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2019年3月10日更新
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事業承継における種類株式の活用方法

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

種類株式は事業承継を円滑に達成するために役立ちますし種類株式は使い方によって株主の利益や権利が侵害されるものであり、株主の反対を受ければ導入はできないので注意が必要です。種類株式の意味、種類、種類株式導入の手続き、種類株式を活用した事業承継の例について解説します。

目次

    事業承継における種類株式の活用方法

    事業承継を円滑に実行するためにどうしたらいいのか、頭を悩ませている方は多いと思います。

    事業承継の方法は多種多様であり、方法が定まらないということもあるでしょう。

    そんな時におすすめできる手法が、「種類株式を活用した事業承継」です。

    種類株式は様々な機能を持っており、事業承継を円滑にし、後継者に会社を任せる上で役立てることができます。

    今回は事業承継における種類株式の活用方法をお伝えしていきます。

    事業承継における種類株式とは?種類株式の意味

    まずは種類株式がどういったものかお伝えします。

    通常、投資家が売買するような株式のことを「普通株式」といいますが、それに対し、種類株式は何かしらの機能が付加された株式のことを指します。

    種類株式は普通株式と異なり、一定の決定事項に基づいて権利内容が定められているものです。

    そのため種類株式を有することで、その株主(種類株主といいます)は何かしらの権利を行使したり、利益を獲得できるようになります。

    種類株主の発行は定款に変更することによって完了します。

    言ってしまえば種類株式に関する事項を定款に記入することで完了します。

    ただ定款の変更には株主総会の特別決議が必要となるため、株主の同意が得られないような種類株式は発行できる可能性が低いため注意しましょう。

    種類株式の種類とそれぞれの内容

    種類株式は全部で9つの種類があり、それぞれ異なる内容となっています。

    類株式のそれぞれの規定は重ねて付加することが可能であり、通常は複数の規定が付加された株式を発行していることが多いです。

    ここではそれぞれの種類株式の内容をお伝えしていきます。

    ①剰余金の配当規定

    剰余金の配当に関する規定が付加された株式であり、剰余金の配当に関する地位の優劣が定められているものです。

    優先株式が与えられた場合は株主への剰余金の配当が優先され、劣後株式であれば後回しになります。

    ちなみに通常の順番で配当される株式の場合は普通株式となります。

    ②残余財産の分配規定

    会社が解散するなどして発生した残余財産の分配に関する規定が付加された株式です。

    こちらも剰余金のように、優先株式・劣後株式・普通株式があり、それぞれによって残余財産の分配の順番が異なっています。

    ③議決権制限規定

    議決権制限規定は株主総会の議決権に規定が付加されている株式です。

    議決権制限規定が付加されている株式は議決権の一部、あるいは全てが制限されています。

    そのため全く議決権がない無議決権株式を発行することも可能です。

    議決権制限規定が付加された株式を有している株主は株主総会での議決権が制限されるため、経営陣に決定権を集約させることができます。

    ④譲渡制限規定

    譲渡制限規定はその名の通り他者への譲渡が制限されている株式であり、譲渡制限株式と呼ばれます。

    譲渡制限株式はベンチャー企業や中小企業が会社の買収、株式の分散を防ぐために発行していることが多く、譲渡制限株式のみが発行されている会社は非公開会社と呼ばれます。

    ⑤取得請求権規定

    取得請求権規定は取得請求権とほぼ同一であり、株主が株式を発行している会社に対して株式の対価として金銭などの財産を請求することができます。

    株主からしたら投資した分の金銭を回収できるため、かなりメリットがある種類株式だといえます。

    ⑥取得条項規定

    取得条項規定は取得請求権規定に近いものですが、こちらは一定の事由を設定したうえで、その事由を迎えた際に株式の対価として別の種類株式を請求することができます。

    取得条項規定は事業承継にも活用できるものであり、議決権制限規定と組み合わせて使用されます。

    ⑦全部取得条項規定

    全部取得条項規定は会社が対象の株式を全て取得できるという規定が付加されている種類株式です。

    ただ株式を取得する際には株式総会で決議を得る必要があります。

    ⑧拒否権規定

    拒否権規定とは株式総会や取締役会の一定の事項の決議を拒否できるという強力なものです。

    この拒否権規定が付加された株式は俗にいう「黄金株」のことであり、敵対的買収を防止する際に役立ちます。

    そのため買収防衛策として黄金株が導入されるケースがあります。

    ただ黄金株は万が一流出すると経営に悪影響を及ぼす可能性があるため、譲渡制限規定が一緒に付加されていることが多いです。

    ⑨役員選任権規定

    役員選任権規定はこの株式を所有する株主で構成されている種類株主総会において取締役や監査役の選任に関する議決権が付加されるというものです。

    経営陣の人事に影響できる種類株式ですが、委員会を設置している会社や公開会社は発行することができません。

    種類株式を導入する際の手続き

    事業承継や買収防衛策のために種類株式を導入する際の手続きはどんなものなのでしょうか。

    冒頭でお伝えしたように、種類株式の導入の手続きは基本的に定款の変更と株主総会がメインです。

    種類株式に関する事項を定款に定め、その旨を決議する株主総会を行います。

    そして決議を得た後に種類株式の設定や発行について登記を行って導入は完了されます。

    種類株式の導入の手続きはそこまで手間がかかるものではありません。

    しかし、株主総会を行う必要があるため、株主から同意を得ることが何よりも重要だといえます。

    ある程度株主を抱えている会社の場合、株主は自分達の利益や権利を失うと判断するとその種類株式を導入に反発することがあります。

    そのため経営陣と株主それぞれの利益、権利を損なわないような種類株式を設定しておくようしておきましょう。

    ただ、最初から種類株式の設定を詳細に決めておく必要はありません。

    先に発行したい種類株式の概要だけで定款に定めておいた後に、具体的な設定を決めていく形でも導入することが可能です。

    ただ気を付けておきたいのが普通株式を種類株式にするケースと種類株式がすでに発行されている状態で種類株式を新たに発行するケースです。

    普通株式を種類株式にする場合、全部取得条項付株式(全部取得条項規定が付加された株式)の発行や第三者割当増資を行うなど、手続きがかなり煩雑になります。

    配当優先議決権制限種類株式を発行するという旨の定款変更の特別決議を行うことで会社を種類株式発行会社に変え、さらに普通株式を配当優先議決権制限株式に転換する(一部の株主だけ)という旨に対する同意書を全ての株主から文書でもらうだけで手続きを完了させるという裏わざもあります。

    種類株式が既に発行されている状態で種類株式を発行する場合、手続きは通常の種類株式導入の手続きと変わりません。

    しかし元々の種類株式を所有する種類株主に損失が発行する可能性がある場合、株主総会に加えて種類株主総会を開催して決議を得る必要があります。

    事業承継における支配権の確保と対策

    種類株式を利用した事業承継についてお伝えする前に、事業承継における支配権の確保と対策の重要性についてお伝えします。

    事業承継において後継者の支配権の確保は何よりも重要なプロセスです。

    株式会社の場合、経営権を司る株式が分散している状態だと重要な経営戦略の決定を株主総会で覆されやすくなり、思う通りに経営が進まない可能性があります。

    とりわけ後継者と敵対している不都合な人物に株式が渡り、経営に対して一定以上の発言権を有してしまうと、せっかく定めた後継者が経営者になっても、その地位を脅かされてしまう可能性があるでしょう。

    そのため経営者は事業承継を行う際、後継者が確実に株式の100%を取得し、支配権を確保させることが重要になります。

    中小企業であれば、それこそ経営者が100%の株式を有している株主になっていることが理想的だといえるでしょう。

    ただ株式を100%取得させる事業承継は決して簡単ではありません。

    よくある事業承継では相続という形で株式を後継者に取得させるということが多いものです。

    しかし相続による事業承継は確実性が高いとは言い難いものです。

    例え遺言書で株式の相続人を具体的に定めたとしても、遺留分減殺請求などによって相続財産である株式が分散してしまう恐れがあります。

    経営者が亡くなってしまうと相続を完全にコントロールすることは難しくなります。

    そのため相続による事業承継は後継者候補が複数いるようなケースだと心もとない手段だといえるでしょう。

    後述する種類株式を活用した方法であれば後継者の支配権の確保をより確実にできるようになります。

    種類株式を活用した事業承継の例

    種類株式を活用した事業承継は様々な方法があります。

    ここでは代表的なものを3つご紹介します。

    ①譲渡制限規定を活用した事業承継

    種類株式の一つである譲渡制限規定を活用した事業承継はいたってシンプルなものです。

    これは会社が許可した相手にしか譲渡できない譲渡制限株式(譲渡制限規定を付加された株式)を発行し、それを後継者に支配権を獲得できる分だけ取得させるというものです。

    譲渡制限株式は相続や合併などによって一般承継された場合、会社の意向に関わらず株式の承継を行うことができます。

    つまり後継者により確実に株式を取得させることが可能になるわけです。

    それに譲渡制限株式であるため、株式の分散が抑えられることも大きなメリットだといえるでしょう。

    また譲渡制限株式であれば他の会社からの買収も防ぎやすいため、敵対的買収に対する買収防衛策として使えます。

    ただ譲渡制限株式しか発行していない非公開会社において注意しておきたいのが「売渡請求権」です。

    これは承継された譲渡制限株式に対して売渡を請求できるものであり、相続や合併などによって承継が発生したことを知った日から1年以内であればいつでも請求できるというものです。

    この売渡請求権は恐らく事業承継において最もやっかいなものの一つだといえます。

    売渡請求権は一度使用されると当該株式を持つ株主は議決権を有することはできません。

    たとえ支配権を確立できるだけの株式を所有していても売渡請求権を拒絶することはできないというわけです。

    売渡請求権は会社と当該株主の間で株式を売り渡す価格に同意がなければ実行はできないため、ここで抵抗することは可能です。

    話し合いが上手くいかないと訴訟に発展してしまうケースもあるため、どちらにせよ円滑な事業承継は阻害されてしまうでしょう。

    そのためなるべく後継者以外の株主がいない状態、あるいは後継者への反対勢力が株主にいない状況で実行することがおすすめです。

    ②議決権制限規定と取得条項規定を活用した事業承継

    議決権制限規定と取得条項規定を活用した事業承継も有効的な方法の一つです。

    例えば後継者が確定しているなら議決権がある株式を後継者のみに取得させ、他の株主には議決権制限株式(議決権制限規定を付加した株式)を取得させれば、後継者の支配権を確立させられるようになります。

    後継者候補が複数いる場合は素質を見極めるまでそれぞれ取得条項規定が付加された議決権制限株式を取得させておき、後継者が定まってからは株主が死亡するなどの事由で自動的に議決権制限株式を議決権付きの株式に転換させるようにするという方法もあります。

    議決権制限株式を活用する方法は株主の権利や利益を侵害する恐れがあるため、株主との話し合いが重要です。

    ③拒否権規定を活用した事業承継

    拒否権規定を活用した事業承継は後継者が実際に経営を行う場面に主眼が置かれています。

    拒否権規定を付加した株式、つまり黄金株を引退した経営者があらかじめ持っておくことにより、後継者が経営を行ううえで暴走したり、無茶な経営戦略を行おうとしている事態になった際に株主総会で後継者の提案を阻止できるようになります。

    つまり後継者の手綱として黄金株を持っておくというわけです。

    後継者が安定してきたら黄金株を後継者に取得させておけば事業承継が完全に完了します。

    黄金株は非常に強力な株式であり、他の株主に取得させるような事態にならないようにしておく必要があります。

    まとめ

    種類株式は事業承継を円滑に達成するうえで非常に役に立つものだといえます。

    上手く活用すれば後継者に発生し得る様々なリスクを除外することができるでしょう。

    しかし種類株式は使い方によっては株主の利益や権利が侵害されるものであり、株主の反対を受ければ導入することすらできません。

    実際に種類株式を導入する際には株主の同意が得られるように設定する必要があります。

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