M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年4月3日更新事業承継
事業承継の手続きの流れや必要書類・税金を紹介【法人・個人事業主向け】
事業承継に必要な手続きは、法人と個人事業主で異なります。法人の事業承継は基本的な手続きの終了で完了し、個人事業は後継者が同じ屋号を用いて開業することで完了となる仕組みです。本記事では、法人と個人事業主の事業承継時における手続きなどを解説します。
目次
事業承継とは?
事業承継とは、会社の経営を次の人に渡すことを意味します。これは、経営者が急に亡くなったり、予期せず引退したりした場合に、会社をスムーズに運営し続けるための重要な手続きです。間違った方法で承継が行われると、家族や従業員に大きな問題が起こることもあります。
事業承継は、親から子への引き継ぎや社内後継者への移行だけでなく、他の会社への売却の際にも必要です。適切に事業承継を行えば、新しい経営者が就任しても、従業員の仕事や会社の価値は守られ、会社の歴史やブランドが続けられます。
近年、多くの中小企業では経営者の高齢化が進行し、事業承継について検討を始める経営者が増えています。しかし、いざ事業承継を行うときに、どのような手続きが必要なのかわからないケースも多いようです。
そこで本記事では、事業承継を成功させるうえで必要な手続きについて詳しく解説します。まずは、事業承継の概要について、以下3項目に分けて確認しましょう。
- 事業承継の基礎知識
- 事業承継で必要となる対策
- 個人事業主と法人の違い
①事業承継の基礎知識
最初に、事業承継について最低限知るべき知識を解説します。事業承継とは、会社・事業に関わる全ての権利・資産を後継者に譲渡する行為です。具体的には、以下の権利や財産を後継者に引継ぎます。
- 経営権
- 資産(自社株式など)
- 知的財産(人材や技術力)
事業承継を成功させるためには、上記3つを円滑に引継ぐ必要があります。後述しますが、事業承継は誰に引継ぐかによって、必要な手続き・注意点などが異なるので注意しなければなりません。
従来は経営者自身の子どもに事業承継する形が一般的でしたが、近年は従業員や第三者に事業承継する事例も増加し、子どもを後継者に指名できないケースでも事業承継をあきらめる必要はありません。
しかしながら、従業員や第三者に引継ぐのであれば、早期に「誰に引継ぐか」を決めることが肝要です。そのため、事業承継の手続きに取りかかるタイミングは、早いほどよいでしょう。
②事業承継で必要となる対策
事業承継は、思い立って即座に実行はできません。事業承継を突然行っても成功しない事例が多いため、極力、早くから対策を始めるのが得策です。具体的には、事業承継をするにあたって以下3つの対策が有効となります。
- 自社の現状把握
- 会社の磨き上げ
- 事業承継計画の作成
まずは自社の現状を知ることで、事業承継までにどのような手続きが必要なのか把握しましょう。会社の磨き上げ(企業価値の向上)により、後継者に引継ぎやすくなります。そして、事業承継計画の作成により、必要となる手続きを可視化するのが肝要です。
ただし、これら3つの対策は、事業承継を成功させるための必要最低限の対策となります。詳細な対策内容は、中小企業庁が策定した事業承継ガイドラインに記載されていますので、事業承継の前に行うべき対策を詳しく知りたい場合は、そちらも参照しましょう。
③個人事業主と法人の違い
個人事業主と法人では、事業承継に必要な手続きが大きく異なる点も把握しておきましょう。誰に事業を引継ぐのかによっても手続きが異なるため、まずこの点を認識しなければ、しかるべき対策を講じられません。
事業承継の手続きの大まかな流れ
事業承継の大枠を理解するために、手続きの主な流れを以下の4項目に分けて取り上げます。
- 後継者との合意形成
- 親族・従業員など関係者への周知
- 株式譲渡の実施
- 個人保証・担保の承継
①後継者との合意形成
事業承継を行ううえで、後継者との合意形成は最優先で進めるべき手続きです。いかなる方法を用いる場合でも、後継者との合意なしに事業承継は進められません。
たとえば、親族内承継をする場合、経営者が心の中で親族から後継者を選定していても、後継者候補となる本人に引継ぐ意思がなければ事業承継は不可能です。無理やり事業承継を進めれば、親族間の関係に亀裂が入り、今後の会社・事業運営に深刻な影響が生じてしまうでしょう。
また、親族外承継をする場合でも、後継者との合意形成は必要不可欠です。優秀な従業員に後継者になってほしいと考えても、本人に引継ぐ意思がなかったり、その従業員における家族の反対などで後継者になってもらえなかったりするケースがあります。
なお、社外の第三者に事業承継する場合は仲介者を通じて交渉するケースが多いです。事業承継を積極的に考えている候補者から選べるため、合意形成しやすいメリットがあります。
②親族・従業員など関係者への周知
事業承継では、選定した後継者について親族・従業員など関係者に周知する手続きも必要不可欠です。ここでは、特に株式や事業用資産の相続権を有する親族から理解を得ておくと、将来的なトラブルを回避できます。
一方で、理解が得られなかった親族に相続の不公平性に関する不満を持たれると、後継者に対して遺留分減殺請求を行うといったトラブルが発生する可能性があり、後継者に金銭的負担がのしかかりかねません。
また、対従業員との関係では、後継者を周知させることで信頼・信用を集める意義があります。後継者に関して従業員が不満を持てば、承継後の業績低下・優秀な人材の流出などにつながるおそれがあるでしょう。
したがって、単純な周知だけでなく、経営権の移行前から後継者に業務を引継ぎながら実績を作らせたり、従業員との関係性を構築させたりして、従業員が後継者を受け入れるための土壌作りを進めるようにしましょう。
③株式譲渡の実施
法人の事業承継の場合、経営者が持つ自社株式を後継者に譲渡して、経営権を承継する必要があります。株式譲渡の方法は、「相続」「贈与」「売買」の3種類です。
相続では、経営者の死亡時に株式が相続により、親族である後継者に譲渡されるため、経営者は株式が後継者に移動するのを直接、確認できません。そのため、自身の死後に確実に株式譲渡が行われるよう入念な準備が必要です。
贈与では、経営者の存命中に株式を後継者に譲渡する「生前贈与」が採用されます。後継者への株式移動を経営者が見届けられるため、安心感の面でメリットがある方法です。
株式売買は、売買取引となるため後継者に株式を買い取るための資金が求められます。資金を準備できない場合は、株式売買による譲渡は実施できないため注意しましょう。
④個人保証・担保の承継
株式譲渡では、個人保証や担保の承継も行われます。経営者が会社・事業の借入金のために自宅・資産などを担保に入れている場合、借入先の金融機関に個人保証や担保を外してもらったうえで後継者に引継げるよう手続きを進めるとよいでしょう。
しかし、後継者への保証や担保の引継ぎを、金融機関が認めないケースも中には見られます。中小企業の事業を大手企業が引継ぐケースであれば、このような心配はほとんどありませんが、親族や従業員が引継ぐ場合は注意が必要です。
事業承継の手続きと必要書類・税金一覧
事業承継の手続きを進めるには、方法を問わず以下が必要です。
- 時間
- 後継者
- 周囲の理解
- 資金
事業承継を検討する経営者は、まず上記を確保する準備から始めるとよいでしょう。ここからは、「親族内承継」「親族外承継」「M&Aを用いた事業承継」「個人事業の事業承継」の4ケースに分けて見ていきます。
親族内承継
親族内承継とは、実の子供など経営者の親族に対して事業承継することです。親族内承継の場合、「相続」もしくは「贈与」の手続きによって、自社株式を譲渡するのが一般的となっています。
相続
相続では、経営者が亡くなった後に後継者へ株式などの遺産が譲渡されます。ここで重要なのは、遺言書の有無です。遺言書を作成していない場合、相続人の構成に応じた法定の割合で株式に相続が発生してしまいます。
後継者に対して株式を譲渡する旨を定めておかなければ、事業承継が成立しないおそれがあるため注意しましょう。また、遺留分に対する対策も考えておく必要があります。遺留分とは、一定範囲内の親族に最低限保証されている相続財産分のことです。
遺留分によって株式が分散すると、その後の事業運営が困難となる可能性があります。遺留分の対策としては、経営承継法の特例活用が効果的です。これにより、事業承継で引継ぐ株式を遺留分から除外したり、遺留分に含める価額を固定したりできます。
贈与
贈与とは、経営者が存命のうちに後継者に対して株式などを譲渡することです。贈与による事業承継では、株式譲渡の手続きのほか、株式が非公開の場合は取締役会もしくは株主総会の承認手続きが必要になります。
必要書類
親族内承継で必要となる可能性のある書類は以下のとおりです。
- 遺言書:後継者が相続で事業承継するケースでは、後継者に株式が集中するよう遺言書で指定します。
- 生前贈与契約書:相続争の火種を残さないため、生前贈与する場合に書面化しておくといいでしょう。
- 株式譲渡契約書:会社の株式を後継者に無償譲渡(贈与)する契約書であり、役割としては生前贈与契約書と同様です。
- 事業譲渡契約書:会社の事業や資産などを後継者に無償譲渡(贈与)する契約書であり、役割としては生前贈与契約書と同様です。
- 遺産分割協議書:遺言書がなく相続人が複数いる場合、被相続人の遺産をどのように分割するか協議した内容を記した書類です。
必要な費用・税金
相続では相続税、贈与では贈与税が後継者に対し発生します。自社の株式を売却して現金化し、納税資金にするわけにはいきませんから、後継者にとって税金対策は大きなテーマです。有効な対策方法としては、事業承継税制の活用があります。
事業承継税制とは、相続・贈与で事業承継した後継者が、一定の手続きを行って申請し、定められた要件を達成すれば相続税・贈与税の猶予・免除が認められる制度です。
ただし、作成する書類が多く手続きも複雑であるため、経営革新等支援機関に認定されているM&A仲介会社や士業事務所などに相談して手続きを進めることをおすすめします。
親族外承継
親族外承継とは、自社の従業員や役員など親族以外の第三者に事業承継してもらうことです。従業員や役員への事業承継は、特に社内承継と呼ばれます。それ以外のケースとしては、経営者の知人や取引先などの経営経験者が後継者となる例もなくはありません。
なお、M&Aによる事業承継も広義では親族外承継に該当しますが、ここでは別扱いとします。親族外承継で圧倒的に多いのは、社内承継です。したがって、社内承継を念頭に説明を進めます。親族外承継で後継者が会社の経営権を取得する手段は、株式の買取りです。
日本の中小企業のほとんどは株式に譲渡制限がついていますので、株式の譲渡にあたっては、譲渡者である現経営者が、会社(取締役会または株主総会)に譲渡承認申請する手続きが発生します。
必要書類
親族以外の第三者が後継者となるときは、以下の書類が必要となります。
- 株式譲渡承認請求書:現経営者(株式譲渡者)が会社に対し株式譲渡の承認を請求する書類です。
- 株式譲渡契約書:現経営者と後継者間で行う株式譲渡の内容(条件)を定めた契約書です。
- 株式名義書換請求書:株式譲渡実施後、株主名簿の書換を行うよう、会社に対して現経営者と後継者が共同で提出する書類です。
- 株主名簿:会社の株主名・住所などが記載されている株主管理名簿です。
- 株主名簿記載事項証明書:書換られた株主名簿の内容を確認するために会社に発行させる書類です。
必要な費用・税金
後継者は株式を買取るわけですから、そのための現金が必要です。会社の全株式が対象ですから相応の金額になります。後継者がこの資金を用意できないと事業承継が実現しません。
現経営者としては、ある程度、ディスカウントするか、後継者が金融機関から融資を得られるよう相談に応じなければならない可能性があります。また、現経営者は、株式譲渡の対価を得ますから、その利益額(譲渡所得)に対して課されるのは所得税です。
株式の譲渡所得税は分離課税となっており、2022(令和4)年7月現在の税率は20.315%です。税金の内訳は以下のようになっています。
- 所得税:15%
- 復興特別所得税:0.315%(2037⦅令和19⦆年までの時限税)
- 住民税:5%
また、譲渡所得額は以下のように計算します。
- 譲渡所得=株式譲渡の対価-(株式取得額+株式発行時の手数料など)
- 株式取得額:中小企業のオーナー経営者の場合、会社の資本金額が該当
M&Aを用いた事業承継
親族内承継や親族外承継が行えない場合、M&Aによる事業承継を検討しなければなりません。近年は親族や社内で事業承継を実行できないケースが増加し、M&Aを活用して外部の第三者に事業承継する事例が増加しています。
M&Aを用いれば、外部から幅広く後継者を探せる点がメリットです。会社売却により、まとまった創業者利益の獲得も可能となります。ただし、M&Aの手続きには多大な費用や時間がかかり、従業員のモチベーションが下がりやすい点にも注意しなければなりません。
しかしながら、事業承継せずに廃業するよりもM&Aで事業を引継いだ方が、事業の存続を望む関係者から喜ばれます。今後の事業発展を期待できるため、経営者としてもメリットが大きいといえるでしょう。
仲介会社との提携仲介契約の締結
まずは、信頼できるM&A仲介会社を見つけてサポートを依頼します。M&Aでは非常に多くの手続きが求められるため、経営者が独力で遂行するのは極めて困難です。そのため、ほとんどのM&Aでは、仲介会社などの専門家に手続きを代行してもらいます。
仲介会社と提携仲介契約を締結する際は、契約期間・業務範囲・手数料・秘密保持契約などについて取り決めを行います。仲介会社ごとに手数料のシステムは異なり、仲介会社の選び方次第で必要となる費用は大きく変動するため注意が必要です。
買い手企業へのM&A打診
仲介会社との契約手続きが完了したら、買い手企業を探す手続きに入ります。まずは、「ノンネームシート」と呼ばれる匿名の資料を用いて買い手企業にM&Aを打診する手続きです。その後、買い手側がM&Aを実行したいと考えた場合、詳細な情報開示を行います。
そして、面談・基本的な交渉を経ると、基本合意書の締結手続きです。売り手側は、契約締結に至るまでの交渉過程で事業承継する相手にふさわしいか十分に見極めることが大切になります。基本合意書は、合意内容確認書という位置付けであり、法的拘束力はありません。
つまり、まだM&Aが成約したわけではないので注意しましょう。
デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側に関する詳細な情報を調査する手続きのことです。具体的には、売り手企業の財務状況・事業内容などを調査します。M&Aではデューデリジェンスが非常に重要で、M&A成功のために必要不可欠な手続きです。
デューデリジェンスの際、売り手側は自社にとって不利な情報を故意に隠してはいけません。M&Aの手続き中は隠せても契約後に発覚する可能性は大いにあり、後になって発覚すると訴訟などのトラブルに発展するおそれがあります。デューデリジェンスには誠意を持って協力しましょう。
買い手側から情報開示を求められたら、素直に従うことが大切です。なお、自社が抱える簿外債務・訴訟などは、企業価値が低下する要因となります。デューデリジェンスで発覚すれば、想定していた売却額よりも取引額が引き下がるケースは珍しくありません。
したがって、自社にとって不利な要素は、M&Aを実施する前段階から極力減らすよう心がけましょう。企業価値の向上はいずれの事業承継手法でも重要となるため、専門家のもとで企業価値を高める手続きを検討してください。
最終的な交渉・契約締結
デューデリジェンスが完了したら、買い手側により企業価値の算定手続きが実施されます。ここで算出した企業価値などをもとに、最終的な交渉手続きを行う流れです。双方の経営者が合意すると、M&A契約の締結となります。
ただし、契約締結しても、事業承継が完了したと安心するのはまだ早いです。M&A契約の締結後も、両社が無事に統合するよう手続きを進めなければなりません。この統合作業をPMI(Post Merger Integration)と呼びますが、PMIまでサポートする専門家に依頼すれば安心です。
必要書類
M&Aによる事業承継で用いられる書類は以下のとおりです。
- ノンネームシート:M&Aの取引先候補を探す際に提示する企業概要書だが社名は匿名状態のもの。
- 秘密保持契約書:M&Aの交渉を正式に開始する際に締結する契約書で、自社の機密情報漏えいを防ぐためのもの。
- 意向表明書:M&Aの交渉時に買い手側が提示する買収条件表明書だが、必須の手続きではない。
- 基本合意書:M&A交渉が大筋で合意したときに締結するが法的拘束力はない。
- 最終契約書:M&Aの最終交渉で合意したときに成約の証として締結する契約書。
なお、最終契約書とは便宜上の呼称で、実際には、用いられるM&Aスキーム(手法)名を冠した以下の例のような契約書名になります。
- 株式譲渡契約書
- 事業譲渡契約書
- 合併契約書
- 会社分割契約書など
必要な費用・税金
M&Aで必要な費用は、依頼するM&A仲介会社・専門家や売却額によって異なるため、ここでは一般的な費用を紹介します。専門家に依頼した場合は、設定された料金体系によって費用が計算されます。主な手数料は以下のとおりです。
- 相談料:正式依頼前の相談時に発生する費用だが、無料の会社が多い。
- 着手金:正式依頼契約締結時に発生する費用だが、無料の会社が増えてきた。
- リテイナーフィー:正式依頼契約締結後、毎月発生する顧問料だが、発生しない会社が多い。
- 中間金:基本合意書締結時に発生する費用で、成功報酬の一部前払い分だが、完全成功報酬制の会社では発生しない。
- 成功報酬:最終契約書締結後のクロージング(契約内容の履行)時に発生する手数料。
注意したいのは、成功報酬以外の手数料は、支払った後、M&Aが破談となった場合でも返金されません。また、成功報酬の計算は、M&A成約額などの基準額の金額帯ごとに異なる手数料率を掛け合わせて算出するレーマン方式を用いるのが一般的です。
あとから想定していた以上に費用がかかってしまったということのないよう、依頼する際は料金体系についてよく理解しておくようにしましょう。費用を抑えるためには、完全成功報酬制の会社を選ぶのもポイントです。
個人事業の事業承継
最後に紹介するのは、個人事業の事業承継手続きです。近年は法人の経営者と同様に、個人事業主の高齢化も進行しています。これに伴い、個人事業主の事業承継も増加中です。個人事業主の事業承継に関しては、以下3つの項目に分けて手続きを実施しましょう。
- 経営権の引継ぎ
- 従業員・取引先の引継ぎ
- 資産の引継ぎ
経営権の引継ぎ
まずは、経営権の引継ぎについて考えなければなりません。「会社が誰のものか」を表す経営権の譲渡手続きは、法人と大きく異なります。個人事業主の事業承継では、経営者が廃業したうえで後継者が同じ屋号を用いて開業すれば完了です。
経営者廃業手続きでは、以下の必要書類を提出しなければなりません。
- 個人事業に関する廃業届
- 青色申告の取りやめ届出書(青色申告を行っている場合)
- 事業廃止届出書(消費税の課税事業者の場合)
- 所得税および復興特別所得税における予定納税額の減額申請(予定納税者の場合)
上記のとおり、個人事業主ごとに必要な書類が異なります。このあと、後継者が開業届を出せば、事業承継の手続きは完了です。その際には、以下の必要書類を提出しなければなりません。
- 個人事業に関する開業届
- 所得税が発生する場合の青色申告承認書(青色申告を希望する場合)
- 青色事業専従者給与に関する届出書(青色専従者を雇用する場合)
事業承継の際は、後継者が屋号を引続き使用するケースがほとんどです。その場合は、開業届に同一の屋号を記載すれば問題ありません。ただし、屋号が商号登記されている場合は、法務局で名義変更の手続きが必要です。
なお、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば、配偶者などに対して支払う給与を経費として計上できます。該当する方は忘れずに提出しましょう。
従業員・取引先の引継ぎ
次に考えるべき手続きは、従業員や取引先の引継ぎです。家族経営で事業を営んでいても、パートやアルバイトを雇っているケースは珍しくありません。1人でも従業員がいる場合は、手続きを行う必要があります。従業員を引継いで事業を進める場合、雇用契約の更新が必要です。
具体的には、雇用契約や労働条件に関する書類を用意しなければなりません。雇用保険・労災保険などへの加入手続きも進めましょう。事業承継後も、従業員がこれまでどおりに働けるよう手続きを忘れずに進めてください。
取引先の引継ぎは、特別な契約がない限り、個別連絡ですませます。ただし、事業承継後に経営者の変更を突然伝えると、驚かせてしまう可能性が高いです。取引先の引継ぎに失敗すると、今後の事業に悪影響がおよぶおそれもあります。
事業承継後に取引先との関係が悪化するケースは珍しくなく、先代が築いてきた取引先との関係が壊れてしまい、業績が軌道に乗るまで苦労する後継者も少なくありません。
そのため、関係者に前もって後継者を紹介し、引継ぎ後も変わらぬ関係で両者が取引できるよう早めに対策しておく必要があります。
この手続きも後継者を育てていくために必要な1つのステップなので、後継者が決まったらできるだけ多くの取引先へ出向いて、関係の構築に努めることが望ましいです。
資産の引継ぎ
最後に考えるべき手続きは、資産の引継ぎです。店舗・設備などの資産を引継ぐ場合、個別で手続きが必要となります。このとき、有償か無償かによって必要な手続きが異なるため注意しましょう。
自身の子供や身近な従業員に事業承継する場合、資産を無償で譲渡するケースがほとんどです。無償で贈与すると、贈与税が発生します。贈与は年間110万円までなら非課税ですが、それ以上の部分は累進課税によって課税されるため納税が必要です。
節税対策としては相続時精算課税制度を活用するほか、贈与ではなく「使用賃貸」の形で不動産などの資産を後継者に譲渡するのも効果的になります。ただし、将来的に相続税の対象となるため、一過性の対策である点は把握しておきましょう。
この他にもさまざまな節税方法があり、ケースによって適切な節税手続きは異なるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
M&A・事業承継のご相談はM&A総合研究所へ
最近はM&Aによって第三者に事業承継する個人事業主が、事業売却(事業譲渡)の手法を用いています。事業売却では、事業を相手に売却する形で手続きを実施しますが、課税される税金や手続きが複雑化するため、個人で完了させるのは難しい部分も多いのが現実です。
M&A総合研究所では、専門的な知識や経験の豊富なM&Aアドバイザーが、培ってきたノウハウを生かして、M&Aによる事業承継を丁寧にフルサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aによる事業承継をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
事業承継の手続きをスムーズに行うためのポイント
事業承継をする際は手続き以外にも、その前段階で問題が発生することも少なくありません。いざ事業承継しようとしても、事前に対策しておかなければスムーズな引継ぎは不可能です。
ここからは、事業承継をスムーズに行うためのポイントを紹介しますので、事業承継を考え始めた段階で着実に取り組みましょう。
個人事業主と法人に共通するポイント
個人事業主と法人に共通する事業承継のポイントは、以下のとおりです。
- 後継者の選定・育成
- 相続・贈与の対策
- 相談窓口の活用
後継者の選定・育成
事業承継する場合、まずは後継者を選ばなければなりません。そして、選んだ後継者を育成する必要があります。たとえ家族や従業員でも、会社・事業の経営に詳しくないケースも多いです。
また、全ての取引先・人脈を把握していないので、今後のために後継者を紹介する必要があります。経営ノウハウの伝授や取引先への紹介などにより、後継者に経営者としての自覚を持たせるよう心がけましょう。
相続や贈与の対策
事業承継は、前もって実行すると決めたケースで実施できるとは限りません。たとえば、突然の相続によって急いで事業承継する場合もあります。そのため、早期に相続税対策を行う必要があるのです。これと同時に、贈与の対策も実施しましょう。
相続と贈与の対策では、事業承継税制、相続時精算課税制度、相続税・贈与税の基礎控除額など、さまざまな制度・仕組みが存在します。利用できる制度・仕組みは、経営者が健在のうちに検討・実行し、突然の事業承継にも対応できる体制を作ることが大事です。
生前贈与は、経営者の生存中に権利の移転ができるので有効な方法の1つですが、自社株式や事業用資産の後継者に対する集中は、民法上、他の相続人における権利で制限を受け、他の相続人における遺留分を侵害します。
そのため、相続人間の争いが生じて事業承継においてマイナスになることもあるため、遺産分割の方針を決めて計画的に進めましょう。
相談窓口の活用
事業承継に関する悩み(後継者不在・相続や贈与に関する具体的な対策がわからないなど)は、抱え込まずに相談窓口を活用してください。
公的機関の事業承継・引継ぎ支援センターや独立行政法人中小企業基盤整備機構、また、地域の商工会・商工会議所などでは、さまざまなニーズを抱える経営者の支援を行っています。
特に、各都道府県に設置されている事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継支援専門の公的機関なので頼りになるでしょう。また、M&Aによる事業承継を目指すのであれば、M&A仲介会社が相談先として適切です。
事業承継・引継ぎ補助金の活用
事業承継・引き継ぎ補助金は、企業の事業を継承する際に支援するための補助金制度です。事業承継に関わるコストやリスクを軽減することで、新たなオーナーや経営者が事業を柔軟に引き継ぐことを促進するために設けられました。
条件を持たすことで経済産業省(中小企業庁)から補助金が支給され、事業承継の手助けになります。詳細は以下の記事で解説していますので、手続きをスムーズに行うためにも参照してみてください。
任意後見制度の利用
経営者が高齢の場合、判断能力が下がってしまい法律行為ができなくなるケースも考えられ、そうなれば事業承継にも支障が生じかねません。このようなケースでは、任意後見制度などを用いることをおすすめします。
任意後見制度とは、認知症や傷害などの場合に備えてあらかじめ後見人を決める制度です。制度を活用することで、定められた任意後見人が任意後見監督人の下、契約で取り決めた特定の法律行為を代行できるようになります。
法人の場合のポイント
法人の事業承継の場合は、以下のポイントも押さえましょう。
- 株式の整理
- 事業用財産の整理
株式の整理
法人の事業承継では、株式譲渡を行う必要があります。このときに後継者以外の人物が株式を保有していれば、株式を買い取るなどして後継者が経営をコントロールできるよう工夫しましょう。
しかしながら、後継者に株式を買い取るだけの資金力がないケースもあります。会社が買い取りを行ったうえで後継者に買い取らせる、または相続などで引継ぐ選択肢を利用して株式を整理することが大切です。
事業用財産の整理
特に中小企業の場合、事業用に使っている財産(土地や建物)を経営者個人が所有しているケースが少なくありません。また、相続時には遺書があっても、遺留分を請求されてしまえば、その分は請求した人に相続されます。
遺留分の相続が事業に関係のない財産であれば問題ありませんが、事業で必要な財産にまで遺留分が及ぶと今後の経営にとって支障です。したがって、経営者が健在のうちに後継者に贈与させるなどの対策が必要になります。
相続開始前の段階で、相続人全員から事業用財産を遺留分から除く同意を得る選択も効果的です。同意を得た後に「経済産業大臣の確認」「家庭裁判所の許可」といったハードルがあるものの、手続きがすめば遺留分を請求されても、事業用の財産は相続されずに確保できます。
なお、事業用財産には株式も該当するため、株式も忘れずに同意を得て手続きを行いましょう。
会社法の活用
経営支配権の確保も大切ですから、株式の分散を防ぐ対策を行うことも非常に重要です。後継者に株式を集中させる方法に、生前贈与、相続時精算課税制度の活用、遺言書などがあります。2006(平成18)年に施行された会社法もあるので、積極的に生かしましょう。
後継者の資金負担軽減
経営承継円滑化法は、所定の手続きを行うと、非上場株式にかかる相続税・贈与税の納税が猶予されます。また、生前贈与された自社株式を遺留分から除く除外特例や、生前に贈与された自社株式の評価額を固定する固定特例などもあります。
金利や期間を考慮して用いることを検討し、専門家のアドバイスを受けながら前もってしっかりと考えましょう。いろいろな制度を知って活用することが大切です。
事業承継計画の5つの策定方法
この章では、事業承継計画の策定方法について見ていきましょう。
①後継者選び
最初に、後継者を誰にするのか決めます。親族内承継、親族外承継、M&Aによる事業承継で後継者を選ぶことが可能です。将来的に、会社のためにどの選択を行えばよいのか、時間をかけて決めましょう。
②現状を適切に把握する
事業承継の指針となる「事業承継計画」を策定する場合、会社・事業に関する現状を適切に把握する必要があります。現状を把握するには、さまざまな観点から会社・事業をとりまく状況を正確に認識しなければなりません。ここで認識すべき情報には、以下の項目があります。
- 経営資源について
- 経営リスクについて
- 経営者の所有資産や負債について
- 後継者候補について
- 相続発生時に予想される問題点と解決方法について
各項目で把握すべき情報はさらに細分化されるため、現状把握を十分に行うためにも専門家にサポートを求めましょう。
③経営環境と課題解決の対策
上記の「現状を適切に把握する」ことで確認した内容をベースとして、会社を継続して発展させるために、これからの経営環境における予測を行い、課題を解決するための対応策を検討しましょう。
④事業の方向性の検討
明確となった課題の対応策を、中期と長期の経営ビジョンに落とし込んでいきます。自社の事業領域をはっきりさせ、組織や経営形態、設備投資などを、目標数値によって中長期の経営計画に入れましょう。そうすれば、事業承継の時期や方法も明確となるのです。
⑤事業承継計画の作成・書き方
課題整理、後継者の教育、経営体制確立への準備、相続税などの具体的な対策を、検討しましょう。事業承継計画を効率的に進めるには、経営者と後継者が一緒に働く場を設け、経営理念や会社の方向性を共有することが欠かせません。
事業承継計画書の書き方は、具体的なものやフォーマットは指定されていません。サンプルなどを見て確認しましょう。
事業承継の手続きにおける2つの注意点
ここでは事業承継の失敗を回避するために、手続きにおける注意点として以下を取り上げます。
- 時間的余裕を持つ
- 後継者を慎重に選ぶ
①時間的余裕を持つ
事業承継の手続きでは、事前準備を入念に行うことがその後の成否を大きく分けます。そのため、時間的余裕を持って手続きに取りかかることが、事業承継の成功につながる大きな要素です。
そもそも事業承継はほとんどの経営者が初めて行う行為であるため、実施するうえで不明点・疑問点・スムーズに進められない手続きなどが生まれてくるのは不思議ではありません。
不測の事態に柔軟に対応するためにも、すぐに事業承継を行う予定がなくても、時間的余裕を持って事業承継に関するセミナー・専門家の相談窓口などを利用して心構えを作りましょう。
②後継者を慎重に選ぶ
いかなる方法を採用する場合でも、事業承継における後継者は慎重に選ぶ必要があります。次期経営者としてふさわしい人物を後継者に据えなければ、事業承継後の経営に深刻な影響が及ぶおそれがあり、場合によっては廃業にまで至る可能性があるためです。
親族内承継では後継者としての素質・能力に優れた人物を選定することはもちろん、親族外承継・M&Aによる第三者への事業承継では、以下のような人物を後継者に選びましょう。
- 共同創業者
- 優秀な若手経営陣
- 工場長などのベテラン従業員
- 自社の業界に精通する経営者
特に、外部の人物を後継者に据える場合、従業員や取引先など関係者からの反発が予測されるため、選定にはより慎重な判断が求められます。
事業承継の手続きを専門家に相談する際のポイント
事業承継の手続きを相談できる専門家は、たくさんいます。専門家はそれぞれ得意ジャンルがあるため、自分の相談したい内容と専門分野が合致している相手を選ばないと意味がありません。以下に、代表的な専門家と相談すべき内容を掲示します。
- 弁護士:親族内承継において相続・贈与の手続きが知りたい場合。
- 税理士:親族内承継において後継者に生じる相続税・贈与税の対策を知りたい場合。
- 公認会計士:M&Aによる事業承継で自社の企業価値を算定したい場合。
- M&A仲介会社:M&Aによる事業承継を実施したい場合。
- 金融機関:社内承継における株式買取のため、後継者が資金調達したい場合。
事業承継の手続きの流れまとめ
法人と個人事業主では、事業承継に必要な手続きが異なります。また、事業承継を成功させるためには、早期のタイミングで対策を講じることが重要です。自社の現状を把握したうえで、慌てることのないよう手続きを進めましょう。
親族内承継では後継者の税金負担が問題となるため、税理士などの専門家に相談したうえで効果的な節税対策が必要になります。社内承継では、後継者が株式買取資金を用意できるかどうかが焦点です。
M&Aによる事業承継では、膨大かつ複雑な手続きが必要となるため、M&A仲介会社などからサポートを得ることをおすすめします。いずれの事業承継方法を用いるにせよ、早い段階から事業承継に必要な手続きを把握することが肝要です。
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