2020年3月23日更新事業承継

事業承継における保険の活用

保険を活用すれば、事業承継で生じる経済的負担を軽減可能です。自身の状況に応じた保険を選ぶには、専門家に判断を仰ぐと良いです。この記事では、事業承継対策で保険を活用するメリットのほか、生命保険・逓増定期保険・長期平準定期保険・終身保険の各特徴を解説します。

目次
  1. 事業承継と保険の関係
  2. 事業承継における保険の活用
  3. 事業承継対策における保険活用のメリット
  4. 生命保険による事業承継対策
  5. 逓増定期保険による事業承継対策
  6. 長期平準定期保険による事業承継対策
  7. 終身保険による事業承継対策
  8. まとめ
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事業承継と保険の関係

多くの中小企業・個人事業主が抱えている問題の1つに、事業承継問題があります。最近は後継者不足を理由に事業承継を諦める中小企業も多いですが、事業承継を断念する理由には事業承継で生じる税負担の問題も深く関係しています。

経営者・個人事業主が事業承継する場合、企業・事業に関する財産を後継者に引き継ぐ必要がありますが、それに伴って相続税・贈与税などが発生します。ここで発生する税負担は非常に大きく、経営者・個人事業主が事業承継を諦めてしまう大きな要因となっています。

事業承継後も円滑に事業を運営するには、税金の支払い後も資金を確保しておく必要があります。企業・個人事業主の事業承継において、経済的負担の軽減が期待できる対策の1つに「保険の活用」があります。

保険を活用すれば、経済的負担を軽減しつつ、事業承継を円滑に済ませられる可能性が高いです。この記事では、事業承継対策としての保険の活用を解説します。特に中小企業の経営者・個人事業主の方は必見です。

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事業承継における保険の活用

事業承継で株式・店舗・土地などの事業資産を引き継ぐ場合、相続税や贈与税などの税金が課されます。事業承継は資産を引き継ぐ行為であり、手元の資金は増えません。資金力に乏しい中小企業・個人事業主にとって、事業承継で発生する課税は非合理的な仕組みといえます。

場合によっては、税金の支払いで企業・事業の資金繰りが悪化するケースもあります。事業承継の実施時には資金確保・節税対策などを検討する必要がありますが、ここで効果的な施策となるのが事業承継税制の活用です。

ところが、世の中には、事業承継税制の条件に該当しない中小企業・個人事業主も存在します。保険の活用は事業承継税制の条件に該当しない場合でも活用可能な施策であり、中小企業の経営者・個人事業主でも積極的に活用しやすい事業承継対策といえます。

事業承継に用いる保険の種類

事業承継対策として保険の活用は非常に効果的ですが、すべての保険を事業承継対策として活用できるわけではありません。事業承継で用いられる代表的な保険は、以下の4種類です。

  • 生命保険
  • 逓増定期保険
  • 長期平準定期保険
  • 終身保険

保険ごとに特徴・活用目的などが異なるため、自身の状況に合わせて適切な保険を選ぶ必要があります。保険を用いた事業承継対策では税務の専門知識も求められるため、専門家の判断を仰ぐと良いです。具体的には、事業承継案件に多くの実績を持つ税理士への相談をおすすめします。

親族内承継・従業員承継ではなく、M&Aによる第三者への事業承継を検討する場合には、別の観点から事業承継時の資金確保・費用負担の軽減などを目指すと良いです。例えば、M&A費用の削減・売却価格の向上などを図る施策が効果的といえます。

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事業承継対策における保険活用のメリット

事業承継対策で保険を活用するメリットは、以下のとおりです。

  1. 事業承継で必要な資金を確保できる
  2. 利益圧迫による節税効果が期待できる
  3. 後継者に株式を集中させやすくなる
  4. 死亡保険金を相続税の支払いに回せる
それぞれのメリットを順番に見ていきます。

①事業承継で必要な資金を確保できる

事業承継では、さまざまな費用が発生します。事業承継に伴う税負担だけでなく、後継者の教育費・事業承継後の運転資金なども必要です。保険を活用すれば、事業承継前後で必要な資金を確保できます。

例えば、生命保険のように、払込期間が短く早期に返戻金を獲得できる保険を活用すれば、事業承継の必要なタイミングでまとまった資金を確保可能です。

②利益圧迫による節税効果が期待できる

中小企業のケースでは、経営者の保険料を企業の損金として計上可能です。損金として計上すれば、それだけ利益額の減少が期待できます。そもそも中小企業の事業承継では、利益額が下がると株価も低下する「類似業種比準方式」で株価が算定されるケースが多いです。

相続税・贈与税は株価をもとに算出されるため、結果的に保険の活用が税負担の軽減につながります。

③後継者に株式を集中させやすくなる

株式会社では、後継者への株式引き継ぎプロセスが求められます。特に中小企業では経営者がほとんどの株式を保有しており、これらの株式を後継者に譲渡しなければなりません。ここで他の相続人に株式が分散すれば、経営権が十分に引き継がれないリスクが発生します。

株式の所有割合が高いほど、経営権が安定します。その一方で、他の人間に株式が渡れば、たとえ後継者が経営者に就任できたとしても立場が不安定になりやすいです。株式を手にした人間が経営者・後継者にとって都合の悪い人物であった場合には、深刻なトラブルを招きかねません。

そこで、保険金を現金化して他の相続人に株式相当額の財産を渡せば、後継者への株式集中を円滑に進められるメリットを享受可能です。保険の活用で事業承継時に資金を確保しておけば、事業承継プロセスをスムーズに完遂できる可能性が高まります。

④死亡保険金を相続税の支払いに回せる

個人事業主である経営者が死亡したとき、個人資産額に応じた相続税の支払いが必要です。相続税は累進課税であるため、資産が多いほど税率も高まります。場合によっては、相続税支払いのために相続人が相続財産を売却して現金化させる必要があります。

経営者の死亡保険金で相続税を支払えれば、相続人が相続財産を処分せずに済むメリットが期待できます。

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生命保険による事業承継対策

経営者が存命のうちに、生命保険の加入を検討すると良いです。生命保険を活用すれば、後継者個人のために必要な資金を確保可能です。後継者を保険金の受取人に設定しておけば、後継者に多額の保険金を残せます。

ただし、保険金の受取人となる後継者は、配偶者もしくは2親等内の血族である必要があります。2親等内の血族とは、子供・孫・親・祖父母までの親族をさします。経営者のいとこを後継者とする場合、原則として受取人に指定できないため、注意が必要です。

生命保険の活用目的

個人事業の事業承継では株価下落による節税対策を施せないため、資金確保を目指すことが一般的です。生命保険は、企業・事業の運転資金の確保を目的に活用されます。後継者が受け取る保険金は相続財産に該当しないため、他の相続人の遺留分を考慮する必要がありません。

遺留分とは、一定範囲内の相続人が最低限獲得できる相続財産をさします。遺留分に含まれないことから、後継者は生命保険金の全額を獲得できるため、事業承継後の運転資金を十分に確保可能です。

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逓増定期保険による事業承継対策

逓増定期保険は、事業承継対策として最も活用ケースの多い保険です。逓増定期保険では、加入期間が長期になるほど支払う保険料が高額となります。加入時点と比較すると最高で5倍程度まで保険料が増額しますが、死亡時に受け取れる保険金も高額です。

なお、解約時には多額の解約返戻金が受け取れるため、近い将来(5年〜10年後)に事業承継を実施するケースで効果的な保険です。

逓増定期保険の活用目的

逓増定期保険は、主に事業承継時の税負担を軽減する目的で活用されます。保険料は、企業の損金として計上可能です。逓増定期保険の保険料は高額であるため利益を大幅に圧縮でき、株価の引き下げ効果も大いに期待できます。

相続税や贈与税は株価をもとに算出されるため、逓増定期保険の活用は、事業承継時の税負担軽減を目指すうえで効果的です。また、経営者に支払う退職金を確保する目的でも活用されます。逓増定期保険には、一定期間まで金額が増加する解約返戻金が設定されています。

解約返戻金の金額がピークとなる5年〜10年目に解約すれば、支払った保険料の約9割の返還を期待可能です。税負担軽減だけでなく事業承継時の退職金を確保できるなどメリットが多い保険ですが、高額な保険料がキャッシュフローを圧迫するリスクもあるため、注意が必要です。

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長期平準定期保険による事業承継対策

長期平準定期保険は、死亡保険金が一定であり、20年~30年後に解約返戻金のピークが訪れる点に特徴があります。逓増定期保険とは違い、解約返戻金の上昇スピードが非常に遅いですが、解約返戻金のピーク期間は長いです。

上記の性質を踏まえると、事業承継にじっくりと時間をかけるケースで効果的な保険といえます。

長期平準定期保険の活用目的

逓増定期保険と同様に、事業承継時の税負担軽減・退職金の積立手段として活用されます。解約返戻金のピークが20年〜30年後に設定されているため、長期的視点で事業承継を進行可能です。

しかし、解約返戻金の受取タイミングで退職金を支給できなければ、大幅な黒字を計上しかねません。多額の課税を避けるには、解約返戻金の受取期間を想定して後継者を育成する必要があります。

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終身保険による事業承継対策

終身保険は、逓増定期保険・長期平準定期保険などとは性質が大きく異なる保険です。終身保険に加入すると生涯にわたって保障が継続されるため、経営者の死亡時に後継者が必ず保険金を受け取れます。そのため、企業・事業に資金を確保させたい場合に適した保険です。

終身保険の活用目的

終身保険は支払う保険料が非常に高額ですが、保険料の全額が資産計上されるため、事業承継時の税負担軽減策としては活用不可能です。確実に保険金を受け取れるメリットがある一方で、利益圧縮には活用できないというデメリットに注意が必要です。

とはいえ、後継者を受取人に設定しておけば、相続時に保険金を確実に獲得させられます。後継者からすると、受け取った保険金を相続税の支払いなどに充てることが可能です。

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まとめ

今回は、事業承継対策としての保険活用を解説しました。保険を活用すれば、事業承継における経済的負担を軽減できるメリットがあります。ただし、保険の種類によって特徴・期待できる効果は異なるため、専門家に相談しつつ活用する保険を選ぶと良いです。

また、事業承継のタイミングを事前に検討しておくことも大切です。近い将来に事業承継する場合には逓増定期保険の活用が適している一方で、長期的視点で事業承継の準備を進める場合には長期平準定期保険の活用が適しています。

確実に保険金を獲得させたい場合には、終身保険を活用すると良いです。そもそも事業承継では、保険の活用以外にも、さまざまな対策を検討できます。事業承継税制を活用すれば納税タイミングの猶予が期待でき、不動産を活用すれば株価の引き下げが期待できます。

事業承継では、複数の対策を吟味して講じることがおすすめです。要点をまとめると、以下のとおりです。

・保険の活用とは
→事業承継税制の条件に該当しない場合でも、活用可能な事業承継対策

・事業承継に用いる保険の種類
→生命保険、逓増定期保険、長期平準定期保険、終身保険

・事業承継対策に保険を用いるメリット
→事業承継で必要な資金を確保できる、利益圧迫による節税効果が期待できる、後継者に株式を集中させやすくなる、死亡保険金を相続税の支払いに回せる

・生命保険の活用目的
→企業や事業の運転資金の確保が目的

・逓増定期保険、長期平準定期保険の活用目的
→事業承継時の税負担を軽減する目的、経営者に支払う退職金を確保する目的

・終身保険の活用目的
→企業(後継者)に確実に資金を確保させる目的

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