2021年4月25日更新事業承継

事業承継の手続きの流れや必要なものを紹介【法人・個人事業主向け】

事業承継に必要な手続きは、法人と個人事業主で異なります。法人における事業承継は基本的な手続きの終了後に、個人事業では後継者が同じ屋号を用いて開業することで完了となる仕組みです。本記事では、法人と個人事業主の事業承継時の手続きについて解説します。

目次
  1. 事業承継とは?
  2. 事業承継の手続きの主な流れ
  3. 事業承継の手続き/必要なもの
  4. 事業承継の手続きをスムーズに行うためのポイント
  5. 事業承継の手続きにおける注意点
  6. まとめ
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事業承継とは?

事業承継とは?

事業承継の手続きに興味を持つ経営者の方が増えています。近年、多くの企業では経営者の高齢化が進行しており、事業承継について検討を始める経営者が増加中です。とはいえ、いざ事業承継をしようとしたときに、どのような手続きが必要なのかわからない経営者の方が多く見受けられます。

事業承継を完了するまでには、非常に多くの手続きを行わなければなりません。どのような手続きがあるのか知らずに事業承継を始めれば、スムーズに進行できないおそれがあるのです。そこで今回は、事業承継を成功させるうえで必要な手続きについて詳しく解説します。

法人と個人事業で手続きが異なるため、自身に最適な手続きを知って円滑に事業承継を成功させましょう。まずは、事業承継の概要について、以下3項目に分けて紹介します。

  1. 事業承継の基礎知識
  2. 事業承継で必要となる対策
  3. 個人事業主と法人の違い

具体的な手続き内容を知る前に、上記3つの基礎事項を押さえておくと理解しやすいです。それぞれの項目について順番に紹介します。

①事業承継の基礎知識

最初に、事業承継について最低限知っておくべき知識を解説します。事業承継とは、会社に関わるさまざまな権利・資産を後継者に譲渡する行為です。具体的には、以下の権利や財産を後継者に引き継ぎます。

  • 経営権
  • 資産(自己株式など)
  • 知的財産(人材や技術力)

事業承継を成功させるためには、上記3つを円滑に引き継ぐ必要があります。後述しますが、事業承継は誰に引き継ぐかによって、必要な手続き・注意点などが異なる点に注意しなければなりません。

もともとは経営者自身の子供に事業承継する形が一般的でしたが、近年は従業員や第三者に事業承継する事例も増加しており、子供を後継者に指名できないケースであっても事業承継を諦める必要はありません。

とはいえ、従業員や第三者に引き継ぐのであれば、早期のタイミングから「誰に引き継ぐか」を決めておくことが大切です。そのため、事業承継の手続きに取り掛かるタイミングは、早ければ早いほど良いでしょう。

②事業承継で必要となる対策

事業承継は、思い立って即座に実行できるものではありません。事業承継を突然行っても成功しない事例が多いため、極力早いうちに対策を始めるのがベストです。具体的には、事業承継をするにあたって以下3つの対策が有効となります。

  • 自社の現状把握
  • 会社の磨き上げ
  • 事業承継計画の作成

まずは自社の現状を知ることで、事業承継までにどのような手続きが必要なのか把握が可能です。また、会社の磨き上げ(企業価値の向上)により、後継者に引き継いでもらいやすくなります。さらに、事業承継計画の作成によって、必要となる手続きを可視化できる仕組みです。

ただし、これら3つの対策は、事業承継を成功させるための必要最低限の対策です。詳細な対策内容については、中小企業庁が策定した事業承継ガイドラインに記載されています。事業承継の前に行うべき対策を詳しく知りたい場合は、そちらも参照しましょう。

③個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人では、事業承継に必要な手続きが大きく異なる点も把握しておきましょう。誰に事業を引き継ぐのかによっても手続きが異なるため、まずこの点を認識しておかなければしかるべき対策を講じられません。

次章からは個人事業と法人で異なる手続きを順番に解説しますので、事業形態に合わせて最適な事業承継手続きを進めましょう。

【関連】事業承継ガイドラインとは?活用方法や中小企業庁が策定した背景を解説

事業承継の手続きの主な流れ

事業承継の手続きの主な流れ

まずは、事業承継の大枠を理解するために、手続きの主な流れを以下の4項目に分けて取り上げます。

  1. 後継者との合意形成
  2. 親族・従業員など関係者への周知
  3. 株式譲渡の実施
  4. 個人保証・担保の承継

それぞれの項目を順番に紹介します。

①後継者との合意形成

事業承継を行ううえで、後継者との合意形成は最優先で進めるべき手続きです。いかなる方法を用いる場合でも、後継者との合意なしに事業承継を進めることはできません。

例えば、親族内承継をする場合、たとえ経営者が心の中で親族から後継者を選定していたとしても、後継者候補となる本人に引き継ぐ意思がなければ事業承継を進められません。仮に無理やり事業承継を進めれば、親族間の関係に亀裂が生じて今後の会社・事業運営に深刻な影響が生じます。

また、親族外承継をする場合でも、後継者との合意形成は必要不可欠です。たとえ優秀な従業員に後継者になってもらいたいと思っていても、本人に引き継ぐ意思がなかったり、その従業員の家族の反対により後継者になってもらえなかったりするケースがある点には注意しておきましょう。

なお、社外の第三者に事業承継する場合は、仲介者を通じて交渉するケースが多く、事業承継を積極的に考えている候補者から選ぶために合意形成がしやすい点では優位性があります。

②親族・従業員など関係者への周知

事業承継では、選定した後継者について親族・従業員など関係者に周知する手続きも必要不可欠です。ここでは、とりわけ株式や事業用資産について相続権を有する親族から理解を得ておくと、将来的なトラブルを回避できます。

その一方で、理解が得られなかった親族に相続の不公平性に関する不満を持たれてしまえば、後継者に対して遺留分減殺請求を行うといったトラブルが発生する可能性があり、後継者に金銭的負担がのしかかりかねません。

また、対従業員との関係では、後継者を周知させることで信頼・信用を集める意義があります。仮に後継者について従業員が不満を持てば、承継後の業績低下・優秀な人材の流出などにつながるおそれがあるのです。

したがって、単純な周知というだけでなく、経営権の移行前から後継者に業務を引き継ぎながら実績を出してもらったり、従業員との関係性を構築してもらったりして、従業員が後継者を受け入れるための土壌作りを進めましょう。

③株式譲渡の実施

法人の場合、経営者が持つ会社の株式を後継者に譲渡して、経営権を承継する必要があります。株式譲渡の方法は、「相続」「贈与」「株式売買」の3種類です。

相続では、経営者の死亡時に株式が相続により譲渡されるため、経営者は株式が後継者に移動するのを直接確認できません。そのため、自身の死後に確実に株式譲渡が行われるよう入念な準備が必要です。

贈与では、経営者の存命中に株式を後継者に譲渡する「生前贈与」が採用されます。後継者への株式の移動を経営者が見届けられるため、安心感という面でメリットのある方法です。

株式売買では、売買取引となるため後継者に株式を買い取るための資金が求められます。資金を準備できない場合には、株式売買による譲渡は実施できないため注意しましょう。

④個人保証・担保の承継

株式譲渡では、合わせて個人保証や担保の承継も行われます。経営者が会社・事業の借り入れのために自宅・資産などを担保に入れている場合、借入先の金融機関に個人保証や担保を外してもらったうえで後継者に引き継げるよう手続きを進めると良いでしょう。

しかし、後継者への保証や担保の引き継ぎについて金融機関が認めないケースも中には見られます。中小企業の事業を大手企業が引き継ぐケースであれば、このような心配はほとんどありませんが、親族や従業員に引き継ぐ場合には注意が必要です。

【関連】会社売却で準備すべきこと・書類一覧を解説!

事業承継の手続き/必要なもの

事業承継の手続き/必要なもの

本章では、事業承継の手続きおよび必要なものについて詳しく取り上げます。そもそも事業承継の手続きを進めるには、方法を問わず以下のようなものが必要です。

  1. 時間
  2. 後継者
  3. 周囲の理解
  4. 資金

そのため、事業承継を検討する経営者の方は、まず上記を確保する準備から始めると良いでしょう。ここからは、「親族内・親族外への事業承継」「M&Aを用いた事業承継」「個人事業の事業承継」の3ケースに分けて詳しく紹介します。

親族内・親族外への事業承継

まず紹介するのは、法人が事業承継をする際の手続きについてです。法人には細かい定義がありますが、ここでは「法人=株式会社」として説明します。法人の事業承継は、「誰に継ぐか」によって種類が分かれて手続きが大きく異なるため、気をつけなければなりません。

  • 親族内承継
  • 親族外承継

上記を簡単にいえば、「親族に事業承継するのか」「従業員や第三者といった親族外に事業承継をするのか」の2種類です。ここからは、パターンごとに必要な手続きを紹介します。

親族内承継

親族内承継とは、実の子供など経営者の親族に対して事業承継する方法です。親族内承継の場合、「相続」もしくは「贈与」の手続きによって、自社株を譲渡するのが一般的となっています。

相続

相続では、経営者が亡くなった後に後継者に対して株式などの遺産が譲渡されます。ここで重要なのが、「遺書」の作成手続きが必須である点です。遺書を作成していない場合、相続人の構成に応じた法定の割合で株式に相続が発生してしまいます。

つまり、後継者に対して株式を譲渡する旨を定めておかないと、事業承継が成立しないおそれがあるため注意しましょう。また、遺留分に対する対策も考えておく必要があります。遺留分とは、一定範囲内の親族に最低限保証されている相続財産分のことです。

遺留分によって株式が分散すると、その後の事業運営が困難となる可能性があります。遺留分の対策としては、経営承継法の特例活用が効果的です。これにより、事業承継で引き継ぐ株式を遺留分から除外したり、遺留分に含める価額を固定したりできます。

さらには、相続税対策も重要です。相続税の制度により、引き継ぐ資産の価額が大きいほど税負担が重くなるため、事業承継では非常に高額な税金が発生するおそれがあります。自社株式を引き継いだ結果、後継者に大きな税負担がのしかかるケースも少なくありません。

相続税対策としては、事業承継税制の活用が有効です。2018年度の改正により、条件を満たせば相続税の支払いを100%猶予できるようになりました。手続きには手間がかかりますが、優遇措置を受けるために積極的に活用しましょう。

とはいえ、事業承継税制は制度内容が複雑であるため、利用の可否を含めて専門家のもとで手続きを進めることがおすすめです。

贈与

贈与とは、経営者が存命のうちに後継者に対して株式などを譲渡することです。贈与による事業承継では株式譲渡の手続きが必要となるほか、株式が非公開の場合には取締役会もしくは株主総会の承認手続きを行う必要があります。

また、贈与によって事業承継を実施する場合には、贈与税が発生します。こちらも相続税同様に税負担が大きくなるおそれがあるため、対策の手続きを講じましょう。事業承継税制の活用により、贈与税も100%免除される可能性があるため、利用を検討してください。

合わせて、相続時精算課税を選択すれば、生前贈与の範囲について年間2,500万円まで非課税となります。ただし、相続時精算課税制度では、生前贈与時に贈与税がかからないものの、相続時にその分を相続税として納める必要があるため注意しましょう。

効果的に節税するためにも、専門家のもとで計画的な節税手続きを進めることが大切です。

親族外承継

親族外承継とは、自社の従業員や役員などいわゆる「他人」に事業承継してもらう方法です。従業員や役員に事業承継した方が、第三者に売却する場合と比べて従業員のモチベーション低下を防げます。親族外承継では、株式を買い取らせるのが一般的な手続きです。

ここでは、贈与による親族内承継と同じく取締役会の承認手続きなどを行います。ただし、親族外承継の場合には、後継者に買収する資金力がないケースが大半であるため、必要に応じて無償譲渡もしくは資金調達の手続きを活用したうえで事業承継を実行しましょう。

また、事業承継した場合には債務なども引き継ぐため、後継者候補が会社を引き継ぎたがらないケースも少なくありません。そのため、事業承継を実現したい場合には、早い段階から魅力ある会社作りに取り組むことも重要です。

【関連】事業承継対策は必須?事前の準備や注意点について徹底解説【事例付】

M&Aを用いた事業承継

親族内承継や親族外承継が行えない場合、M&Aによる事業承継を検討しなければなりません。近年は親族や社内で事業承継を実行できないケースが増加しており、M&Aを活用して外部の第三者に事業承継する事例が増加中です。

M&Aを用いれば、外部から幅広く後継者を探せるメリットがあります。また、会社売却により、まとまった創業者利潤の獲得も可能です。ただし、M&Aの手続きには多大な費用や時間がかかるだけでなく、従業員のモチベーションが下がりやすい点にも注意しなければなりません。

とはいえ、事業承継をせずに廃業するよりもM&Aで事業を引き継いだ方が、事業の存続を望む関係者から喜ばれます。今後の事業発展を期待できるため、経営者としてもメリットが大きいです。ここからは、M&Aを用いた事業承継の手続きについて、以下の4項目に分けて紹介します。

  • 仲介会社との提携仲介契約の締結
  • 買い手企業へのM&A打診
  • デューデリジェンスの実施
  • 最終的な交渉・契約締結

上記の事業承継の手続きについて順番に把握しましょう。

仲介会社との提携仲介契約の締結

まずは、信頼できるM&A仲介会社を見つけてサポートを依頼します。M&Aでは非常に多くの手続きが求められるため、経営者が独力で遂行するのは極めて困難です。そのため、ほとんどのM&Aでは、仲介会社などの専門家に手続きを代行してもらいます。

仲介会社と提携仲介契約を締結する際は、契約期間・業務範囲・手数料・秘密保持契約などについて取り決めを行います。仲介会社ごとに手数料のシステムは異なるため、仲介会社を選ぶ際には「手数料システム」について重点的に確認しましょう。

仲介会社の選び方次第で、必要となる費用は大きく変動するため注意が必要です。

買い手企業へのM&A打診

仲介会社との契約手続きが完了したら、買い手企業を探す手続きに入ります。まずは、「ノンネームシート」と呼ばれる匿名の資料を用いて買い手企業にM&Aを打診する手続きです。その後に買い手側がM&Aを実行したいと考えた場合、詳細な情報開示を行います。

そして、面談・基本的な交渉を経ると、基本合意契約の締結手続きを実施します。売り手側では、契約締結に至るまでの交渉過程で事業承継する相手にふさわしいか十分に見極めることが大切です。

基本合意契約では、M&Aの実施に関する合意を確認します。この手続きの段階で具体的な契約内容が確定するわけではないものの、入念に相手と話し合ったうえで納得できるM&Aが行えるのか検討してください。

デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスとは、買い手側が売り手側に関する詳細な情報を調査する手続きのことです。具体的には、売り手企業の財務状況・事業内容などを調査します。M&Aではデューデリジェンスが非常に重要とされており、事業承継成功のために必要不可欠な手続きです。

デューデリジェンスの際、売り手側は自社にとって不利な情報を故意に隠してはいけません。仮にM&Aの手続き中は隠せたとしても契約後に発覚する可能性は大いにあり、後になって発覚すると訴訟などのトラブルに発展するおそれがあります。そのため、デューデリジェンスには誠意を持って協力しましょう。

例えば、買い手側から情報開示を求められたら、素直に従うことが大切です。なお、自社が抱える簿外債務・訴訟などは、企業価値が低下する要因となります。デューデリジェンスで発覚すれば、予想していた売却価格よりも取引価格が引き下がるケースも珍しくありません。

したがって、自社にとって不利な要素は、M&Aを実施する前段階から極力減らしておくよう心がけましょう。企業価値の向上はいずれの事業承継手法でも重要となるため、専門家のもとで企業価値を高める手続きを検討してください。

最終的な交渉・契約締結

デューデリジェンスが完了したら、買い手側により企業価値の算定手続きが実施されます。ここで算出した企業価値などをもとに、最終的な交渉手続きを行う仕組みです。そして双方の経営者が合意すると、M&A契約の締結となります。

ただし、契約締結しても、事業承継が完了したと安心するのはまだ早いです。M&A契約の締結後も、両社が無事に統合するよう手続きを進めなければなりません。この統合作業をPMIと呼びますが、PMIまでサポートしてくれる専門家に依頼しておけば安心です。

【関連】M&A仲介会社を比較!おすすめのM&A仲介会社、仲介手数料を解説します

個人事業の事業承継

最後に紹介するのは、個人事業の事業承継手続きについてです。近年は法人の経営者と同様に、個人事業主の高齢化も進行しています。これに伴い、個人事業主の事業承継も増加中です。個人事業主の事業承継に関しては、以下の3つの項目に分けて手続きを実施しましょう。

  • 経営権の引き継ぎ
  • 従業員・取引先の引き継ぎ
  • 資産の引き継ぎ

それぞれの手続きについて、順番に紹介します。

経営権の引き継ぎ

まずは、経営権の引き継ぎについて考えなければなりません。「会社が誰のものか」を表す経営権の譲渡手続きは、法人と大きく異なります。個人事業主の事業承継では、経営者が廃業したうえで後継者が同じ屋号を用いて開業すれば完了です。経営者の廃業と後継者の開業について、順を追って解説します。

はじめに、経営者が廃業届を提出します。このとき、以下の必要書類を提出しなければなりません。

  • 個人事業に関する廃業届
  • 青色申告の取りやめ届出書(青色申告を行っている場合)
  • 事業廃止届出書(消費税の課税事業者の場合)
  • 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請(予定納税者の場合)

上記のとおり、個人事業主ごとに必要な書類が異なります。続いて、後継者が開業届を出せば、事業承継の手続きは完了です。このとき、以下の必要書類の提出しなければなりません。

  • 個人事業に関する開業届
  • 所得税が発生する場合の青色申告承認書(青色申告を希望する場合)
  • 青色事業専従者給与に関する届出書(青色専従者を雇用する場合)

事業承継の際は、後継者が屋号を引き続き使用するケースがほとんどです。その場合には、開業届に同一の屋号を記載すれば問題ありません。ただし、屋号が商号登記されている場合は、法務局で名義変更の手続きが必要です。

なお、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば、配偶者などに対して支払う給与を経費として計上できます。該当する方は忘れずに提出しましょう。

従業員・取引先の引き継ぎ

次に考えるべき手続きは、従業員や取引先の引き継ぎについてです。仮に家族経営で事業を営んでいても、パートやアルバイトを雇っているケースは珍しくありません。1人でも従業員がいる場合には、手続きを行う必要があります。

従業員を引き継いで事業を進める場合、雇用契約の更新が必要です。具体的には、雇用契約や労働条件に関する書類を用意しなければなりません。合わせて、雇用保険・労災保険などへの加入手続きも進めましょう。事業承継後も、従業員がこれまでどおりに働けるよう手続きを忘れずに進めてください。

取引先の引き継ぎに関しては、特別な契約がない限り、個別の連絡で済ませられます。ただし、事業承継後に後継者の変更を突然伝えると、驚かせてしまう可能性が高いです。もしも取引先の引き継ぎに失敗すると、今後の事業に悪影響が及ぶおそれもあります。

事業承継後に取引先との関係が悪化するケースは珍しくなく、先代が築いてきた取引先との関係が壊れてしまい業績が軌道に乗るまで苦労する後継者も少なくありません。

そのため、関係者に前もって後継者を紹介しておき、引き継ぎ後も変わらぬ関係において両者が発展できるよう早めに対策しておく必要があります。

この手続きも後継者を育てていくために必要な1つのステップとなるため、後継者が決まったらできるだけ多くの取引先へ出向いて関係の構築に努めることが望ましいです。

資産の引き継ぎ

最後に考えるべき手続きは、資産の引き継ぎについてです。店舗・設備などの資産を引き継ぐ場合、個別で手続きが必要となります。このとき、有償か無償かによって必要な手続きが異なるため注意しましょう。

自身の子供や身近な従業員に事業承継する場合、資産を無償で譲渡するケースがほとんどです。無償で贈与すると、贈与税が発生します。贈与税は110万円までなら非課税ですが、それ以上の部分は累進課税によって課税されるため納税が必要です。

節税対策としては相続時精算課税制度の活用のほか、贈与ではなく「使用賃貸」の形で不動産などの資産を後継者に譲渡するのも効果的です。ただし、将来的に相続税の対象となるため、一過性の対策である点は把握しておきましょう。

この他にもさまざまな節税方法があり、ケースによって適切な節税手続きは異なるため、税理士などの専門家に相談しておくことをおすすめします。

なお、最近ではM&Aによって第三者に事業承継する個人事業主もいて、ここで用いられるのが事業売却の手法です。事業売却では事業を相手に売却する形で手続きを実施しますが、課税される税金や手続きが複雑化するため個人で完了させるのは困難といえるでしょう。

そのため、M&A仲介会社などの専門家に相談したうえで、事業売却することをおすすめします。

M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまでに培ってきたノウハウを活かしてM&Aによる事業承継をフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)相談料は無料となっておりますので、M&Aによる事業承継を検討している場合にはお気軽にご相談ください。

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【関連】相続における必要書類一覧

事業承継の手続きをスムーズに行うためのポイント

事業承継の手続きをスムーズに行うためのポイント

ここまで事業承継の手続きについて紹介してきましたが、事業承継をする際は手続きに関する問題だけでなく、その前段階で問題が発生することも少なくありません。いざ事業承継しようとしても、事前に対策しておかなければスムーズな引き継ぎは不可能です。

ここからは、事業承継をスムーズに行うためのポイントを紹介しますので、事業承継を考え始めた段階で着実に取り組むようにしましょう。

個人事業主と法人に共通するポイント

まず、個人事業主と法人に共通するポイントは、以下のとおりです。

  • 後継者の選定・育成
  • 相続・贈与の対策
  • 相談窓口の活用

上記について、掘り下げて紹介します。

後継者の選定・育成

事業承継する場合、まずは後継者を選ばなければなりません。そして、選んだ後継者を育成する必要があります。たとえ家族や従業員であっても、会社・事業の経営については詳しくないケースも多いです。

また、すべての取引先・人脈を把握しているわけでもないため、今後のために後継者を紹介する必要があります。経営ノウハウの伝授や取引先への紹介などにより、後継者に経営者としての自覚を持たせるよう心がけましょう。

相続や贈与の対策

事業承継は、前もって実行すると決めたケースのみで実施されるわけではありません。例えば、突然の相続によって急いで事業承継する場合もあります。そのため、なるべく早期のタイミングで相続税対策を行う必要があるのです。これと同時に、贈与の対策についても実施しましょう。

相続と贈与の対策では、事業承継税制・相続時精算課税制度・贈与税の基礎控除額など、さまざまな制度・仕組みが存在します。利用できる制度・仕組みは経営者が健在のうちに検討・実行し、突然の事業承継にも対応できる体制を作っておくことが大事です。

相談窓口の活用

事業承継に関する悩み(後継者不在・相続や贈与に関する具体的な対策がわからないなど)は、抱え込まずに相談窓口を活用してください。例えば、独立行政法人中小企業基盤整備機構、商工会議所では、さまざまなニーズを抱える経営者をマッチングする支援を行っています。

これらの機関では、後継者がいない事業者のマッチングだけでなく事業譲渡のマッチングも手掛けています。

そのほか、民間企業でもM&A仲介会社などが後継者とのマッチングおよびその後の手続きまでサポートしているため、適切な機関にできるだけ早く相談して早期の解決を目指しましょう。

法人の場合のポイント

法人の場合は、以下のポイントも押さえておきましょう。

  • 株式の整理
  • 事業用財産の整理

こちらについても、順番に詳しく紹介します。

株式の整理

法人の事業承継では、株式譲渡を行う必要があります。このときに後継者以外の人物が株式を保有していれば、株式を買い取るなどして後継者が経営をコントロールできるよう工夫しましょう。とはいえ、後継者に株式を買い取るだけの資力がないケースもあります。

上記のケースでは、会社が買い取りを行ったうえで後継者に買い取らせる、または相続などで引き継ぐ選択肢を利用して株式を整理することが大切です。

事業用財産の整理

特に中小企業の場合、事業用に使っている財産(土地や建物)を経営者個人が所有しているケースも少なくありません。また、たとえ相続時には遺書があったとしても、遺留分を請求されてしまえばその分は請求した人に相続されます。

遺留分の相続が事業に関係のない財産であれば問題ありませんが、事業で必要な財産にまで遺留分が及べば今後の経営に支障が出ます。そのため、経営者が健在のうちに後継者に贈与させるなどの対策が必要です。

そのほか、相続開始前の段階で、相続人全員から事業用財産を遺留分から除くよう同意を得る選択も効果的です。

同意を得た後に「経済産業大臣の確認」「家庭裁判所の許可」というハードルを乗り越える必要があるものの、手続きが済めば遺留分を請求されても事業用の財産は相続されずに確保できます。

なお、事業用財産には株式も該当するため、株式についても忘れずに同意を得て手続きを行いましょう。

【関連】株式譲渡後の確定申告方法とは?添付書類と書き方、税金の計算を解説

事業承継の手続きにおける注意点

事業承継の手続きにおける注意点

最後に事業承継の失敗を回避するために、手続きにおける注意点として以下の3項目を取り上げます。

  1. 時間的余裕を持つ
  2. 現状を適切に把握する
  3. 後継者を慎重に選ぶ

それぞれのポイントを順番に紹介します。

①時間的余裕を持つ

事業承継の手続きでは、事前準備を入念に行うことがその後の成否を大きく分けます。そのため、時間的余裕を持って手続きに取り掛かることが、事業承継の成功につながる大きな要素です。

そもそも事業承継はほとんどの経営者が初めて行う行為であるため、実施するうえで不明点・疑問点・スムーズに進められない手続きなどが生まれてくるのは不思議なことではありません。

このような不測の事態に柔軟に対応するためにも、たとえ即座に事業承継を行う予定がなかったとしても時間的余裕を持って事業承継に関するセミナー・専門家の相談窓口などを利用して心構えを作っておくことをおすすめします。

②現状を適切に把握する

自身の事業承継の指針となる「事業承継計画」を策定する場合、会社・事業に関する現状を適切に把握する必要があります。

現状を把握するには、さまざまな観点から会社・事業をとりまく状況を正確に認識しなければなりません。ここで認識すべき情報には、以下のような項目があります。

  • 経営資源について
  • 経営リスクについて
  • 経営者の所有資産や負債について
  • 後継者候補について
  • 相続発生時に予想される問題点と解決方法について

各項目で把握すべき情報はさらに細分化されるため、現状把握を十分に行うためにも専門家にサポートを求めることをおすすめします。

③後継者を慎重に選ぶ

いかなる方法を採用する場合でも、事業承継における後継者は慎重に選ぶ必要があります。次期経営者としてふさわしい人物を後継者に据えないと承継後の事業に深刻な影響が及ぶおそれがあり、場合によっては廃業にまで至る可能性があるためです。

親族内承継では後継者としての素質・能力に優れた人物を選定することはもちろん、親族外承継・M&Aによる第三者への事業承継では以下のような人物を後継者に選びましょう。

  • 共同創業者
  • 優秀な若手経営陣
  • 工場長などのベテラン従業員
  • 自社の業界に精通する経営者

とりわけ外部の人物を後継者に据える場合、従業員や取引先など関係者からの反発が予測されるため、選定にはより慎重な判断が求められます。

【関連】事業承継したい!M&Aにおける事業承継や成功事例や失敗事例を解説

まとめ

まとめ

本記事では、事業承継の手続きについて法人と個人事業主に分けて紹介しました。法人と個人事業主では、事業承継に必要な手続きが異なります。また、事業承継を成功させるためには、早期のタイミングで対策を講じることが重要です。自社の現状を把握したうえで、慌てることのないよう手続きを進めましょう。

また、親族内・親族外承継では税金の負担が問題となるため、税理士などの専門家に相談したうえで効果的な節税対策を実行しましょう。一方で、M&Aによる事業承継では膨大かつ複雑な手続きが必要となるため、M&A仲介会社などからサポートを得ることがベストです。

いずれの方法を用いるにせよ、早い段階から事業承継に必要な手続きについて把握しておくことが重要です。本記事の要点をまとめると、下記になります。

・事業承継で引き継ぐもの
→経営権、資産(自己株式など)、知的財産(人材や技術力)

・事業承継の手続きの主な流れ
→後継者との合意形成、親族・従業員など関係者への周知、株式譲渡の実施、個人保証・担保の承継

・法人の事業承継(親族内承継)
→「相続」もしくは「贈与」を実施する

・法人の事業承継(親族外承継)
→株式を買い取らせる

・法人の事業承継(M&A)
→手続きが複雑なため、専門家に業務を依頼する

・個人事業の事業承継
→「経営権」「従業員・取引先」「資産」それぞれに必要な手続きが異なる

・個人事業の事業承継(経営権の移転)
→経営者が廃業して後継者が開業する

・個人事業の事業承継(従業員の移転)
→新規で雇用契約を締結する

・個人事業の事業承継(資産の移転)
→無償譲渡ならば贈与税が発生する、有償譲渡は手続きが複雑なため専門家に相談する

・事業承継の手続きをスムーズに行うためのポイント
→後継者の選定・育成、相続・贈与の対策、相談窓口の活用、株式の整理、事業用財産の整理

・事業承継の手続きにおける注意点
→時間的余裕を持つ、現状を適切に把握する、後継者を慎重に選ぶ

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