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2021年4月29日更新事業承継
相続債務の対策!債務控除・相続放棄と時効について解説
相続では資産のみならず債務も引き継ぎます。相続債務の対策を怠ると、法定相続分に基づき債務を相続しなければいけません。相続債務の具体的な対策は、相続放棄や限定承認などです。相続債務とその対策全般とともに注意点なども確認しておきましょう。
相続債務とは
多額の遺産を相続できるケースがある一方、多額の債務が親族に遺されることもあります。親族からすると、債務は相続したくないと考えるのが通常です。しかし、相続人自身が何も対策をしなければ、自動的に法定相続分の比率の相続債務を背負うことになります。
相続は、ただでさえ何度も経験することではないため、皆、不案内で対応に戸惑う事象です。そのうえ、相続債務の問題まであると混乱してしまうかもしれません。この機会に念のため、相続債務とその対策方法について、きちんと確認しておきましょう。
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遺言と相続債務
相続において重要な位置を占める遺言と、相続財産として見なされる債務について、その基本的な内容を掲示します。
①相続における遺言
親族が亡くなった際、まず確認されるのは遺言書の有無です。遺言書が残されている場合、遺言書の記載内容に従って相続手続きは進められていきます。被相続人は、遺言書において「誰に・何を・どのくらい」相続させるか、本人の自由意思で決められます。
遺言書を用いれば、親族でない人間に財産を相続させることも可能です。ただし、遺言書の記載内容は優先されるものの、法定相続人には遺留分と呼ばれる最低限の相続が保障されています。法定相続人とは、以下のように民法で定められている一定範囲内の親族です。
- 第1順位相続人:配偶者および子供(子供が死去している場合は直系卑属=孫、ひ孫など)
- 第2順位相続人:子供やその直系卑属がいない場合は直系尊属(父母、祖父母など)と配偶者
- 第3順位相続人:子供とその直系卑属、直系尊属もいない場合は兄弟姉妹(兄弟姉妹が死去している場合はその子供)と配偶者
法定相続人の遺留分については、その相続割合も個別に定められています。また、遺言書がない場合は、全ての法定相続人による遺産分割協議により、各々の相続割合を決定します。基本的には左記の定められた相続割合に則ることになりますが、ここで問題が生じます。
例えば、遺産が現金だけであれば、相続割合どおりに分割ができます。しかし不動産などのように単純に分割できないものが遺産に含まれていることもあり、そのような場合、遺産分割協議でトラブルが発生する事例は少なくありません。
親族間のトラブルを招かないためにも、被相続人が遺言書にて相続財産を定めておくことが望ましい対策といえるでしょう。
②相続財産における債務
相続の場面で厄介なのは、現金や不動産などの資産だけではなく、借金などの債務も遺産として見なされていることです。いわば、負の資産である債務が相続の対象となることについて、一般にはあまり詳しく知られてはいません。
現金や土地などのプラスの資産の場合、遺言書や相続人同士の話し合いなどを経て、各々の相続分を決定できます。ところが相続債務に関しては、その分割内容を相続人が自由に決めるなどの対策ができません。
相続債務の法定相続分と割合
前述したとおり、相続債務は相続人同士が話し合って、その分割内容を決めたりする対策を行うことができません。相続債務の場合は、民法において、その相続割合が明確に定められてしまっているのです。相続債務の相続割合詳細について見ていきましょう。
①法定相続分に基づく相続債務
民法で定められている相続債務の法定相続分は、以下のとおりです。
- 配偶者と直系卑属が相続人:配偶者2分の1、直系卑属2分の1
- 配偶者と直系尊属が相続人:配偶者3分の2、直系尊属3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人:配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
同一順位内に相続人が複数いる場合には、1人当たりの相続分は人数で案分した金額となります。以下の具体例をご覧ください。
- 相続債務:1,000万円
- 相続人:配偶者と子供4人
このケースでの相続割合は、配偶者が2分の1、子供全体で2分の1ですから、子供1人当たりは8分の1になります。したがって、具体的な相続債務額は以下のとおりです。
- 配偶者:1,000万円×2分の1=500万円
- 子供1人当たり:1,000万円×8分の1=125万円
なお、上記の法定相続割合は、相続債務だけのものではなく、プラスの資産分配時にも適用される法定相続割合です。
②相続債務における注意点
相続債務の注意点は、「遺産分割協議で決めた債務負担の内容は債権者に主張できない」点です。例えば、遺産分割協議において、「最も多くの財産を相続する配偶者が全ての債務を負い、子供2人はほとんど財産を相続しない代わりに債務を負担しない」と決めたとします。
当事者からすると、公平かつ妥当な債務の負担割合に考えられますが、法律上では法定相続分に基づいて相続債務を自動的に承継することになっています。つまり、上記のような遺産分割協議で決めた内容は全く意味がありません。
債権者は、各相続人に対して法定相続の内容どおりに、相続債務の弁済を求めてきます。相続債務の取り扱いやその対策で、この点だけは心得違いをしないように気をつけましょう。
相続債務の調査・確認方法
相続債務の面倒な点は、被相続人が追っていた借金などの債務が、生前、親族に対して明らかにされていないことが多い点です。住宅ローンのようなものであれば、家族ならその存在を把握しているでしょうが、仮に配偶者が先立っているような場合、正確な残額などは不明瞭かもしれません。
相続債務対策を考えるうえでは、債務の内実を把握しなければ対策など立てようもありません。そこで、まずは相続債務の有無と、相続債務があるのであればその金額を調査することが第一の対策となります。実際には、どのようにして相続債務の調査をするのか見てみましょう。
①郵便物を確認
相続債務対策の調査としてまず最初にすべきなのは、自宅に届く郵便物の確認です。過去の郵便物が取ってあれば、領収書や請求者、未払いがあれば催促状などの債務の手がかりとなる書類を発見できる可能性があります。
さらに、過去の郵便物に加えて、その後1〜2ヶ月間で届く郵便物を確認すれば、大体の債務を把握できるでしょう。郵便物だけでは全ての債務を把握することは困難かもしれませんが、すぐに始められる相続債務対策としては、外せないものです。
②信用情報機関への開示請求
相続債務対策として万全を期すのであれば、信用情報機関への開示請求を行いましょう。銀行や消費者金融、クレジットカード会社などは、信用情報機関と呼ばれる所で顧客情報を管理しています。信用情報機関に被相続人の情報開示を請求すれば、債務の有無や金額を把握できます。
信用情報機関に対しては、本人もしくは相続人であれば情報開示請求が可能です。信用情報機関にはあらゆる金融機関の情報が集まっているため、情報開示すればほとんどの債務状況を把握できるでしょう。
なお、金融機関の種類によって加盟先の信用情報機関が異なります。全ての機関に開示請求しないと漏れが生じてしまうので注意してください。金融機関別の信用情報機関は下記のとおりです。
- 消費者金融:株式会社日本信用情報機構
- クレジット会社:株式会社シー・アイ・シー
- 銀行:一般社団法人全国銀行協会
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相続債務の放棄と注意点
相続において、資産を上回る規模の多額の債務が発覚した場合、何の対策も行わないと法定相続分に基づいて相続することとなります。そうなれば、債務の返済義務を負わねばなりません。それでは何とも迷惑な話です。
そこで相続債務についての対策として、2つの方法があります。それは、「相続放棄」と「限定承認」です。この2つが具体的にどのような同族債務対策であるのか、確認し把握しておきましょう。
①相続債務対策の相続放棄とは
相続放棄とは、相続に関する一切の権利を放棄する手続きです。相続人であること自体を放棄するわけであり、結果として債務を相続せずにすみます。プラスの資産と通算しても債務の額の方が明らかに多いケースでは、相続放棄が最もふさわしい相続債務対策でしょう。
相続放棄を行うための手続きとしては、家庭裁判所に「相続放棄陳述書」を提出し認められれば完了です。
②相続放棄の注意点
相続放棄には、いくつか注意点があります。まず、相続を知ったときから3ヶ月を過ぎると相続放棄ができなくなり、債務を引き継ぐ義務が発生します。また、被相続人に債務があることがわかったからといって、慌てて相続放棄の手続きをしてしまわないようにしましょう。
相続放棄は、相続内容を個別に選んで放棄はできません。全て相続するか、全て相続放棄するのかの二択です。相続債務とプラスの遺産を計算してみたら、プラスの遺産額の方が多かったとしても、相続放棄をしてしまった後では、それを得ることはできません。
見逃しがちなのが、自分が相続放棄することによって、債務の相続義務が自分より下位の順位である法定相続人に移るという点です。相続放棄で相続人が1人いなくなれば、死去していないときと同様に、次の順位の相続人に、その権利・義務が移ります。
つまり、自分が相続放棄したことによって、本来相続人ではなかった別の親族に相続権が発生し、その親族が債務を相続する羽目になってしまうわけです。ただし、該当する親族も相続放棄の手続きはできますので、相続債務が強制されるわけではありません。
しかし、相続債務を理由に、その対策として相続放棄を行うのであれば、無用なトラブルにならないように、最終的に関係してしまうことになる各親族には、事前に相談し話を通しておくのが良いでしょう。
③もう1つの相続債務対策の限定承認とは
相続債務対策において、場合によっては単純に相続放棄と決められない状況があります。例えば、どうしても相続したい思い出の品や形見の品などの財産がある場合、負債の詳細がはっきりせずプラスかマイナスか即断できない場合など、人によってさまざまです。
そのようなときに用いられる相続債務対策が、限定承認です。限定承認とは、相続するプラスの遺産金額の範囲内に限定して債務も引き継ぐことを意味します。限定承認を用いれば、相続放棄にはならず、かつ法定相続分の相続債務を課されることなく、例に挙げた思い出の品などを相続できます。
ただし、限定承認は、その手続きがとても専門的で複雑・面倒な内容です。専門の税理士などを起用しないと簡単には進められません。そうなると、今度はその手数料発生の問題も生じます。限定承認を実行するかどうかは、専門家に相談し熟慮して決めた方がいいでしょう。
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相続税の債務控除
相続債務対策としての相続放棄を行わず、相続債務を受け入れる場合において必要な知識となる、相続税の債務控除に関して説明します。
①相続税の債務控除とは
相続税の債務控除とは、相続税を計算する際に、プラスの遺産額から債務分の金額を差し引くことです。つまりは、現金や不動産などの遺産総額から借金などの債務額を差し引いて正味の相続財産額を求め、これに対して税率計算がなされて相続税額が決まります。
控除される債務の金額が大きいほど正味相続財産金額が少なくなるので、節税効果は大きくなります。
②控除対象となる債務
相続税計算で控除できる債務は、「亡くなった被相続人の債務であり、かつ亡くなった際に存在し確実と認められるもの」とされています。具体的には下記の債務が、相続税の控除対象です。
- 未払医療費
- 公租公課(所得税、住民税、固定資産税)
- 未払公共料金
- 事業上の未払金
- 金融機関からの借入金
- 金融機関以外からの借入金(個人など)
- 不動産賃貸業の場合、預かっている敷金
なお、債務ではありませんが、葬式にかかった一連の費用については、相続税計算の際に遺産額から控除してよいことになっています。
③控除対象とならない債務
相続税の控除対象とならない債務は、「被相続人の債務であり、亡くなった後に支払うことが確定している」という条件に該当しないものです。具体的には下記の債務などが、相続税の控除対象とはなりません。
- 団体信用生命保険で補填される住宅ローン
- 被相続人が亡くなった後の相続財産の維持管理費用
- 時効になった債務
- 相続税申告に要した税理士報酬
- 相続に関わる弁護士への相談費用
- 相続財産の名義変更諸費用
- 身分関係書類の取得費用
- 保証債務
- 墓地や仏壇などの未払い金
保証債務とは、各種債務において被相続人が保証人となっているケースのことです。当事者が未払いなどの問題を起こしていなければ、保証人には何ら具体的な債務は発生していないため、相続税計算において控除対象となりません。
また、墓地や仏壇などの未払い金が控除対象とならないのは、それらは非課税財産であるためです。
④債務控除を行える条件
民法では、相続税の計算において債務控除を行ってよい人物について、条件を設けています。以下に、その内容を掲示します。複雑な言い回しでわかりづらい表現ですが、普通に日本で生計を営んでいる日本人であれば、債務控除が制限されることはありません。
⑴相続や遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く) |
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相続相談に必要な費用とは?
まとめ
相続に接するとき、誰もが初体験であり戸惑うことばかりです。少しでも予備知識を得ておいて、慌てて間違った対応をしないようにすることが肝要です。また、費用はかかってしまいますが、やはり専門家に相談するのが結果的にスムーズに事態が処理できるでしょう。
本記事の要点は、以下のとおりです。
・相続債務とは
→借金などの債務も相続対象
・債務の相続放棄
→相続放棄すれば債務を相続せずにすむ
・相続放棄の注意点
→3ヶ月以内の手続きが必要、債務の相続義務が他の親族に移る
・相続税の債務控除とは
→相続税計算の際に債務分を差し引くこと
・控除対象となる債務
→医療費、公租公課、公共料金、事業上の未払金、借入金など
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