2019年11月23日更新事業承継

会社の乗っ取りを阻止する方法

会社乗っ取りは現実に起こり得ることです。上場企業でも非上場企業でも区別なく現実に発生しています。会社乗っ取りを阻止するには実際の会社を乗っ取る方法を知り、それに備えた対策を施しておくことです。会社乗っ取りの阻止方法をレクチャーします。

目次
  1. 会社の乗っ取りとは
  2. 会社乗っ取りの背景
  3. 会社乗っ取りの事例と手口
  4. 会社乗っ取りを阻止する方法と解決策
  5. まとめ
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会社の乗っ取りとは

会社の乗っ取りとはその言葉の通り、現在の経営者以外の何者かが会社の経営権を乗っ取ることです。乗っ取りという言葉のイメージからは、反社会的な雰囲気もありますが、違法行為がまかり通って会社が乗っ取りを受けるわけではありません。

むしろ、会社の乗っ取りは法律に照らした上で合法的に行われています。そして、会社の経営権乗っ取りとは、端的に言えば今の経営者に代わって第三者が会社の過半数の株式を、何らかの手段で入手することに他なりません。

上場企業であれば、その規模から考えて会社乗っ取りを仕掛けてくる相手は、会社組織であることがほぼ100%です。一方、非上場中小企業の場合、親族等の身内、他の経営陣、取引先等、経営者がよく知る相手が多いという特徴があります。

会社乗っ取りの背景

中小企業を舞台に行われる会社の乗っ取りに際しては、その相談に乗ったりサポートを請け負う弁護士事務所や経営コンサルティング会社等もあるようです。

法知識等の専門家からの支援を受けて仕掛けられる会社乗っ取りに対し、無策では抵抗しようがありません。周囲の人間を必要以上に疑うべきではありませんが、経営者は会社乗っ取りに対して何らかの備えはしておくべきでしょう。

また、イレギュラー的な会社乗っ取りというケースもあります。それは、当初、通常のM&Aの協議をしていたものの何らかの原因で話がこじれ、相手側が敵対的買収行為に転じるというものです。敵対的買収とはもちろん株式の取得です。

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会社乗っ取りの事例と手口

会社の乗っ取りには大別して、非上場の中小企業の場合と、上場企業の場合とで特徴が分かれます。ここでは、非上場の中小企業での典型的な会社乗っ取りの事例と、上場企業での典型的な事例をそれぞれ紹介します。

これらを見ていくと、会社の乗っ取りという事態が他人事ではなく、身につまされるはずです。

①中小企業での会社乗っ取り事例~相続クーデター

まずは、非上場の中小企業で発生しやすい会社乗っ取りの具体例です。それは、通称で相続クーデターと呼ばれています。創業者一族内で親から子に会社を事業承継するのはよくある話です。しかし、そこに会社乗っ取りの手段が潜んでいます。

事業承継とは、経営者が後継者に経営権を取得させるために、株式の大部分を後継者に譲渡することです。この時、先代経営者が株式100%を持っていて、その全部を1人の後継者に譲渡できていれば、会社乗っ取りの余地はありません。

しかし、例えば他にも役員がいて、その役員が株式の一部を持っているような時、相続クーデターは起こり得ます。そのポイントは、非上場企業のような譲渡制限株式を発行している会社は、定款で株式の売渡請求権が認められていることです。

売渡請求権とは、会社にとって望ましくない人物が株式を取得したと思われる場合に、その人物に対し会社が株式の売り渡しを請求できる権利です。株主総会で特別決議を得られれば、相手に対し強制的な売り渡しを通知できます。

つまり、通常は会社にとって好ましくないと思われる人物が株式を取得した時、他の株主は売渡請求権を活用することで、会社にその株式を買い取らせることができるのです。

そして、この売渡請求権は、相続で株式を取得した後継者に対しても発動できてしまいます。しかし、それなら過半数以上の株式を持っているはずの後継者であれば、株主総会で特別決議を否決できるだろう、と考えた方が多いでしょう。

実は、これができないのです。売渡請求権が発動する場合の当事者である株主は、売渡請求権の決議に際して議決権が認められていません。これは、売渡請求権がきちんと機能するために決まっている法規制なのです。

創業者一族以外の株式を持っている役員に野心があれば、このように売渡請求権によって会社の実権を握ってしまえます。役員自身は良心的な人物で、そのような心配は無いかもしれません。

しかし、例えば役員の死去によって株式を相続した人物も同じ人柄とは限りません。経営者が100%の株式を持っていない場合、対策は必須と言えるでしょう。

なお、死去ということに関連して気を付けなければいけないのが、先代経営者の死去による株式の分散です。遺産相続者が複数存在するのなら、一般的には株式も遺産ですから、人数に応じて相続人それぞれの手に分散されてしまいます。

そうなると、どんな経緯で悪徳のある人物の手に株式が渡らないとも限りません。また、兄弟が会社の経営権をめぐり骨肉の争いをしたという話を聞く場合もあります。

それらを未然に防ぐためには、株式の相続については明確に遺言で指定しておくのが得策となるでしょう。いずれにしても、経営者が相続を利用して事業承継を行う際には弁護士等の専門家に相談すべきです。

そのアドバイスを得ながら、相続クーデターのリスクを未然に潰しておくべきでしょう。

②上場企業での会社乗っ取り事例~敵対的買収(M&A)

上場企業における会社乗っ取りの事例は、ほぼ敵対的買収によるM&Aに集約されます。通常のM&Aが対象の企業同士、友好に建設的に協議しながら進められるのに対し、敵対的買収は買収側が一方的な手段を取ります。

つまりは、買収対象となる会社の経営陣の合意を得ないまま、株式を取得して経営権を掌握しようというものです。株式の取得方法としては、株式市場で買い注文を出すだけでなく、TOB(take-over bid)と呼ばれる株式公開買付けも行います。

TOB=株式公開買付けとは、対象会社の一般株主に対して「買取り価格」「買取り株数」「買付け期間」等を公告し、取引所外で株式を買付ける方法のことです。株の入手が目的ですから、市場の流通価格よりも高値が設定されるのが常です。

ただし、TOBに応じるかどうかは、一般株主それぞれの判断ですので、必ずしも買収会社の思惑通りになるとは限らないという特性があります。

敵対的買収は、日本では過去に村上ファンドやライブドア、ドン・キホーテ、王子製紙などといった会社が実行したことがあり、その都度、ニュースを賑わせました。

敵対的買収は対象の会社の内部に賛同する株主がいれば経営陣が想像する以上のスピードで進行することがあるため、大概の会社は何らかの形で買収防衛策を実行します。

日本の過去の例では、その防衛策が功を奏し、敵対的買収が成功した事例はほんの一握りです。そもそも敵対的買収は、対象の会社の経営陣の合意を得ないため、収集できる情報に限度があります。

また、買収防衛策を用いられることでコストが高くつくため、実行するにはリスクも伴います。そういった点を踏まえると、敵対的買収は極端に警戒する必要はないとも思えるかもしれません。

しかし、無策であっては防衛できなかったであろうことも事実です。専門的な備えは必要でしょう。

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また、会社乗っ取りではありませんが、一般的M&Aにおいて買収される会社は、基本的に株式を譲渡し結果的に経営権を買収側に渡すことになります。

長年にわたり会社を続けてきた経営者の立場としては、本当にこれで良いのか思い悩んでしまう場合もあるかと思います。もし、判断に迷うようならM&A総合研究所に御相談下さい。

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会社乗っ取りを阻止する方法と解決策

会社乗っ取りの現実を知った今、会社乗っ取りを阻止する方法を講じようと決心なされた方も多いでしょう。この項では、具体的な会社乗っ取り阻止方法を大きく3つに分けてお伝えします。

その3つの方法もさらに細かい策に分かれる場合もあります。よく吟味、検討して自社の実情に見合った方法を見い出して下さい。

⑴種類株式の活用

相続クーデターにせよ、敵対的買収にせよ、様々な会社乗っ取りを阻止するうえで最もよく使われる方法は種類株式の活用です。

種類株式は普通株式(通常の株式)と違い、様々な機能が付加されている株式であり、場合によっては、とても強力な権限が付加できることもあります。

いずれの種類株式も、会社の定款に必要な事柄を記載するだけで作成することができるため、株主総会の決議さえ得られれば、あらかじめ準備しておくことが可能です。

種類株式の中でも、会社乗っ取りを阻止する上で使いやすく強力な2つの種類株式を紹介します。

①取得条項付き種類株式

取得条項付き種類株式は、株式に一定の取得条項を付加することで会社が株式を取得できるように設定した株式です。

それがどのように会社乗っ取りの阻止に使えるかというと、まず、取得条項付き種類株式は、会社が株式を取得する際に、対価として別の種類株式を交付することができます。

この時に交付する種類株式を、議決権のない議決権制限株式に設定しておくのです。その結果、取得条項付き種類株式を持っている株主の、株式の議決権を無効化することが可能になります。

また逆に、議決権制限株式を発行しておき、事業承継のタイミングで議決権制限株式を普通株式に変換することも可能です。この場合は後継者の経営権が確立しやすくなり、後継者を脅かす可能性のある株主をあらかじめ除くことができます。

なお、取得条項付き種類株式の発動には一定の事由を定めておく必要があります。例えば、この事由を経営者の死去と設定しておけば、経営者が亡くなったタイミングで取得条項付き種類株式が発動し、他の株主の議決権無効化手続き実行となるのです。

ただ、すでに発行している普通株式を変更する取得条項付き種類株式に変更する場合には、株主全員の同意を得ておく必要があるので注意して下さい。

②黄金株

黄金株とは拒否権付き種類株式のことです。株主総会や取締役会の決議に対して、拒否権を行使できる種類株式の一種です。黄金株が持つ拒否権は非常に強力なものであり、たとえ1株でも効果を発揮します。

黄金株は、会社乗っ取りに対して非常に有効的な防衛策になるものです。例えば、売渡請求権を利用した相続クーデターが発生した場合、株主総会で売渡請求権が特別決議を得たとしても、その決議を拒否することができます。

また、敵対的買収を仕掛けられている場合に、例えば経営陣を変更するような決議が行われても、黄金株があれば拒否権を行使できるため、買収を阻止することも可能になります。

このように強力な黄金株ですが、万が一、不都合な人物の手に渡るようなことになれば逆効果になってしまうのは明白です。そんな事態を避けるために、譲渡制限株式として発行しておくことが望ましいでしょう。

それから、黄金株が拒否できる範囲も適切に定めておかないと、かえって健全な経営を阻んでしまうリスクがあります。黄金株を実際に発行する際には、その影響力を踏まえた上で慎重に検討して用いて下さい。

⑵持株会社を設立する

持株会社とは一般的にいう「ホールディングス」のことであり、この持株会社に経営者、または経営者一族の株式を全て取得させておくことも、会社乗っ取り防止策の1つです。

持株会社に全ての株式を取得させておけば、事業承継の際に持株会社の株式をそのまま後継者に移転させるだけで事業承継を完了させることができます。

また、持株会社が一括で株式を取得し管理することによって、他の人間に株式が分散するリスクも減らすこともできるでしょう。

さらに、組織再編の際に持株会社を設立した上でグループ化を行うと、事業会社に敵対的買収がしかけられたとしても、持株会社を買収しない限りその買収は成立しません。

つまり直接的敵対買収が成立しなくなるというわけです。上場企業であれば、持株会社の設立は大きな意義があるといえます。

⑶買収防衛策を使う

敵対的買収による会社乗っ取りに対しては、それぞれユニークな名称で呼ばれる買収防衛策があります。本項では著名な以下の4つの買収防衛策を紹介します。

①ポイズンピル(毒薬条項)

ポイズンピルは日本語では毒薬条項と呼ばれ、買収防衛策の中でも特に有名なものです。具体的には、新株予約権をあらかじめ発行しておき、一定の条件を満たした場合に自動的に発動することによって株式を希薄化する効果があります。

ポイズンピルを実行することによって、敵対的買収を仕掛けてきている会社の必要コストを増大させます。相手に資金不足を起こさせることを狙い、それによって敵対的買収を防止する策です。

②ホワイト・ナイト(白馬の騎士)

ホワイト・ナイトは敵対的買収をしかけられた際に、第三者となる会社に自社の株式を買収してもらうという買収防衛策です。日本語訳して白馬の騎士ともいいます。

敵対的買収をしかけている会社より良い条件を公示して、株式の取得を行うのが常套手段です。敵対的買収を仕掛けてきている相手のTOBに対して、こちらはカウンターTOBと呼ばれます。

カウンターTOBが成功すれば、会社乗っ取り防止が実現したことになります。

③パックマン・ディフェンス

パックマン・ディフェンスは逆買収ともいわれているものであり、敵対的買収をしかけた会社を逆に買収するというものです。

買収されかけている会社が敵対的買収をしかけることになるため、かなりコストがかかりますが、資金的な余裕や買収を行うメリットがあるなら会社乗っ取りを防いだうえで事業拡大ができるようになります。

なお、この「パックマン・ディフェンス」の語源ですが、1980年代に流行したアーケードゲーム(ゲームセンターに置いてあるゲーム)「パックマン」から命名されました。

このゲームでは、敵に追われて逃げる「パックマン」が、あるアイテムを取得すると一定時間、敵に反撃できるようになるというゲームルールだったためです。

④クラウン・ジュエル

クラウン・ジュエルとは、会社の中で価値が高い資産や事業のことを指します。

そして、買収防衛策としてのクラウン・ジュエルは、それらの資産や事業等を売却してしまうことで企業価値を下げ、相手が買収するメリットを無くすという買収防衛策です。

会社乗っ取りを防ぐためとはいえ、会社の企業価値を下げてしまう非常にリスキーな買収防衛策になります。もし、失敗した場合は背任罪・特別背任罪に問われる可能性が生じるかもしれません。

※関連記事
種類株式とは?意味や一覧、活用事例をわかりやすく解説
買収防衛策

まとめ

悪い出来事というのは、予想もしない時に起こります。会社の乗っ取りも、そんな悪い出来事の1つですから、いつ起こるかわからないものです。

特に、相続クーデターなどは、信じていた身近な人が計画したり、あるいは加担していたり等、小説やドラマさながらの意外性まで秘めているので、そうそう予想は難しいでしょう。

また、敵対的買収も経済情勢や市場の動向の変化によって、いつ仕掛けられるか、わかったものではありません。経営者の立場では気が気でないかもしれません。

しかし、だからこそ万が一に備え、会社乗っ取りが発生したとしても、乗っ取りを未然に防ぐことができるように何らかの対策を講じておく必要があります。

相続クーデターのようなケースもありますから、普段からあらかじめ弁護士など外部の専門家とどういった対策ができるかを話しておくことがおすすめです。

本記事の要点は以下のとおりになります。

  • 会社の乗っ取りとは
→経営者以外の第三者が株式の過半数以上を取得し会社の経営権を略奪すること
  • 会社乗っ取りの背景
→法知識等の専門家から支援を受けて仕掛けてくる
  • 会社乗っ取りの事例と手口
→中小企業では相続クーデター、上場企業では敵対的買収が多い
  • 会社乗っ取りを阻止する方策
→取得条項付き種類株式や黄金株等の種類株式の活用
→持株会社を設立する
→買収防衛策を実施する(ポイズンピル、ホワイト・ナイト、パックマン・ディフェンス、クラウン・ジュエル等)

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