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2021年4月23日更新事業承継
事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説
事業承継税制とは、後継者が非上場の自社株式を相続や贈与により取得した場合に、相続税や贈与税の納税が猶予または免除される税制制度です。 平成30年度の改正によって、雇用継続の要件や、猶予割合等が改善され、中小企業にとっては、「最高の節税方法」となりました。
目次
事業承継とは
経営者が高齢化を迎えるにつれて、事業承継の件数が増加しています。事業承継とは、会社の経営権や資産・権利を後継者に引き継ぐことです。
会社を存続させる上で、事業承継の成功は欠かせません。事業承継をしなければ、現経営者がいなくなったら事業はなくなってしまうためです。せっかく頑張って経営してきた事業をなくしてしまうことに抵抗がある経営者は多いでしょう。
しかし、多くの企業では事業承継に関する課題を抱えています。後継者不足によって事業承継を実施できない中小企業は多く、そしてもう一つ、事業承継による税金の負担の問題も大きいです。
事業承継では、建物や株式の資産を後継者に引き継ぎます。価値ある財産を引き継ぐということで相続税や贈与税が発生しますが、財産を引き継いでも、手元の現金が増える訳ではありません。
したがって、場合によっては納税資金が準備できずに事業承継がうまくいかないこともあります。資金力に乏しい中小企業にとって、相続税や贈与税の負担は大きいです。このような税負担があるのを理由に、事業承継を諦める中小企業が数多く存在します。
そうした事情を踏まえ、中小企業庁は事業承継税制を創設しました。事業承継税制を活用すれば、税金の悩みが解消できて中小企業の事業承継を円滑に実行できると考えられていたのです。
しかし当事者の中小企業からは、これまで的外れな税制との批判が相次いでいました。
そこで中小企業庁は、平成30年度の事業承継税制の大幅な改正を実施。この改正によって、中小企業はこれまで以上に事業承継を実施しやすくなったのです。
今回は、最新の事業承継税制について、詳しく解説します。平成30年度改正にも対応した、最新の事業承継税制の事情を押さえて、お金に困ること無く事業承継を成功させましょう。
事業承継税制とは?事業承継税制の意味
そもそも事業承継税制とはどのようなものなのかがわからないという人も多いはずです。まず最初に、事業承継税制の基本的な概要をお伝えします。
事業承継税制とは、後継者が非上場の自社株式を取得した際、納税が猶予または免除される制度のことです。
事業承継税制は非上場の株式である必要があるので、上場している大企業では利用できません。
事業承継税制の創立前は、株式の承継により多額の贈与税や相続税が発生していました。そのため、納税資金が確保できないときには事業承継を諦めていた経営者も少なくありません。そのように金銭面の問題で円滑な事業承継が妨げられていましたが、事業承継税制が発足した事で中小企業は事業承継を実行しやすくなりました。
事業承継税制は、これまで何度か改正されてきたのです。一方で、改正されても使いにくい点が多く、その度に中小企業経営者からは的外れな税制度と非難されてきました。
しかし平成30年度に大幅な事業承継税制の改正が実施され、中小企業にとって役立つ税制となります。事業承継をしようと思っているものの金銭面で不安があるなら、事業承継税制の活用を検討するのが良いでしょう。
しかし、事業承継税制について詳しくなければ、活用に踏み切れないということもあるはずです。事業承継税制を使うかお悩みの方のために、事業承継税制のメリットを見ていきます。
事業承継税制のメリット
事業承継税制を活用することによる最大のメリットは、相続税や贈与税の猶予・免除が受けられることです。
通常では事業承継を実施すると、贈与税や相続税が課されます。しかし事業承継税制を活用すれば一定要件を満たすことで、贈与税・相続税が100%猶予されるのです。つまり、事業承継時の費用負担がゼロになります。
事業承継を金銭面の問題で諦める経営者は少なくありません。そこで全く負担を負わずに事業承継できるのは、後継者にとって大きなメリットです。今まで事業承継についての納税資金を確保するために動いていた時間も、後継者教育に使えるようになります。
事業承継税制は改正によって、利用するメリットが大きくなりました。従来は、相続税の猶予割合は80%(贈与税は100%)だったのです。そう考えると、以前よりも遥かに活用して得られるメリットは大きいと言えます。
また税制改正前は、引き継ぐ全株式のうち3分の2しか納税猶予を受けられませんでした。しかし、平成30年度の税制改正によって、事業承継する全株式について納税猶予を受けられるようになったのです。
さらに一定条件を満たせば、事業承継に要する課税を猶予ではなく完全に免除してもらえます。それは、事業承継税制を継続したまま、後継者が死亡した場合です。
つまり1代目から2代目に事業承継した数十年後、2代目が亡くなった時点で免除されます。かなり長期的な話になりますが、頭の中にいれておいて損はありません。
以上の通り、事業承継税制を活用すると、非常に大きなメリットを享受出来ます。他にも中小企業庁が行なっている事業承継支援を知りたいなら、以下の関連記事を読んでみてください。
事業承継税制のデメリット
事業承継税制はメリットが多いですが、デメリットも存在しているので気をつけなければなりません。
事業承継税制のデメリットは、要件を守る必要があることと、詳しい専門家を見極めなければならないということが挙げられます。
事業承継税制には利用する要件があり、要件を満たさなければ猶予が打ち切られることもあるのです。たとえば、事業承継税制の相続税や贈与税の優遇は、5年間経営者を続け、従業員を8割以上保持することだけでなく、株式を保有し続けることも条件に含まれます。
つまり5年間は株式の売却や会社解散により株式の換価ができなくなるのです。もし相続税や贈与税の免除の条件を破ってしまうと免除が解除されます。そうなると猶予されている相続税や贈与税と一緒に5年分の利子税を追加で支払われなければならないので注意しておきましょう。
ちなみに、事業承継税制は平成30年度に改定されるなど、社会情勢や経営環境の変化に合わせて度々内容が変わっています。そのため税理士など専門家が事業承継税制の内容を正確に把握していないこともあり、最新の事業承継税制に関する適切なアドバイスが受けられないことがあるのも覚えておかなければなりません。
中には自分が詳しく知らない制度を活用することを躊躇する専門家もおり、事業承継税制を活用したい経営者の意思と食い違ってしまうこともあるでしょう。
また専門家の実績も非常に重要なポイントです。とりわけ税理士のように節税や相続税・贈与税への対策をしてもらう専門家はその力量によって結果が左右されます。
実際に腕のいい税理士と腕の悪い税理士では節税効果が格段に違うといわれており、手法も異なるのです。したがって、事業承継税制だけでなく、相続税や贈与税の節税のために専門家を雇い入れる場合はなおさら腕のいい税理士が必要になるといえるでしょう。
事業承継で専門家の力を借りる場合、事業承継税制の内容や扱い方をちゃんと把握しているかどうかを確認しておいた方が良いです。契約前にしっかりとサービスの内容を聞き、納得できる専門家に相談するべきだと言えます。
以上、事業承継税制を利用する際に知っておいた方が良いデメリットについてご紹介しました。ここからは、事業承継税制の要件について見ていきます。
事業承継税制の要件
事業承継税制で納税猶予を受けるためには、幾つかの要件を満たす必要があります。
その中でも主となる重要要件が以下の通りです。
- 人の要件
- 会社の要件
- 事業継続要件
⑴人の要件
「人の要件」は、「先代経営者」と「後継者」に関する要件です。
つまり、先代経営者と後継者が満たすべき要件を指します。
①先代経営者の要件
- 会社の代表者であった
- 代表者であった当時、先代と同族関係者で、発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有していた
- 同族関係者内で筆頭株主であった
- 株式贈与時の時点で退職している(贈与の場合)
②後継者の要件
- 会社の代表者である(贈与の場合)
- 20歳以上かつ、3年以上会社の役員である(贈与の場合)
- 相続開始前の時点で役員であり、かつ相続開始後5ヶ月以内に会社の代表者となる(相続の場合)
- 同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ同族内で筆頭株主となる
⑵会社の要件
「会社の要件」とは、事業承継税制を用いる会社が満たすべき条件です。
基本的には、中小企業の事業承継である場合となります。
ここで注意すべきなのは、平成30年度以降は「特例認定承継会社の要件」も満たす必要があるのです。
ここでは、通常の会社の要件と、「特例認定承継会社の要件」に分けてお伝えするので確認していきましょう。
①会社の要件
事業承継税制を利用するには、下記に該当しないことが条件となります。
- 上場会社
- 経営承継円滑化法上の中小企業者に該当しない
- 風俗関連事業を行なう会社
- 実質的な子会社のうち、上記3つの要件のいずれかに該当する会社
- 総収入金額がゼロの会社
- 常時使用する従業員がゼロの会社
※経営承継円滑化法上の中小企業者
ここで言う中小企業者とは、下記の条件に該当する会社を指します。
「資本金・出資総額」と「従業員数」のうち、いずれかを満たせば中小企業者に該当するのです。
業種 | 資本金・出資総額 | 従業員数 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
それ以外の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
上記いずれかに該当していれば、事業承継税制を活用できます。
②特例認定承継会社の要件
平成30年度改正の事業承継税制を活用するには、下記条件を満たす必要があります。
- 2018年4月1日〜2023年3月31日の間に、特例承継計画を都道府県に提出する
- 認定経営等革新支援機関の指導及び助言を受けた上で、特例承継計画を作成する
- 特例認定承継会社の後継者や、事業承継時点までの経営ビジョン等が記載されている
⑶事業継続要件
「事業継続要件」とは、事業を5年間続ける条件となります。
事業承継の実務では、5年要件とも呼ばれるものです。
事業承継税制を活用するには、下記の要件を満たす必要があります。
- 後継者が5年間代表者であり続ける
- 後継者が5年間会社の株式を保有し続ける
- 会社の雇用を5年間平均で8割維持する
つまり、「5年間事業を続けましょう」というルールです。
平成30年度の事業承継税制改正では、雇用維持の要件が大幅に変更されました。書類さえ提出すれば、雇用を維持出来なくても、事業承継税制を打ち切られずに済むようになったのです。
したがって、雇用維持の要件がゆるくなったことで、今までよりも事業承継税制が使いやすくなったと言えます。
以上、事業承継税制を使うための要件について解説しました。ちなみに、事業承継税制を使うならできるだけ免除を受けたいという人も多いはずです。ここからは、事業承継税制の免除についても見ておきます。
事業承継税制の免除
事業承継税制の最大の魅力は、さきほどもお伝えしたように相続税と贈与税の100%猶予・免除が得られることです。
事業承継税制はさきほどお伝えした要件をクリアすれば、相続税や贈与税の猶予を得続けることができます。
ただ、猶予されている相続税や贈与税が完全に免除されるには事業承継を終え、また次の事業承継を迎えるまで待つことが必要です。つまり次の事業承継を迎える際に、前の事業承継の相続税や贈与税が免除されるという形になることを押さえておきましょう。
これ以外にも相続税や贈与税が免除されるケースがあります。相続税や贈与税が免除されるのは以下のケースです。
- 後継者、贈与の場合は受贈者と後継者が死亡した場合
- 申告した後の5年間で、やむを得ない理由によって後継者が代表権を有しなくなった日以後に、あるいは5年経過した後に後継者が猶予継続贈与を行った場合
- 申告して5年経過した後に会社が破産手続きを決定した、あるいは特別清算開始の命令が下されるなどといった事態になった時
これらのケースでは、事業承継税制によって税金が免除となるのです。また、上記のケース以外にも後継者が死亡した場合も相続税・贈与税が免除されます。
ただ、いずれのケースも後継者が何らかの理由で会社を引き継げなかったというものであり、いうなれば事業承継が失敗してしまっている状況です。したがって、積極的に狙いにくい状況だと考えられます。
それではここからは、事業承継税制の納税猶予の打ち切りについても見ていきましょう。
事業承継税制の納税猶予の打ち切り
事業承継税制を使っていても、納税猶予が打ち切られることがあります。平成30年度の税制改正によって、納税猶予の打ち切りは生じにくくなりました。
しかし、打ち切られる可能性は0ではありません。ここでは相続税と贈与税に分けて、納税猶予が打ち切られたらどうなるか、ご紹介します。
①相続税と納税猶予の打ち切り
猶予されていた相続税に合わせて、利子税も納める必要があります。
したがって、予定外の納税資金が必要となるのです。
②贈与税と納税猶予の打ち切り
同じく猶予されていた贈与税に合わせて、利子税を納める必要があります。
この場合も相続税のときと同じく、予定外の納税資金が必要となるので気をつけなければなりません。
それでは、仮に事業承継税制を継続不可能となった際のリスクを考えてみましょう。
①相続税のリスク
元々猶予されなかったら、相続税は払うものです。
したがって、利子税の支払いのみがリスクと言えるでしょう。
②贈与税のリスク
贈与税+利子税がリスクです。
特に贈与税は税率が高いため、納税猶予の打ち切りがあると多額の納税が発生する可能性があります。
したがって要件がギリギリな場合は、事前に十分に検討しましょう。
以上の通り、事業承継税制を活用できなくなった場合、それ相応のリスクがあります。しかし、リスクを恐れて事業承継税制を利用しないのは、非常に勿体ないです。
事前に検討した上で大丈夫だと判断したら、積極的に事業承継税制を利用しましょう。平成30年度の改正によって、事業承継税制は遥かに継続しやすくなりました。
事業承継税制について詳しい専門家のサポートを受けながら、できるだけリスクを押さえて制度を活用していきましょう。
また、以下の記事では相続と事業承継について詳しく紹介しています。事業承継税制を活用すると、相続税の支払いを猶予できますので、気になる人はご確認ください。
平成30年度の事業承継税制改正による変更点
平成30年度の改正により、事業承継税制は非常に活用しやすくなりました。
ここでは、事業承継税制の改正内容をまとめてご紹介します。
- 納税対象株式数の拡大
- 相続税の猶予割合の拡大
- 雇用8割維持要件の実質的撤廃
- 後継者要件の緩和
- 贈与者・相続者の拡大
- M&Aや解散時の減免
⑴納税対象株式数の拡大
事業承継税制改正前は、受け継ぐ全株式のうち、3分の2までしか納税猶予の対象となりませんでした。つまり残りの3分の1は、通常通り課税されていたのです。
その為多くの中小企業経営者からは、大して負担軽減になっていないとの声がありました。しかし税制改正によって、全ての株式が納税猶予の対象となったのです。
これにより、事業承継の負担は大幅に軽減されます。
⑵相続税の猶予割合の拡大
事業承継税制の改正前、相続税の猶予割合は80%でした。一方で贈与税の猶予割合は、100%でした。
ですが、事業承継税制の改正によって、相続税も贈与税と同様に100%の猶予を受けられるようになりました。
前項で述べた改正内容と合わせると、実質的に事業承継時の税負担が無くなったのがポイントです。今回の税制改正は、中小企業の事業承継にとって大きな追い風となりました。
⑶雇用8割維持要件の実質的撤廃
前述した通り改正前は、5年平均で雇用を8割維持するのが要件でした。しかし中小企業にとって、この要件が最も足かせとなっていたのも事実です。
近年の不景気の影響で、雇用を8割維持するのは非常に困難となっています。経営難に陥っている中小企業にとって、雇用の8割維持は厳しい要件でした。この要件がある為、多くの中小企業は事業承継税制の活用をためらっていたと言えます。
そうした事実を受け、中小企業庁は今回の改正で大きな方向転換を図りました。理由を記した書類を提出すれば、雇用を維持出来なくても、事業承継税制の利用を継続可能となったのです。
つまり、実質的に雇用維持要件が撤廃されました。その為、今まで利用を躊躇っていた中小企業も、事業承継税制の恩恵を受けられます。
⑷後継者要件の緩和
事業承継税制は、一人の後継者にしか適用出来ませんでした。しかし税制改正に伴い、3人まで事業承継税制の特例を利用可能となりました。
つまり、複数の後継者で共同経営するパターンでも、事業承継税制を活用できます。近年の経営環境変化に対応した改正内容と言えるでしょう。
⑸贈与者・相続者の拡大
税制改正前は、先代経営者から受け継いだ株式のみが、事業承継税制の対象となっていました。しかし改正後からは、先代経営者以外から受け継ぐ株式についても、税制の特例を適用可能となります。
中小企業の中には、株主が分散しているケースもあります。従来はそうした企業では、事業承継で生じる税負担が非常に重かったです。
しかし事業承継税制改正に伴い、こうした企業でも活用しやすくなりました。
⑹M&Aや解散時の減免
国内市場の縮小等に伴い、中小企業が独力で生き残るのは困難な時代となりました。それに伴い、やむなく解散する中小企業が増加しています。
もしくは、M&Aによって会社を売却する中小企業も増えているのです。平成30年度の事業承継税制の改正では、こうした現状も踏まえてさまざまな変更点が決められています。
改正前は、事業承継時点での株価を基に、猶予されていた相続税等を支払う必要がありました。つまり株価が事業承継以降下落した場合、通常よりも多くの税金を支払う必要があったのです。
しかし事業承継税制の改正により、「M&A対価の額」もしくは「解散時点での評価額」を基準とするように変更されました。
M&Aや解散時に株価が下落していたとしても、事業承継時点との差額分は減免されます。中小企業にとっては、事業承継税制を活用するリスクが大幅に減少した形となるのです。
以上、事業承継税制のさまざまな改正内容をご紹介しました。税制改正についてもっと詳しく知りたい人は、以下の関連記事を読んでみてください。
事業承継税制活用における注意点
最後に、事業承継税制の活用における注意点を見ておきましょう。事業承継税制を活用する際に重要なのは事業承継それ自体をちゃんと計画的に行うことです。
事業承継税制はあくまで事業承継の際に発生する相続税や贈与税の負担を軽減するものであり、事業承継を成功させるためのものではありません。ましてや後継者選定・育成や理想的な承継のプロセスを組んで事業承継ができていなければ、事業承継税制は活用できるものではないのです。
要件の中に後継者の確定が入っているところを見ると、事業承継税制は事業承継が確立できていることが前提になっていることがわかります。事業承継税制を活用するのであれば、まずは事業承継を問題なく完了できるようにしておきましょう。
事業承継には、後継者に会社を引き継がせる場合と、M&Aを利用して第三者に引き継がせる場合で活用方法が異なります。
当然ながら後継者に会社を引き継がせることとM&Aを行うことではプロセスや課税される税金が全く異なっており、いずれも一定の時間や手間がかかるものです。
また、事業承継税制を申告して適用されたとしても、後継者は決して油断することはできません。さきほどもお伝えした「5年要件」ですが、打ち切りが緩和されたとはいえ、経営者に求められている基準はそのままです。
事業承継税制では、もし5年要件を満たせないような事態になれば、ちゃんとその事情を説明しなければならないようになっています。
やむを得ない経営悪化など正当な理由がある場合には相続税や贈与税の猶予は続きますが、もしそうでなければ猶予が打ち切られ、5年間の利子税と一緒に相続税や贈与税を支払うことにもなってしまうのです。
会社の経営を引き継いだ後継者の責任が軽くなったというわけではないことは留意しておいた方がいいでしょう。
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まとめ
今回は、平成30年度に改正された事業承継税制に関して、最新情報をご紹介しました。事業承継税制は、事業承継で発生する税負担を軽減する上で、非常に重要な制度です。
平成30年度の改正前は、正直中小企業にとっては的外れな制度でした。全株式が対象ではない上に、猶予割合も100%ではありませんでした。加えて猶予が打ち切られた際のリスクも、非常に大きかったです。
しかし平成30年度の改正により、事業承継税制は非常に役立つ制度に生まれ変わりました。雇用継続の要件や、猶予割合等が改善され、中小企業にとっては、「最高の節税方法」と言っても過言ではありません。
事業承継税制を活用すれば、実質的に負担ゼロで事業承継を実施可能ですが、事業承継税制を活用する為には、いくつかの要件をクリアしなくてはならないのです。
事業承継税制を活用する際は、税制に詳しい専門家に相談するのがベストと言えます。事業承継税制の活用以外にも、効果的な節税方法を教えてくれる可能性があるからです。専門家とともに、事業承継を成功させられるように手続きを進めていきましょう。
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