M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年9月29日更新会社・事業を売る
M&Aの手法・やり方とは?分類一覧・選ぶ際のポイントやメリット・デメリットを解説
株式譲渡、第三者割当増資、株式交換・株式移転、TOB、MBO、事業譲渡、吸収合併、新設合併、吸収分割、新設分割は全てM&Aの手法です。本記事では、さらに広義のM&A手法も含めた各手法のメリット・デメリット、選択時のポイントなどを解説します。
目次
M&Aとは?
M&Aは「Mergers and Acquisitions(マージャーズ・アンド・アクイジションズ)」の略語で、企業の合併や買収を指します。具体的には、Mは「Mergers(合併)」の頭文字で、複数の会社が一つに統合されることを指します。
一方、Aは「Acquisitions(買収)」の頭文字で、ある会社が他の会社の支配権(経営権)を取得することを示しています。
M&Aを実施する目的
企業において、M&A(合併や買収)は大きな経営戦略として活用されています。M&Aを行う際、買収する側の企業は、他社の人材、設備、資金、情報などの経営資源を手に入れることが可能です。これによって、自社の核となる事業を強化したり、自社の弱点を補完したり、未開拓の市場に進出したり、新しい事業を立ち上げたりできます。
一方、買収される側の企業は、後継者がいないために経営を継続することが難しい場合や、業績が低迷している場合に、M&Aを選択することがあります。このような場合は、事業承継型のM&Aや事業再生型のM&Aが代表的です。
また、近年では、業績が好調で後継者もいる場合でも、より大きな成長を求めて、大手企業の一部となり事業拡大を目指すことを選択するケースも増えています。
M&Aの手法・やり方の大分類
この章では、M&Aにおける手法の大分類について見ていきましょう。
買収
合併
合併の方法は、下記のとおりです。
- 吸収合併
- 新設合併
提携
提携には、次の2つの方法があります。
- 業務提携
- 資本提携
M&Aの手法の分類(買収)
M&Aの手法を大別すると、以下の4種類に分けられます。
- 買収
- 合併
- 会社分割
- 広義のM&A
これらにカテゴライズされる各手法には、さまざまなものがあります。この章では、まず、買収の具体的な手法を見ていきましょう。買収手法の場合は、さらに株式取得と事業譲渡との2種に分かれ、株式取得の具体手法が多数あります。
株式取得
株式譲渡
株式譲渡とは、売り手が株式を売却し、買い手がその対価として現金を渡し経営権を得る手法です。主な手続きが取締役会の決議のみであることから、比較的簡単なプロセスを踏むだけで買収できるため、M&Aの中で最も活用されています。
包括承継であるため、買収した会社が抱えている負債や、事業に関して必要のない資産を引き受ける点がリスクです。異なる企業文化の相手を買収したことで、経営統合がスムーズに進まないケースも生じます。
手続きが簡便な分、不要なものまで承継することや、M&A後すぐに軌道に乗りづらい点がデメリットです。
株式交換
株式交換とは、完全親子会社になることを前提に、買い手は売り手企業の全株式を取得し、その対価として買い手(親会社)の株式を交付することです。売り手企業(子会社)の株主だった者が親会社の株主に加わるため、親会社の株主構成は変化します。
対価のために現金を用意しなくてもよい点が特徴です。なお、当初の対価は株式に限られていましたが、現在では、現金や新株予約権などを対価に用いられます。
株式移転
株式移転は、既存企業が新設企業の完全子会社になるM&A手法です。新設企業(親会社)は、既存企業の全株式を取得する対価として、株式を交付します。既存企業の株主は、親会社の株主へと立場が変わるのです。
複数の既存企業が同時に完全小会社となって持株会社体制(ホールディングス体制)を構築するために、よく用いられます。現在は、対価に現金や新株予約権などを用いることも可能です。
第三者割当増資
第三者割当増資は、売り手側が資金調達を目的に新株を発行し、特定の第三者に新株を引き受けてもらう(出資してもらう)手法です。第三者が取得した株式数次第では、経営に参画することもあります。
第三者割当増資では全株式の買収が行われないため、経営権を残し資金調達を実行できることがメリットです。しかし、特に中小企業の場合は株式に譲渡制限を設けているため、新株交付のために株主総会の特別決議を行う必要があります。
TOB
TOB(Take Over Bid)とは、株式公開買付けのことです。上場企業の株式取得を目的に、買取価格や買取期間、買取数などの公告を出し、株式取引所外で株式を売却してくれる株主を募ります。
買収対象企業経営陣の賛同を得て行われるTOBを友好的TOBといい、逆に、買収対象企業経営陣の賛同を得ず一方的に実施されるTOBが敵対的TOBです。
MBO
MBO(Management Buyout)とは、会社の経営陣(Management)が、自社の株式または事業部門を買収し独立する手法のことです。会社の規模によっては多額の資金を要するため、しばしば金融機関の支援(融資)や投資ファンドからの出資を受けて実施されます。
類似する手法として、会社の従業員が同様に買収する手法がEBO(Employee Buyout)です。また、会社の経営陣と従業員が一体となって同様の買収を行う場合は、MEBO(Management and Employee Buyout)といいます。
事業譲渡
事業譲渡とは、売り手の企業が持つ事業や資産を選別して売買する手法です。売り手は事業の選択と集中として不要事業の売却、買い手は必要な事業や資産だけを選んで買収できるメリットがあります。
しかし、会社を丸ごと買収する株式譲渡とは違って、取引先や従業員個々との雇用契約締結や事業の許認可取得は全て一から実施しなければならず、手続き面が煩雑です。売り手の資産の買収には消費税が課されるため、その資金も用意しなければなりません。
会社分割
会社分割とは、会社の事業部門を資産・権利義務・許認可・組織・人材などを含めて丸ごと切り離し、外部の会社(買い手)に承継させるM&A手法です。
事業譲渡とやや類似して見えますが、事業譲渡では買収対象を選別できるのに対し、会社分割は包括して承継します。また、会社分割では株式を対価に用いることが可能であり、事業譲渡では人材を承継できません。
会社分割では、買い手側の会社の違いによって、以下2種類の手法があります。
- 吸収分割
- 新設分割
吸収分割
吸収分割とは、切り離された事業部門を既存の会社が吸収するM&A手法です。売り手への対価は、現金・株式のどちらでも用いられます。包括承継であるため、基本的に従業員の同意も不要です(移籍するかしないかは従業員の任意)。
対価を株式にする場合、買い手は多額の資金を用意せずにM&Aを実施できます。包括承継であるため、手続きも比較的、簡便です。ただし、株式を対価にすると株主構成が変わるため、その比率に注意しなければなりません。
PMIでは混乱が生じやすいデメリットもあります。
新設分割
新設分割とは、会社を分割する過程で新たな会社を設立し、その会社に分割した事業を承継させる手法です。新設分割の場合、原則的に対価は株式の交付のみとなります。新設分割は、企業グループの組織再編で用いられることがほとんどです。
吸収分割と違って承継会社が新設ですから、PMIの点ではスムーズに進みやすいメリットがあります。しかし、新設会社であるために、事業における許認可は承継できません。また、会社設立自体に約1カ月の期間がかかるので、その点を考慮したスケジューリングが必要です。
M&Aの手法の分類(合併)
この章では、M&A手法のうち合併について見ていきます。合併とは、複数の企業を1つに統合するM&A手法です。統合後、法人格が存続する会社以外は消滅します。合併では、対価として株式を用いることが可能です。
合併は、存続会社の違いにより、以下2種類の手法があります。
- 吸収合併
- 新設合併
吸収合併
既存の会社複数が集まって行われる合併が吸収合併です。消滅会社は、文字どおり吸収されます。消滅会社の持っていた事業、資産、権利義務、人材、知的財産などを、丸ごと全て存続会社が引き継ぐ包括承継です。
株式譲渡のように買収後も売り手側が存続するのと違い、組織を一体化させる吸収合併では、M&Aの効果が早期に実現しやすいでしょう。ただし、企業文化が異なる組織の統合は、現場でのPMI(Post Merger Integration=M&A後の統合プロセス)の負担が大きいです。
新設合併
新設された会社が存続会社となる合併が新設合併です。吸収合併とメリット・デメリットは変わりませんが、異なる点として以下が挙げられます。
- 存続会社が新設であるため、吸収合併のように消滅会社の事業の許認可を引き継げない
- 消滅会社が上場企業の場合、上場は取り消されてしまう(新設会社が新たに上場申請する必要がある)
- 登録免許税が吸収合併よりも高い
M&A手法の分類(広義に該当)
買収・合併・分割を狭義のM&Aとするならば、広義のM&Aといえるのが以下の2つです。
- 資本提携
- 業務提携
- ジョイントベンチャー
広義のM&Aである理由は、買収などのように売り手の経営権や事業を取得しませんが、資本の移動を伴う経営手段であるからです。それぞれの概要を掲示します。
資本提携
資本提携とは、企業間において経営権に影響を及ぼさない範囲で相手企業に出資をする・出資を受ける提携関係を結ぶことです。相互に株式を持ち合うケースと、一方のみが出資をするケースがあります。基本的には、何らかの取引関係がある企業間で行われるのが一般的です。
ほとんどのケースでは、経営権に影響を及ぼさない範囲=全株式の10%未満の出資額となっています。ただし、相手企業の株主になることで、より詳細な内情を知れるので、経営上の意見やアドバイスが交わされるのは常です。
資本的なつながりを持つだけでなく実際に協業も行う場合は、資本業務提携契約が結ばれます。資本業務提携とは、資本提携関係にある企業間で、共同開発や共同販売などの共同事業を行うものです。
なお、資本提携は結ばず、単に業務提携を行うケースもよく行われています。この場合は資本の移動を伴わないため、M&Aには該当しません。単なる企業間の共同事業取引契約です。
業務提携
資本の移動を伴わない契約関係などをとおし企業間における業務上の協力関係を築く手法が、業務提携です。生産提携や販売提携、技術提携など、いろいろな局面で活用されます。
業務提携では、株式の移動などが必要ありません。そのため、提携するための資金を要しません。互いのノウハウや強みを生かし、短時間でシナジー効果を獲得することも期待できるでしょう。
ただし、提携先の会社から自社のノウハウなどの機密情報が流出する可能性があります。また、資本関係がないので、提携を解消するのは簡単です。そのため、望んだ効果を実現できないこともあるでしょう。
ジョイントベンチャー
ジョイントベンチャーとは、複数の会社が協同で出資して新しい会社(合弁会社という)を設立することです。資本業務提携のもう1つのスタイルともいえるでしょう。共同事業をより効率的に行うための組織(合弁会社)を用意する発想です。
また、共同事業を別組織(合弁会社)で行うことは、リスク回避の側面もあります。さらに、ジョイントベンチャーは、海外進出の際にも役に立つ手法です。海外では、外国企業が資本100%の会社を設立することを禁じている地域もあります。
そのような場合、現地企業と合弁会社を設立することで、その地域への進出・ビジネス展開が可能になるのです。
M&Aの手法と税金
中小企業の行うM&Aでは、株式譲渡以外に事業譲渡もよく用いられます。ここでは、株式譲渡と事業譲渡の際に発生する税金についてまとめました。
株式譲渡 (個人) |
株式譲渡 | 事業譲渡 | |
税金 | 所得税、住民税 | 法人税 | 法人税、消費税 |
税率 | 20.315% | 29.74% | 法人税29.74% 消費税10% |
課税方式 | 分離課税 | 総合課税 | 総合課税 |
納税 | 株主 | 法人 | 法人 |
株式譲渡で課される税金
株式譲渡が実行された際に発生する税金は、譲渡側のみに課せられます。買い手である譲受側に税金は発生しません。また、株式譲渡には2つのケースがあり、経営者個人が株主として行う株式譲渡と、親会社が行う子会社の株式譲渡です。
この場合、個人と法人では課される税金が異なるため、それぞれを分けて説明します。
個人による株式譲渡の税金
個人が株式譲渡を行った場合、株式譲渡所得に対して所得税が課されます。これは、自身が経営する会社の株式だけでなく、株式市場の株式売買を行った場合も同様です。株式の譲渡所得は、総合課税に加えず分離課税の扱いで、以下のとおり固定の税率が定められています。
- 株式譲渡所得税率=所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%=20.315%
- 株式譲渡所得額=売却金額-(株式取得費用+株式譲渡時に要した費用)
一般の上場株式では証券会社に払った手数料などのことです。手数料とともに発生する消費税も費用として加算します。
法人による株式譲渡の税金
法人が株式譲渡を行った場合、その譲渡益には法人税が課されます。ただし、株式譲渡益単独に課税されるわけではなく、他の損益と通算したうえで最終的な益金の額に課税されるのが個人の場合との大きな違いです。
仮に株式譲渡を実施した年度に何らかの大きな損金が出ており、株式譲渡益と通算しても最終的に赤字だった場合、課税はされません。会社の状況を鑑みながらタイミングがよく株式譲渡を実施すれば、結果的に節税できる可能性があります。
法人税の税率は会社の規模によって異なりますが、2022(令和4)年10月現在の法人税の実効税率は約31%です。また、株式譲渡益額の算出方法は、個人の場合と同じ計算方法を用います。
事業譲渡で課される税金
事業譲渡は法人が主体となって実施するM&Aですから、納税の対象者は法人です。事業譲渡の場合、譲渡側と譲受側それぞれに異なる税金があるので、それぞれ分けて見ていきましょう。
譲渡側に課される税金
事業譲渡を実施し譲渡益を得ていれば、課税の対象となります。ただし、事業譲渡益単独に課税されるわけでなく、他の損益と通算して法人税が課されるのは株式譲渡時と同様です。事業譲渡損益の算出は、以下になります。
- 事業譲渡損益額=売却金額-(譲渡資産の簿価-譲渡負債の簿価)
事業譲渡の際の譲渡内容に消費税課税対象資産が含まれている場合、その消費税相当額を譲受側に請求し、売却金額と合わせて支払いを受けます。譲渡側は消費税を負担しませんが、税務署への消費税納付責任は譲渡側となる点に注意しましょう。
譲受側に課される税金
前述のとおり、消費税課税対象資産を譲受する場合、譲受側に消費税負担義務があります。事業譲渡対価だけでなく、消費税相当額も資金の用意が必要になる点は要注意です。消費税の課税・非課税資産は以下のように定められています。
- 消費税課税対象資産:土地以外の有形固定資産(建物・設備類)、無形固定資産、棚卸資産(在庫)、営業権(のれん)など
- 消費税非課税資産:土地、有価証券、債権など
事業譲渡の内容に不動産が含まれている場合は、譲受側に不動産取得税と登録免許税が発生します。法人の場合の不動産取得税率は、「非住宅家屋」の規定に該当し固定資産税評価額の4%です。
一方、登録免許税は、固定資産税評価額の2%となっています(いずれの税率も2022年10月現在のものです)。
組織再編の手法で課される税金
会社法の組織再編(合併、分割、株式交換、株式移転など)の手法でM&Aを実施するケースでは、税法所定の適格要件を満たすかどうかで税額の計算が違い、税額が変わります。
法人税法の組織再編について、原則的な課税の考え方では、資産負債の移転は時価で行い、評価損益に課税されます。しかし、税法所定の要件を満たす組織再編は、特例として、資産・負債の移転を簿価で行い、評価損益を計上せずに課税を繰り延べられ、課税が生じないのです。これを、税制適格組織再編といいます。
M&Aの税務では、実施する組織再編が適格要件を満たすかどうかが、非常に大切な検討事項の一つです。支配関係(持株比率)の程度により、対価要件、事業関連要件、従業員引継ぎ要件などいろいろな要件があります。これらは、法人税法などで細かく定められているのです。
中小企業から最も多く採用されているM&A手法
日本では、中小企業が売り手となるM&Aの場合に、最も多く用いられる手法は株式譲渡です。買い手側の観点として、M&Aの成果を上げるためには、売り手を買収し子会社化、できれば完全子会社化したいと考えます。
非上場の中小企業の場合、経営者1人あるいは経営者+家族や役員など少人数で全株式を所有していることがほとんどです。買い手の子会社化・完全子会社化の希望に対応しやすくなっています。
売り手としては、会社を売却して現金での対価獲得を望むことが多く、それに最も適しているのは株式譲渡です。株式譲渡は数あるM&A手法の中で、手続き面が最も簡便で楽といった特徴もあります。
売り手・買い手双方の思惑・目的に合致し、手続き面も容易である株式譲渡が、中小企業のM&Aでは数多く行われているのです。
M&Aを実施するメリット
ここでは、M&Aを実施するメリットを買収側・売却側それぞれの観点で考えてみましょう。
買収側のメリット
M&Aによる買収側の主なメリットは以下の点です。
- 事業規模拡大が短期間で実現する
- 市場シェア拡大も短期間で実現する
- 事業エリア拡張が短期間で実現する
- 外注業務を内製化することでコスト削減・効率アップが図れる
- 弱点の強化が可能
- 新規事業に短期間・低リスクで進出できる
売却側のメリット
M&Aでの売却側は、主に以下のメリットを得られるでしょう。
- 後継者不在問題を解決し廃業を免れる
- 廃業を免れ会社が存続することで従業員の雇用も守れる
- 大手企業の傘下になれば親会社の資金力により経営が安定する
- 大手グループ入りすればグループ企業の経営資源の活用やシナジー効果により実績向上が望める
- 事業譲渡では資金調達ができる
- 株式譲渡では創業者利益を獲得できる
M&Aを実施するデメリット
前章とは反対に、M&Aのデメリットを買収側・売却側に分けて説明します。
買収側のデメリット
M&Aで買収側が被るかもしれない主なデメリットは以下のとおりです。
- 包括承継の手法(株式譲渡、株式交換、株式移転、合併、会社分割)では、簿外債務など潜在的な経営リスクを引き取ってしまう可能性がある
- 個別承継の手法(事業譲渡)では、手続きが煩雑
- 株式を対価とする手法(株式交換、株式移転、合併、会社分割)では、株主構成が変化し1株の価値が低下するおそれもある
- 経営統合に失敗すると想定どおりの実績を出せない
- M&Aへの反発、経営統合のミスなどにより人材流出のリスクがある
売却側のデメリット
M&Aでの売却側には、主に以下のデメリットが生じる可能性があります。
- 希望どおりの条件で売却できるとは限らない
- 売却先が見つからない場合もある
- 事業譲渡では競業避止義務を負う(20年間、売却した事業と同一事業を売却先の近隣地域で行えない)
- 経営体制が変わるため従業員は雇用条件が変わる可能性がある
- 売却側従業員は負い目のような心理状態になりやすくモチベーションが上がらないケースがある
M&Aを実施する際のポイント
M&Aを実施する際のポイントは、以下です。
メリットは見込めるか
M&Aの戦略策定において、採用する手法選びも重要な要素です。自社にとってメリットが得られるM&A手法を選択しなければなりません。注意したいのは、選択した手法に固執せず、交渉相手次第では柔軟な考え方でメリットの享受を判断し、場合によっては手法を変更してもいいでしょう。
買収価額は適切か
M&Aでは、売り手と買い手の交渉によって売買価額が決まります。双方が納得のできる交渉結果とするためには、適切なバリュエーション(企業価値評価)と徹底したデューデリジェンス(買収監査)が欠かせません。
実施時期は適切か
M&Aはタイミングの取引ともいわれています。売り手としては、業界の市場規模が右肩上がりのときや業界再編の時期などを狙うと買い手が見つかりやすく希望条件で売却できる可能性も高いでしょう。
買い手としては、後継者難の中小企業の情報を持っている専門家に業務を依頼すると、より多くの売り手情報が得られるといえます。
PMIは明確か
買い手としてはM&Aの成約よりも、その後のPMIの成り行きがM&Aの成否を分けます。PMIを成功させるカギを握るのは、PMI計画の策定です。PMIには売り手企業の情報も必要ですから、デューデリジェンスではその情報収集も行います。
情報収集をしながらPMI計画策定準備に取り掛かり、デューデリジェンス終了後、最終交渉~最終契約書締結~クロージングの間に綿密なPMI計画を策定しましょう。M&A・PMIに慣れていない企業の場合は、PMI計画策定についても専門家から十分なサポートを受けることが不可欠です。
手続き・スケジュール
M&Aの手法を採用する際、手続きやスケジュールについても確認が必要です。また、採用する手法によってもポイントによっても異なりますので事前にしっかりと計画を立てる必要があります。
株式譲渡の場合は株主の変更のみです。そのため、最終契約締結からクロージングまで短期間で進められるでしょう。事業譲渡や会社分割の場合は、株式譲渡よりも時間がかかります。
事業の継続
M&A後に事業が継続できるかも大切なポイントです。
株式譲渡の場合は事業継続での影響は最小限に抑えられます。
事業譲渡や会社分割の場合、事業が譲渡されるため、許認可や従業員との契約が発生します。そのため、事業譲渡や会社分割を採用した場合の事業継続への影響は大きいでしょう。
相談先の選定は適切か
M&Aは会計や法律などの専門知識が必要になるため、M&A仲介会社などに仲介を依頼するのが一般的です。基本的には、最初に手続きや調査をお願いするためアドバイザリー契約を結んで進めていくことになります。そのため、複数の仲介会社や機関を比較・検討したうえで相談先を決定することが重要です。
M&Aの手法と仲介サービスの費用・手数料
ここでは、M&A専門家によって提供されるサービスの分類と、M&Aで発生する各種手数料の概要を見ていきましょう。
M&Aサービスの分類
M&A専門家との業務委託契約には以下の2種類があります。
- 仲介契約型
- アドバイザリー型
仲介契約型は、売り手・買い手の双方と契約し両者の間を取り持つ(仲介する)ように業務を行います。比較的短時間で成約しやすいですが、その分、条件に妥協を迫られやすいです。アドバイザリー型は、売り手・買い手のどちらかとしか契約しません。
顧客が最大限の利益を得られる(できるだけ希望条件どおりに成約できる)ように業務を行いますので、交渉が長期化しやすいです。場合によっては交渉がまとまらず破談するケースも見られます。
仲介サービスの費用・手数料の種類
M&Aでは以下の名目の手数料があります。
- 相談料:正式依頼前の相談時の手数料。近年ほとんどの会社で無料。
- 着手金:専門家との業務依頼契約締結時に発生する手数料。完全成功報酬制の会社では無料。
- リテイナーフィー:業務依頼契約締結後、成約するまで毎月発生する顧問料。無料の会社が多い。
- 中間金;基本合意書締結時に発生する手数料。成功報酬の一部の前払い。完全成功報酬制の会社では無料。
- 成功報酬:M&Aが成約しクロージング時に発生する手数料。計算方法が各社で異なる。
- バリュエーション費:企業価値評価を依頼したときに発生する手数料。成功報酬に一括化されている会社も多い。
- デューデリジェンス費:デューデリジェンスを実施した際の手数料。成功報酬とは別に発生する。
基本合意書には法的拘束力がないため、最終契約書を締結するまでM&Aの成約は決まりません。最終契約書を締結するまでは、破談になる可能性があることを意味します。M&Aが途中で破談になった場合、それまでに支払った成功報酬以外の各種手数料は返却されません。
M&Aの手法と会計・仕訳
M&Aでは、以下の会計の実施が必須です。
- 個別会計:財務会計の1つで、当該企業単体の会計
- 連結会計:財務会計の1つで、親会社に子会社を含めた企業グループ全体をまとめた会計
- 税務会計:税法にのっとり税務のために行う会計(同じ科目でも財務会計とは仕訳が異なる場合がある)
現在、会計を行う際の基準には以下の3つがあります。
- 日本基準
- 国際財務報告基準(IFRS)
- 米国基準
M&Aの手法・やり方まとめ
M&Aの手法は「買収」「合併」「会社分割」の3つに大別でき、利用する場面や必要な手続きが異なります。具体的な手法はさらに細分化されているので、M&Aを実施する際は目的に合致した手法を活用することが大切です。
ただし、その判断を当事者である経営者だけで行うのは難しく、一般的にはM&A仲介会社などの専門家に相談・依頼をして進めていきます。これは、できるだけ希望する条件でM&Aを実現させる意味でも重要です。
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