2021年4月29日更新事業承継

廃業支援における中小企業庁の制度・銀行の活用

廃業する際には、面倒な手続きや多額の費用が発生します。中小企業庁や銀行では、中小企業や個人事業主の廃業に役立つ支援策を打ち出しています。この記事では、中小企業庁による廃業支援ローンや廃業支援補助金、銀行による廃業支援を紹介します。

目次
  1. 廃業支援
  2. 廃業支援の現状と課題
  3. 中小企業庁による廃業支援ローン(小規模企業共済制度)
  4. 中小企業庁による廃業支援補助金(事業承継補助金)
  5. 銀行による廃業支援(廃業支援型バイアウト)
  6. まとめ

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廃業支援

少子高齢化による人口減少や経済のグローバル化に伴い、廃業する企業が増加傾向にあります。赤字廃業の企業はもちろんのこと、黒字であっても後継者不足を理由に廃業する中小企業や個人事業主が見受けられます。

廃業する際には、費用や手続きといった面で経営者に負担がかかります。そうした事情を踏まえて中小企業庁や一部の銀行では、多様な廃業支援を実施しています。この記事では、中小企業や個人事業主に対する廃業支援方法をわかりやすくご紹介します。

廃業支援の現状と課題

廃業する中小企業・個人事業主が増加傾向にある一方で、いまだ廃業支援には多くの課題が残っています。廃業支援の課題の中から、以下の2つの課題を取り上げてご紹介します。

  1. 廃業に関する経営者(個人事業主)の知識不足
  2. 廃業の匿名性

①廃業に関する経営者(個人事業主)の知識不足

経営者であれば、誰も望んで廃業したいとは考えていません。廃業を考えない経営者がほとんどであり、廃業に関する知識が不足している傾向にあります。廃業の際には事業用資産の処分、取引先との関係整理など多種多様な手続きが必要となります。

廃業に関する支援制度や支援機関が存在する一方で、経営者(個人事業主)自身がその存在について知らないケースがあまりにも多いのです。その結果、廃業に対して何も対策できず、満足いかない形で廃業する事業者が多く存在します。

中小企業庁のアンケートによれば、約3割の経営者が誰にも相談せずに廃業しています。商工会議所や中小企業庁は、中小企業や個人事業主に対していつまでに何を準備するのか、廃業後の生活設計をどう構築すべきかといった廃業に関する基礎知識を伝えていく必要があります。

その一方で、中小企業経営者や個人事業主も、廃業に先駆けて廃業に関して下調べすることが求められます。

 

②廃業の匿名性

廃業には法務や税務を中心とした専門知識が必要となる一方で、経営者にとっては第三者に廃業することを知られたくないと考えるのが自然です。そうした経営者の心情から、廃業の必要性が生じても専門家に相談できないまま廃業してしまうというケースがほとんどです。

廃業支援を実施する側は、廃業を匿名で実行したい中小企業や個人事業主の意向を尊重したうえで、電話相談窓口やインターネットでの質問など、匿名性を維持したまま専門的なサポートを提供できる仕組み作りが必要となります。

匿名性を担保することができれば経営者が廃業について専門家に相談して、廃業支援制度などを有効活用することができるようになるでしょう。

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中小企業庁による廃業支援ローン(小規模企業共済制度)

中小企業庁が運営する廃業支援の1つ「小規模企業共済制度」について、以下の項目を紹介していきます。

  1. 支援内容
  2. 対象者
  3. 掛け金
  4. 税法上の特典

①小規模企業共済制度による支援内容

廃業予定の経営者にとって、最も心配なことは失業です。引退後も生活資金が必要となりますが、経営をやめてしまうと収入がなくなってしまいます。そうした経営者の不安を取り除くために、中小企業庁では「小規模企業共済制度」を実施しています。

小規模企業共済制度とは、中小企業の福祉増進と振興を目的とした「経営者の退職金共済制度」で、加入している経営者同士で退職金をまかない合う制度のことです。

毎月掛け金を積み立てておけば、廃業や退職する時点で退職金が支払われます。小規模企業共済制度では、退職金制度に加えて契約者貸付制度も利用することができます。

契約者貸付制度とは納付済みの掛け金総額の範囲内で事業資金などを、無担保・無保証人で借り入れできる制度のことです。廃業後の生活不安を軽減できるという点において、小規模企業共済制度は非常に役立つ廃業支援です。

②小規模企業共済制度の対象者

小規模企業共済制度では、下記条件のいずれかに該当する者を廃業支援の対象としています。

  • 常時使用する従業員が20名以下(商業・サービス業では5名以下)の個人事業主・共同経営者・会社役員
  • 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合役員
  • 常時使用の従業員数が20人以下の協業組合役員
  • 常時使用の従業員数が20人以下であり、かつ農業経営を行う農事組合法人の役員

小規模なビジネスを行う個人事業主や中小企業の経営陣であれば、廃業支援の対象になるということです。

③小規模企業共済制度の掛け金

掛け金は月額制で1,000円〜7万円以内となっており、500円刻みで掛け金を決めることができます。必要に応じて半年払いや年払いも可能です。

④小規模企業共済制度の税法上の特典

小規模企業共済制度に加入するメリットは、廃業時の支援だけではありません。共済に対する納付掛け金は全額所得控除となるので、大きな節税効果が期待できます。中小企業や個人事業主にとっては、まさに一石二鳥の廃業支援制度です。

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中小企業庁による廃業支援補助金(事業承継補助金)

中小企業庁は小規模企業共済制度以外にも、廃業支援として「事業承継補助金」を運営しています。これから事業承継補助金について以下の項目を紹介していきます。

  1. 支援内容
  2. 対象者
  3. 支給金額

①事業承継補助金による支援内容

事業承継補助金とは、事業承継に要する費用補助を利用できる制度のことですが、実は廃業支援の補助金でもあります。事業転換や経営革新のために廃業するケースに対しては、通常よりも補助金を上乗せしてくれます。経営の新陳代謝を図る事業承継を行う場合には、メリットの大きい廃業支援です。

②事業承継補助金の対象者

事業承継補助金による廃業支援を受けるためには、下記条件を満たす事業承継である必要があります。

  • 新商品・サービスの開発や生産、提供を行う
  • 商品やサービスに関する新たな生産や販売・提供方式の導入
  • その他新たな事業活動により、販路拡大や新市場開拓などを実行する

事業承継後に、従来とは異なる取り組みを実行することが条件として挙げられているのです。上記条件以外にも、地域経済への貢献や後継者の経営経験、同業種に対する知識なども条件に含まれています。

事業承継補助金は、採択率が低く簡単には利用できない制度ですが、応募してみる価値は十分にあるといえます。

③事業承継補助金の支給金額

事業承継補助金には下記2つのケースがあり、それぞれ支給金額が異なります。

  • Ⅰ型(後継者承継支援型)
  • Ⅱ型(事業再編・事業統合支援型)

Ⅰ型(後継者承継支援型)

Ⅰ型の中でも、事業規模によって補助率や補助金額が異なります。

【小規模事業者やそれに準ずる個人事業主】
  • 補助率:3分の2以内
  • 補助金額:200万円
  • 廃業を伴う場合の上乗せ額:300万円
【小規模事業者以外】
  • 補助率:2分の1以内
  • 補助金額:150万円
  • 廃業を伴う場合の上乗せ額:225万円

Ⅱ型(事業再編・事業統合支援型)

Ⅱ型の場合、審査結果の点数に応じて上位と下位に分けられ、それぞれで補助率や補助金額が異なります。

【採択上位】
  • 補助率:3分の2以内
  • 補助金額:600万円
  • 廃業を伴う場合の上乗せ額:600万円
【採択下位】
  • 補助率:2分の1以内
  • 補助金額:450万円
  • 廃業を伴う場合の上乗せ額:450万円

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銀行による廃業支援(廃業支援型バイアウト)

銀行では、中小企業や個人事業主に対して廃業支援を提供しています。その中でも新生銀行の廃業支援「廃業支援型バイアウト」は、非常に画期的な制度です。

近年は後継者不足を理由に、負債よりも資産が上回っているにもかかわらず、廃業する中小企業が少なくありません。廃業を実行する際には、従業員の雇用関係や取引先との関係整理、廃業手続きといった面倒な手続きが多くあります。

新生銀行では資産超過で廃業予定の中小企業を買収し、経営者に代わって廃業手続きを進める支援策を実施しています。経営者にとってはバイアウトによる利益を獲得することができ、面倒な廃業手続きは全て銀行側が進めてくれます。

大事な会社を売却したくない気持ちはあるでしょうが、手遅れになる前に廃業支援型バイアウトを利用するほうがメリットは多いです。まだ、あまり普及していない制度ではありますが、廃業支援型バイアウトの活用を検討してみるのも良いでしょう。

MBOを活用した事業承継

しかし、廃業はしたくない、どうにかして事業を承継したいと考える経営者様も多いでしょう。後継者不在で廃業を検討している場合は、M&Aによる事業承継をご検討されることをおすすめします。

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まとめ

今回は、中小企業や個人事業主に役立つ廃業支援を紹介しました。中小企業庁や銀行では、中小企業や個人事業主の廃業に役立つ支援策を打ち出しています。

廃業する際には面倒な手続きや多額の費用が発生しますが、このような廃業支援制度を利用することで少しでも円滑な廃業を実現することができるでしょう。

今回の要点をまとめると、下記になります。

・廃業支援の現状と課題
廃業に関する経営者(個人事業主)の知識不足や廃業の匿名性によって、廃業支援制度が有効活用されていない

・中小企業庁による廃業支援ローン(小規模企業共済制度)
加入している経営者同士で退職金をまかない合う制度のことで、一定の条件を満たす小規模なビジネスを行う個人事業主や中小企業の経営陣であれば、廃業支援の対象となる

・中小企業庁の廃業支援(事業承継補助金)
一定の条件を満たす事業承継に要する費用補助を利用できる制度のことで、事業転換や経営革新のために廃業するケースでは通常よりも補助金を上乗せしてくれる

・新生銀行の廃業支援(廃業支援型バイアウト)
資産超過で廃業予定の会社を銀行が買収し、経営者の代わりに廃業手続きを進める支援策

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