M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新資金調達
ベンチャーキャピタルとは?資金調達や起業の際の活用事例をご紹介
ベンチャーキャピタルから出資を受けた場合、株式上場やM&Aを視野に事業を行います。銀行融資とは違って出資までに1、2ヶ月程度かかるため注意が必要です。メリット・デメリットを踏まえベンチャーキャピタルを有効活用しましょう。
目次
ベンチャーキャピタルとは?
ベンチャーキャピタルとは、未上場で高い成長性が見込めるベンチャー企業やスタートアップ企業に投資をする機関です。投資をしたベンチャー企業が上場または成長したら、株式や事業を売却してキャピタルゲインを得ることを目的としています。
種類としては、政府、証券会社、銀行などの金融機関、保険会社、事業会社、商社などが運営する関連会社や独立系ベンチャーキャピタルなどが挙げられます。なおキャピタルゲインとは、株式といった資産を売却して得た投資額との差益のことです。
- 【例】株式が1株1万円だった場合、ベンチャーキャピタルは評価額のとおり1株1万円で引き受けます。その後、株式公開などを行って1株の評価額が1万5千円になり売却を行うと、1株当たり5千円の収益が得られます。この5千円がキャピタルゲインです。
こうした事業を行っているのが、ベンチャーキャピタルです。
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ベンチャーキャピタルの事業内容と仕組み
ベンチャーキャピタルは、基本的にファンドを設けてベンチャー会社への出資を行います。ベンチャーキャピタルの事業内容と仕組み、一連の流れは以下のとおりです。
- ファンドを作る(「ファンドレイズ」とも呼ばれる)
- 作ったファンドへの出資を募り、投資家から資金を集める
- 投資するベンチャー企業の選定を行う
- 将来性が見込めるかベンチャー企業の査定・審査を行う
- 査定・審査で決定したベンチャー企業に対して出資する
- 適切に成長できるよう経営コンサルティングなどを行う
- ベンチャー企業が大きく成長すると株式公開(IPO)やM&Aを勧める
- 株式の売却やM&Aによる株式譲渡などで得た収益を各投資家に分配する
ベンチャーキャピタルでは、まずファンドを作ります。ファンドとは、機関投資家や富裕層、事業会社などの組合員から集めた資金を運用するプロフェッショナル集団のことです。次に作ったファンドへの出資を募り、合意した人たちからの出資で資金を集めます。
ファンド立ち上げ後は投資するベンチャー企業の選定をし、将来性や成長性などを判断して投資を行える企業かどうか、時間をかけて査定・審査を行います。査定条件は厳しいケースがほとんどです。
中には原則的に「株式上場を目指している会社」が査定条件になることもあり、また「資金の使途を限定して、その使途に沿って資金を使うことができるか」も厳しくチェックされる場合があります。出資の形は、ファンドで集まった資金で株式を引き受けるなどが多いです。
また、ベンチャー企業が適切に成長できるよう経営コンサルティングや育成支援を行いながら、一方で出資してくれた投資家などに情報提供なども行っています。そして、ベンチャー企業がある程度大きくなると株式公開(IPO)やM&Aを勧めるのが一般的です。タイミングを見計らい、引き受けていた株式の売却などを実行します。
株式の売却やM&Aによる株式譲渡などで得た収益を出資者に分配し、ファンドは清算されます。
ベンチャーキャピタルの資金調達
ここではベンチャーキャピタルの資金調達方法、出資を受ける流れや必要な書類、重視されるポイントから出資額についてまでご紹介します。
ベンチャーキャピタルで資金調達をする流れ
ベンチャーキャピタルを活用する際は、大きく分けて以下4つのステップを踏むことになります。
- 各種ベンチャーキャピタルへ連絡
- 事業計画書などの必要書類を提出
- 査定
- 審査会
①各種ベンチャーキャピタルへの連絡
ベンチャーキャピタルを活用するときは、ベンチャーキャピタルに自身で連絡を取ることになるでしょう。もちろん、世間的に注目される事業をすでに展開している場合や、有名な経営者が企業を立ち上げる際はベンチャーキャピタルの方から連絡が来ることもあります。
まずは自身の事業計画について話す機会を設けてもらい、「いくら調達したいか」、「何に使う資金か」などについて伝えます。20~30社のベンチャーキャピタルにアプローチして、1社でも興味を持ってくれればよい方でしょう。
いずれにせよベンチャーキャピタルの活用では、事業計画書等(詳細は下記項目へ)が必要となりますが、アプローチをかける前に用意しておくとスムーズにアピールできます。
②事業計画書などの必要書類提出
ベンチャーキャピタルの出資では、事業計画の提出が求められます。主な事業計画書の内容は以下18項目です。
- エグゼクティブサマリー
- 事業立ち上げの経緯
- マネジメントチーム
- 会社外相
- 経営理念
- 事業裏面
- 商品またはサービスの概要
- 儲けの仕組
- 市場および競合の分析
- マーケティングおよび営業
- 立ち上げ戦術
- 成長戦略
- オペレーション計画
- 人事戦略
- 財務計画
- 資金調達
- 出口戦略
- リスク管理プロジェクト管理
また事業計画書をはじめ、ほかにも会社の定款や会社案内、決算書や税務申告書、株式名簿、役員経歴書や組織図などといった必要書類の提出が必要です。
なお、各ベンチャーキャピタルが重要とするポイントは異なり、場合によっては特定の項目について深く追求されることもあります。ベンチャーキャピタルを活用する際は、全項目についてより詳細な内容が説明できるようにしておく必要があるでしょう。
③査定
ベンチャーキャピタルでは提出された書類をもとに、査定を行ったうえで出資するかを決定します。事業計画書を提出すれば、出資してもらえるというものではありません。出資を決定した場合には、ベンチャーキャピタルとの話し合いによって条件が提示されます。
具体的には、今現在の企業価値はいくらなのか、株式の価格をいくらに設定するか、何パーセントシェアするか、出資額はいくらにするかなどです。
④審査会
ベンチャーキャピタルは投資家などから資金を集めているため、査定後は、投資家を集めた審査会を実施する必要があります。この審査会で出資が決定すれば、最終的に出資が行われます。
実際に資金を手にするまでの期間は、一般的に1、2ヶ月程度です。ベンチャーキャピタルによる資金調達は、「銀行などからの借り入れ」ではなく「投資家などからの出資を受ける」ことになります。
出資には返済する義務がありません。それゆえに出資側は、出資することに意義があるのか、出資するのに値する会社なのかなどを審査します。そして、出資する会社にあたると判断されてはじめて資金調達が成功となるのです。
銀行からの借り入れでは数千万円が限界ですが、将来性・成長性や特異性があれば数億円の出資を受けることもできる点に特徴があります。金額も大きくなるため、出資する側も事細かに査定・審査を行う必要があるというわけです。
ベンチャーキャピタルで資金調達できる額
ベンチャーキャピタルで資金調達できる額は、自身の会社が今どのステージにいるのかによって異なります。創設しての会社では、今後どのように成長して利益を上げていくのかが見えにくいため、数百万円から数千万円程度の資金調達となることが多いです。
すでに具体的な商品やサービスが確立しており、十分な売り上げや利益が出ている状態であれば、数億円の資金調達ができるケースも見られます。なお、すでに事業が成功していて株式公開を目前にしているベンチャー企業の場合は、多額の出資を受けられる可能性が高いです。
ベンチャーキャピタルは株式の上場などによって収益を得ることが目的のため、株式公開が近いベンチャー企業には、数億円から数十億円の出資をすることもあります。
ベンチャーキャピタルが重要視するポイント
ベンチャーキャピタルは、市場の成長性や将来的に株式の市場公開ができるかなどのほかに、マネジメントチームのうち「誰が手掛けるのか」ということに注目する場合もあります。また、競合する会社とのシェアやサービス、商品のマトリクス、勝負に出るサービス・商品は何かも重要視しています。
具体的には、販売する商品に独自の技術を盛り込んで、競合他社にはないものを開発するといった特異性が必要です。そのほかにも完成した商品やサービスの販売手法、収益の生み出し方も重要なポイントになるでしょう。
そして何よりも重視するのは、株式公開までの根拠を明確にし、将来株式の上場を目指す道筋が立てられているかです。ベンチャーキャピタルを活用した企業の資金調達の場合には、出資を受けてから5年程度で株式公開ができるように事業計画を行う必要があります。
ベンチャーキャピタルの代表事例
ベンチャー企業が実際にベンチャーキャピタルを活用し、資金調達に成功している事例をご紹介します。
株式会社Preferred Networks
2014年3月に設立されたベンチャー企業の株式会社Preferred Networksでは、交通システム、製造業、バイオヘルスケア事業を行っています。本社は東京都千代田区にあり、それぞれの事業に対してベンチャーキャピタルを成功させている会社です。
交通システムはトヨタ自動車、製造業はファイナックや日立製作所、バイオヘルスケアは国立がんセンターと共同研究を行っています。特に、交通システムにおいてはトヨタ自動車からおよそ105億円の出資を受けており、共同で自動運転技術やAI技術の開発・研究を行っています。
これは大手企業がベンチャー企業の持っている技術などに注目して、独自に出資を行うケースです。株式会社Preferred Networksの設立は2014年ですが、翌年の2015年にもトヨタ自動車から10億円の出資を受けておりました。
設立当初からトヨタ自動車との共同研究や開発を通じて信頼関係が築けており、技術面や実力も兼ね備えていたために、トヨタ自動車から早期の出資を受けて研究・開発が行われたものと考えられます。
株式会社One Tap BUY
2013年10月に設立した株式会社One Tap BUYは証券業を行っており、その事業スタイルは「スマートフォンを使って1,000円から株式投資ができる」というものです。これまでは、株式投資は金額ではなく株式の数単位で購入するスタイルが多く、初めて株式投資をする人でもある程度まとまったお金が必要でした。
しかし株式会社One Tap BUYは、投資する金額を決めて指定した銘柄が購入できるシステムを構築し、株式投資初心者でもはじめやすいことで注目を集めました。株式会社One Tap BUYは、ソフトバンクやモバイル・インターネットキャピタル、みずほ証券、ヤフージャパンなどの大手企業から出資を受け、2017年には25億円の出資を第三者割当増資で受けています。
第三者割当増資とは、新規で発行する株式の購入権利を取引先や経営にかかわる企業や金融機関などに付与することで、増資できる資金調達の方法です。第三者割当増資での出資の場合も、通常のベンチャーキャピタルからの出資と同じ扱いで、返済する必要のない資金調達となります。
ベンチャーキャピタル活用のメリット・デメリット
ベンチャーキャピタルを活用する際は、良い面も悪い面もあります。メリット・デメリットを理解・把握したうえで本当に自社にとって必要なのかを検討する必要があるでしょう。
メリット
ベンチャーキャピタルを活用するメリットは、主に以下3つが挙げられます。
さらなる出資を受けやすくなる
一度ベンチャーキャピタルから出資を受けると、追加の出資も受けやすくなります。なぜならベンチャーキャピタルの厳しい条件をクリアして出資を受けている将来性のある企業として世間は認識するからです。信頼性は高くなり、「将来上場を目指す会社」という印象を持たれるようにもなります。
ベンチャーキャピタルから出資を受けた場合は、5年程度で上場を目指すようになることが多く、株式上場が実行されるとさらに信頼を高めることになります。
大手企業と共同開発をする可能性
また、ベンチャーキャピタルから出資を受けるということは注目すべき事業を行っていることが予測できます。そのため、事業提携などで大手企業と提携して共同開発を行うといった可能性も広がるでしょう。
規模の小さいベンチャー企業でも、行っている事業が大手企業にとって魅力的なものであれば、共同開発・研究を行うこともあります。これによって出資金は回収しやすくなり、大手企業とベンチャー企業の双方にとって大きく成長できるチャンスにもなります。
経営コンサルティングや育成支援が受けられる
ベンチャーキャピタルの活用では適切に株式上場することなどが求められるため、ベンチャーキャピタル側から経営コンサルティングや育成支援などを受けられます。企業の経営幹部が若い年齢で社会経験が少なく未熟な部分があっても、的確な支援を受けられるので、事業を成功させる可能性が高まるでしょう。
デメリット
出資は返済が不要なため、上手に活用したいと考える企業も多いでしょう。ただし以下のようなデメリットもありますので、しっかりと把握しておくことをおすすめします。
経営が思いどおりにいかない
ベンチャーキャピタルは多くの投資家や事業所から資金を集めて出資しているため、出資者の意向を優先せざるを得ないケースも出てきます。これがデメリットの一つです。
株式の上場を視野に入れた経営が要求されたり、経営コンサルティングや育成指導などが実施されたりすることにより、経営幹部が本来思い描いていた経営ができなくなる場合もあります。
事業が危うくなると早期資金回収が行われる
また、事業計画書や出資条件によって出資が行われているがために、業績が芳しくないと早めに資金回収をされてしまう点も、デメリットの一つです。
当初の事業計画と異なり実際に経営を進めていく中で経営自体が危ぶまれると、出資側は株式の買取を迫るなどして早期に資金回収を図ろうとすることがあります。そうなってしまった場合には、事業を存続させることが難しいでしょう。
通常の上場より費用がかかる
そのほかには、株式上場を急いだ経営になるため、通常の株式上場よりも費用がかかる点に注意が必要です。上場の準備や上場後の株式維持などに余計な費用がかかります。
起業におけるベンチャーキャピタル活用の注意点
ベンチャーキャピタルを活用した資金調達は、銀行などからの借り入れとは全く性質が異なるので、注意が必要です。
銀行融資との違い
ベンチャーキャピタルを活用した資金調達は、銀行などからの借り入れとは全く性質が異なるので、注意が必要です。銀行などからの借り入れは、借り入れた翌月などから利息を含めた金額の返済が必要になります。
そのため、決まった日に決まった金額をしっかりと返済していれば、特に問題なく経営を続けられます。また、経営に関しても特別な支援や経営コンサルティングなどは行われません。
ベンチャーキャピタルの場合
しかし、ベンチャーキャピタルからの出資を受けていると、経営そのものに介入される場合もあり、経営幹部が思うように経営ができなくなってしまうケースもあります。ベンチャーキャピタル側は、出資を行う代わりに会社の株式を引き受けており、会社が株式上場などを行った際に株式の売却を行って収益を得ます。
ベンチャーキャピタルの注意点
そのため、経営そのものが操作される可能性もあり、本位でないことでも受け入れなければならないこともあります。そのほかには、自社の商品やサービス、技術とは関係のない事業所が行うベンチャーキャピタルを利用すると、経営方針が歪められてしまう可能性があります。
活用するベンチャーキャピタルは、事業内容に関連するような事業会社のベンチャーキャピタルや純粋に収益だけを目的にしているベンチャーキャピタルを選ぶようにするといいでしょう。
まとめ
ベンチャーキャピタルからの資金調達には、良い面だけではなく悪い面もあります。ベンチャーキャピタルから資金調達を行うには、まず「ベンチャーキャピタルからの資金調達が本当に必要か」を検討する必要があるでしょう。
各種金融機関からの融資だけでは事業が進まないなど、理由を考えてから資金調達の必要性を再確認することをおすすめします。また、事業そのものの成長性や将来性、特異性などがなければ出資してもらえない可能性が高いです。
なお、ベンチャーキャピタルから出資を受けた場合、株式の上場やM&Aを視野に入れて事業を行うことになります。銀行などの融資とは違って、出資までに1、2ヶ月程度かかるため注意が必要です。メリット・デメリットを踏まえたうえで、ベンチャーキャピタルを有効活用しましょう。
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