2020年3月25日更新会社・事業を売る

自営業の法人化

自営業を法人化すると、節税対策を中心に大きなメリットが期待できます。とはいえ、法人化が節税対策につながる仕組みを把握できている人は多くありません。自営業を法人化するメリット・デメリットのほか、法人化するタイミング・手続き方法も解説します。

目次
  1. 自営業の法人化
  2. 自営業を法人化するメリット
  3. 自営業を法人化するデメリット
  4. 自営業を法人化するタイミング
  5. 自営業を法人化する手続き
  6. まとめ
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自営業の法人化

個人事業主をはじめ自営業者の方であれば、いずれ法人化を検討するタイミングが訪れます。自営業を法人化すると、節税効果を中心に幅広いメリットを享受可能です。一般的には、「ある程度事業が軌道に乗ったタイミングで法人化を検討すると良い」とされています。

その一方で、自営業の法人化が節税対策につながる仕組みについては広く知られていません。法人化を検討する場合、上記の仕組みも十分に理解しておくと、最大限のメリット獲得が目指せます。

この記事では、自営業の法人化について、メリットやデメリット、最適なタイミング、手続き方法などを解説します。自営業の法人化を検討している方にとって必見の内容です。

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自営業を法人化するメリット

自営業を法人化するメリットは、以下のとおりです。

  1. 信用力が向上する
  2. 一定の法人税率が適用される
  3. 給与所得控除を利用できる
  4. 生命保険で節税対策を講じられる
  5. 親族への給与でも節税効果が期待できる
  6. 法人化後の2年間は消費税が免除される
それぞれのメリットを順番に見ていきます。

①信用力が向上する

自営業を法人化すると、銀行・取引先などからの信用力が高まります。法人に関する情報(本店住所・決算日など)は謄本にて確認できるため、個人事業主と比較すると社会的な信用度が高いです。世の中には、法人以外を取引対象としない企業も存在します。

金融機関からの資金調達時も、融資を受けられる可能性が高まります。自営業と比較すると、多額の資金調達を実現できるケースも多いです。自営業と法人との間では、住宅ローン審査においても相違が見られます。

自営業における住宅ローンは「個人が背負う借金」とみなされる一方で、法人では「事業を運営するための借入」とみなされる傾向があります。このように住宅ローンを利用する意味合いは異なっており、法人化すると住宅ローン審査で有利に働くことがあります。

ただし、住宅ローン審査では3期分の決算書が必要であるため、法人化してから3期経つまでは住宅ローンを利用できません。住宅ローンの利用を目的に法人化する場合には、この点に注意しておく必要があります。

②一定の法人税率が適用される

自営業が法人化すると、法人税が課されるようになります。法人税とは法人の所得に対して課税される税金であり、自営業における所得税に相当します。そもそも所得税では、所得額に応じて税率が次第に高まります。

その一方で、法人税率は、所得額に応じて細かく変動しません。事業で多くの利益が出ている場合、自営業者として所得税を納税するよりも、法人化して法人税を納める方が課税額を軽減できる可能性があります。

③給与所得控除を利用できる

自営業では、売上から経費を引いた部分に所得税が課されます。その一方で法人では、経営者が受け取る役員報酬について給与所得控除の適用が受けられます。給与所得控除分は課税所得が減額されることから、節税効果を期待可能です。

④生命保険で節税対策を講じられる

自営業者が生命保険に加入しても、生命保険控除として享受できるメリットはわずかで節税対策としては不十分です。法人化すれば、多くのケースで保険料の半額以上を経費として計上可能となります。自営業よりも多くの利益を圧迫できるため、大きな節税効果が見込めます。

法人による生命保険の活用は、事業承継対策としても非常に有効です。事業承継では株式の引き継ぎに多大な税金が課されますが、生命保険の活用で株価を引き下げられます。株価が低下したタイミングで事業承継すれば、税負担を大きく軽減可能です。

このように、自営業の法人化は将来的な事業承継シーンにおいてもメリットとして働きます。

⑤親族への給与でも節税効果が期待できる

法人化すれば、家族に給与を支払うことでも節税効果を期待可能です。もともと法人には、親族に対する給与について経費計上が認められています。親族に給与を支払えば、給与分を損金算入できるうえに、所得分散による節税効果も期待可能です。

二重の節税効果を実現できる点は、法人化する大きなメリットです。

⑥法人化後の2年間は消費税が免除される

年間課税売上が1,000万円を超える場合には消費税の納税義務が発生しますが、法人では2期前の売上が1,000万円以上である場合に消費税が課されます。法人化すると自営業時の売上は考慮されないため、消費税の納税義務が2年間にわたって免除されます。

※関連記事
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自営業を法人化するデメリット

自営業を法人化するデメリットは、以下のとおりです。

  1. 手続きに多くの費用がかかる
  2. 社会保険への加入義務が発生する
  3. 赤字でも課税が発生する
  4. 決算・税務申告の負担が増加する
  5. 交際費の経費計上に制限が課せられる
それぞれのデメリットを順番に見ていきます。

①手続きに多くの費用がかかる

自営業が法人化する場合、費用の支払いが求められます。法改正により資本金が1円でもあれば会社を設立できるようになりましたが、法人化には資本金以外にもさまざまな費用が発生します。法人化で発生する代表的な費用は、以下のとおりです。

登録免許税 株式会社:最低15万円、合同会社:最低6万円、一般社団法人:6万円
公証人認定手数料 5万円程度
定款印紙代 4万円 ※電子定款であれば0円
謄本交付手数料 2,000円程度(1枚250円) ※定款のページ数により変動
銀行口座開設費用 3,000円程度
法人用の印鑑購入費用 1万円程度

株式会社を設立する場合、最低でも合計20万円以上の費用がかかります。とはいえ、法人化すると節税効果も期待できるため、将来的な課税額を比較すると自営業よりも法人化した方が費用を抑えられるケースが多いです。

②社会保険への加入義務が発生する

自営業が法人化すると、原則として社会保険への加入が義務付けられます。社会保険への加入は、従業員を雇わずに経営者のみが在籍する法人であっても必要です。社会保険料の支払いにより、法人では追加の費用が発生します。

従業員から見ても、給与額が増えない限り、手取り額が減ってしまいます。社会保険料の分だけ従業員の給与を増額させるケースもあり、費用がかさむために法人化に踏み切れない自営業者は少なくありません。

特に役員報酬を支払っている場合には、赤字であっても社会保険料が発生します。社会保険への加入による追加費用を考慮したうえで、法人化を検討すると良いです。

③赤字でも課税が発生する

法人では、「法人住民税の均等割」という税目で、毎年必ず課税が発生します。法人住民税の均等割は、売上額・利益額とは無関係に発生する税金であるため、注意が必要です。

④決算・税務申告の負担が増加する

法人化すると、自営業と比べて決算・税務申告などの手続きに関する負担が増加します。法人税の申告書を作成するには、専門的な知識も求められます。これまでは自身で決算・税務申告手続きを実施していた自営業者であっても、法人化すれば税理士のサポートが必要です。

ただし、税理士に手続きを委託すれば、その分の費用が加算されることになります。

⑤交際費の経費計上に制限が課せられる

自営業であれば、交際費の全額を経費として計上できます。その一方で法人化すると、交際費の損金算入が年間800万円までに制限されてしまいます(資本金が1億円以下の法人の場合)。なお、資本金が1億円を超える法人では、接待飲食費の50%までの金額を損金参入できます。

交際費が年間800万円を上回るケースは少ないですが、サービス業のように交際費が多額となる業種では注意が必要です。

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自営業を法人化するタイミング

自営業の方にとって、法人化のタイミングは非常に重要な論題です。タイミングを誤ると、法人化後に大きな損失を被るおそれがあります。法人化のタイミングを考えるには、まず自営業と法人における税目の違いを把握しておく必要があります。

自営業では、利益に対して所得税が課されます。所得税率は、所得金額が増えるほどに高まる累進課税の仕組みです。所得額195万円以下では5%となる一方で、4,000万円を超えると45%にまで所得税率が上昇します。

法人化すると、利益に対して法人税が発生します。法人税率は法人規模によって異なりますが、累進課税ではありません。以上を踏まえると、一定の所得範囲内であれば自営業の方が税率面で有利ですが、一定の所得額を超えると法人化した方が有利です。

つまり、自営業が不利となる所得額を超えたタイミングでの法人化が効果的です。具体的には、年間利益が500万円を超えたタイミングが最適です。さらには、年間売上が1,000万円を超えたタイミングも適しています。

年間売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が生じますが、ここで法人化すれば納税義務が免除されます。大きな節税効果が期待できるため、上記2つの基準を参考にすると良いです。

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法人税と消費税の違いとは?計算方法・納付期限
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自営業を法人化する手続き

自営業の法人化に必要な手続きは、以下のとおりです。

  1. 基本事項の決定
  2. 定款の作成
  3. 定款認証の依頼
  4. 登記申請
それぞれの手続きを順番に見ていきます。

①基本事項の決定

はじめに、商号(社名)・事業目的・本店の住所・資本金・役員構成など、法人に関する基本事項を決定します。自営業の頃に屋号を登録していた場合には、そのまま商号として使用することも可能です。

また、自営業の頃から事務所・店舗を利用している場合には、本店住所としてそのまま登記できます。管理会社に連絡して、法人化に伴って本店住所として登記したい旨を事前に伝えておくと良いです。

②定款の作成

会社を設立する場合には、定款の作成手続きが求められます。定款とは会社の基本的な規則を記した書類であり、会社運営は定款をもとに実施されます。定款の記載方法・用紙は明確に定められていないため、所有する文書作成ソフトなどを使用して作成します。

スムーズに作成したい場合、司法書士・行政書士などの専門家に依頼すると良いです。

③定款認証の依頼

株式会社を設立する場合、公証人による定款認証手続きの実施が必要です。定款認証の方法としては、紙に印刷した定款を使うパターンと、電子定款を使うパターンの2種類が存在します。

電子定款では、PDFファイルで作成した定款に専用ソフトで電子署名したうえで、公証役場に送信して認証手続きを済ませます。いずれのパターンを採用しても、定款を受け取るために公証役場を訪れる必要があります。

上記2種類の方法で大きな相違が見られるのは、印紙代についてです。紙の定款では4万円の印紙代が必要ですが、電子定款では印紙代が発生しないため、電子定款を採用した方が費用を抑えられます。

ただし、電子署名・電子定款の公証役場への送信などの手続きで専門知識が求められます。

④登記申請

定款認証が終了すると、法務局にて登記申請を実施します。登記申請の受付日が、そのまま法人設立日となります。登記申請では、登記事項を紙面もしくはデータに記録した書類と、登記申請書に添付書類を合わせて製本した書類の両方を法務局に提出します。

登記申請では、登録免許税が発生します。金額分の収入印紙を貼り付ける、もしくは銀行窓口から税務署宛に振り込んで、納税を済ませたら完了です。

※関連記事
法人税および法人に課せられる税金の種類
廃業届は法人の解散に必要か?法人が廃業する際の手続きや費用を解説

まとめ

今回は、自営業の法人化について解説しました。自営業を法人化すると、信用力の向上・節税効果などのメリットが期待できます。その一方で、手続きや費用面ではデメリットも見られます。

自営業を法人化する場合、メリットとデメリットを天秤にかけて比較検討することが大切です。合わせて、自営業を法人化するタイミングにも注意を払う必要があります。事業を軌道に乗せるには、法人成りのタイミングが非常に重要です。

年間利益額や年間売上額を基準にして、法人化のタイミングを決定すると良いです。要点をまとめると、以下のとおりです。

・自営業を法人化するメリット
→信用力が向上する、一定の法人税率が適用される、給与所得控除を利用できる、生命保険で節税対策を講じられる、親族への給与でも節税効果が期待できる、法人化後の2年間は消費税が免除される

・自営業を法人化するデメリット
→手続きに多くの費用がかかる、社会保険への加入義務が発生する、赤字でも課税が発生する、決算・税務申告の負担が増加する、交際費の経費計上に制限が課せられる

・自営業を法人化するタイミング
→年間利益が500万円を超えたタイミング、年間売上が1,000万円を超えたタイミング

・自営業を法人化する手続き
→基本事項の決定、定款の作成、定款認証の依頼、登記申請

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