2021年5月5日更新会社・事業を売る

中小企業の経営課題とは?M&Aの活用や中小企業等経営強化法のメリットや支援内容を解説

日本の経済社会において、その大多数を占めるのが中小企業です。それゆえ中小企業の活性化が日本経済のバロメーターとも言われます。そこで、活性化に欠かせないのが経営課題の解決です。中小企業の経営課題を浮き彫りにするとともにその解決法を探ります。

目次
  1. 中小企業の実態
  2. 中小企業における経営とは
  3. 中小企業の経営者を悩ませる経営課題
  4. 中小企業の経営改善手法
  5. 中小企業経営におけるM&Aの活用
  6. 中小企業等経営強化法のメリットと支援内容
  7. 中小企業の経営者が抱える悩みと孤独
  8. まとめ

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中小企業の実態

中小企業の経営課題と改善方法を明らかにしていく前に、あらためて中小企業の実態について確認してみましょう。まずは、中小企業の定義です。

①中小企業の定義

中小企業基本法で定められている中小企業の定義は、以下のようになっています。

中小企業 小売業 サービス業 卸売業 製造業・建設業・運輸業・その他の業種
資本金額 5千万円以下 5千万円以下 1億円以下 3億円以下
従業員数 50人以下 100人以下 100人以下 300人以下

さらに、中小企業より規模の小さい小規模事業の定義は、以下のとおりです。

小規模事業 小売業 サービス業 卸売業 製造業・建設業・運輸業・その他の業種
従業員数 5人以下 5人以下 5人以下 20人以下

なお、中小企業の定義は、資本金額(または出資の総額)か、従業員数のどちらかに該当していれば中小企業と見なされます。中小企業、小規模事業ともに、従業員数とは常時雇用している従業員の数のことです。

また、サービス業としてくくられている業種には多様なものが含まれています。ざっと挙げてみると、不動産業、飲食業、宿泊業、出版業、ソフトウェア・情報処理業、法人向けサービス業、個人向け生活関連サービス業、医療・福祉業などです。

②中小企業の実数

中小企業庁発表の2020(令和2)年1月現在で最新の中小企業の情報は、以下のとおりです。企業数、従業員数ともに2016(平成28)年のデータになります。

分類 小規模事業 中規模企業 大企業
企業数 約304.8万者(84.9%) 約53万者(14.8%) 約1.1万者(0.3%)
従業員数 約1,044万人(22.3%) 約2,176万人(46.5%) 約1,459万人(31.2%)

上記の表でわかるとおり、日本における企業数に関しては、中小企業が99.7%をも占めています。従業員数では大企業も一定の比率を持っていますが、それでも中小企業が68.8%のシェアです。

このように、中小企業は日本経済を支える存在として、大変重要な役割・立場があります。従って、中小企業の経営課題を見つめ直し、その改善・解決方法を考察することは大きな意味があるのです。

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中小企業における経営とは

まず、中小企業における経営とは何なのか考えてみることにしましょう。

高度経済成長期やバブル景気だった頃は、働けば働くほど多くの利益を稼げる素晴らしい時代でした。経営者、従業員のいずれも、睡眠時間を削ってでも働く光景がよく見られたそうです。

しかし、近年は景気悪化や人口減少などの影響に伴い、過去の経営スタイルというものが通用しなくなりました。たくさん働いたからといって、必ずしも利益という結果に結びつかなくなってきてしまったのです。

ただがむしゃらに働くのではなく、工夫を凝らした経営により、競合他社との差別化を図ることが重要な時代になったと言えるでしょう。また、近年の社会環境の変化に伴い、労働者の考え方も変わりました。

かつては、仕事を最優先することが当たり前のように思われていましたが、昨今は、仕事と私生活のバランス(ワークライフバランス)を重視する労働者が増加しています。また、過度な残業や休日出勤などへの対応も含め、政府も働き方改革を推進中です。

中小企業が生き残り、きちんと収益を上げていくために、日々、経営者は経営課題に向かい合っていかなくてはいけません。

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中小企業の経営者を悩ませる経営課題

中小企業の経営者にとって、経営課題には常に頭を悩まされるものです。会社や業種特有の経営課題もあれば、中小企業全体に共通する普遍的な経営課題もあります。その中小企業に共通する経営課題の中から、代表的な4つについて取り上げます。

①人材不足

中小企業最大の経営課題は人材不足です。中小企業庁が公開している中小企業白書によると、調査対象のうち約半数の中小企業が人材不足の課題を抱えています。人材不足の背景には、仕事量の増加や従業員の高齢化などの経営課題があります。

人材不足という経営課題を解消するためには、多様な人材の活用と業務の効率化の2点から改善を図る必要があります。特に、仕事と介護の両立支援や育児支援などといった観点を取り入れることにより、家庭に被介護者がいる人や女性を雇用する施策が有効です。

業務の効率化に関しては、ITシステムの導入やアウトソーシングの活用により、業務全体の合理化を図ることに注力しましょう。手作業で行ってきた部分を機械化したり、社内で不得手とする業務なら外部の専門業者に委託するなどの方法論が考えられます。

②後継者不足

中小企業で深刻化している経営課題に後継者不足問題があります。

国内全体で進行している少子高齢化が、中小企業にも影を差している状況です。高齢となった経営者が事業承継を実施したいものの、身内などの親族に後継者がいない、あるいは適任者がいない事態が増えています。

中小企業によっては、後継者不足を理由に事業承継をあきらめ廃業してしまうケースも少なくありません。日本経済にとって中小企業の活性化が重要視される中、中小企業の廃業増加は大きな損失です。中小企業にとって、後継者不足は最優先に解決すべき経営課題にほかなりません。

③労働生産性

労働生産性とは、ある業務成果に対して、どのくらいの工数がかかったのかで判断する、会社の1つの指標として用いられます。この場合の工数とは、その業務に従事した労働者数であったり、あるいは労働者数と労働時間を掛け合わせた数字で考えます。

日本の場合、先進国の中では労働生産性が最も低いことが長年、指摘されてきました。日本への指摘ということは、つまり中小企業にとっての深刻な経営課題ということです。そして、リーマンショックのときに、日本企業の労働生産性はさらに低下しました。

その後、現在までの過程において、大企業では労働生産性の上昇傾向が見られる一方で、中小企業の労働生産性はいまだに低い推移となっています。この大企業と中小企業の間で労働生産性の格差があるという動向も、労働生産性に関する中小企業の経営課題です。

労働生産性という経営課題を解決するためには、業務効率化に向けた長期的な投資が必要になります。労働生産性の向上が実現できれば、それは会社にとって収益性が向上したことを意味します。

④働き方改革への対応

人材不足や労働生産性という経営課題を抱えている中小企業にとって、ありがたいのか難易度が増したのか現状、判断に難しいのが政府が推し進める働き方改革です。2018(平成30)年6月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。

この法律によって、2019(令和元)年度より政府主導で具体的な対策が進められています。働き方改革が最終的に目指すところは、まず、高齢者の再雇用や女性の社会進出を促すことによる人材不足の解消です。

また、非正規雇用者の正社員との待遇格差をなくすことにより、彼らの就業意欲を高め労働生産性を高めることも目標とされています。つまり、中小企業にとっての経営課題解消に向けた動きです。

ただし、そのためには、有給休暇取得の徹底や長時間業務・残業の廃止、非正規雇用者の待遇改善による人件費コスト増、未経験者の就労受け入れのための社員教育システムの設定など、別なハードルが噴出しているため、それが新たな経営課題になってしまいかねない状況なのです。

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中小企業の経営改善手法

この項では、中小企業の経営改善という意味合いでは本丸である、収益改善を促すための手法について考えます。収益とは利益です。利益に直結する会計上の数字は、端的に言えば2つしかありません。それは、売上高と原価です。

売上高については、それを分ける余地はありませんが、原価についてはさらに大きく区分すると変動費と固定費に分けられます。この売上高、変動費、固定費の3点についての改善手法を見てみましょう。

①売上高の増加

業態により、売上高を増加させる手法は千差万別あるとも言えます。しかし、そこに絶対という手法はないため、どの中小企業の経営者も試行錯誤しながら自社に合ったやり方を模索していくことになります。それらの中で一般的に言われている手法をいくつか紹介します。

小売業やサービス業であれば、客単価や購買頻度などを向上させる施策が有効です。卸売業や製造業などで複数の販売先が存在する場合には、販売先別に営業戦略を構築することが重要なポイントとなります。

また、全業種でほぼ共通して言えるのは、新規取引先の獲得・新商品の開発・新規事業への取り組みのいずれか、あるいは全てです。キーワードは見てのとおり「新」であり、今の場所に留まらず新たな境地を目指す意欲が中小企業にとって売上高増加の推進力になります。

②変動費率の改善

変動費率とは、売上高に占める変動費の割合です。変動費とは、売上高に応じて可変する費用になります。つまり、売上高が上昇すればそれに比例して変動費も増えます。変動費の主なものとしては、仕入原価や原材料費、直接経費や販売手数料などです。

変動費率が低いほど、利益をより多く得られる状況になります。変動費率を下げるためには、外注単価の引き下げや適正な在庫量の維持などが有効です。変動費率の改善により、売上高が同額でもより多くの利益を手元に残せるようになります。

③固定費の削減

固定費とは、売上高の数字とは無関係に会社内で生じる一定金額の費用です。固定費の主なものとしては、家賃や水道光熱費、減価償却費や人件費、広告宣伝費や接待交際費などが該当します。固定費をうまく削減できれば、当然ながらその分、利益が上乗せになります。

固定費削減の手法としては、例えば製造業であれば、工場内のレイアウトを変えることによって、同一工数で生産量を上げる労働生産性の工夫が、ダイレクトに役立ちます。他の業種でも、人員配置などを見直し最適化させることで同様の効果が得られるはずです。

また、正社員が行っている単調作業などについては、賃金の安いアルバイトやパートに任せる施策も固定費削減に効果を発揮します。

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中小企業経営におけるM&Aの活用

かつては、後継者問題だけでなく、経営課題を改善できず経営が窮地に陥った中小企業が取る手立ては、廃業や破産でした。しかし、2000(平成12)年頃以降、M&Aの手法や考え方が浸透し始め、経営課題の克服手段にM&Aを用いることも広く行われるようになってきています。

現実問題として、中小企業が自社だけでさまざまな経営課題に対処していくのは難しいことです。その意味で、中小企業の経営にとってM&Aの活用はとても役立つ手段と言えます。そこで、中小企業が売り手と買い手それぞれの立場の場合のM&A活用方法について提示します。

①買い手としてのM&A活用

M&Aにより他社事業を買収すれば、自社に不足する部分を補強できます。例えば、技術力がある一方で営業力が弱い中小企業は、営業力に強みを持つ企業を買収することで収益向上を図れます。関連する事業部門を持つ会社を買収すれば、シナジー効果による収益アップが期待できます。

売上高や利益の向上のみならず、技術力やマーケティング力など、それぞれが独自に蓄積してきたノウハウの融合による新たな強みを得ることも可能です。このようにM&Aの活用メリットは多い反面、M&Aには失敗するリスクがあることも忘れてはいけません。

M&Aのメリットだけでなく、リスクやデメリットもよく考慮したうえで、M&Aを活用するかどうかを決定しましょう。

②売り手としてのM&A活用

会社が後継者難にあるのであれば、M&Aで会社を売却することによって事業承継がなされます。経営者自身も売却代金という老後資金を得ることができます。また、M&Aにより自社の事業の一部を売却し利益を得ることで、それを事業資金として用いることが可能です。

M&Aで得た資金での既存事業の強化や新規事業の立ち上げなどは、中小企業経営にとって「選択と集中」を実現する手段として非常に有効と言えるでしょう。他にも不採算事業をM&Aにより売却すれば、経営資源を主力事業に集中的に投入できます。

M&Aをスムーズに進めていくためには、M&A仲介会社などの専門家によるサポートが有用です。M&Aをご検討の際は、ぜひ一度M&A総合研究所にご相談ください。

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中小企業等経営強化法のメリットと支援内容

国内経済や景気の浮き沈みを握る存在である中小企業に対しては、国もでき得る限り支援や助成を行う姿勢を見せています。その施策の中心的存在となるのが、1999(平成11)年に制定され、以後さまざまな関連法案や政令が発布されている中小企業等経営強化法です。

中小企業等経営強化法自体、現在までに20度以上の改正がなされ、時世に合わせた施策が行えるように手を加えられてきました。その中小企業等経営強化法によるメリットと、主な中小企業支援内容について掲示します。

①中小企業等経営強化法のメリット

中小企業等経営強化法とは、生産性向上に向けた取組みの計画を策定した中小企業や小規模事業者について、税制や金融面などで支援する事を定めた法律です。つまり中小企業の収益力向上を、国が後押しする法律と言えます。

中小企業等経営強化法では、経営力向上計画の認定を受けた事業者に対して、税制措置や金融支援などに関するメリットを与えます。経営力向上計画とは、人材育成、コスト管理マネジメント、ITや設備投資など、経営力向上のための取組内容を記した事業計画をさします。

つまり、経営改善に向けた計画を策定・提出し、国に認定してもらえれば、中小企業等経営強化法による手厚い支援を受けることができるのです。

②中小企業等経営強化法の支援内容

中小企業等経営強化法に基づく支援措置は、以下の3種類があります。

  • 税制措置
  • 金融支援
  • 法的支援
それぞれ個別に内容を確認してみましょう。

税制措置

中小企業等経営強化法に基づく支援の1つである税制措置の柱は、以下の2つです。

  • 中小企業経営強化税制
  • 事業承継等に係る登録免許税・不動産取得税の特例
概要としては、認定済みである経営力向上計画に基づいて購入した固定資産である不動産や設備・器具などにかかる税金について、特例措置の施しを得ることができます。

金融支援

中小企業等経営強化法に基づく金融支援として受けられるものは、主に下記の3つの支援です。

  • 日本政策金融公庫など政策金融機関による低利融資
  • 債務保証などの資金調達での支援
  • 民間金融機関の融資に対する別枠による信用保証

資金繰りに苦労することの多い中小企業にとっては、手厚い支援内容は、心強い支援内容と言えるでしょう。

法的支援

中小企業等経営強化法に基づいた法的支援としての特例措置は、以下の3点が主となっています。

  • 業法上の許認可の承継の特例
  • 組合の発起人数に関する特例
  • 事業譲渡の際の免責的債務引受に関する特例
税制措置、金融支援、法的支援のいずれについても、詳細は中小企業庁発行のパンフレットに記載されています。具体内容や細則はそちらで確認できますが、注意点として中小企業等経営強化法はほぼ毎年改正されます。従って、確認の際は最新版のものを見るようにしましょう。

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中小企業の経営者が抱える悩みと孤独

本記事の最後に、悩める中小企業経営者の心の内について分け入ってみましょう。日々、経営課題と苦闘している中小企業経営者の悩み、そして、孤独感について考えます。

①中小企業経営者の悩み

経営課題を抱えていない中小企業経営者は、おそらく皆無と言っていいでしょう。それぞれの会社の状況により、その経営課題や悩みは千差万別です。それら経営課題の中で多くの中小企業経営者共通の悩みが、会社の売上高ではないでしょうか。

人間、悩みに悶々としていてはいけません。悩みを解消するためには、売上高不足という経営課題に対して、正面から対策を取っていきましょう。一案としては、売上高のデータ分析をおすすめします。

業種によってさまざまである売上高構成要因について、データ分析により、どの要因が売上高を下げているのかを特定します。その特定された要因に応じて、状況を解消させるべく新たに講じる手段を考えましょう。このように、悩むならプラスを生むほうの悩みに時間を費やすべきです。

②中小企業経営者の孤独

会社の中では、従業員との立場の違いから、孤独を感じてしまう中小企業経営者は多いとされています。しかしこれは、ある意味宿命です。孤独感を嫌って経営者の責任を放棄することなどもできません。

外に出て一時的ではあるとしても、経営者仲間や友人との付き合いにより孤独感を解消させ、会社に戻ったら孤独感の中、全責任を負って重要な決定をなしていくのが経営者です。重責で大変ではありますが、誰もが経験できることではないという点に醍醐味を覚え進んでいきましょう。

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まとめ

中小企業にとって、細かな経営課題はいつまで経ってもなくなることはないでしょう。1つの経営課題が解決すれば、また別の経営課題が出現するような、イタチごっこのようなものなのかもしれません。しかし、中小企業の経営課題を俯瞰して見たときに、それは1点に帰結するのではないでしょか。

すなわち、それは収益の向上です。中小企業の経営者であれば、収益の追求は当然でしょう。収益の追求を経営課題として悩んでいるのであれば、それは健全な中小企業経営者としての姿なのです。

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