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2021年4月29日更新事業承継
相続手続きに印鑑証明が必要な4つの場面とは?
相続の手続きの際には、どのような場面で印鑑証明を必要とするかを理解しておくと大変便利でしょう。また、手続きごとに、提出する印鑑証明の有効期限が異なる点にも注意しなければなりません。今回は、相続と印鑑証明について詳しく解説します。
はじめに
相続の際は、一定範囲内の親族に対し、所有していた財産が包括的に引き継がれます。今後、高齢化が進む中で、相続の場面に遭遇する機会が訪れるかもしれません。
財産を引き継ぐ際は、いろいろな相続手続きを行います。その際、正当な人物へ財産を相続させるために、印鑑証明を必要とする手続きがいくつか存在します。そのため、相続の手続きにおいて、どの場面で印鑑証明が必要となるのか把握しておくと大変便利です。
印鑑証明とは、その実印がその人の所有物であることを証明する書類です。この記事では、相続に不可欠な印鑑証明に関して、わかりやすく解説します。
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相続手続きで必要な印鑑証明と枚数
まず、相続手続きで必要となる印鑑証明と枚数について解説します。相続では、主に下記4つの手続きで印鑑証明が必要です。
- 遺産分割協議
- 不動産の相続登記
- 銀行・証券会社に対する払い戻し手続き
- 相続税申告
①遺産分割協議
相続の際には、それぞれが引き継ぐ財産の金額や種類を決定しなくてはなりません。遺言書が残されている場合には、遺言書の内容に則って財産を分配します。
一方、遺言書がないケースでは、相続人全員で遺産分割協議を行い、話し合いによって決定します。遺産分割協議で結論が出ると、書面で話し合いの内容を記録します。
その際、遺産分割協議書が相続人の意思に基づいて作成されたことを証明するために、通常は、遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑証明書を用意します。
被相続人の預金の払い戻し等を行う際には、銀行等によって異なりますが、実印の押された遺産分割協議書と、印鑑証明書を銀行等に提出することになります。
②不動産の相続登記
家や土地など不動産を相続する際は、名義変更の登記手続きが必要です。不動産の相続登記では、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明の提出が求められます。
遺産分割協議と同様に、相続人が一人、もしくは遺言書に則った相続であれば、印鑑証明は不要です。加えて、調停調書・審判書があるケースでも印鑑証明は必要ありません。
③銀行・証券会社に対する払い戻し手続き
銀行や証券会社に払い戻し手続きを実施する際には、印鑑証明が必須です。ただし、相続の状況により、印鑑証明が必要となる人物が異なるため注意しましょう。
遺言書による相続、もしくは相続人が一人の場合は、預金を相続する人物のみ印鑑証明が必要です。一方、遺産分割協議による相続の場合は、全相続人の印鑑証明書が必要です。
加えて、家庭裁判所の調停調書や審判書が存在するケースでは、預金を相続する人物の印鑑証明のみ求められます。
上記はあくまで、一般的な取り扱い傾向です。実際に相続する際は、対象の各銀行にお問い合わせすることをおすすめします。
④相続税申告
ある一定以上の財産を相続すると、相続税の申告が必要です。相続税の申告の際に遺産分割協議書を提出する場合、印鑑証明の提出が必要となります。相続登記とは異なり、印鑑証明の原本還付は利用できません。つまり、相続税申告の際には、別途印鑑証明を準備しなくてはなりません。
一方で、不動産の相続登記後に相続税申告を実施すれば、新しく印鑑証明を取得する手間が省けます。
以上4つが、相続における印鑑証明が必要な場面です。つまり、相続では、約2〜4枚程度の印鑑証明が必要とされます。印鑑証明の枚数は、相続手続きの順番や相続人の状況次第で変動するため、事前に印鑑証明の必要枚数を確認することをおすすめします。
相続で用いる印鑑証明の期限
相続では、多くの場面で印鑑証明の提出が求められます。相続対象者の中には、印鑑証明の期限を気にする方も少なくありません。相続を遂行する方の中には、3カ月以内でなくてはならないと認識している方も多いでしょう。
結論からいうと、手続きによって印鑑証明の期限は異なります。そこで、この項では、相続で用いる印鑑証明の有効期限について以下のパターンごとにご説明します。
- 印鑑証明の有効期限なし
- 印鑑証明の有効期限3カ月
①印鑑証明の有効期限なし
ほとんどの相続手続きでは、印鑑証明に有効期限はありません。相続税申告や相続登記、遺産分割協議では、いつの印鑑証明を利用しても原則問題はありません。
ただし、司法書士に相続手続きを依頼する際には、新しい印鑑証明の提出を求められる場合もあるため、注意が必要です。
②印鑑証明の有効期限3カ月
相続で用いる印鑑証明には、基本的に有効期限が設定されていませんが、期限が設けられている場合もあります。例えば、金融機関に対する手続きについては、期限が設けられている場合がほとんどです。
銀行預金の相続では、ほぼ3カ月の有効期限が設定されています。実際に相続を実施する際は、各銀行の取り決めを確認したうえで発行しましょう。
印鑑証明がない相続人の対処法
次に、印鑑証明がない相続人の対処法をお伝えします。相続人としての権利を行使するためには、基本的に印鑑証明が必要です。何らかの理由で実印を登録していない方は、相続で困らないためにも、実印の登録をおすすめします。
印鑑証明がない相続人とは
以下の要件に該当する方は、実印登録できないため、印鑑証明も当然ながら提出できません。
- 未成年者
- 成年被後見人
未成年者
民法上、未成年者は制限行為能力者に該当するため、独力で法律行為を実行できません。そのため、未成年者が相続人となる際には、印鑑証明は必要ありません。
成年被後見人
未成年と同様に、成年被後見人も制限行為能力者に該当します。成年被後見人は、認知症など自分で物事を判断できない方のことをさします。成年被後見人が相続人となる場合にも、印鑑証明は必要ありません。
印鑑証明がない相続人の対処方法
上記のような理由により、印鑑証明がない相続人に対しては、通常とは異なる対処を施します。未成年者が相続人の場合には、代理人である親権者が印鑑証明を提出します。一方、成年被後見人が相続人であれば、成年後見人と呼ばれる代理人の印鑑証明を用います。
なお、親権者や成年後見人が当該未成年者や当該成年被後見人と同じく相続人に当たる場合には、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらい、特別代理人に遺産分割協議の当事者になってもらいます。
海外在住者の相続と印鑑証明
ここでは、海外在住者の相続と印鑑証明についてご説明します。
相続のグローバル化
ひと昔前まで、相続は日本国内の親族間で行うケースがほとんどでした。しかし、近年では、日本企業の海外進出や海外移住、国際結婚などの増加に伴い、相続がグローバル化しています。そのため、海外に相続人がいるケースが一般化しており、相続の際には考慮する必要があります。
例えば、海外在住者を無視して遺産分割を実行してしまうと相続は無効となるため、海外在住者も含めたうえで相続手続きを実施しなくてはなりません。また、海外在住者が相続する際は、提出書類が日本の相続人とは異なります。
印鑑証明の代わりに必要な書類
海外の国では、日本のように印鑑証明の制度が存在しません。しかし、実印の代わりに、サイン(署名)を用いる場合が一般的です。そのため、海外在住の相続人は、印鑑証明を提出する代わりに、サインとその証明書を提出します。
また、サイン証明書は、日本領事館などの在外公館で取得可能です。印鑑証明や実印の代わりに、サインとその証明書を提出すれば、正式に相続人としての権利が認められます。
サイン証明書以外に必要な書類
海外移住している相続人は、サイン証明書以外にも以下の書類を準備する必要があります。
- 在留証明書
- 出生・婚姻・死亡証明書
在留証明書
不動産の相続登記には、相続人の住民票が必要です。しかし、相続人が海外在住の場合、海外のどこに住んでいるかまでは、住民票には記載されていません。
そのため、海外に住んでいる相続人は、住民票の代わりに在留証明書を提出します。在留証明書は、現地日本領事館に出向き、パスポートなどを提示すれば取得可能です。
出生・婚姻・死亡証明書
基本的に、相続の際には、相続人であることを証明するために戸籍謄本が必須です。しかし、多くの国では、住民票のみならず戸籍も存在しません。
そのため、海外に住んでいる相続人は、戸籍の代わりとして出生証明書などを提出する必要があります。相続人である証拠を提示できるのであれば、婚姻証明書や死亡証明書でも問題ありません。
以上が、海外在住者の相続で必要となる書類です。実際に海外在住者が相続人に含まれる際には、事情に精通している司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は、相続における印鑑証明について解説しました。相続の手続きでは、さまざまな場面で印鑑証明の提出が必要です。また、印鑑証明が不要の方や、海外在住者が相続人に含まれる場合には、通常とは提出物が異なります。
相続の際は、各家庭の状況により手続きが異なるため、弁護士や司法書士に相続業務を依頼することをおすすめします。要点をまとめると、下記のとおりです。
・相続手続きで必要な印鑑証明の枚数
→約2〜4枚程度
・相続で用いる印鑑証明の期限
→原則期限はないが、銀行預金などの相続には3カ月の期限が設定されていることが多い
・印鑑証明がない相続人とは
→未成年者や成年被後見人など
・印鑑証明がない相続人の対処法
→代理人の印鑑証明を利用する
・海外在住者の相続
→近年は件数が増加しており、海外在住者を無視して遺産分割協議をしても無効となる
・海外在住の相続人が提出する書類
→サイン証明書、在留証明書、出生・婚姻・死亡証明書
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。