づいて時価を算定します。一方、債権者側であっても、合意した回収可能額に基づいて、交付される株式の時価を評価します。

企業再生以外で非上場企業のDESの場合

企業再生以外の場面であり、かつ非上場企業のDESでは、合理的な時価の算定が困難です。原則的には、内国法人の資産の評価換えによる評価損の損金算入規定における通達に基づいて時価を算定します。

また、過去の売買実例がある株式に関しては、事業年度終了日前から起算して6ヵ月間の売買実例価額のうち、適正と認められるものを時価とします。さらに、売買実例がない場合には、類似企業の株価を参考に時価を算定します。

上記いずれのケースにも該当しない場合は、直近の事業年度終了時における1株当たり純資産価額などを参考にして時価を算出します。デットエクイティスワップの時価評価は専門性が高いため、専門家に相談することをおすすめします。

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中小企業における役員借入金のデットエクイティスワップ

この項では、役員借入金のデットエクイティスワップについて説明します。

中小企業の中には、役員からの資金借り入れによって運転資金確保している会社があります。そのような会社の中には、役員借入金の存在により債務超過に陥っている企業もあり、銀行からの評価下落や相続税負担の増加といったデメリットを招きます。

健全に会社を経営するうえで、役員借入金のデットエクイティスワップ実行は非常に有用な手段です。役員借入金に対してDESを実施することで、帳簿上の債務額を減額できます。デットエクイティスワップの際は、回収可能性を考慮して債権(役員借入金)の時価を算定します。

役員借入金を除いても債務超過が解消されない場合は、回収可能性がゼロとなるため、役員借入金の時価もゼロとみなします。時価0円でDESを実行すると、債務免除益(簿価−時価)に対して税金が課税されるため注意しましょう。

デットエクイティスワップの事例

最後に、デットエクイティスワップの事例をご紹介します。

①シャープ

2015年、経営難に陥っていた大手電機メーカーのシャープは、デットエクイティスワップを実行し、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行からの債務のうち、2,000億円を株式に振り替えています。

みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行がシャープに出資したことで、一時的に財務状況は改善されました。しかし、結果的に、デットエクイティスワップによりシャープの株価は下落しています

②ランド

2015年、不動産の開発を手がけるランドは、デットエクイティスワップを公表しました。リーマンショック以降、不動産業界が急激に冷え込んだ影響を受け、ランドも業績が悪化し、DESの実行を余儀なくされました。

しかし、デットエクイティスワップの結果、一時的に株価が下落したものの、その後しばらくして持ち直した事例です。

③TIS株式会社

2020年1月、TIS株式会社は、Sequent Software Inc.の株式を取得し、連結子会社化することを決定しました。

Sequentの既存株主であるファンド、発行済株式の現金対価による譲受、第三者割当による新株発行の現金対価による引受けおよび同社に対するデットエクイティスワップを通じて、Sequent株式の取得を実施するとしています。

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まとめ

今回の記事では、デットエクイティスワップを詳しく解説しました。DESで得られるメリットは非常に大きいですが、デメリットも大きいものであるため注意が必要です。

要点をまとめると下記になります。

・デットエクイティスワップとは
→債務と株式を交換すること

・デットエクイティスワップのメリットとは
→経営陣・株主:有利子負債を削減できる、債権者:キャピタルゲインやインカムゲインを獲得可能である

・デットエクイティスワップのデメリットとは
→経営陣・株主:債権者が経営に干渉すること、債権者:回収順位が後回しになること

・デットエクイティスワップの手続き
→現物出資型か金銭出資型かで手続きが異なる

・デットエクイティスワップにおける債権の時価
→企業再生:合意した回収可能額に基づいた時価、企業再生以外:直近の事業年度終了時における1株当たり純資産価額などを参考に時価を算出

・役員借入金のデットエクイティスワップ
→回収可能性を考慮したうえで債権(役員借入金)の時価を算定

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