2022年10月5日更新事業承継

事業承継で知的財産は最重要の切り口!ポイントや留意点、流れを解説

知的財産とは、知的資産のうち特許・商標・実用新案・意匠などをさします。知的財産の適切な承継は、事業承継において重要なポイントのひとつです。この記事では、事業承継で知的財産を承継する際のポイントや留意点、流れなどについて解説します。

目次
  1. 事業承継における知的財産とは
  2. 知的財産権を事業承継するポイント
  3. 事業承継で知的財産を承継する際の留意点
  4. 事業承継で知的財産権を引継ぐ流れ
  5. 事業承継で知的財産の強みをチェックする方法
  6. 事業承継における知的財産の相談先
  7. 事業承継における知的財産のまとめ

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事業承継における知的財産とは

事業承継は、経営権の承継以外にも重要な要素があり、そのひとつが知的財産の承継です。

知的資産は、経営理念や経営者の信用、取引先との人脈、従業員の技術・ノウハウ、顧客情報といった、バランスシートには記載されない無形の資産であり、財務諸表には表れない、目に見えにくい経営資源のことです。

知的財産とは、知的資産に含まれる特許・商標・実用新案・意匠などをさします。本記事では、知的財産の事業承継について解説しますが、まずは事業承継の重要な要素である「人・経営権の承継」「資産の承継」「知的資産・知的財産の承継」について見ていきましょう。

事業承継とは

事業承継とは、現経営者が積み重ねてきたさまざまな経営資源を承継する取り組みのことです。事業承継に含まれる要素には「人・経営権の承継」「資産の承継」「知的資産の承継」があります。

知的財産はこのうち、知的資産の承継に含まれます。知的財産の承継について述べる前に、まずは「人・経営権の承継」と「資産の承継」について見ていきましょう。

人や経営権の承継

人・経営の承継とは、現経営者から後継者へ経営権を引き継ぐことです。事業承継は、誰に事業を承継するかによって、準備の仕方や事業承継の進め方、注意点などが変わります。

事業承継は、後継者となる対象によって、子どもなどの親族へ事業を承継する親族内事業承継、従業員などに事業を承継する親族外事業承継、M&Aによる第三者への事業承継に分けられます。

近年は親族内事業承継の割合が減少してきており、その原因としては職業に関する価値観の変化や、社会環境の変化の速さが挙げられるでしょう。

家業は長男が継ぐという古い価値観は薄れてきており、現在は個人が自由に好きな職業を選ぶべきといった価値観が浸透しています。その結果、オーナー経営者の子どもであっても、ほかの職業に就く割合が増えています。

また、近年は社会環境の変化の速さから、先が読みにくい世の中となりました。そのため、現在は事業が堅調でも、子どもに事業を引き継いだ後はどうなるかわからないといった思いから、子どもに事業を引き継ぐことを迷うオーナー経営者も増えています。

一方で、M&Aによる第三者への事業承継の割合は増加しています。その主な理由は、M&Aに対するイメージの改善、中小企業・小規模事業者でもM&Aを実施しやすくなったことです。

以前は、M&Aによって会社を売却することに抵抗を示すオーナー経営者が多く、周りの関係者もM&Aによって会社を売ると聞くと、ネガティブなイメージを持つことが少なくありませんでした。

近年は、さまざまなメディアで事業承継について取り上げることが増えたり、さまざまな専門機関が事業承継について情報発信を積極的に行ったりしています。

そのため、中小企業のオーナー経営者もM&Aによる売却に対して、以前ほど抵抗を感じなくなっているケースが増えている状況です。

株式や資産の承継

資産の承継は、事業に必要な事業用資産や株式を引き継ぐことをさします。資産の承継資産を承継する際は、経営権の分散対策や相続税・贈与税対策、資金調達の準備などが必要です。

後継者が円滑に事業を継続していくためには、経営権を後継者に集中させることが重要ですが、現経営者が元気なうちに適切に対策をしなければ、経営権が分散してしまい経営に支障をきたす可能性もあるでしょう。

経営権の分散を防ぐには、自社株式や事業用資産の生前贈与、安定株主の導入、遺言の作成、種類株式の発行、信託の活用、持株会社の設立、相続人等に対する売渡請求、特別支配株主による株式等売渡請求、名義株・所在不明株主の整理といった多くの対策方法があります。

税金対策としては、事業承継税制の活用や小規模宅地等の特例の活用、死亡退職金に対する相続税の非課税枠の活用、死亡保険金に対する相続税の非課税枠の活用といった方法があります。

役員や従業員といった親族外へ事業承継を行う場合は、自社株式を取得するための資金調達が必要となるケースが多く、M&Aによって第三者への事業承継を行う場合は、M&Aスキームを適切に選択しなければなりません。

いずれも円滑な事業承継に必要であり、これらの対策を進めていくためには、各対策方法に応じた専門家によるサポートは不可欠といえるでしょう。

知的財産の承継とは

知的資産は、経営理念や経営者の信用、取引先との人脈、従業員の技術・ノウハウ、顧客情報といった、バランスシートには記載されない無形の資産であり、財務諸表には表れない、目に見えにくい経営資源のことです。

知的財産には、知的資産に含まれる特許・商標・実用新案・意匠などが該当します。事業承継は、事業資産や経営権を承継しただけでは十分ではありません。

経営理念や経営者の想いといった知的資産、特許などの知的財産を適切に後継者に承継することも必要であり、そのためには現経営者が知的資産・知的財産を整理・把握し、活用することが大切です。

知的資産・知的財産をコミュニケーションツールとして活用するケースとしては、金融機関への融資相談や取引先への営業、入社希望者への採用、仕入れ先・協力先との事業連携などがあります。

中小企業庁では知的財産の活用を促すため、「事業価値を高める経営レポート」を提供しています。「事業価値を高める経営レポート」を活用すれば、自社の知的資産・知的財産を把握し整理していくことが可能です。

現経営者が知的資産・知的財産の把握と整理を完了させたら、後継者との対話をつうじてしっかりと知的財産を引き継いでいく必要があります。

特に中小企業の場合は、経営者と従業員の信頼関係が事業の継続と成長に不可欠です。実際、後継者と従業員の信頼関係がしっかりと構築されていなかったために、経営に支障がでるケースも少なくありません。

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知的財産権を事業承継するポイント

知的財産を事業承継する際は、まず現経営者が自社の知的財産を正確に把握し、的確に後継者へ引き継いでいくことが大切です。この章では、知的財産を承継する際のポイントについて解説します。

知的財産権を事業承継するポイント
  1. 知的財産権の棚卸し 
  2. 知的財産の承継

知的財産権の棚卸し

知的資産・知的財産を承継する際は、事業価値を高める経営レポート」や「知的資産経営報告書」といったツールを活用して知的資産・知的財産の棚卸しを行い、知的資産を明確化しなければなりません。

知的資産・知的財産の棚卸しでは、以下の指標をもとに自社の知的資産・知的財産を評価できます。
  • 経営スタンス・目標の共有、浸透の度合
  • 製品・サービス、技術、顧客・市場などの選択と集中の状況
  • 販売先、顧客、仕入先、資金調達先に対する交渉力、関係性の強さ
  • 新しい価値創造の能力効率、事業経営のスピード
  • 組織(総合力)、個々の能力などの組織としての結合状況
  • リスクの認識・評価対応、管理、公表、ガバナンスの状況
  • 地域・社会などへの貢献などの状況
 
知的資産経営報告書では、これらの指標を参考に知的資産・知的財産を具体的に洗い出していきます。専門機関などからサポートしてもらいながら行うと、スムーズかつ的確な棚卸しが可能です。

知的財産の承継

知的資産・知的財産を棚卸ししたら、後継者や役員・従業員といった社内の関係者と知的資産・知的財産の棚卸し内容を共有します。

また、棚卸しした知的資産・知的財産を活用して、金融機関・取引先・協力先といった外部との関係を強化し、後継者が事業承継後スムーズに知的財産を活用して事業を継続できるよう、環境を整えていきます。

後継者に引き継いでからも事業を維持・発展させていくためには、棚卸しした知的資産・知的財産を後継者がしっかりと引き継いで、うまく活用していくことが重要です。

後継者が知的資産・知的財産をしっかりと引き継いで有効活用していくには関係者からの理解も必要ですが、実際には後継者が自社の知的資産・知的財産を把握しきれていなかったり、有効活用できていなかったりするケースも少なくありません。

関係者からの理解が得られないまま事業承継が行われた結果、後継者が孤立状態に陥ってしまうケースもあります。こうした事態を防ぐためにも、現経営者は知的資産・知的財産を後継者に対して時間をかけて引き継ぎ、後継者の体に染み込ませることが大切です。

後継者が自社の知的資産・知的財産を有効活用できるまでは、数年の引き継ぎ期間が必要でしょう。

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事業承継で知的財産を承継する際の留意点

事業承継の際は、売り手企業が単独で権利を所有しているケースと、売り手企業が他社と権利を共有しているケースが考えられます。本章では、単独で権利を承継するケースと、他社と共有している権利を承継するケースの注意点について見ていきましょう。

単独での知的財産権の承継

売り手企業が自社で単独保有している権利を事業譲渡によって承継するケースでは、承継する権利を個別に決定していくことが求められます。

事業譲渡は、承継する事業や資産を事業・資産ごとに取引する契約です。そのため、知的財産権を承継するケースでも、承継する権利と承継しない権利をしっかりと分けておく必要があります。

また、事業譲渡の際は、権利が事業承継とともに途切れてしまうため、権利を受け継ぐ側は、権利の転移手続きが必要です。

なお、権利を事業譲渡によって引き継ぐ場合は、売り手企業がその権利をどの範囲まで使っているかに注意してください。例えば、売り手企業がA事業だけで特定の権利を使っており、買い手企業がその事業を受け継ぐ場合は、移転手続きによって問題なくその権利を利用できます。

ところが、売り手企業がA事業とB事業の両方で特定権利を利用しており、買い手企業がA事業のみを事業承継したい場合は、その権利が売り手側と買い手側でまたがることにもなり得ます。そのような場合、買い手側は独占して使用する権利を取得することが不可能です。

こうした場合の対応方法としては、その権利を買い手企業が独占して利用できるようにするのではなく、他の企業も使用できる権利として事業承継し、売り手側も買い手側も事業承継後その権利を使用が可能な状態にする方法が考えられます。

しかし、この方法では買い手企業がその権利を単独で利用できません。権利が複数の事業で重なっているケースでは、専門家のアドバイスを得ながら、売り手側と買い手側でトラブルに発展しないよう、よく話し合うことが大事です。

株式譲渡によって事業承継を行う場合は、株式を譲り渡すことによって会社ごと事業承継を行うので、権利もまとめて事業承継が可能です。

ただし、権利​の種類によっては、事業承継手続きの完了によって買い手側がそのまま使用できるケースと、事業承継の際に買い手側が別途手続きをしておく必要があるケースがあります。

権利を事業承継するためにも、弁理士などの専門家に相談しましょう。

共有しての知的財産権の承継

権利を売り手企業が自社で単独保有している場合もあれば、2社以上の企業で所有しているケースも考えられます。こうしたケースでは、売り手側の事業者だけでなく、権利を共同保有している企業の承諾も必要です。

ただし、特許権の場合、売り手側が使用している権利がその企業が独占して利用できる権利ではなく、他の企業も利用できるケースもあります。このケースでは、買い手側もほかの企業と共同で使用するのであれば、共同で利用している企業の承諾は必要ありません。

共同で利用している企業の承諾が必要となるのは、権利を独占して利用できるケースです。なお、その権利を使わないのであれば、買い手側は事業譲渡によって特定の権利だけを受け取らない方法をとることも可能です。

その場合は、該当の権利が2社以上の企業で共有されていても、その権利を切り離すことで買い手側は事業承継できます。

権利が2社以上の企業で共同で利用されているケースでは権利関係が複雑になり、トラブルの可能性も考えられるので、専門家によるサポートを得て慎重に進めましょう。

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事業承継で知的財産権を引継ぐ流れ

事業承継の際に知的財産権を適切に承継するには、専門家によるアドバイスが必要となることがあります。本章では、知的財産権を承継する際の専門家の必要性などについて解説します。

専門家に相談するべきか? 

知的財産を適切に引き継ぐことは、事業承継にとって重要なポイントです。特に近年は、世界的に知的財産の取り扱いについて厳しい目が向けられるようになり、日本でも知的財産保護の重要性が再認識され始めています。

そのため、知的財産の承継については専門家に相談し、適切に進めていく必要があるでしょう。前述のとおり、事業承継には「人・経営権の承継」「資産の承継」「知的財産の承継」があります。

専門家の種類によってそれぞれ得意分野がありますが、知的財産権の事業承継は弁理士や弁護士が得意としています。特に、弁理士は知的財産の手続きをサポートするだけでなく、知的財産全般のコンサルティングを行うことも可能です。

知的財産に関してトラブルが発生した場合は、弁護士と協力しながら訴訟代理人としてサポートしてくれるメリットもあります。

ただし、弁理士・弁護士のいずれに相談する場合でも、M&A・事業承継や企業法務にもつうじている専門家を選んだほうが間違いありません。

知的財産権の中から特許のみを残すケース

案件によっては、譲受側が譲渡企業の特許権を必要ないと判断するケースもあります。株式譲渡の場合は会社ごと承継するので、特許のみを譲渡側に残すことは基本的にできません。

しかし、資産を個別に取引する事業譲渡の場合、交渉次第になるものの、特定の特許権だけを譲渡側に残し、ほかの事業を取得する柔軟な方法も可能です。

その場合は、M&Aの専門家や弁理士のアドバイスをもらいながら、両者に不満が残らない交渉を行いましょう。

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事業承継で知的財産の強みをチェックする方法

この章では、事業承継で知的財産の強みをチェックする方法について見ていきましょう。

特許庁による事業承継支援事業の活用

政府は中小企業の経営資源を保護する目的で、事業承継税制や資金的な融資など事業承継支援を実施している状況です。

特許庁による事業承継支援事業では、中小企業に対して知的財産の専門家が、会社が持つ知的財産を洗い出して会社の強みとなる知的財産を磨くサポートを実施しています。すでに事業承継を進めている中小企業、5年以内の事業承継を検討している中小企業が対象です。

専門家による無料のアドバイスなので、知的財産の価値を高められます。

経営レポート・知的資産経営報告書作成マニュアルの活用

経営レポート・知的資産経営報告書作成マニュアルの活用も、事業承継で知的財産の強みをチェックする方法です。中小企業基盤整備機構は、企業が持つ知的資産を洗い出して磨き上げるためのマニュアルを発行しています。

このマニュアルは、手軽に無料で用いることが可能です。事業承継の検討を考えている頃でも活用できるでしょう。

経済産業省や中小企業基盤整備機構のホームページでは、知的資産経営報告書の事例なども紹介しています。似た業種の会社のレポートを参考にすると良いでしょう。

特許評価ツールの活用

特許評価ツールを活用して、事業承継で知的財産の強みをチェックするのもおすすめです。自社が持つ特許を適切に評価し、強みをチェックできます。

知的財産の一種である特許は、製造業の中小企業ではかなり重要です。その強みを確認すれば、経営戦略、事業承継、会社売却が有利に進むでしょう。

経済産業省の「ULTRA Patent」や、民間会社が運用する特許評価システムなどが、特許評価ツールとして存在します。これらを生かして、特許の棚卸し、不要な特許の処分、休眠特許の見直しなどを実施し、スムーズな事業承継をサポートしましょう。

事業承継における知的財産の相談先

事業承継の際はさまざまな要素を承継する必要があり、専門家のサポートが必要なものもあります。本記事では知的財産の承継について解説してきました。

知的財産の承継では弁理士や弁護士への相談が有用です。M&Aによる第三者事業承継を総合的にサポートしてもらいたい場合は、M&A仲介会社が良いでしょう。


M&A総合研究所では、知識・支援実績の豊富なM&Aアドバイザーが、親身になって案件をフルサポートいたします。料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

無料相談を随時受け付けておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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事業承継における知的財産のまとめ

本記事では、知的財産の事業承継について解説しました。知的財産とは、知的資産に含まれる特許・商標・実用新案・意匠などをさし、知的資産は経営理念や経営者の信用、取引先との人脈、従業員の技術・ノウハウ、顧客情報といった、財務諸表には表れない経営資源のことです。

事業承継では知的財産をどのように引き継ぐかもポイントとなるため、
中小企業庁の「事業価値を高める経営レポート」などを活用し、自社の知的資産・知的財産を把握・整理しましょう。

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