M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2023年9月22日更新事業承継
MBOとは?メリット・デメリットやスキームをわかりやすく解説【事例付】
M&A手法の一つにMBOがあります。意思決定の自由化・迅速化、従業員からの理解を得やすい点からもMBOはメリットの多い手法です。今回は、MBOのメリット・デメリットを中心に、成功させるためのポイントやリスク、国内事例などを解説していきます。
MBOのメリット・デメリット
事業承継や上場廃止など、さまざまな場面で有効活用されているM&A手法の一つに、MBOと呼ばれる手法があります。使い勝手の良い手法ともいえるMBOには多種多様なメリットがあり、外食チェーンで有名な「すかいらーく」が活用したことで一躍有名となりました。
この記事では、MBOのメリット・デメリット、成功するポイントやリスクなど事例も合わせてわかりやすくご紹介します。
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MBOをわかりやすく解説
まず最初に、MBOに関して基本的な知識をお伝えします。
MBOの意味
MBO(Management Buy Out)とは、経営陣が自社を買収するM&A手法です。事業承継の場面でも用いられることが多いMBOは、経営陣がオーナー社長や親会社から自社株式を買い取ることで、経営権の獲得を実現できます。
つまり、経営陣、役員、従業員が株主から株式を買い取る形でMBOを実施すると、経営権を引き継げるということです。所有と経営が分離し、親会社に実質的な経営権を握られているケースの場合、自身に経営権を集中させる目的でMBOを実行します。
また、経営陣に自社株式を買収する資金力が不足している場合には、LBO(Leveraged Buy Out)を併用してMBOを実行するケースもあります。LBOとは、買収対象企業(事業)の資産価値や収益力を担保として、M&Aに必要な資金を調達する手法です。
MBOの種類
MBOには、類似する手法がいくつか存在します。この項では、MBOに類似するM&A手法を3つ紹介します。
EBO
EBO(Employee Buy Out)とは、従業員が自社を買収するM&A手法です。MBOと比較すると買収する側が役員ではなく従業員という点が異なっていて、ある事業部門の部長が本社から事業を譲り受ける形で実施します。
また、事業承継を従業員が引き受けるケースにもEBOが用いられます。そして、EBOはMBOと同様に外部から資金調達したうえで実行する場合が大半です。
MEBO
MEBO(Management Employee Buy out)とは、経営陣と従業員がともに出資することで自社を買収するM&A手法です。MBOとEBOを組み合わせた手法といえます。
MBI
MBI(Management Buy In)とは、金融機関などが株式を買収し、経営に参画するM&A手法です。
MBIは企業再生のために外部から経営陣を招聘する目的で実施される手法で、ブランド力や技術力のある企業の再生において非常にメリットがあります。
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MBOのメリット
この章では、MBOのメリットについて解説します。MBOのメリットとして、以下の3点が挙げられます。
- 長期的な経営が可能
- 従業員から理解が得られやすい
- 意思決定が自由で迅速になる
①長期的視点の経営
株主はどうしても自身の利益を優先するため、成長性を考えずに短期的な要求をする傾向にあります。そのため、株主の多い企業ほど、あまり長期的な経営ができなくなる傾向があるのです。
その点、企業がMBOを行うと経営権が集中するため、経営戦略を長期的な視点でたてることが可能となり、会社の成長につながるというメリットがあります。
②従業員から理解が得られやすい
通常のM&Aと比べて、MBOによる買収の方が従業員からの理解を得やすいメリットがあります。通常のM&Aを実施して第三者に買収された場合、第三者が経営陣となるため従業員には不満が生まれやすいです。
MBOであれば現経営陣が引き続き経営陣に留まるので、従業員の目線からみても安心できる手法であり、従業員のモチベーションアップも期待できます。
③意思決定が自由で迅速になる
株主が多い企業は、意思決定の際に承認を得るために多くの時間がかかります。しかし、MBOを実施すると経営権が集中するため承認が不要となり、意思決定が速くなるというメリットがあります。スピーディーで自由な意思決定をしたい経営者にとっては、MBOは有効なM&A手法となります。
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MBOのデメリット
MBOによって多くのメリットを得られる一方で、以下3つのデメリットも存在します。
- 利益相反による株主との対立
- 経営変革が起こりにくい
- 上場廃止による資金調達
①利益相反による株主との対立
株主はできるだけ高値で株式を売却したい一方、経営陣は安値で株式を買い取りたいと考えます。MBOの際にはこのような利益相反になるケースも多く、既存の株主と対立が生じる可能性があります。
もし対立が生じて株主が買い取りに応じないと、MBOが失敗に終わってしまうことも考えられます。そのためにも、MBOの際には既存株主も妥協できる範囲での価格で買収することが大切です。
②経営変革が起こりにくい
MBOにより経営権が集中する結果、経営に変革が起こらないデメリットがあります。経営陣が全株式を保有している場合は現状維持の経営で何か口を出される可能性はありませんが、株主が分散していれば否が応でも変革の可能性はあります。
経営体質が変化しない結果、環境の変化に付いていけず経営が悪化する恐れがあります。経営変革が起こりにくくなる点は、長期的な視点でみるとMBOにおける最大のデメリットです。
③上場廃止による資金調達
上場企業がもしMBOを実行すると、上場廃止になることから市場から資金調達できなくなるデメリットがあります。主要な資金調達源を失うと資金繰りが苦しくなるので、上場企業がMBOを実施する際は十分注意しましょう。
MBOによる上場廃止のメリット
市場から資金調達ができなくなるデメリットがあったとしても、MBOによる上場廃止にはメリットもあるため実行する上場企業は少なくありません。この項では、MBOによる上場廃止のメリットを2つご紹介します。
①敵対的買収のリスク排除
上場会社の株式であれば、誰でも好きなだけ買い集めることが可能です。そのため、大量の株式の買い集めによって、会社の経営権を奪われるリスクが上場企業には常に付きまとっているといえます。
敵対的買収に対する対策はいくつかあるものの、買収防衛策で完全に敵対的買収を阻止できるとは限りません。しかし、MBOを実行して上場廃止することで市場に株式が出回らなくなり、敵対的買収のリスクを完全に排除できます。
MBOは究極の買収防衛策ともいえるM&A手法であり、上場廃止におけるメリットです。
②上場維持のコストカット
上場企業は、上場維持のために莫大なコストを費やさなくてはいけません。しかし、MBOにより上場廃止すれば、上場維持に費やす莫大な費用をカットできるメリットを得られます。コンプライアンス体制の維持に必要な労力を削減できる点も、メリットの一つになり得ます。
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MBOを成功させるポイント
MBOのメリットを最大限に享受するためには、MBOを成功させなくてはいけません。この項では、MBOを成功させるポイントを2点紹介します。
①MBO後の将来性も考慮
MBOの際にLBOを併用したり借り入れを実行したりする場合、後々負債を返済しなくてはいけません。つまり、多額の負債を抱えることになるため、MBO後に利益を十分に獲得できなければ経営状況が悪化します。
敵対的買収の防止や経営権の集中といったメリットは多いですが、MBOは慎重に検討しなくてはいけません。やみくもにMBOを実行すると大きな損失を被る可能性が高いため、MBOに限らずM&Aにおいて、将来性を十分に考慮することが成功にとっては不可欠です。
②専門家に相談
MBOでは株主と利益相反するケースが多いため、株主への対応が重要となります。株主から反感を買い、MBOが実施不可能となる事態を避けるためにも妥当な価格で買収しなくてはいけません。
買収価格の根拠となる資料や専門家の証明を示して株主を納得させることが成功には不可欠です。そのためにも、専門家のサポートを得ることをおすすめします。
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MBOの国内事例
ここまでMBOについて説明してきましたが、最後は具体的に国内で実行された代表的なMBOの事例を紹介していきます。
①CDGによるMBO事例
幅広いマーケティングソリューションを提供するCDGは、同代表が設立したGIHに、地域マーケティング支援子会社ゴールドボンドの保有全株式を譲渡すると2019年に発表しました。
今回のMBOは、CDGグループとゴールドボンドの活動エリアや顧客層が異なることから、シナジー効果が少ないということも実施を決めた理由でした。MBOを実施したことで、それぞれの専門性を活かしながら競争力向上することが期待されています。
②すかいらーくによるMBO事例
「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などファミリーレストランでおなじみの「すかいらーく」は、約3,000店舗を運営する外食大手企業です。しかし、業績が2000年頃より悪化し、2006年にすかいらーくの経営陣はMBOによる上場廃止を決めました。
このMBOは、いったん非上場化することで、経営改革を行うことを目的としていました。その後は苦難の道を辿りながらも、非上場化から8年後の2014年に「すかいらーく」は再上場を果たしました。
③カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)によるMBO事例
日本中で大きく取り上げられたMBO事例の一つとして、「TSUTAYA」チェーンを運営するCCCの事例が挙げられます。音響・映像レンタル最大手のCCCは、非上場化することで経営の自由度を高め、事業再構築を目的としたMBOの実施を2011年に決断しました。
結果的には非上場化に成功したCCCの事例ですが、創業者である増田社長を除く取締役会が応募推奨しなかったことが注目されました。つまり、株式を集めるためにTOBが発表されましたが、TOBに応じるかどうかは株主の判断に委ねられる珍しいケースとなりました。
まとめ
今回は多々あるM&A手法の中でも、企業規模に関係なく役立つ手法であるMBOのメリット・デメリットを中心に解説しました。近年利用件数が増加しているMBOは、中小企業の事業承継などにも有効な手法です。
経営権の集中や長期的な経営を実現できる点、MBOはメリットの多い手法であり、毎年多くの企業がメリットの獲得を目的にMBOを活用しています。しかし、デメリットもあるため、しっかりデメリットを考慮し、MBOを活用しましょう。
それでは最後に、今回の記事の要点をまとめると下記になります。
・MBOとは
→経営陣が自社を買収するM&A手法
・MBOの種類
→EBO、MEBO、MBIなど
・MBOのメリット
→長期的な視点で経営できる、意思決定の自由化・迅速化、従業員からの理解を得やすい
・MBOのデメリット
→既存株主との対立が生じるリスク、経営体質の変革が生じにくくなる、資金調達を実行しづらくなる
・MBOによる上場廃止のメリット
→敵対的買収のリスクを排除できる、上場維持のためのコストカットができる
・MBOを成功させるポイント
→株主への対応、MBO後の将来性も考慮
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。