2021年4月25日更新事業承継

個人事業の事業承継

個人事業主の方が事業承継を行う場合、法人の場合と必要な手続きが異なるため注意が必要です。また、贈与による事業承継の場合には特例税率など適用される税制にも注意する必要があります。この記事では個人事業の事業承継で必要な手続き・税金・節税方法について説明します。

目次
  1. 個人事業主とは
  2. 個人事業の事業承継の手続き
  3. 個人事業の事業承継にかかる税金
  4. 個人事業の事業承継における贈与税
  5. 個人事業の事業承継における贈与税の節税対策
  6. まとめ
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個人事業主とは

個人事業主とは

数年前までは個人事業主と聞くと、農家やチェーン展開していない飲食店などが大半でした。しかし近年は、働き方の拡大やネット媒体の発展もあり、webデザイナーやプログラマー、ライターやカメラマンなど、会社に勤めず個人的に事業を行う人も含めて個人事業主と呼ばれます。個人事業主はフリーランスとも呼ばれています。

また個人事業の事業承継では、法人企業の場合とは必要な手続きが異なるため注意が必要です。法人企業の場合は、M&Aといった事業譲渡の手続きなどがメインとなりますが、個人事業の事業承継では、経営者の廃業申請と後継者の開業申請が必要になります。次に、個人事業の事業承継に必要な手続きについて説明します。

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個人事業の事業承継の手続き

個人事業の事業承継の手続き

現在、個人事業の事業承継先のうち、95%以上は経営者の子供です。事業承継にM&Aなどを利用する個人事業主は全体の3%程度です。子供がお店を継げる年齢になっても、すぐに事業承継できるわけではありません。

事業を立ち上げる際には開業届を提出しますが、事業承継の場合も後継者は開業届を提出する必要があります。また、開業届の提出前に現在の経営者が廃業届を提出する必要もあります。

次に、経営者から後継者への事業承継にあたって、経営者と後継者がそれぞれ提出する書類について説明します。

①経営者が提出する書類

事業承継にあたって、現在の経営者が提出する書類は主に以下の4つです。

  • 個人事業に関する廃業届
  • 青色申告を行っている場合は、その申告を中止するための届
  • 事業を廃止するための届け出
  • 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請(翌年以降に納税が発生する場合のみ)

廃業届は後継者の開業届より前に提出します。また、翌年以降に納税が発生する場合には減額申請を実施しましょう。この申請を怠ると翌年以降も経営しているときと同額を納税しなくてはいけません。個人事業を廃業すると収入が低下しやすいので注意が必要です。

②後継者が提出する書類

事業承継にあたって、後継者が提出する書類は主に以下の4つです。

  • 個人事業に関する開業届
  • 所得税が発生する場合の青色申告承認書
  • 青色申告者を採用する予定がある場合は、それに関する届け出
  • 開業後に従業員と雇用契約を結ぶ予定がある場合は、雇用契約に関する書類

後継者は事業承継を実行した後、経営の進め方によって提出する書類が異なります。また、現在の経営者が使用している屋号をそのまま使用したい場合は、開業届にその旨を記載すればよいですが、その屋号が商号として登記されている場合は、法務局で名義変更の手続きが必要です。

個人事業の事業承継の際に上記のような親子間の事業承継に限らず、M&A(スモールM&Aとも呼ばれます)や子供以外の第三者への事業承継も増えています。

M&Aによる個人事業の事業承継を検討されている場合には、M&A総合研究所にご相談ください。中小企業のM&Aにおける豊富な実績とノウハウを持っており、アドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

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個人事業の事業承継にかかる税金

個人事業の事業承継にかかる税金

個人事業の事業承継先のほとんどが経営者の子供です。しかし、職業選択の自由や少子高齢化の影響もあり後継者が不足しています。また、子供には継がせたくないと考えている経営者もいます。

その理由として最も多くを占めているのが税金の負担です。事業承継の対象資産によって課される税額は異なります。また、事業承継先となる経営者の子供に課されます。

法人同士が事業承継する際には基本的に税金がかかりますが、個人事業の事業承継では、そこに金銭の授受が発生しているか否かで税金がかかるかどうかが異なります。

廃業届と開業届を提出すれば経営している会社の所有権の移転が完了となりますが、店舗がある場合はその店舗、その他の資産がある場合はその資産にそれぞれ贈与税が発生することがあります。

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事業承継で課される贈与税

個人事業の事業承継における贈与税

個人事業の事業承継における贈与税

親族間の事業承継では金銭の授受により買い取る場合もありますが、今回は無償の譲渡である贈与の場面に限定し、贈与税について解説します。

個人事業の事業承継における贈与税の計算方法は、まず資産と負債に財産を分けて考えます。資産とは、店舗であればその店舗や土地、その他の不動産、現金、預金、社用車、経営に必要な機材などです。一方で負債とは、借入金や買掛金など将来的に返済するお金です。

贈与税には一般税率と特例税率があり、一定の場合に特例税率が適用されます。

①一般税率による贈与税の計算方法

まず、原則である一般税率による贈与税の計算方法について説明します。

贈与時には、現金以外の資産は時価で計算されるのが一般的で、資産総額が110万円を超えていると贈与税が発生します。例えば、資産の時価が200万円、負債が100万円であった場合、資産総額は100万円となるので贈与税は発生しません。

ここで重要なことは税率が一定ではない点です。譲渡する財産の金額に応じて税率は変わります。個人事業を子供に事業承継する場合は、資産総額が高いほど贈与税も高額になります。

ただし、この税率は資産総額にかけられるわけではなく、資産総額から基礎控除の110万円を差し引いた金額(課税価格)に対してかけられます。また、課税価格が増えていくと税率が高くなる累進課税となっています。課税価格に対する一般税率の例は以下のとおりです。

課税価格 一般税率
200万円以下 10%
600~1,000万円以下 40%
1,500~3,000万円以下 50%
3,000万円超 55%

仮に資産が1,000万円の場合は、1,000万円(資産の総額)−110万円(基礎控除)=890万円となります。この890万円に対して、40%をかけた金額が贈与税となります。したがって、資産の総額が1,000万円だった場合、贈与税は356万円です。

②特例税率による贈与税の計算方法

祖父母から孫へ贈与する場合には一般税率より少し低い特例税率が適用されます。したがって、祖父母から孫への事業承継の場合には贈与税を特例税率で計算します。課税価格に対する特例税率の例は以下のとおりです。

課税価格 特例税率
200万円以下

10%
⇔一般税率は10%

600~1,000万円以下

30%
⇔一般税率は40%

1,500~3,000万円以下

45%
⇔一般税率は50%

4,500万円超 55%
⇔一般税率は55%

個人事業を事業承継する際には、どの贈与に当たるのか、どの税率が適用されるのかを必ず確認しましょう。

※関連記事
累進税率

個人事業の事業承継における贈与税の節税対策

個人事業の事業承継における贈与税の節税対策

個人事業に限らず、事業承継する際には多くのケースで税金がネックになります。事業承継後も当然お金が必要となるため、できるだけ節税することがベストです。

そこで、個人事業の事業承継における贈与税の節税対策として有効的な手段のひとつが不動産です。経営者の所有資産の大半は不動産であることが多いです。この不動産を経営者の持ち物ではなく、使用賃借として利用するほうが事業承継の際に税金が少なくなります

使用賃借とは無償で物を貸すことです。そのため、使用後に返却する際に金銭のやりとりはありません。不動産を資産として譲渡すると贈与税が高額になりますが、使用賃借にすれば贈与税の総額はかなり低くなります。

ただし、あくまでもこの対策は一時的な対応策にすぎません。仮に使用賃借として利用しても、のちに相続税の対象となるので注意が必要です。したがって、事業承継の際に長期的な視点で譲渡と使用貸借のどちらを採用するのかを見極める必要があります。

※関連記事
事業承継における節税

まとめ

まとめ

個人事業の事業承継では、法人の場合と必要な手続きが異なるため注意しましょう。子供に事業承継する際には、贈与税などの税金も事前確認したうえで有効な節税方法を検討することが必要です。今回の記事をまとめると以下のとおりです。

・個人事業の事業承継の手続き
 →現経営者が廃業届を出した後に後継者が開業届を提出する

・個人事業の事業承継にかかる贈与税
 →承継する資産の総額から基礎控除を差し引いた金額に課税、一定の場合に特例税率を適用

・個人事業を事業承継する際の贈与税の節税対策
 →不動産を使用貸借にすると一時的な節税対策となる

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