2020年3月31日更新事業承継

事業信託とは?事業信託スキームとメリット

事業の運営を第三者に任せる事業信託では、委託者・受託者・受益者それぞれが大きなメリットを享受でき、事業再生や債権回収などさまざま場面で活用され、自己信託の形で遂行することも可能です。事業信託のメリット、自己信託の仕組みを用いた事業信託と注意点を解説します。

目次
  1. 事業信託
  2. 事業信託とは?事業信託のスキーム
  3. 事業信託のメリット
  4. 自己信託の仕組みを用いた事業信託
  5. 事業の自己信託における注意点
  6. まとめ
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事業信託

事業信託は、スキームからするとM&A手法である事業譲渡に近いイメージですが、経営権や利益を得る権利は委託者である会社に留保される点に大きな違いがあります。そのため、どちらかというと事業譲渡より事業のアウトソーシングに近いイメージです。

この記事では、事業信託について詳しくご紹介します。

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事業信託とは?事業信託のスキーム

事業信託は信託の一種であり、ある事業に属する財産や債務を包括的に信託する行為です。そもそも信託とは、ある人物が第三者に対して財産を移転して一定目的の下でその財産の管理や処分を任せる行為です。財産を移転して管理・処分を第三者に任せる方を委託者、財産の管理や処分を実施する方を受託者と呼びます。

信託には不動産や有価証券などさまざまな種類がありますが、財産の管理や処分によって生じた利益のうち一部は、受益者に給付されるのが一般的です。受益者とは、信託において一定利益の給付を受ける権利を有する人物であり、委託者と同一の場合もあれば委託者とは異なる場合もあります。

事業信託では、委託者である事業者が受託者に事業信託し、受託者はそこで得た利益の一部を受益者である事業者や債権者に給付します。つまり、誰かに事業運営を任せて一定割合の利益を授受するということです。

事業再生を目的とした活用が増えている

事業信託は相続時の対策や事業承継の際に活用することが多いのですが、最近では事業再生を目的とした活用も増えています。これは、事業信託にある大きなメリットが要因であり、その特徴から多様な目的のために活用されています。

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事業信託のメリット

かねてより事業信託の導入は経済界から期待されており、導入以降はさまざまな場面で活用されています。事業信託を活用すると事業再生を図りたい会社はもちろん、受託者となる第三者や債権者にもメリットが生まれます。具体的には以下のメリットが代表的です。

  1. 事業再生や効率的な利益獲得が可能
  2. 初期費用をかけずに新規事業を開始できる
  3. 破産よりも多額の債権回収を期待できる

①事業再生や効率的な利益獲得が可能

委託者となる会社の最大のメリットは、事業再生や効率的に利益を獲得できる点です。破産を検討するほど事業運営が厳しい状況では、事業再生が必要となります。破産すると事業運営が終了する一方で、事業再生を図るためには多額の資金が必要です。

経営資源に乏しい中小企業にとって事業再生を図ることは困難であり、結果として破産の道しか選べなくなります。そんな企業にとって事業信託は効果的な手法であり、自社事業を成長・回復させられるほどの経営資源を持つ第三者に事業信託します。

すると、多額の資金を用意せずとも事業再生を図れるようになり、事業再生を実施しながら受益者となる会社や債権者は事業信託によって生み出された利益を獲得できます。

②初期費用をかけずに新規事業を開始できる

新規事業を開始する場合、基本的には多額の費用や多大な時間・労力がかかります。それにもかかわらず、失敗するリスクは大きいため迅速かつ低リスクで開始する手段としてM&Aが有効となるのですが、M&Aには時間と相応の買収資金が必要です。

しかし、これらの問題は事業信託の受託者となれば解決できます。展開したい分野の事業信託を引き受けることで、多額の資金を用意する必要がなく、時間もM&Aと比べれば短期間で新規事業を開始できます。

受益者に利益を渡すことにはなりますが、残りは自社の利益とすることができ、新規事業を最初からスタートさせるよりは失敗するリスクも少なく済みます。このように、特に開業を目指す人にとって事業信託の大きなメリットとなるのです。

③破産よりも多額の債権回収を期待できる

会社が破産した場合、換金された財産は法律に従って優先順位が高い順に分配されることになるため、債権者によっては債権額に対して少ししか回収できない場合もあります。破産による債権者への損害を回避するために、民事再生と事業譲渡によって換金を図るケースもあります。

しかし、事業譲渡を用いる場合は買い手側が安値で買収する可能性が高く、債権者にとって満足できない結果となることも少なくありません。そこで事業信託を活用すれば、債権者はより多くの債権を回収できる可能性が高くなります。

その方法は、事業信託の受益権を債権者が保有して、事業利益の配当や事業の売却代金などで回収することや、委託者である会社側が受益権を売却してその売却利益を債権者に分配するスキームでも、破産や事業譲渡と比べて多額の債権回収に期待ができます。

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自己信託の仕組みを用いた事業信託

近年は、自己信託の仕組みを用いて事業信託を実施するケースも見受けられます。この項では、自己信託による事業信託の概要とメリットを紹介します。

自己信託とは

自己信託とは、委託者と受託者を同一人物が兼任する形の信託です。通常の信託行為は委託者と受託者が合意することで効力が発生しますが、自己信託は同一人物がこれらを兼任するため単独で効力を発生させられます。

自己信託を実施する際は、書面もしくは電磁的記録、公正証書に目的などを記し、自己信託設定書と呼ばれる書面に委託者が押印して、公証人が認証すると効力が発生します。この仕組みを利用して、事業信託を実施することも実務上可能です。

例えば、ある会社が委託者と受託者を兼ね、債権者を受益者にして利益を給付するように活用します。

事業の自己信託を行うメリット

自己信託により事業信託を実施すると、以下のメリットが期待できます。

事業のコントロールを担保できる

不動産や有価証券の信託と比較すると、事業運営にはノウハウや経営の管理能力などさまざまな要素が必要であり、難易度としては事業信託の方が高いです。そのため、慣れない受託者に事業信託した結果、事業のコントロールを失って十分な利益を生み出すことができない可能性があります。

仮にコントロールできなかったとしても受託者の責任を追及できず、失敗という結果だけが残ってしまいます。事業信託を自己信託の形で実施すれば事業のコントロールは継続できるため、このメリットは大きいです。

法規制により事業信託できない場合に有効

薬局には薬事法が適用されるなど、事業によっては法規制があります。こうした分野に関しては事業信託を実行できませんが、自己信託を用いれば可能になります。ただし、これはメリットというよりも止むを得ず自己信託を用いると述べた方が正確かもしれません。

事業の自己信託における注意点

最後に、事業の自己信託を実施する場合に注意したい点を2つ紹介します。

信託の設定方法が複雑

事業を自己信託する際、プラスの資産とマイナスの資産を区別して自己信託の契約書を作成する必要があります。プラスの資産は在庫や事業設備、売掛け債権をさし、マイナスの資産は借入金をさします。プラス資産を信託財産の資産とし、マイナス資産は引当財産に加えなくてはいけません。

このように、事業の自己信託は手続きが複雑であるため、専門家にサポートしてもらうことをおすすめします。

債権者の同意が必要となるケースがある

下記の要件に当てはまる場合には、事業信託の際に債権者の同意が必要となります。

  • 自己信託の設定により信託財産破産時のリスクが債権者に対して生じる
  • 自己信託する事業分野において法律上債権者保護が重視される

後々のトラブルを回避するためにも、上記いずれかの要件に当てはまる場合は債権者の同意を取り付けるようにしましょう。

まとめ

今回は、事業信託について解説しました。事業の運営を第三者に任せる事業信託では、委託者・受託者・受益者それぞれが大きなメリットを享受できることから、事業再生や債権回収などさまざまな場面で活用されています。

また、事業信託は自己信託の形で遂行することも可能であり、特殊な法規制が存在する場合に有効です。しかし、債権者保護や信託の設定方法には十分に気を付けなければなりません。知名度の低さもあり、経営者にとっては馴染みが薄い手法です。

いざ事業信託を活用しようとしても思うように有効活用できない可能性がありますので、事業信託に詳しい専門家に業務委託するのがベストです。最後に、要点をまとめると下記になります。

・事業信託とは
→ある事業に属する財産や債務を包括的に信託(財産の管理や処分を任せること)する行為

・事業信託のメリット
→事業再生や効率的な利益獲得を実現可能、初期費用をかけずに新規事業を開始できる、破産よりも多額の債権回収が期待できる

・自己信託とは
→同一人物が受託者と受益者を兼任する形の信託

・事業の自己信託を行うメリット
→事業のコントロールを担保できる、法規制により事業信託できない場合に有効

・事業の自己信託における注意点
→信託の設定方法が複雑である、債権者の同意が必要となる可能性がある

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