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2019年11月28日更新
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事業信託とは?事業信託スキームとメリット

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

事業の運営を第三者に任かせる事業信託では、委託者・受託者・受益者それぞれが大きなメリットを享受できます。事業再生や債権回収等様々な場面で活用される事業信託は、自己信託の形で遂行する事も可能です。事業信託のメリット、自己信託の仕組みを用いた事業信託と注意点を解説します。

目次
  1. 事業信託
  2. 事業信託とは?事業信託のスキーム
  3. 事業信託のメリット
  4. 自己信託の仕組みを用いた事業信託
  5. 事業の自己信託における注意点
  6. まとめ

事業信託

事業信託のスキームを用いて、事業再生を図るケースが増加しています。

経営者にとって、事業信託は馴染みの薄い手法かと思います。

M&A手法である事業譲渡に近いイメージですが、経営権や利益を得る権利は委託者である会社に留保されます。

どちらかと言うと、事業譲渡よりも事業のアウトソーシングに近いイメージです。

この記事では、事業信託がどういったものか、詳しくご紹介します。

事業信託とは?事業信託のスキーム

まず初めに、事業信託の意味を紹介します。

「信託」というワードを聞いた経験のある方は多いでしょうが、実際にどのようなスキームか理解している方はあまり多くないでしょう。

信託とは、ある人物が第三者に対して財産を移転して、一定目的の下でその財産の管理や処分を任せる行為です。

財産を移転して管理・処分を第三者に任せる方を委託者、財産の管理や処分を実施する方を受託者と呼びます。

信託には不動産や有価証券、様々な種類がありますが、財産の管理や処分によって生じた利益のうち一部は、受益者に給付されるケースが一般的です。

受益者とは信託において一定利益の給付を受ける権利を有する人物であり、委託者と同一の場合もあれば、委託者とは異なるケースもあります。

事業信託も信託の一種であり、ある事業に属する財産や債務を包括的に信託する行為です。

事業信託では、委託者である事業者が受託者に事業信託し、受託者はそこで得た利益の一部を受益者である事業者や債権者に給付します。

つまり誰かに事業運営を任せ、一定割合の利益を授受する行為です。

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事業信託のメリット

かねてより事業信託の導入は経済界から期待されており、実際に導入されて以降、様々な場面で活用されています。

事業信託を活用すると、事業再生を図りたい会社は勿論、受託者となる第三者や債権者にもメリットが生まれます。

事業信託には、主に下記3種類のメリットが存在します。

事業信託を検討中の方や新規事業展開を検討中の方は参考にしてみてください。

⑴事業再生や効率的な利益獲得が可能

委託者となる会社における最大のメリットは、事業再生や効率的に利益を獲得できる点です。

破産を検討する程事業運営が厳しい状況では、事業再生が必要となります。

破産すると事業運営が終了する一方で、事業再生を図る際には多くの経営資源を要します。

経営資源に乏しい中小企業にとって、事業再生を図ることは困難であり、結果として破産の道しか選べなくなります。

破産の窮地に陥る企業にとって、事業信託は効果的な手法です。

自社事業を成長・回復させる事ができる経営資源を持つ第三者に事業信託すれば、費用や経営資源をかけずに事業再生を図る事が可能です。

事業再生を実施しながら、受益者となる会社や債権者は事業信託によって生み出された利益を獲得できます。

⑵初期費用をかけずに新規事業を開始できる

事業信託の受託者となる第三者にとっても、メリットがあります。

新規事業を開始する場合、基本的には多額の費用や多大な時間・労力がかかります。

費用や時間がかかるのみならず、失敗するリスクも大きいです。

新規事業を迅速かつ低リスクで開始する手段としてはM&Aが有効ですが、M&Aには時間と相応の買収資金が必要です。

新規事業の展開には上記の通り多種多様な障壁が存在しますが、事業信託の受託者となれば問題を解決できます。

展開したい分野の事業信託を引き受けることで、初期投資や時間をかけずに新規事業を運営できます。

受益者に利益を渡すことで、残りは自社の利益とする事が出来ます。

初期費用をかけずに新規事業を開始できる点は、受託者にとって事業信託の大きなメリットです。

⑶破産よりも多額の債権回収を期待できる

会社が破産した場合、法律上の優先順序に則って換金された財産が分配されます。

一部の債権者の中には、少額の債権しか回収できない方も出てくる恐れがあります。

破産による債権者への損害を回避する為に、民事再生と事業譲渡による換金を図るケースもあります。

事業譲渡を用いる場合買い手側は極力安値で買収する可能性が高く、債権者にとって満足出来ない結果となるかもしれません。

事業信託を活用すれば、債権者がより多額の債権を回収できる可能性が高くなります。

事業信託の受益権を債権者が保有すれば、事業利益の配当や事業の売却代金等を獲得できます。

委託者である会社側が受益権を売却し、その売却利益を債権者に分配するスキームでも、破産や事業譲渡と比べて多額の現金が債権者に給付される場合が多いです。

以上の通り事業信託では、多方面の関係者にメリットがもたらされます。

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自己信託の仕組みを用いた事業信託

近年は、自己信託の仕組みを用いて事業信託を実施するケースも見受けられます。

この項では、自己信託による事業信託の概要とメリットを紹介します。

⑴自己信託とは

自己信託とは、同一人物が受託者と受益者を兼任する形の信託です。

通常の信託行為は委託者と受託者の合意により効力を生じますが、自己信託は単独の意思表示によって効力が発生します。

自己信託を実施する際は、書面もしくは電磁的記録、公正証書に自己信託の目的等を明記します。

自己信託設定書と呼ばれる書面に委託者が押印し、この書面に公証人の認証を得る事で、自己信託の効力が正式に発生します。

ある財産を自身の保有財産から切り離した上で、受益者に利益分配を行いたい場合に、自己信託の活用が有効となります。

自己信託の仕組みを利用して、事業信託を実施することも実務上可能です。

つまりある会社が委託者と受託者を兼ねて事業信託し、受益者である債権者に利益を給付することです。

⑵事業の自己信託を行うメリット

自己信託の仕組みを用いて事業信託を実施すると、以下2つのメリットが期待できます。

①事業のコントロールを担保できる

不動産や有価証券の信託と比較すると、事業運営にはノウハウや経営の管理能力等様々な要素が必要であり、事業信託の難易度は高いです。

慣れない委託者に事業信託した結果、受託者が十分に事業をコントロール出来ずに、十分な利益を生み出すことが出来ない恐れがあります。

仮にコントロールできなかったとしても、受託者の責任を追及できません。

事業信託を自己信託の形で実施すれば、引き続きご自身で事業を運営できる為、上記の心配が無くなります。

②法規制により事業信託できない場合に有効

薬事法など一部の法規制が適用される分野に関しては、事業信託を実行出来ません。

その様な場合にも、自己信託を用いれば事業信託を実施可能です。

メリットと言うよりは、止むを得ず自己信託を用いると述べた方が正確かもしれません。

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事業の自己信託における注意点

最後に、事業の自己信託を実施する場合に注意したい点を2つ紹介します。

⑴信託の設定方法が複雑

事業を自己信託する際、プラスの資産とマイナスの資産を区別して、自己信託の契約書を作成する必要があります。

プラスの資産は在庫や事業設備、売掛け債権を指し、マイナスの資産は借入金を指します。

自己信託の形で事業信託する時は、プラス資産を信託財産の資産とし、マイナス資産は引当財産に加えなくてはいけません。

事業の自己信託は手続きが複雑である為、最寄りの専門家に業務をサポートして貰うことをオススメします。

⑵債権者の同意が必要となる可能性

一定の要件に当てはまる場合には、事業信託の際に債権者の同意が必要となります。

事業信託の際、下記要件に該当する場合には債権者の同意を取りましょう。

  • 自己信託の設定により、信託財産破産時のリスクが債権者に対して生じる
  • 自己信託する事業分野において、法律上債権者保護が重視される

後々のトラブルを回避する上で、債権者への配慮は必須です。

※関連記事

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まとめ

今回は、事業信託について解説しました。

事業の運営を第三者に任かせる事業信託では、委託者・受託者・受益者それぞれが大きなメリットを享受できます。

事業再生や債権回収、様々な場面で活用される事業信託は、自己信託の形で遂行する事も可能です。

自己信託は委託者と受託者をある人物が兼任する形で実施するものであり、特殊な法規制が存在する場合に有効です。

便利な自己信託ですが、債権者保護や信託の設定方法には十分に気を付けなくてはいけません。

知名度の低さもあり、経営者の方にとって馴染みが薄い手法です。

いざ事業信託を活用しようと思っても、思うように有効活用できない可能性があります。

少しでも事業信託を円滑に実行したいのであれば、事業信託に詳しい専門家に業務委託する事がベストです。

要点をまとめると下記になります。

  • 事業信託とは

→ある事業に属する財産や債務を包括的に信託(財産の管理や処分を任せること)する行為

  • 事業信託のメリット

→事業再生や効率的な利益獲得を実現可能、初期費用をかけずに新規事業を開始できる、破産よりも多額の債権回収を期待できる

  • 自己信託とは

→同一人物が受託者と受益者を兼任する形の信託

  • 事業の自己信託を行うメリット

→事業のコントロール力を担保できる、法規制により事業信託できない場合に有効

  • 事業の自己信託における注意点

→信託の設定方法が複雑である、債権者の同意が必要となる可能性がある

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