2021年4月24日更新会社・事業を売る

株式譲渡による事業承継

株式譲渡は、事業承継やM&Aで広く活用される手法です。株式譲渡による事業承継ではさまざまなメリットが得られますが、デメリットも存在するため事前の把握が必要です。この記事では、株式譲渡による事業承継のメリット・デメリットや実施の方法・流れを解説します。

目次
  1. 株式譲渡による事業承継
  2. 株式譲渡とは
  3. 株式譲渡による事業承継の方法
  4. 株式譲渡による事業承継のメリット
  5. 株式譲渡による事業承継のデメリット
  6. 株式譲渡による事業承継手続きの流れ
  7. まとめ

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

株式譲渡による事業承継

株式譲渡は、事業承継M&Aにおいて一般的に広く用いられている手法です。実際に事業承継やM&Aを実施したことのある経営者のなかには、株式譲渡を活用した経験を持つ人も少なくありません。

しかし株式譲渡による事業承継には手続きが簡素などのメリットがあるものの、深刻なデメリットもあるため注意が必要です。そこで今回は、株式譲渡の手法を活用した事業承継について解説していきます。

※関連記事
事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説

株式譲渡とは

はじめに株式譲渡の概要について解説します。株式譲渡とは、その名のとおり特定の相手に株式を譲り渡す行為です。主として事業承継やM&Aシーンにおいて広く活用される手法ですが、なかでも事業承継では相続・贈与・売却といった3つの方法で株式の譲渡が実施されます。

また詳しくは後述しますが、株式譲渡は手続きが簡素であり、プロセスを比較的簡単に完了させやすい手法です。このことが、事業承継やM&Aを実施するときに最も広く活用されている理由の1つでもあります。

最近では経営者の高齢化を受けて、事業承継の件数が増加傾向にあります。それに加えて、中小企業を中心に後継者不足も目立っており、M&Aを活用して第三者に事業承継するケースが増加しています。

上記の影響から、株式譲渡による事業承継がより注目されるようになってきているのです。従って、株式譲渡の知識を身につけておくことは、事業承継の準備をするうえで必要不可欠といえます。

株式譲渡と経営権

次に株式譲渡を実施するうえで把握しておくべき、株式譲渡と経営権の関係について解説します。そもそも株式は会社の経営権を決定づけるものであり、経営者が安定的な経営を実施するには会社が発行する株式の3分の2を保有する必要があります。

なぜなら自社株の3分の2を所有することではじめて、特別決議を自力で実施できるようになるためです。特別決議では、取締役の解任・定款の変更・合併や会社分割の実施など会社における重要事項を決定できます。

しかし、経営者以外の人物に株式の3分の2が渡ってしまえば、経営権が移ってしまうことになります。裏を返せば、たとえ経営者の地位に就いたとしても自社株の3分の2を保有していなければ、経営権のすべてを掌握することはできません。

以上のことから株式の保有割合と経営権は密接に関係しており、事業承継を実施するときにはいかに株式譲渡を円滑に完了できるかが重要視されます。なお、前述のとおりに事業承継における譲渡では株式の3分の2が目指されるのが基本的ですが、特に中小企業では経営者に自社株を100%保有させることが望ましいです。

これは中小企業で株式を分散させておくと、重要事項の決定における妨げになりやすいためです。従って、中小企業が株式譲渡による事業承継を実施するときには、あらかじめ現在の経営者が株式を100%集めたうえで後継者に譲渡することをおすすめします。

※関連記事
株式譲渡とは?メリット・デメリット、M&A後の社員や税務を解説
経営権

株式譲渡による事業承継の方法

後継者に対して株式譲渡による事業承継を実施する場合、相続・贈与・売買の3つから方法を選択します。ここでは、それぞれ方法の特徴について解説していきます。各方法は独立しているわけではないため、柔軟に組み合わせて事業承継を済ませることが望ましいです。

自社の事情に合わせて、最適な方法を検討することをおすすめします。

①相続による株式譲渡

相続では、経営者が亡くなったときに株式譲渡を用いて事業承継します。株式も財産として相続できるため、後継者側では株式買収の資金を用意せずに事業承継することが可能です。とはいえ、相続として株式を引き継ぐ以上、相続税が発生する点は念頭に置いておく必要があります。

なお、相続税は控除の枠が広いものの、経営者個人が所持する資産の分を含めると相続税が大きく膨れ上がるおそれがあります。さらに突然経営者が亡くなってしまったというケースでは、相続人が分散してしまい事業承継を円滑に実施できない可能性があるため、注意が必要です。

以上のことから経営者は、あらかじめ遺言書の作成・生前贈与・財産整理などの対策を講じることが求められます。これにより、株式譲渡による事業承継の円滑な完遂につながるのです。

②贈与による株式譲渡

贈与では、経営者の生存中に後継者にあらかじめ株式を贈与することで事業承継を完了させます。贈与であっても相続と同じように、事業承継を実施するときに資金を用意する必要がありません。ところが相続とは違い、経営者の望むタイミングで株式譲渡を実施できるメリットがあります。

ただし、贈与税が発生するため贈与する株式の分量に配慮することが大切です。具体的にいうと、なるべく株価が低いタイミングを狙い、非課税となる年間110万円以下の株式贈与を繰り返すことをおすすめします。これにより、できるだけ贈与税を支払うことなく事業承継を完了することが可能です。

③売買による株式譲渡

売買では、後継者が経営者の所有している株式を買収することで事業承継します。この方法では後継者が直接的に株式を買収するため、後継者が株式を保有することについて第三者に対する説得力を持たせられます。

とはいえ、株式譲渡の売買を実施するには、後継者に相応の資金力が必要です。しかし裏を返せば、資金力を有する人間のみが株式を取得できるため、事業承継における経営権を巡る争いを回避できるメリットがあります。

※関連記事
相続における専門家の重要性
株式贈与とは?手続きや税金、非上場株式の株価評価方法について解説

株式譲渡による事業承継のメリット

前述のとおり株式譲渡は事業承継において最も広く活用されていますが、これは期待できるメリットに魅力があるためです。株式譲渡による事業承継で得られるメリットは、以下のとおりです。

  1. 手続きが簡素である
  2. 会社をまるごと引き継げる
  3. 譲渡益を獲得できる
それぞれのメリットを順番に見ていきます。

①手続きが簡素である

株式譲渡を活用する最大のメリットは、手続きが簡素である点にあります。そもそも株式譲渡は株式の所有者を変更する作業であり、会社の機関や株式数などの変更は求められていません。つまり、公的機関に必要書類を提出するといった手続きは不要です。

いうなれば、株式譲渡は当事者間のみで完結できる方法ですが、これはM&Aを活用した事業承継であっても同様です。そのため、会社の名義そのものを変える合併と比べて広く活用されています。

さらに、相続・贈与・売買などの方法を組み合わせて承継できる点も、手続きの簡便さという側面から見て大きなメリットです。

②会社をまるごと引き継げる

株式譲渡による事業承継では、会社をまるごと引き継げるというメリットも存在します。そもそも事業承継やM&Aにおける株式譲渡は、基本的に会社のすべてを引き継ぐ目的で実施されます。具体的には、会社設備・従業員との雇用契約・取引先・販路などをすべて引き継ぐことが可能です。

これにより、新たに契約を更改するといった手間を削減できます。これに対してM&Aによる事業承継において事業譲渡の手法を採用してしまうと、基本的に事業を所有する会社の名義を変更することになります。

そのため事業譲渡では、従業員の雇用契約や取引先との契約などを更改することが必要です。以上のことから名義を変更する手続きではない株式譲渡にはこうした手間が発生せず、このことも株式譲渡が広く選ばれる理由の1つであるといえます。

③譲渡益を獲得できる

株式譲渡のなかでも売買によって事業承継を実施すると、売り手である現在の経営者は譲渡益を獲得することが可能です。最近では早期引退を目的に、事業承継やM&Aによる会社売却を実施する経営者が増えています。

そこで株式譲渡を活用して事業承継すれば、まとまった資金を獲得できます。こうして獲得した資金は、そのまま引退後の生活費や新事業を手掛けるための資金として活用可能です。このように将来的に必要となる資金作りのために株式譲渡を実施するケースも多く存在します。

資金の獲得を目指すならM&Aによる事業承継がおすすめ

事業承継に伴ってなるべく多くの資金を獲得したいと考えている場合には、M&Aによる事業承継も有効策となり得ます。M&Aでは第三者に会社を売却するため、自社に魅力を感じる企業が現れれば相場以上の価格で取引が成立する可能性もあるのです。

とはいえM&Aによる事業承継では、煩雑かつ専門的に高度な知識を要するプロセスを経なければならないため、専門家に協力を仰ぐことをおすすめします。

M&Aによる事業承継をお考えの際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では経験・知識ともに豊富なアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)無料相談をお受けしておりますので、M&Aによる事業承継を検討している場合にはお気軽にご相談ください。

※関連記事
会社を売りたい
社長の引退年齢の現状や課題点とは?M&Aや事業承継を活用するポイントを解説

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

株式譲渡による事業承継のデメリット

事業承継で株式譲渡を用いるときにはデメリットも十分に把握しておくことで、事業承継後に想定外のトラブルや損害が発生するリスクを軽減できます。株式譲渡による事業承継のデメリットは、以下のとおりです。

  1. 後継者に負債やトラブルも引き継いでしまう
  2. 株価算定に手間がかかる
それぞれのデメリットを順番に見ていきます。

①後継者に負債やトラブルも引き継いでしまう

前述ではメリットとして挙げた「会社をまるごと引き継げる」点は、裏を返すとデメリットになり得るおそれがあります。株式譲渡によって事業承継すれば、雇用契約なども引き継げるために更改の手間が省けます。

しかし、同時に会社が抱える負債やトラブルといったネガティブな要素もまとめて後継者に引き継いでしまうのです。

このときに、事前に後継者の存在を把握できている事業承継では想定内の問題として収めやすいものの、第三者が買収する形を取るM&Aでは買い手が予期せぬ損害を被ってしまうおそれがあります。そのため、株式譲渡を実施するときには、デューデリジェンス(買収監査)が念入りに実施されるのです。

そこで、M&Aによる事業承継を実施するときには、会社内の財務状況などを隅々まで把握したうえで必要があれば負債を整理しておくなど、誠実な対応で買い手が実施するデューデリジェンスに協力しなければなりません。

②株価算定に手間がかかる

株式譲渡を実施するときには、株価を算定する必要があります。このときに上場している企業であれば、株価のチェックは簡単であるものの、非上場企業である場合には株価算定(バリュエーション)に手間がかかるケースが多いです。このバリュエーションは、経営者が個人で遂行するには困難な作業です。

ところが、株価は会社全体の評価額といっても過言ではないため、株価算定の作業は決して疎かにして良いものではありません。従って、円滑にプロセスを済ませるためには、M&A仲介会社・コンサルティング会社・会計事務所など専門家の力を借りるのが得策です。

※関連記事
デューデリジェンスとは?目的・方法・種類
バリュエーションとは?バリュエーションの方法と注意点

株式譲渡による事業承継手続きの流れ

株式譲渡による事業承継手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 株式の確認
  2. 株式譲渡の承認
  3. 譲渡契約書の作成・株主名簿の書き換え、など
それぞれの手続きを順番に見ていきます。

①株式の確認

株式譲渡を実施するときには、あらかじめ株式について確認をします。なぜなら中小企業では、株式に譲渡制限がかかっている可能性が高く、制限がかかっている場合にはそのまま譲渡することができないためです。なお、自社の株式における譲渡制限の有無は、会社の定款もしくは登記簿謄本で確認することができます。

もしも譲渡制限がかかっているならば、しかるべき機関に株式譲渡を承認してもらう必要があります。譲渡を承認する機関についても、定款で確認することが可能です。

具体的には、定款に別段の指定がないケースでは取締役会、取締役会が設置されていないケースでは、株主総会で承認を受ける必要があります。

②株式譲渡の承認

株式に譲渡制限がかかっている場合には、取締役会もしくは株主総会で株式譲渡の承認を得る必要があります。

中小企業の事業承継ではほとんど事例が報告されていませんが、仮に株主総会や取締役会で株式譲渡の承認が得られなかった場合には、会社は別の買取人を指定しなければなりません。

特例有限会社が株式譲渡を実施する場合も承認が必要

会社法の定めにより特例有限会社は、株式の譲渡制限があらかじめ存在するものとみなされています。つまり特例有限会社の株式譲渡についても、譲渡するときには会社の承認が必要です。

③譲渡契約書の作成・株主名簿の書き換えなど

株式譲渡について承認が得られた場合には、そのまま書類の作成手続きに移ります。まずは、譲渡契約書を作成して譲渡側と譲受側で契約を締結します。次に譲受側では、対象会社に対して株主名簿の書き換えを要求することが基本的です。

こうして株主名簿の書き換えが完了したら、譲渡側の会社にて株主名簿記載事項証明書が発行されて手続きが終了となります。

ところが場合によっては、株主名簿の管理がずさんになっていることがあります。最悪のケースでは、誰が株式を所有しているのかが不透明という事態に陥ることも少なくありません。

その結果として、将来的に混乱を起こしてしまうリスクが生じます。従って、株式譲渡によって事業承継を実施するときは、あらかじめ誰が株主なのか特定しておくことが大切です。

株式譲渡による事業承継手続きに必要な書類

ここまで株式譲渡による事業承継手続きの流れを大まかに紹介しましたが、手続きには以下のような書類が必要となります。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 株主総会招集に関する取締役の決定書
  • 臨時株主総会招集通知
  • 臨時株主総会議事録
  • 株式譲渡承認通知
  • 株式譲渡契約書
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名簿
  • 株主名簿記載事項証明書交付請求書
  • 株主名簿記載事項証明書

ただし、取締役会が譲渡承認機関として設定されている場合、株主総会に関する書類は不要となります。

※関連記事
株式譲渡の手続き
M&Aの手続き

まとめ

株式譲渡は、事業承継やM&Aにおいて最も広く活用されている手法です。最近では経営者のなかで事業承継やM&Aが一般化してきており、かつての「会社を売り払う」といったネガティブなイメージはなくなりつつあります。さらには、組織再編や事業再生のために株式譲渡を活用するというケースも増加しています。

とはいえ、経営者自身の力のみで株式譲渡を実施するのは困難かつ非効率的であるため、専門家からサポートを受けることをおすすめします。これにより事業承継やM&Aを円滑に済ませる可能性が高まります。

要点をまとめると、以下のとおりです。

・株式譲渡とは
→特定の相手に株式を譲り渡す行為

・株式譲渡による事業承継の方法
→相続・贈与・売買の3種類が存在

・株式譲渡による事業承継のメリット
→手続きが簡素、会社をまるごと事業承継できる、譲渡益の獲得

・株式譲渡による事業承継のデメリット
→後継者に負債やトラブルも引き継いでしまう、株価算定に手間がかかる

・株式譲渡による事業承継手続きの流れ
→株式の確認、譲渡の承認、譲渡契約書の作成や株主名簿の書き換え

M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

あなたにおすすめの記事

関連する記事

M&Aコラム
人気の記事
最新の記事

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

お電話でのご相談
0120-401-970
WEBから無料相談