2021年5月1日更新事業承継

事業承継における種類株式の活用方法

種類株式は事業承継を円滑に達成するために役立ちます。しかし、種類株式は使い方によって株主の利益や権利が侵害され、株主の反対を受ければ導入できないため注意が必要です。種類株式の意味、種類、種類株式導入の手続き、種類株式を活用した事業承継の例について解説します。

目次
  1. 事業承継における種類株式の活用方法
  2. 事業承継における種類株式とは?種類株式の意味
  3. 種類株式の種類とそれぞれの内容
  4. 種類株式を導入する際の手続き
  5. 事業承継における支配権の確保と対策
  6. 種類株式を活用した事業承継の例
  7. まとめ

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事業承継における種類株式の活用方法

事業承継を円滑に実行するにはどのようにすればよいか、悩む方は多いです。事業承継の方法は多種多様であり、方法が定まらないこともあるでしょう。

そこでおすすめする手法が、種類株式を活用した事業承継です。種類株式は様々な機能を持ち、ときに事業承継を円滑にし、後継者に会社を任せるうえで役立ちます。今回は事業承継における種類株式の活用方法について解説していきます。

事業承継における種類株式とは?種類株式の意味

まずは種類株式がどのようなものかお伝えします。通常、投資家が売買する株式を普通株式といいますが、それに対し種類株式は何かしらの機能が付加された株式をさします。種類株式は普通株式と異なり、一定の決定事項に基づいた権利内容が定められています。

そのため種類株式を有することで、その株主(種類株主)は何かしらの権利行使や利益の獲得が可能です。種類株主の発行は定款を変更することで完了します。

簡単にいえば、種類株式に関する事項を定款に記入すればよいということになりますが、ただ、定款の変更には株主総会の特別決議が必要となります。そのため、株主の同意が得られない種類株式は発行の可能性が低いので注意しましょう。

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種類株式の種類とそれぞれの内容

種類株式は9種類あり、それぞれ機能が異なります。それぞれの機能は重ねて付加することができ、複数の機能を持った株式を発行することも多いです。ここでは、それぞれの種類株式の内容を解説します。

①剰余金の配当

剰余金配当の優劣に関する規定をプラスした株式です。優先株式の場合は株主への剰余金の配当が優先され、劣後株式であれば後回しになります。ちなみに、通常の順番で配当される株式は普通株式です。

②残余財産の分配

会社の解散などで発生した残余財産の分配に関する規定を付加した株式です。こちらも剰余金のように、優先株式・劣後株式・普通株式があり、それぞれ残余財産の分配の順番が異なります

③議決権制限株式

株主総会の議決権を限定する株式が、議決権制限規定になります。この株式は議決権の一部、または全部が制限されます。そのため、議決権がない無議決権株式も発行できます

議決権制限規定をプラスした株式を持つ株主は、株主総会での議決権が制限されるため、経営陣に決定権を集約できます。

④譲渡制限株式

譲渡制限株式は他者への譲渡を制限する株式です。ベンチャー企業や中小企業が会社の買収、株式の分散を防ぐために発行することが多く、譲渡制限株式を発行している会社は非公開会社といわれることもあります。

⑤取得請求権株式

取得請求権株式は、株主が会社に対して株式を買い取ってもらうよう請求できる株式のことです。会社が買取を保証しているので、株主にとってはメリットがある種類株式だといえます。

⑥取得条項付株式

取得請求権規定に似ていますが、取得するのは会社の側となります。一定の事由を設定したうえで、その事由を迎えた際に、会社が株式を強制的に買い取ることができます。

このため、取得条項規定は会社にとって、事業承継にも利用可能で、議決権制限規定と組み合わせて使用することも多いようです。

⑦全部取得条項付株式

会社が対象の株式を全て取得する規定を付加する種類株式です。ただ、株式を取得する際は株式総会で決議を得る必要があります。

⑧拒否権付株式

拒否権とは、株式総会や取締役会の一定の事項の決議を拒否できるものです。拒否権規定をプラスした株式は黄金株とも呼ばれ、敵対的買収の防止に役立ちます。そのため、買収防衛策として導入するケースがあります。

ただ、この株が万が一流出してしまうと経営に悪影響をおよぼす可能性があるため、譲渡制限規定をプラスするケースも少なくありません。

⑨役員選任付株式

役員選任付株式は、この株式を所有する株主で構成する種類株主総会において、取締役や監査役の選任に関する議決権が付加されるものです。

経営陣人事に作用する種類株式は、委員会を設置する会社や公開会社は発行できません

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種類株式を導入する際の手続き

事業承継や買収防衛策のために種類株式を導入する手続きは、どのようなものなのでしょうか。種類株式の導入の手続きは、基本的に定款の変更と株主総会がメインです。種類株式に関する事項を定款に定め、その旨を決議する株主総会を行います。

決議を得た後に種類株式の設定や発行の登記を行い、導入は完了します。種類株式の導入の手続きは、そこまで手間がかかりません。しかし、株主総会を行う必要があるため、株主から同意を得ることが何よりも重要です。

ある程度株主を抱える会社の場合、株主は自分の利益や権利を失うと判断すればその種類株式の導入に反発することがあります。そのため、経営陣と株主の利益や権利を損なわない種類株式を設定しましょう。

最初から種類株式の設定を詳細に決める必要はありません。まずは発行したい種類株式の概要で定款に定め、具体的な設定を決める形でも導入可能です。

普通株式を種類株式にするケースと種類株式を新発行するケース

気をつけるべきなのが、普通株式を種類株式にするケースと種類株式がすでに発行した状態で種類株式を新たに発行するケースです。普通株式を種類株式にする場合、全部取得条項付株式の発行や第三者割当増資を行うなど、手続きがかなり煩雑になります。

配当優先議決権制限種類株式を発行する旨の定款変更の特別決議を行うことで、会社を種類株式発行会社に変え、さらに普通株式を配当優先議決権制限株式に転換する(一部の株主のみ)旨に対する同意書を全株主から文書でもらい、手続きを完了させることもできます。

種類株式がすでに発行した状態で種類株式を発行する場合は、通常の種類株式導入の手続きと変わりません。

しかし、元々の種類株式を所有する種類株主に損失が発行する可能性があれば、株主総会に加えて種類株主総会を開催して決議を得る必要があります。

事業承継における支配権の確保と対策

種類株式を利用する事業承継についてお伝えする前に、事業承継における支配権の確保と対策の重要性についてご説明します。事業承継において後継者の支配権の確保は、非常に重要なプロセスです。

株式会社の場合、経営権を司る株式が分散する状態では重要な経営戦略の決定を株主総会で覆されやすく、思うような経営となりにくいです。とりわけ後継者と敵対する不都合な人物に株式が渡り、経営に対して一定以上の発言権を有すれば、せっかく定めた後継者が経営者になっても、その地位を脅かされる可能性があるでしょう。

そのため、経営者は事業承継を行う際、後継者が確実に株式の100%を取得し、支配権を確保することが重要です。中小企業であれば、それこそ経営者が100%の株式を有する株主になることが理想的だといえるでしょう。ただ、株式を100%取得する事業承継は簡単ではありません。

事業承継では、相続の形で株式を後継者に取得させることが多いです。しかし相続による事業承継は、確実性が高いとはいえません。例え遺言書で株式の相続人を具体的に定めても、遺留分減殺請求などで相続財産である株式が分散する恐れがあります。

経営者が亡くなれば、相続を完全にコントロールするのは難しくなるため、相続による事業承継は、後継者候補が複数いるケースでは心もとない面もあります。前述する手法を活用すれば、後継者の支配権の確保がより確実になります。

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種類株式を活用した事業承継の例

種類株式を活用した事業承継は様々な方法があります。ここでは代表的なものを3つご紹介します。

①譲渡制限付株式を活用した事業承継

会社法における譲渡制限規定を活用した事業承継は、いたってシンプルです。会社が許可した相手のみ譲渡できる譲渡制限株式を発行し、後継者に支配権を獲得できるよう取得させるものです。

譲渡制限株式は相続や合併などで一般承継された場合、会社の意向に関わらず株式の承継を行えます。つまり、後継者の確実な株式の取得が可能になるのです。また、譲渡制限株式であるため、株式の分散が抑えられるのも大きなメリットだといえるでしょう。

さらに、譲渡制限株式であれば他会社からの買収も防ぎやすく、敵対的買収に対する買収防衛策として使えます。

売渡請求権に注意

譲渡制限株式しか発行していない非公開会社は、売渡請求権について注意が必要です。これは承継した譲渡制限株式に対して売渡を請求できるもので、相続や合併などで承継が発生したことを知った日から1年以内であれば、いつでも請求できます。この売渡請求権は、事業承継においてとても扱いにくいです。

売渡請求権を一度使用すれば、当該株式を持つ株主は議決権を有せません。支配権を確立できる株式を所有していても、売渡請求権を拒絶できないのです。

売渡請求権は会社と当該株主の間で株式を売り渡す価格に同意がなければ実行できないため、ここで抵抗することは可能です。

話し合いが上手くいかなければ訴訟に発展するケースもあるため、どちらにせよ円滑な事業承継は阻害されるでしょう。

そのため、できるだけ後継者以外の株主がいない状態、あるいは後継者への反対勢力が株主にいない状況で実行することをおすすめします。

②議決権制限規定と取得条項規定を活用した事業承継

議決権制限規定と取得条項規定を活用した事業承継も有効的な方法です。後継者が確定した場合、議決権がある株式を後継者のみに取得させ、他の株主には議決権制限株式(議決権制限規定を付加した株式)を取得させれば、後継者の支配権が成立します。

後継者候補が複数いる場合は、素質を見極めるまでそれぞれ取得条項規定が付加した議決権制限株式を取得させ、後継者が定まってからは株主が死亡するなどの事由で自動的に議決権制限株式を議決権付きの株式に転換する方法もあります。

議決権制限株式の活用は、株主の権利や利益を侵害する恐れがあるため株主との話し合いが重要です。

③拒否権規定を活用した事業承継

拒否権規定を活用した事業承継は、後継者が実際に経営を行う場面に主眼が置かれます。

拒否権規定を付加した株式、つまり黄金株は、引退した経営者があらかじめ持つことで、後継者が経営を行うときに暴走したり、無茶な経営戦略を行ったりする際に、株主総会で後継者の提案を阻止できます。

後継者の手綱として黄金株を持つということです。後継者が安定すれば黄金株を後継者に取得させ、事業承継は完全に完了します。黄金株はかなり強い株式なので、他の株主に取得させないようにします。

※関連記事
拒否権付株式とは?メリット・デメリットや問題点、発行手続きを解説

まとめ

種類株式は、事業承継を円滑に達成するうえで非常に役に立ちます。上手く活用すれば後継者に発生し得る様々なリスクを除外できるでしょう。しかし、種類株式は使い方によって株主の利益や権利が侵害され、株主の反対を受ければ導入すらできません。

種類株式を導入する際は、株主の同意が得られるように設定する必要があります。

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