2021年4月29日更新事業承継

娘婿への事業承継

娘婿へ事業承継するケースもありますが、親族や従業員などへの事業承継とは違う部分もあるため対策が必要です。娘婿への事業承継における注意点と課題、事業承継時の対策となる事業承継税制や遺留分特例などについて解説し、利用できる融資や補助金についても紹介します。

目次
  1. 娘婿への事業承継
  2. 娘婿への事業承継における注意点と課題
  3. 事業承継税制を活用した娘婿への事業承継と対策
  4. 遺留分特例を活用した娘婿への事業承継と対策
  5. 補助金・融資を活用した娘婿への事業承継と対策
  6. まとめ
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娘婿への事業承継

経営者の高齢化が進行していることに伴い、事業承継の件数が増加しています。事業承継においては親族や従業員を後継者とするケースが一般的ですが、娘婿に事業承継するケースも見受けられます。しかし、娘婿への事業承継には一般的な事業承継とは違う点もあるため注意が必要です。

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事業継承とは?承継との違いや引継ぎ先、成功ポイントなどを解説

娘婿への事業承継における注意点と課題

娘婿への事業承継では税金面で大きなデメリットが存在します。ここでは、娘婿への事業承継において注意点となる税金面のデメリットと課題について解説していきます。

贈与税の基礎控除・相続時精算課税制度を利用できない

子供などの親族内で事業承継をする場合、税負担を考えて経営者が生前のうちに自社株を引き継ぐ(生前贈与)場合が多いです。生前贈与を用いた事業承継では「暦年贈与」か「相続時精算課税制度」のうちいずれかの課税方法を選択できます。

直系親族に対する事業承継であれば、どちらの方法を選んでも税制上優遇され、暦年贈与を選択した場合は年間110万円まで、相続時精算課税を選択すれば最大で2,500万円までならば非課税で自社株を引き継げます。

しかし、娘婿は直系の親族ではないため娘婿への事業承継では贈与税の基礎控除や相続時精算課税を適用できないことから、通常の事業承継と比べて娘婿への事業承継では税負担が重くなってしまいます。

相続税が加算される

贈与税の負担を回避するために、遺言によって娘婿に自社株を遺す経営者の方もいます。遺言によって事業承継する方法は「遺贈」と呼ばれますが、遺贈による事業承継では相続税が課税されます。

娘婿への事業承継では、配偶者や子供に事業承継するよりも相続税負担が大きく、その理由は法律上法定相続人である親族以外への遺贈(相続)には相続税が2割加算される仕組みとなっているからです。

娘婿は当然ですが法定相続人にはならないため、相続税が2割加算されることによって相続税額が大きくなるというわけです。

娘婿への事業承継の課題

後継者がいないことを悩む経営者が多い中で、娘婿へ事業承継できることは非常にありがたいことです。しかし、娘婿への事業承継は法定相続人ではないことが負担を大きくさせてしまいます。そのため、どれだけ娘婿への負担を軽くさせられるかが課題となります。

何も対策をしていなかったことで承継後に娘婿が悩んでしまわないように、事前に対策を講じることが大事であり、その対策の一つに養子縁組があります。

娘婿を養子縁組することで相続時精算課税制度が活用できるようになるため、娘婿を養子縁組することも検討してみましょう。

※関連記事
生前贈与のメリットとデメリット
事業承継における節税

事業承継税制を活用した娘婿への事業承継と対策

娘婿への事業承継対策として、まずは事業承継税制をご紹介します。今回ご紹介する対策の中でも事業承継税制は役に立つ制度であるため、ぜひとも活用を検討してください。

事業承継税制の概要と娘婿への承継メリット

事業承継税制とは、非上場自社株式を相続もしくは贈与によって取得した際に、後継者の相続税や贈与税納税が猶予・免除される制度です。中小企業のみ活用できる制度であり、以下の2つを合わせて事業承継税制と呼びます。

  • 非上場株式等についての相続税猶予及び免除の特例
  • 非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例

事業承継税制は度重なる改正によって中小企業が使いやすい制度となり、現在では娘婿や親族外の後継者も適用対象となっています。したがって娘婿が全株式を承継したとしても、この事業承継税制を利用すれば、相続税(贈与税)の全額が納税猶予の対象となります。

つまり、課税されずに娘婿への事業承継を実行できるということであり、直系親族と比べて税負担が大きかった娘婿にとって、このメリットは非常に大きいです。

娘婿が事業承継税制を利用できる条件

娘婿が事業承継税制を利用するためには「人」「会社」「事業継続」の三要件をクリアする必要があります。まず人の要件とは、経営者や後継者となる娘婿が満たすべき要件のことであり、筆頭株主であることが主な条件です。

次に会社の要件は、事業承継税制を用いる会社が満たすべき条件であり、法律上の中小企業に該当することが条件となり、事業継続の要件は事業を5年間継続することや雇用の8割維持を5年間平均で維持することが条件です。

なお、平成30年度の税制改正によって、書類を提出すれば雇用の8割維持を達成できなくとも税制を引き続き活用できるように変わりました。

※関連記事
事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説

遺留分特例を活用した娘婿への事業承継と対策

次に、遺留分特例を用いた娘婿への事業承継対策をご紹介します。事業承継税制は税負担軽減のうえで重要ですが、遺留分特例は娘婿への経営権集中に役立つため、遺留分特例の活用も事業承継税制と同じくおすすめできる対策です。

遺留分特例の概要と娘婿への承継メリット

遺留分とは、法定相続人が受け継げる相続財産の最低限の取り分のことです。仮に遺言によって遺留分が侵害された場合、相続人は遺留分減殺請求権を行使して自身の遺留分を取り返すことが可能です。

事業承継においては、遺言により娘婿に自社株を集中させようとしても遺留分減殺請求により株式が分散する可能性があり、株式が分散すると後継者となる娘婿の経営権が弱まるだけでなく、意思決定のスピードが遅くなって、事業承継が失敗に終わるケースもあります。

この事態を阻止するために、娘婿への事業承継では遺留分特例を活用します。遺留分特例とは、円滑な事業承継を実現するために受けられる遺留分の特例であり、娘婿が取得する自社株式を遺留分の計算から除外(除外合意)したり、遺留分の計算に含める自社株価額を合意時の価額に固定(固定合意)したりできます。

つまり、遺留分特例を活用することで遺留分による自社株分散を気にすることなく娘婿への事業承継を実行できるというわけです。

遺留分特例の利用条件

遺留分特例を活用する際には、娘婿を含めた推定相続人全員の合意と経済産業大臣や家庭裁判所の許可が必要です。そのため、娘婿への事業承継にて遺留分特例を利用する際は、あらかじめ手続きを進めておきましょう。

※関連記事
相続における遺言とは?遺留分との優先順位も解説

補助金・融資を活用した娘婿への事業承継と対策

事業承継では多額の税金がかかるうえに、事業承継後も運転資金が必要であるため、娘婿が円滑に事業承継を実施してその後も問題なく事業を継続するためには、十分な資金を確保しなくてはなりません。その対策として、補助金や融資を利用することも一つの方法です。

近年ではさまざまな機関が事業承継に対する補助金や融資を実施しており、娘婿の事業承継でも役立てることが可能です。ここでは、日本政策金融公庫の制度融資と国が行う事業承継補助金の2つを紹介します。

日本政策金融公庫の制度融資概要

日本政策金融公庫では「事業承継・集約・活性化支援資金」という制度融資を行なっています。この融資制度では運転資金や設備資金の借り入れができ、最大で7億2,000万円(小規模事業者は7,200万円)まで資金調達が可能です。

金利は1%~3%と非常に低いため事業承継後の返済で資金繰りが悪化しにくく、安心して事業承継にかかわる資金を借り入れることができます。

制度融資の利用条件

日本政策金融公庫の「承継・集約・活性化支援資金」を活用するためには、以下のいずれかに該当している必要があります。

  • 現経営者と後継者(候補でも可)と共同で中期的な事業承継計画を策定している
  • 経営権を安定的に確保するなどによって承継または集約を行う
  • 承継または集約によって経営の多角化や事業転換などの第二創業や新規事業への取り組みを図る(第二創業や新規事業への取り組みを行ってからおおむね5年以内の場合も含む)
  • 中小企業経営承継円滑化法の認定を受けた
  • 事業承継を行う際に金融機関へ経営者の個人保証の免除を申し入れたことで融資を受けることが困難になっており、日本政策金融公庫からの借り入れにおいても経営者の個人保証を免除希望している

なお、利用条件の5番目に該当する場合は運転資金しか借り入れることができません。しかし、事業承継にあたり納税猶予や遺留分特例を活用する際には中小企業経営承継円滑化法の認定を受ける必要があるため、その場合は運転資金だけでなく設備資金も借り入れできます。

事業承継補助金の概要

事業承継補助金は、事業承継に伴い事業転換や経営革新を行う後継者を対象とした補助金であり、娘婿や親族外に対する事業承継でも活用できるだけでなく、事業運営に必要なあらゆる費用が補助対象となります。

支給金額は100万円〜600万円程度であり、補助金ですので返済が不要である点がメリットです。

事業承継補助金の利用条件

事業承継補助金を利用するためには経営革新や事業転換の実施に加え、雇用創出などによる地域貢献も必要です。事業承継補助金は採択率が10%程度と非常に低く、資金調達する目的には不向きですが、返済不要の資金ですので挑戦する価値はあります。

娘婿への事業承継では通常よりも費用が多くかかる傾向にあるため、活用できれば負担を軽減できます。なお、自治体によっては事業承継補助金を独自に実施しているところもあるため、そちらの概要や利用条件も確認することおすすめします。

※関連記事
日本政策金融公庫による事業承継支援
事業承継補助金とは?採択率やM&Aでの活用を解説

まとめ

今回は、娘婿への事業承継について解説しました。娘婿への事業承継には相続時精算課税が利用できないなどのデメリットが存在することで特に税金面での負担が大きいため、娘婿への負担をどれだけ減らせるかが課題です。

娘婿への事業承継における対策には事業承継税制や遺留分特例などがあり、活用できる融資や補助金も存在しますので、あらゆる対策を講じて娘婿へスムーズにバトンタッチできるようにしましょう。最後に、この記事の要点をまとめると下記になります。

・事業承継とは
→会社の経営権や資産を信頼できる後継者に引き継ぐこと

・娘婿への事業承継における注意点
→贈与税の基礎控除や相続時精算課税制度が利用できない、相続税が2割加算される

・事業承継税制の概要
→承継する全株式について相続税や贈与税の猶予や免除が受けられる

・事業承継税制の利用条件
→「人」「会社」「事業継続」の三要件をクリアする

・遺留分特例の概要
→除外合意や固定合意によって株式の分散を気にせずに事業承継できる

・遺留分特例の利用条件
→娘婿を含めた推定相続人全員の合意と経済産業大臣や家庭裁判所の許可が必要

・補助金の概要
→事業承継に伴い事業転換や経営革新を行う後継者を対象に100万円~600万円程度の補助が受けられる

・補助金の利用条件
→経営革新や事業転換の実施に加え、雇用創出などによる地域貢献が必要だが、採択率は低い

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