交付金合併とは?意味や仕訳、税務を解説

近年、吸収合併において対価を金銭とすることが認められました。それが交付金合併です。交付金合併には待ち望まれていたメリットがある反面、通常の吸収合併で受けていた恩恵を失してしまうデメリットもあります。交付金合併の詳細を確認します。

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2020年3月29日更新

目次
  1. 新しいM&A手法・交付金合併
  2. 合併とは
  3. 交付金合併とは
  4. 交付金合併のメリット・デメリット
  5. 交付金合併の会社法上の手続き
  6. 交付金合併の仕訳
  7. 交付金合併の税務
  8. まとめ

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新しいM&A手法・交付金合併

交付金合併とは、M&Aの一つである合併において用いられる手法です。企業の組織再編行為という位置づけでもある合併は、過去においては合併実施時に対価として交付するものは、主として株式が用いられるのが常でした。

M&Aが盛んに行われるようになり、手法の多様性を求める現場からの声を受け、2007(平成19)年に会社法が改正され「合併対価の柔軟化」が打ち出されました。つまり、合併実施時において、その対価を株式ではなく金銭で交付することが可能になったのです。

このように交付金合併は、近年になって加わった新しいM&A手法の1つになります。

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合併とは

交付金合併の詳細を見ていく前に、まずはその根本となるM&A手法、かつ組織再編行為である合併について、内容を確認しておきましょう。

合併の種類

合併とは、文字どおり複数の企業が統合され一つの会社になることです。M&AとはMergers(合併)and Acquisitions(買収)ですから、M&A手法の中でも代表される一つといえるでしょう。この合併にはさらに種類があり、大別すると以下の2つです。

  • 吸収合併
  • 新設合併
吸収合併とは、一方の会社に他方の会社を吸収させる合併です。新設合併とは、合併する全ての会社を消滅させたうえで、その権利や義務などを新設した会社が承継します。なお、交付金合併は吸収合併に含まれる手法です。

合併の特徴

合併が他のM&A手法と絶対的に違う点は、合併を実施した場合、必ずいずれかの会社の法人格が消滅することです。いい換えれば、グループ企業の再編や他社との共同事業などを主な目的として行われる合併は、比較的大規模なM&Aとなることが多いといえるでしょう。

したがって、合併を実施すると債権者や株主などに与える影響も大きくなるため、株主総会での特別決議での承認や債権者保護手続きなどを行うことが法令で義務付けられています。ただし一部においては、条件を満たせば株主総会を省略できる場合もあります。

合併の注意点

合併は、従業員にも大きな影響を与えます。消滅する会社側の従業員の雇用契約は、自動的に存続会社に引き継がれます。就業規則などの調整を怠ると、従来よりも待遇が下がったり、従業員の間であつれきが生じる恐れがあります。

本来、事業成果の向上を狙って行われる合併であるはずが、現場の従業員においてモチベーション低下や離職などが発生してしまっては意味がありません。合併の実行に際しては、従業員の取り扱いについて十分に気をつける必要があります。

また、組織再編行為である合併は、適格要件を満たすと税制上の優遇措置が受けられるようになっています。企業としては、可能な限り適格要件を満たすよう合併を実施すべきです。適格要件を見誤らないよう注意しなくてはいけません。

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交付金合併とは

交付金合併とは、消滅会社の株主に交付する対価を、株式ではなく金銭として行う吸収合併です。先述した法改正が行われるまでは、吸収合併における消滅会社株主への対価として、存続会社の株式が交付されていました。

端数株式への対処としての金銭交付は認められていましたが、「合併対価の柔軟化」によって初めて、交付金合併が現実のものとなったのです。なお、合併の対価として支払う金銭は、「合併交付金」といいます。

合併交付金を支払うケースの中でも、全ての対価を金銭とする吸収合併が交付金合併です。交付金合併は、別称として「キャッシュアウトマージャー(Cash Out Merger)」とも呼ばれていますが、M&Aが多様化する中でニーズが発生し、新しく誕生した手法といえるでしょう。

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交付金合併のメリット・デメリット

交付金合併は、従来の吸収合併とは交付する対価が違うわけですから、そこにはそれだけの目的があります。その目的はそのまま交付金合併のメリットともいえることです。しかし、そのことによって、残念ながらデメリットも生じてしまいます。

交付金合併のメリットとデメリット、自分の立場であればどちらを重視すればよいか考える意味でも、両者をよく比較しておきましょう。

①交付金合併のメリット

交付金合併で得られる主なメリットは2つあります。それぞれを掲示します。

存続会社の株主の持ち株比率を維持できる

対価を株式とする通常の吸収合併では、消滅会社側の株主に存続会社の株式が交付されます。つまり、存続会社において新たな株主が出現することとなり、当然ながらその分、既存株主の持ち株比率は下がってしまいます。

既存株主にとって持ち株比率の下落は、すなわち利益が損なわれる恐れにつながります。一方、交付金合併では金銭が対価として交付されますから、存続会社において株主の持ち株比率に変動は生じません。これは既存株主の不利益性とはならず、交付金合併の大きなメリットです。

消滅会社の株主を排除できる

交付金合併のもう一つのメリットは、消滅会社の株主を排除できる点です。対価を株式とする通常の吸収合併の場合、消滅会社の株主は存続会社の新たな株主となることを意味します。つまり、存続会社において株主構成が変化するということです。

それは、状況次第では、会社の経営の不安定化につながりかねません。たとえ少数株主であったとしても、株主は株主ですから、存続会社にとって益のない株主であれば好ましい存在であるとはいえないでしょう。

交付金合併では、このようにこれまでの株主構成=安定した経営基盤を損なうことなく、合併を実施できるという得難いメリットがあります。

②交付金合併のデメリット

交付金合併には、そのメリットを享受するために付随してきてしまう、二律背反のようなデメリットが2点あります。こちらもよく確認してください。

非適格組織再編行為となる

交付金合併の致命的なデメリットは、「非適格合併」となる点です。組織再編行為である合併は、適格要件を満たした適格組織再編と認められれば、組織再編税制が適用され合併で移転した資産に対する課税の優遇措置を受けられます。

その適格要件の中の一つに、「金銭不交付要件」というものがあります。これは、合併における対価は主として金銭以外、つまり株式交付で行うことが掲げられており、交付金合併ではこの適格要件を満たせません。

つまり、必然的に被適格組織再編、非適格合併となり、課税の優遇対象から外れてしまいます。どんなに工夫しても、この現実は変えられないデメリットであり、メリットと比較してどちらを優先するかという観点で判断するしかありません。

資金調達の必要性

通常の吸収合併のように対価を株式交付で行う場合、全く現金を用意する必要がありません。しかし、交付金合併ではその反対に、合併交付金が必要です。消滅会社の時価総額次第では、相当な現金を用意する必要があり、そのための特別な資金調達をしなければいけないかもしれません。

このように交付金合併では、相反するメリットとデメリットが存在します。どちらの合併スキームを選ぶか、非常に悩ましくもあります。そのような時、結論を出す前に一度、M&Aの専門家に無料相談してみることをおすすめします。

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交付金合併の会社法上の手続き

交付金合併の手続きは、対価の内容が違うだけで、そのプロセスは通常の吸収合併と基本的に同じです。交付金合併手続きの主要なプロセスについて、掲示します。

①交付金合併の契約締結

交付金合併でまず初めに行うプロセスは、当事会社における取締役会決議を経た後、交付金合併契約を締結します。この契約書には、交付金合併の効力が生じる日付や対価の支払い方法や金額を必ず含めます。締結した合併契約を基にM&Aを実行します。

②交付金合併の株主総会承認決議

当事会社間で契約を締結したら、株主総会にて合併の実行を承認します。交付金合併を実行するためには、3分の2以上の賛成による特別決議が必要です。株主からの理解を事前に得ておくことが望ましいでしょう。簡易合併もしくは略式合併の場合は、株主総会の手続きを省略可能です。

③株主・債権者の保護手続き

交付金合併を含めた合併手続きでは、株主や債権者の利益を保護する手続きが欠かせません。株主に対しては、合併効力発生日の20日前までに、交付金合併を実行する旨、並びに存続会社の商号と住所を事前に通知する必要があります。

交付金合併に反対する株主に対しては、株式の買取請求に応じる義務も生じます。債権者に対しては、効力発生の1ヶ月前までに、官報による公告と債権者への個別催告を実行する必要があります。

期間内に債権者から異議申し立てが行われた際は、弁済や担保の提供などを施さなくてはいけません。

④クロージング

交付金合併の効力発生日までに、消滅会社が保有する資産や権利などを存続会社に移転します。権利や資産などの移転と同時に、存続会社側は消滅会社の株主に対して対価である金銭を交付します。

⑤交付金合併後の手続き

クロージングが完了しても、交付金合併の手続きは残っています。効力発生日から2週間以内に、消滅会社では解散登記、存続会社では変更登記を行います。登記手続きと併せて、開示書類の事後備置手続きも必要です。

開示書類の事後備置とは、交付金合併に関する事項を記した書類を6ヶ月間本店に備え置く手続きを意味します。上記の手続きをもって、基本的に交付金合併は完了です。

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交付金合併の仕訳

交付金合併で対価として支払う金銭に関しては、基本的に「現金」という勘定科目を用いて仕訳を行います。存続会社側から見ると合併交付金の支払いは、資産である現金の減少を意味します。つまり、支払う交付金の金額を、資産の減少として貸方に仕訳することになります。

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交付金合併の税務

前述したとおり、交付金合併は非適格組織再編、非適格合併です。この場合、適格組織再編税制にある課税優遇措置を受けられません。その優遇措置とはどういう内容かというと、合併によって消滅会社から移転された資産をどう評価するかということです。

適格組織再編税制の場合、この移転されてきた資産について消滅会社の簿価価額をそのまま引き継いでよいことになっています。したがって、移転資産の譲渡損益の計上が実質的に繰り延べられることになり、法人税の課税を受けずにすみます。

しかし、非適格組織再編である交付金合併では、移転資産は時価で計上しなくてはなりません。そうすると必然的に譲渡益が発生するため、法人税が課税されることになります。確定申告時には、この法人税納付分の資金も必要です。

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まとめ

交付金合併を実施することで、柔軟なM&Aを実現できる一方で、注意も必要です。M&Aの目的、自社の状況を踏まえたうえで、通常の吸収合併か交付金合併かを選択しなくてはなりません。交付金合併のメリット・デメリットをよく把握したうえで、交付金合併を活用しましょう。

本記事の要点は以下のとおりです。

・合併とは
→吸収合併と新設合併の2種類があり必ずいずれかの会社の法人格が消滅する

・交付金合併とは
→消滅会社の株主に交付する対価を、株式ではなく金銭として行う

・交付金合併のメリット
→存続会社の株主の持ち株比率を維持できる、消滅会社の株主を排除できる

・交付金合併のデメリット
→非適格組織再編行為となる、資金調達の必要性

・交付金合併の税務
→移転資産を時価で計上するためその譲渡益に法人税が課税される

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